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【レポート】 "アーティスト"になって見つける、新しいアートとの付き合い方

丸の内プラチナ大学 アートフルライフ・デザインコースDAY6 2019年9月17日(火)開催

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ビジネスパーソンに様々な角度からのキャリア講座を提供し、受講生たちに新たな気付きやつながりを与えてその可能性を広げる「丸の内プラチナ大学」。今年度は10の講座が開催されていますが、中でも昨年度に大好評を博した講座の1つが、アートに関するフィールドワークやワークショップを通じて、アートの持つ多種多様な魅力や可能性を存分に"体感"することを目指す「アートフルライフ・デザインコース」です。

同講座の中でも一番の見どころとも言える、美術館を借り切ってのフィールドワークが9月17日に開催されました。その模様をご紹介します。

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"明治時代"の美術館でフィールドワーク

"明治時代"の美術館でフィールドワーク

image_event_190917.002.jpeg館内をめぐる受講生たち。階段の手すりなど、保存されていた当時の部材を用いている箇所もあり、まさに歴史を感じられる美術館となっている

フィールドワークが行われたのは三菱一号館美術館。2010年に開館した美術館で、JR東京駅から徒歩5分という好立地にあることもあって、東京の新名所として親しまれています。同館は19世紀の近代美術を中心とした展覧会が人気を博していますが、実は建物自体も人々を魅了する要因のひとつ。なんといってもこの美術館は、1894年に丸の内に初めて建設された洋風事務所建築を復元したものなのです。この日は、同館に勤める石神森氏(三菱地所(株) 美術館室 運営ユニット 副主査/三菱一号館美術館 管理運営・教育普及担当)が三菱一号館美術館の復元の背景やポイントを紹介してくれました。

「この建物は、1894年(明治27年)にイギリス人建築家のジョサイア・コンドルによって設計された『三菱一号館』を復元したものです。三菱一号館は1968年に老朽化のために解体されましたが、2006年に三菱地所が建物の復元と、美術館として活用することを発表し、2010年に開館しました。当時の内装も忠実に再現しつつ、要所要所に美術館として必要な機能を付け加えています。
この建物で印象的なのは外観の赤レンガだと思います。かつての三菱一号館では、刑務作業で作った通称"囚人レンガ"が使われていましたが、復元にあたって当時の風合いに近づけるように中国のレンガ工場で木の枠に粘土をつめて一つ一つ作り上げました。。最終的には延べ100人ほどの職人が関わって230万個ものレンガを積み、復元致しました」(石神氏)

建物の歴史的背景や復元の裏話を教えてもらいながら、受講生たちはアートを楽しむとともに、明治時代に思いを馳せている様子でした。

image_event_190917.003.jpeg三菱一号館美術館の石神氏

"ヨーロッパ文化の知の集積が生んだ巨人"マリアノ・フォルチュニとは

一通り館内を巡った一行は、続いて企画展を観覧します。この日行われていたのは「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」。19世紀から20世紀にかけてファッションデザイナー、総合芸術家として活躍したスペイン出身のマリアノ・フォルチュニ(1871〜1949)が生み出した絵画、写真、舞台芸術など多岐にわたる作品を集めた展示です。

「ファッション界のレオナルド・ダ・ヴィンチ」「ヨーロッパ文化の知の集積が生んだ巨人」とも言われるフォルチュニが一躍有名になったのは、絹のプリーツドレス「デルフォス」を生み出したことがきっかけでした。その背景を石神氏は次のように説明します。

「19世紀から20世紀初頭のヨーロッパの女性たちは、きついコルセットを腰に巻き、ウエストを細く、ヒップを大きくすることが美しいとされていました。しかし19世紀末に発明されたX線写真で当時の女性たちを撮影したところ、骨や内臓が変形するなど身体に悪影響を及ぼしていることがわかりました。そこで女性をコルセットから解放する動きが起こり、その先駆者となったのがフォルチュニでした。彼が生み出した「デルフォス」というデザインのドレスは自然な曲線を美しく見せる衣服で、彼はこのデザインに関連したものを含めて多くの特許を取得しています」(石神氏)

デルフォスのデザインによって20世紀の服飾界の寵児と言われるようになったフォルチュニですが、自らをあくまでも画家と称していたそうです。それは彼の父であるマリアノ・フォルトゥニ・イ・マルサルがスペインの名画家だったから。実際、彼とアートの関わりは絵画から始まっており、生涯に渡って描かれた絵画は、この展覧会でも数多く展示されていました。

image_event_190917.004.jpegマリアノ・フォルチュニがデザインしたドレス「デルフォス」

アーテイストになった気分で、アートがさらに身近な存在に

image_event_190917.005.jpegフォルチュニに"なりきって"作品を解説する受講生たち

この日は単に作品を見るだけではなく、より深く作品を、そして作家を感じてもらうために、受講生がフォルチュニ本人になりきって作品を"解説"しながら鑑賞するというものでした。

とはいえ、フォルチュニは数々の高名を残してはいるものの、日本での知名度は決して高くなく、この日初めてその名を聞いたという受講生がほとんどでした。そのため、作品解説はあくまでもフォルチュニ役になった受講生による"想像(作り話)"になります。ですが、そこにこそ、アートを味わう醍醐味が増してくると、アートフルライフ・デザインコースの講師を務める臼井清氏(合同会社志事創業社)は説明します。

「普通、アートを学ぶときは作家の生涯や作品が生まれたエピソード、時代的な背景などを同時に、あるいは事前に学んで行きますが、その方法だけでは鑑賞が難しくなってしまう人も出てきます。今回はアーティストになり切ることで、自分の想像を自由に膨らませて作品を「解説」することで、逆に作品を洞察し、考えるきっかけになりますし、聞いている側も興味を示しやすくなるといった効果があります」(臼井氏)

フォルチュニに扮した受講生は、自分なりに各作品を生み出した動機や背景、こだわり、エピソードなどを即興で解説していきました。その内容は、確かに「作り話」ではありましたが、"なりきる"ことであたかも本当にその人が作品を制作したかのような雰囲気を生み出し、解説を聞く側も「もしかしたら本当の情報かも?」「フォルチュニが乗り移ったかのよう」と、困惑しながらも楽しんでいる様子でした。「フォルチュニの企画展に訪れたのはたまたまでしたが、日本での知名度がそれほど高くない作家だった分、説明側も聞く側も、より関心を高めることができたのかもしれない」と、臼井氏も笑顔で振り返りました。

image_event_190917.006.jpeg本コースの講師を務める臼井清氏

こうして、この日のフィールドワークは終了の時刻を迎えました。作品や作家への興味関心はもちろんのこと、なりきりアーティストを通して会話を交わすことで受講生同士の関係性も深まったようでした。新しい角度から作品を眺めることで、アートの知識以外のものも得られるこの手法。美術館に行くときには皆さんも取り入れてみてはいかがでしょうか?きっと、新しい世界が広がるはずです。


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