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【レポート】企業の環境・CSR・IR・広報・経営企画担当者がいま直面している課題

丸の内プラチナ大学SDGsビジネス速修コース 最終回 (2018年10月23日開催)

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2015年9月の国連サミットにおいて、持続可能な開発目標「SDGs」(Sustainable Development Goalsの略称)」が採択されてから、まもなく3年が経とうとしています。温暖化対策と環境配慮は世界市民としての急務という意識が世界中で醸成され、日本政府はもちろんのこと、日本企業にもその気運が浸透しつつあります。しかし、その企画立案者兼実行者となる現場担当者たちは、今とても大きな正念場を迎えています。

その理由は、「SDGs」が提唱する17の目標と169項目のターゲットがカバーする範囲が膨大で、それらすべてを来たる2030年までに実現しなければならないからです。さらにキーワードは「地球上の誰一人として取り残さない(Leave no one behind)」という高い理想を追求するもの。

社内にはまだ「SDGs」という単語すら浸透し切っていない状況であるのに、社内にまったく新しい共通言語を伝え、その企業に適した目標・ビジョンを編み出すーーそこには、財務指標を軸にして経済活動を続けてきた企業組織が実に不慣れな "非財務的な要素" までを包括したストーリー性のある戦略が必要となり、最終的には経営陣に具体のアクションプランとして提案し、企業経営にしっかりと織り込ませなければなりません。

2016年以降の世界的なトレンドになりつつある「ESG投資家」が、今後は目を光らせて環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に配慮している企業であるかどうかを選別し評価を下す世の中になってくる以上、その結果は企業株価に直結するとさえ言われています。まさにビジネスパーソンとして、複合技によるウルトラCを決めなくてはいけないような喫緊の課題に、企業各社の中にいる環境・CSR・IR・広報・経営企画担当者は、連携して事に当たらねばならない局面に直面しているのです。

社内には全く前例の無かった新しい挑戦が必要なこの状況に対し、一筋の光明を見つけた思いで企業内担当者がぞくぞくと集まってきているのが、本「SDGsビジネス速修コース」であるといえます。"速修"とあるのは、①取り組みへの緊急性と ②得られる実用性 の両方を含意しているにほかなりません。

講師を勤めるのは、株式会社伊藤園の顧問および日本経営倫理学会理事等を務め、SDGs経営の実務経験が豊富な笹谷秀光氏。各回の講義は、笹谷氏のプレゼンテーションに、参加者からのコメントを織り交ぜてグループ対話を行うスタイルで進行します。今回はその最終回の様子をレポートします。

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『SDGコンパス』の活用、SDGsを意識したレポーティングへ

『SDGコンパス』の活用、SDGsを意識したレポーティングへ

image_platinum1023.02笹谷 秀光 氏(株式会社 伊藤園 顧問、日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、サステナビリティ日本フォーラム理事)

「まずは前回の復習ですが、「SDGコンパス」について皆さんには相当に理解を深めていただいたと思います。いまから皆さんから集めたコメント集をお配りして、さらに一言ずつ意見を頂きたいと思います」(笹谷氏)

氏が前回の課題として配布した『SDGコンパス』とは、SDGsが企業の事業もたらす影響を解説するとともに、持続可能性を企業戦略の中心に据えるためのツールと知識を提供するSDGsの企業への導入指針書のことです。

講義最終回は、『SDGコンパス』を読んだ感想について、コメントを共有するところからスタート。各参加者からは共通した課題意識が次々と述べられました。
「"財務的な目標"という考え方に縛られて捉える社員が多いことが今の自社の課題」
「SDGsは、目指すべき目標の方向性を伝えてくれる指標であるが、いざSDGsをあてはめると絶対守らないといけないものとして囚われていることが社内で多い」
「各項目の優先順位の付け方など、まだまだ自分でも消化しようとしている状況」
「自社はまずSDGsとは何かを理解する初期段階にある」

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そのような参加者が抱えている課題意識に対し、SDGsの理解にはISO26000規格の理解が重要と笹谷氏は説きます。
「ESG投資家に報告する基準として、SDGsは国連が、ISO規格はISOが、報告方法はGRIやIIOCが、他にもいろいろ細かいものもありますが、実はすべては地下水脈のようにつながっています。各組織の人間たちがe-mailで本当につながって情報交換している関係性です。私が思うには国際機関にはそれぞれの役割があります。国連は国際問題に対する社会進歩の促進、ISOは国際的なスタンダードの決定、GRIはそれをレポーティング。組織毎に独自性があり、基準と視点が異なるのでそれぞれに分かれていますが、「サステナビリティ」を目指すという根本は同じなのです。
SDGコンパスの中では、様々なステップが解説されていますが、これはほぼISO26000で書かれていることを踏襲しています。それはISO26000が最も網羅的で、最も多くの企業・組織を巻き込んで、最も長い時間をかけて作られているためで、各国際機関はこれを援用・応用してそれぞれの指針を作成しているのです。そのためISO26000をまず理解することが必要です」(笹谷氏)

