イベント丸の内プラチナ大学・レポート

【レポート】目指すは自己実現社会!プラチナ社会のための課題解決法を考える

丸の内プラチナ大学 共通講義 2019年7月5日(金)開催

8,10,11

ビジネスパーソンを対象に、リアルな社会課題を通じた学びの場を提供する、丸の内プラチナ大学。第4期を迎えた2019年は、全10コースのさまざまなキャリア講座を用意されました。

(1)逆参勤交代コース
(2)アグリ・フードビジネスコース
(3)繋がる観光創造コース
(4)アートフルライフ・デザインコース
(5)パラレルキャリアコース
(6)SDGs経営実践コース
(7)Social SHIFTテーブルコース
(8)シリコンバレーチャレンジコース
(9)宇宙ビジネスコース
(10)わたしブランディングコース

今回7月5日に開催された、全コース共通のオリエンテーションでは、丸の内プラチナ大学学長小宮山宏氏が中心となり、日本を取り巻く社会課題を解決した先の「プラチナ社会」の実現について話しました。

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自己実現が可能な社会とは、日本型持続可能な社会

自己実現が可能な社会とは、日本型持続可能な社会

2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」。この中に盛り込まれている17の目標は、世界を取り巻く環境問題や、社会問題、経済問題などの解決を目指しています。 現在でも十分な食糧が行き渡らず、飢餓や貧困が問題となっている国はありますが、先進国のほとんどは衣食住が満たされた時代に突入しており、世界的には長寿化が進行。特に、物質面でも情報面でも満たされた日本においては、平均寿命が世界一を記録しています。(2018年WHO統計)
しかし、平均寿命世界一の日本でも、解決しなければならない課題は多くあるのが現状です。

SDGsの目指す持続とは、「地球環境の持続」、「社会の持続」、「人間の持続」を目的としています。その持続を促すための行動指針がSDGsには設定されています。ところが、日本が抱える課題の一部である、「高齢化社会」、「生活習慣病」、「地方地域の過疎化」を解決するための行動指針はありません。
そこで、SDGsを含めて、日本が抱える問題を解決した先にある、日本型の持続可能な社会を「プラチナ社会」と小宮山氏は定義づけました。

「物と情報が自由に手に入るのは、歴史上特殊な時代。移動も自由にできる、長生きもできる。その時代において、私たちが求めるのは自己実現です。広い言葉で言うと、自分が社会の中でどういう役割を果たしたいのかという願望。時代の流れを考えると、今求められているのは、地球が持続して、豊かで、人の自己実現を可能にするような社会。これがプラチナ社会です」(小宮山氏)

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小宮山氏が提唱する「プラチナ社会」の必要条件には、自然共生、十分な資源(食・エネルギー)、参加型社会、雇用、自由などの要素が挙げられます。 その必要条件を満たし、実現のためのサイクルを回すためには、「ビジネス」を絡めることが重要だと小宮山氏は言います。

例えば、静岡県三島市は富士山からの伏流水が流れる、水の豊かな観光都市。現在では、ホタルの群舞なども見ることができる美しい自然を魅力としています。
しかし昭和30年代頃には、工場の建設ラッシュによって、地下水の汲み上げのため水量が急激に減ってしまいました。その水量が減った川に、無処理の工業排水や生活排水が流され水質は急激に悪化したのです。 その状況を改善しようと、行政や民間企業、NPOが協力して20〜30年をかけ、ようやくホタルが見られるまでの環境回復に成功。そして今や、観光地として人を呼ぶまでになりました。日本の中核都市としては珍しくシャッター街もありません。

「三島市は、自然共生とビジネスを合わせ、観光地として成功した模範例と言えるでしょう。人は時間とお金に余裕ができれば旅をします。ターゲットとしては外国人も入るから『観光』はプラチナ社会の良いテーマ例です」(小宮山氏)

また、自然共生の例としてもう一つ挙げられるのが林業。日本の国土の7割は森林に覆われていますが、木材輸入の自由化により、日本は丸太の7割を輸入に依存しています。それにより、林業は衰退し、人工林の放置で災害が起きやすい土壌になっていると言います。 先進国で丸太を輸入に頼っているのは、日本と森林が貧弱なイギリスだけ。その他の先進国の林業の現状を見れば、近代林業の手法を取り入れることで国内産業として盛り上げることは可能だと考えられます。 自然環境をきれいに保つだけでなく、人材やITを総動員して一次産業を復活させる。それにより、地方創生を促すこともプラチナ社会の一つのモデルです。

国内産業自給自足の筋道は明るい

日本は一足先に高齢化が進んでいるだけで、世界のトレンドも高齢化に向かっています。やがて、世界人口も21世紀中に、96億人前後で飽和すると推定されています。そこで導き出されたのが、「人工物の飽和」です。

先進国での自動車の平均保持数は1人あたり0.5台。人口が飽和すれば、自ずと自動車の必要台数も決まってきます。これは車に限らず、ビルの床面積でも同じような統計が出ているそうです。
つまり、必要な人工物の総量がわかれば、自然鉱山から新たに鉄鉱石を掘り出す必要はなく、今まで積み上げてきた都市鉱山からの再利用で持続可能ということです。

