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【レポート】2年目終えた逆参勤交代、さらなる普及のヒントとは

丸の内プラチナ大学逆参勤交代コース 最終回 実施報告 2019年10月30日(水)開催

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2018年からスタートし、2期目を迎えた丸の内プラチナ大学の逆参勤交代コース。2019年は7月から9月にかけて、北海道上士幌町、埼玉県秩父市、長崎県壱岐市の3地域で2泊3日のフィールドワーク「トライアル逆参勤交代」を実施。その成果報告会が、10月30日、3×3Lab Futureで開催されました。

逆参勤交代構想の提唱者である松田智生氏(三菱総合研究所プラチナ社会センター 主席研究員・丸の内プラチナ大学副学長)による総括に加え、参加者の声の紹介や、各地域の担当者並びに有識者を交えたパネルディスカッションが行われました。

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逆参勤交代は「交流+学び+貢献を内包したワーケーション」

逆参勤交代は「交流+学び+貢献を内包したワーケーション」

image_event_191030.002.jpeg逆参勤交代コースの講師を務めた松田智生氏

「各地域への逆参勤交代を振り返ってまず感じるのは、"楽しかった"ことです」−−2期目のトライアル逆参勤交代の振り返りは、松田氏のこの言葉からスタートしました。

「江戸時代の参勤交代はつらいものでしたが、私が提唱しているのは"明るい逆参勤交代"です。これから働き方改革を進めていく上で大切なのは、明るく楽しく、"いかに自分が輝けるか"なので、楽しめるか否かはとても重要です」(松田氏)

参加者へのアンケートからも、多くの人が"楽しんだ"ことが伺い知れました。例えば「参加後に実感できたこと」という問いに対しては、96.6%の人が「観光と学びを兼ねられる」と回答していました。もちろん、レジャー的な楽しみだけではありません。同じ問いに対して、「異業種の参加者との交流」「地域の人との交流」を挙げた人も多く、前者は実に100%の人が回答。その結果、「今後も地域課題解決に取り組んでいきたいか」という問いに対しては、全員が何かしらの取り組みをしていきたいと回答しました。

「"ワーク"と"バケーション"を組み合わせた"ワーケーション"という言葉がありますが、その2つだけでは薄っぺらいリモートリゾートワークになってしまうと思います。やはり、"コミュニケーション(交流)"と"エデュケーション(学び)"、そして"コントリビューション(貢献)」"の3つも含めたワーケーションこそが、逆参勤交代の理念です」(松田氏)

一方、逆参勤交代に取り組む上での課題については「リモートワーク、情報セキュリティの仕組み」「地域貢献する副業、兼業制度の整備」「上司・同僚の理解を得られること」などが挙げられました。実際に大企業で働く参加者にとっては、社内の人事制度やシステム面での改善が鍵だと感じられたようです。

課題はあるものの、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年は逆参勤交代普及のために重要な年になりそうです。それは、多くの企業でリモートワークが推奨されるようになっているからであり、そのタイミングで逆参勤交代の価値を知ってもらえれば、一気に普及が実現できるかもしれないのです。そうした事情を踏まえた上で、松田氏は今後の展望を次のように語りました。

「逆参勤交代の実現に向けて大切なのは"続けること・深めること・広めること"です。一過性のイベントにせず毎年継続し、今回各地域で生まれたプランを深堀りしていく。さらに、例えばこれまでにトライアルで訪れた各地域の首長や企業経営者をつなぐ連合などを作って広域連携をしていくなどの取り組みをしていければと考えています。
また、官によるアプローチや、企業の経営層への理解推進、個人でのアプローチも欠かせません。それらを包括したオールジャパンで機運醸成し、この丸の内プラチナ大学をそのためのプラットフォームとしていく。それが非常に重要だと、私は思っています」(松田氏)

欠かせない"真の意味"での官民連携

image_event_191030.003.jpeg内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局 内閣参事官の中野孝浩氏

続いて、内閣参事官の中野孝浩氏が登壇。内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局に在籍する中野氏は、上士幌と壱岐での逆参勤交代に参加。両地域を訪れた経験も踏まえ、「都市部人材と地方自治体による地域課題解決の可能性」という題で、逆参勤交代への考えを語りました。