さらに世界と比較した今の日本の立ち位置についての解説が続きます。
「ここに、世界の国々の実践度を項目別に順位をつけてマッピングして評価している資料があります。昨年に11位だった日本は、今回は15位。下の方の国、100位以下の国々は、あらゆる項目が真っ赤です。あらゆることができていない。このような国には住みたくない、という評価をされてしまいます。
日本は15位で低いのではないかと思われるかもしれませんが、1位、2位、3位となっている国は、スウェーデン、デンマーク、フィンランドといった国です。これらはどういった国かというとこじんまりとして人口が少なく、コンセンサス形成が取りやすい。それに対して1億3000万弱の人口がいて、産業が複雑化している日本が、人口500-900万の国と同じように統治するというのは難易度が高いことと言えます。
通常、あらゆる産業をビルトインするためには人口5000万人が必要と言われています。なので、人口500-900万の国にはすべての産業は無い。たとえば環境への負荷が大きいと言われている車産業は、スウェーデンを除いて、無い。
そういうようなことも考えて、評価軸をすこし経済規模も加味して緻密にやっていかなければならないと私は考えていますが、国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)という機関と独ベルテルスマン財団が行ったランキングで機械的に評価軸を決めて評価すると日本は15位ということになります。なので、15位が低いのかと言われれば、私は低いとは思わない。もっともっと下の100位くらいだと日本はまずいということになる。このような総合的な見方も併せてぜひ理解していただきたい」(笹谷氏)

そして、SDGsを企業に適用する場合において、日本ではすでに立派に取り組んで実践できている企業が実は多い、と笹谷氏は指摘します。
「日本の企業には、「三方良し」という言葉が昔からあるように、社会に対してちゃんと配慮する文化があります。平均値で考えれば、日本はずっと上のレベルで、ほとんどがSDGs企業と言っていいんです。しかしなぜいま日本企業がSDGsをやらなければいけないかと言うと、"発信"ができていないからです。既にやっているのに、SDGsに照らし合わせてどうなのか、ということ、SDGsという新たな共通言語の使い方に戸惑っていることが問題なのです。残念ながら国際基準であるSDGsの正しい理解に時間がかかっているのがいまの日本です」

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ここまで『SDGコンパス』を読み、日本企業の一般的な立ち位置について理解を深めた参加者に対して、最後のテーマである "レポーティング" が笹谷氏から提示されました。昨今、「統合報告書」という名称での企業の報告が主流となっていてきている中、その理由を明快に語ります。

「なぜ「統合報告」と言うのかですが、それは「財務と非財務の統合」だからです。財務は、売上高・利益率・ROEといったデータのことです。これだけでは企業の中身までを理解することはできません。なので、財務データを日々見ている人は、非財務の部分の活動やCSR活動、つまりはストーリーを見たいと考えます。
一方、CSRはどちらかというとストーリーです。企業としてこういう活動をしていますというもの。しかし、ストーリーを聞いただけでは、事業は儲かったのか?なにか損失は出ていないか?コストは適切なのか?といった財務面での跳ね返りが気になります。
なので、両方を合体させる必要がでてきます。トータルとしての統合報告、財務の人と非財務の人が議論をして、両方を分かりやすく紐づけて統合した形で示すことが肝要となっています。このようにして財務と非財務を合体した中で生まれる「価値創造ストーリー」を考える必要があります。このための有力な体系整理にあたり、SDGsやISO26000に立ち戻っていただき、価値創造ストーリーの作成やそのレポートに使えるスキームとして参考にしていただければと思います」(笹谷氏)

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ここで講義は、笹谷氏が2012年から制作に携わっている伊藤園のレポートを引き合いに具体的な報告手法の説明に移りました。調達・製造・販売というバリューチェーンにSDGsの項目をマッピングした図、ESG項目までを洗い出したESG/SDGs相関のマトリクスーこれは笹谷氏のオリジナルですーの追加など、CSRの歴史の変化に合わせて、レポート内容も進化してきていることを伝えます。

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その後は、各参加者が持ち寄った企業のレポート実例を、具体のケーススタディ事例として一つ一つ解説し、回覧を行いました。