また、技術の向上により車の燃費をはじめとして、さまざまなエネルギー消費が効率化しています。1973年から比べると日本のGDPは2.5倍になっていますが、エネルギー消費は25%しか増えていません。 日本が自給という道を歩めれば、輸入に頼っていた産業が国内の産業に変わる。「地球資源の持続」は向上した技術と、資源の再利用により可能であることを小宮山氏は繰り返し強調しました。

続いて、「人間の持続」として「健康の産業化」について、日本オープンイノベーション大賞で総理大臣賞を獲得した弘前大学の取り組みについて話しました。
現代では、腰痛、アトピー、うつなど、原因が1つであるとわかっている病気ではなく、原因が多岐にわたる病気が増えています。この解明のために注目が集まっているのが「ビッグデータ」です。 弘前大学では、15年間にわたり県民1000人以上から、2000項目の健康データを取り続け、そのデータを元に予防医療の開発に取り組んでいます。このビッグデータをAIで解析し、企業と共同で、新規事業や商品開発など、ヘルスケアビジネスを生み出すシステムづくりに成功しました。また、県民の健康意識も向上し、平均寿命が上がる好循環をもたらしました。

「日本がSDGsで低い評価を受けているのが『ジェンダー』。つまり多様性です。サテライトオフィスや、在宅勤務、リモートオフィスなど、働き方の常識から自由になれば、今の社会課題に対する答えは全部ある。しかし、実態がなかなか伴わない」(小宮山氏)
その答えを行動にして示すには、多世代のインクルージョンが鍵となると小宮山氏は続けます。特に弘前大学のように、これまでの成功例には必ず学生がチームに加わっており、老若男女が共同することで地域おこしの動きが加速するといいます。

多様性で化学反応を起こせ! 逆参勤交代で地方再興

パネルディスカッションでは、前回トライアル逆参勤交代にエントリーした熊本県南阿蘇村「阿蘇ファームランド」執行役員竹田知子氏が、昨年の総括を語りました。

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「昨年のトライアルに参加して一番良かったのは、参加者のみなさんが自分ごととして、施設の問題解決に臨んでくれたことです。3年前の熊本の震災で、村のみんなが前向きになれない状況の中、南阿蘇の魅力を発掘して発信しようとしてくれた姿勢が非常に励みになりました」
阿蘇ファームランドでは早速、昨年の参加者からの意見をもとにヘルスツーリズムのプログラムをつくったそうです。これは企業の健康経営の課題解決を狙ったもの。
「個人でも企業団体でも楽しく運動できる施設になっていますので、たくさんの方々に来ていただければと思っています」(竹田氏)

続いて、丸の内プラチナ大学副学長で逆参勤交代コースの講師も務める松田智生氏から、阿蘇ファームランドでの逆参勤交代を実施しての感想をいただきました。

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「キーワードは『関係人口』。私は、今は南阿蘇に移住も転職もできません。ただ、数日間滞在して何かに貢献することはできる。観光以上、移住未満で関係を続けることは誰でも可能だと思うんです。つまり観光は交流人口、移住は定住人口ですが、その間の二地域居住などで、その地域と関係を続ける関係人口となる。これが大切です」

特に、南阿蘇に行って感じたのは、「異質な人材」は良い刺激になるということ。全く違う業種で、違う地域の人間が互いに触れ合うことで、化学反応が起こったようだったと言います。
また、課題解決のための提案で重要なのは「私たちが南阿蘇のために何ができるか」と、主語を「私」にして取り組むこと。「あなたたちはこうすべき」ではなく、参加者それぞれが、何ができるかを考える方がうまくいくと松田氏は振り返り、自身も年に2回は南阿蘇に行きたいと語りました。

「人間の生きる原動力は、貢献欲求や承認欲求だと思います。いくら稼ぐよりも、何をやるかなんだということが、逆参勤交代をしてみるとリアルに実感できる。ぜひ、さまざまな企業にも取り入れていただいて、明るい逆参勤交代を奨励していきたいですね」

プラチナ社会実現の要である地方再興には、逆参勤交代が重要だとする小宮山氏。最後に丸の内プラチナ大学の抱負を語っていただきました。

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「何か大きな流れを逆転させるには、まず行動するしかないと考えて逆参勤交代を松田さんが始めました。実現できた、スタートすることができたことが重要です。若いうちから関係人口になっていくことも大切だと思います。年を重ねてから東京以外のどこかに移住しようと思ってもなかなか難しい。東京の人と地方の人が混ざる以外にも、いろんな業種、性別、外国人など多様な人々が、異なる経験と感覚を組み合わせることで、さまざまな社会課題が解決できると私たちは確信しています。丸の内プラチナ大学でも色々な人がいる状況をつくって課題解決に臨んでいきたいですね」

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今回はオリエンテーションということで、幅広く社会課題の解決のための話を事例も交えて語っていただきました。小宮山氏の説明する最新の統計データは、従来の常識を覆すものも多く、時折聴衆からは驚きの声が上がっていました。

日本を取り巻く課題は決して少なくありません。しかし、今までの常識にとらわれない自由な発想があれば、必ずや明るい未来が開けるに違いないでしょう。そのためには、多世代間や、異業種間、他地域間の交流の刺激が有用。私たち一人一人にできることから始めることが、新しい流れをつくることにつながります。

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丸の内プラチナ大学では、ビジネスパーソンを対象としたキャリア講座を提供しています。講座を通じて創造性を高め、人とつながることで、組織での再活躍のほか、起業や地域・社会貢献など、受講生の様々な可能性を広げます。

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