「統合報告書が今の主流になっていますが、その中で重要な役割を果たすGRIやIIRCのガイダンスは、SDGsと同じで、義務ではない世界です。要すればこれらのガイダンスを参考に各社が戦略をもって使いやすい物をつくればよいのです。これらはESG投資家のチェックにも使われます。可能であれば、毎年有識者や主要なステークホルダーに配り、定期的にブラッシュアップしていくのが良いでしょう」と笹谷氏。

既存の情報開示方法をいかにアップデートし、最新のESG投資家の目線に耐え得るものに変えていくかーー各企業のCSR担当者が頭を悩ませているポイントについて、進むべき道筋を伝えます。

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講義の仕上げは、各テーブルからパネラーを出してのパネルディスカッション。参加者全員の理解の補強を図る時間が設けられました。設定されたテーマは、「SDGsをどのように企業のレポーティングに反映していくか?どのような効果を狙うか?」。参加者からは様々な視点と気づきが共有されました。以下、交わされた生の言葉をご紹介します。

「CSRという捉え方から見直し社会対応力と考えてみよう」
「機関投資家向けの説明を行うのにSDGsという枠組みはわかりやすい」

 「財務数値を入れると100ページを超える。これは機関投資家さん向け。一般の人向けにはダイジェスト版が必要」

 「英語版から作って日本語版を作る事例があると聞いたことがある」 

 「レポーティング力が株価に直結している要素もあるだろう。レポートがしっかりしている競合他社を意識している」
「KPI項目の洗い出しが大変。SDGsがあるとグループ会社からの共通的な事実の吸い出しが行いやすくなる」
「見せやすい、伝えやすい方法をどうするか。レポーティング自体だけでなくWEBサイト内での機関投資家向けと一般投向けに振り分けてダウンロードできる事例なんかもかつてありました」
「スピード感をもって企業は取り組むことが必要だ」

 「世界課題解決に向けて取り組まないと生き残れない」

 「SDGsゲームでその急務性と重要性を思い知った」

議論は白熱し、予定時刻を過ぎても話題が次から次へと出てくるほどの勢いがありました。

 そして、最後に、笹谷氏はこう締めくくりました。

「日本はSDGsへの理解がまだまだ遅れています。しかし、だからこそいち早くやることに価値がある、SDGs対応をすれば企業にとっての価値創造となる、ということになります。そのためには「すぐやるぞ!」というアグレッシブな熱量が必要です。
そして、その発信の手段として"レポート"があります。レポートは「誰に」「何を」「どうやって」伝えるかですが、この中で「何を」が最も重要です。「何を」をたくさん持っていれば、あとの伝え方は難しくなく、技術的な問題です。あくまで伝えるツールとして様々な方法を試してみればいい。使ってみて役に立たなければ修正していく。この進化への柔軟性が必要です。だからどんどんSDGsを使った発信を試して頂きたいと思っています。
皆さんは立場的に、これから社内にどんどんSDGsを浸透させなければならないところかと思います。SDGs の17番まである項目は、しっかりと受け止めて早く自分事化し、ちょうど空欄となっている「18番目」の枠の所に、このプラチナ大学に参加された皆様からプラチナ社会形成に向けた新たな目標を考え出すくらいの勢いを持っていただきたいなと思っています」

参加者同士が本音で語り合い、お互いのケーススタディになる講座

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授業を通じて見えてくるのは、授業で学んだことをすぐに上司にメールを送りSDGs対応の緊急性とアクションプランを伝える方、サステナビリティ経営について既に先進的なグローバル企業のCSR担当としてさらなるブラッシュアップ手段を模索する方、個人的な興味から自発的に講座に参加している方、「あなたたちは、これから会社を目覚めさせるスポークスマンになる」と笹谷氏から言われていた方など、SDGsへの習熟度とミッションレベルに差はあれど、参加者の方々がみな会社の看板を背負って授業に臨まれていることです。

特に最後のディスカッションの時間においては、ファシリテーションの妙を心得た笹谷氏の差配による参加者の所属企業と職務内容が加味されたバトン回しで、テンポよく重要な論点が整理されて深まっていき、まさに良質のケーススタディを得て、ベストプラクティスを考えることにつながる内容となっていました。参加者の皆さんも、同じ課題に真剣に取り組んでいる相手を前に、社内事情や実施状況など持っているものを包み隠さない「本音」での発言が数多く飛び出しました。

全6回の授業の合間には、参加者同士で勉強会が開かれたり、知り合ったことをきっかけに相互に企業訪問・最新開発商品の見学を行った実績も生まれていたほどで、総じて感度・関心の高い人同士がうまく繋がり合ってエネルギーが伝播していく磁場が形勢されていた本講座。今期のプラチナ大学の講座の中でも、かなり仕事に直結するスキルアップと知識吸収ができる講座となっていたのではないでしょうか。

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