東京一極集中がなかなか止まらない状況にあって、「関係人口」づくりを通じて都市から地方への人の流れづくり、つまり、逆参勤交代のような取組が注目されています。こうした中、まち・ひと・しごと創生本部では、「生涯活躍のまちづくり(日本版CCRC)」の取り組みの中に、新たに「コミュニティへの人の循環」という視点を位置づける方向で検討していると、中野氏は話します。

「生涯活躍のまち=日本版CCRCというと、大きな老人ホームを造るようなイメージを抱くかもしれませんが、最近では中高年齢層だけではない全世代活躍型のコミュニティづくり構築の動きが進んでいます。例えば鳥取県南部町では、町内の空き家をリフォームして移住者に賃貸として提供していますが、60代以上よりも20代〜40代が中心で、イベント等も盛んに行われてにぎわいが出ています。そうしたように、中高年ありきではなく、全世代を見据えた新たな「全世代・全員活躍型」の生涯活躍のまちの展開がひとつの鍵になってくると考えています」(中野氏)

全世代を対象としていくためにも、逆参勤交代のような、都市と地方で人材を循環させる取り組みを通じて地方とつながる関係人口を増やす重要性が増していきます。そこでは官と民の連携が重要ですが、その際に欠かせないのが「それぞれの役割の明確化」と「どうしたらできるかを考える」ことだと、中野氏は続けます。

「官民連携を進める際、民間に丸投げをして終わりにするケースもあります。しかし課題解決のためには、官と民がまちづくりの理念と目標を共有し、官は何をして、民は何をするのか、お互いの役割を明確にしながら、「協働」していかなくてはなりません。つまり、より深い意味での連携が求められているのだと思います。
また"資源がない"など、できない理由を考えがちですが、実は気づいていないだけ、ということもたくさんあります。つまり、どうしたらできるかを考えるべきなんです。そのために地域住民や地域を深く知る人など、地域の関係者としっかり連携し、企画段階からともに取り組んでいくプロセスが、真の意味での官民連携の成功のカギだと思っています」(中野氏)

官民連携での地方創生は重要なキーである一方、担い手となる人材の確保など簡単なことではありません。しかし中野氏は希望を感じているそうです。

「先日参加した生涯活躍のまちに関するセミナーで、主催者がSNSで"地域課題解決にあなたの力を貸してください"と呼びかけたところ、若い方がたくさん来たそうです。若い世代の中には、地域課題の解決に貢献したい、自分の能力をうまく活用したいと考えている方が多くいることを表す出来事だと思いました。
今は副業・兼業を解禁する企業も増えつつありますが、企業にとっても彼らを地域に送ることで能力向上やビジネスチャンスの創出、リフレッシュなどを促せますし、地方の人材不足解消にもなる。また、若い世代だけではなく、会社の中で知恵や力を上手く発揮できていない上の世代の方にとっても、地方は、自分の経験や力を発揮できる場にもなり得ます。色々な形で地方の課題解決に貢献できることはあると思うので、今後が楽しみでもあります」(中野氏)

さらなる普及に必要な3つのポイント

image_event_191030.004.jpeg 上士幌町役場・企画財政課主幹の梶達氏(左上)、 秩父市役所市長室 地域政策課主幹の峯岸克典氏(右上)
壱岐市企画振興部長の本田政明氏(左下)、IKI PARK MANAGEMENT株式会社の高田佳岳氏(右下)

続いて、各地域の関係者を交えたパネルディスカッションへと移ります。パネルディスカッションのテーマは次の3つです。

(1)逆参勤交代を受け入れてよかったこと
(2)逆参勤交代に感じる課題
(3)より良い逆参勤交代にするための改善点

(1)については、「地元の人間から見ると価値が低いと思っていたものが、外部の人にとっては価値が高いものになると気付かされた」というコメントがありました。上士幌町役場・企画財政課主幹の梶達氏、秩父市役所市長室 地域政策課主幹の峯岸克典氏はそれぞれ次のように話します。

「我々としては、上士幌の売りは大自然や再生可能エネルギーへの取り組みが大きな売りだと思っていました。でも皆さんを案内している中で、我々からすると何でもないと思っていた場所で盛り上がったりしている様子は新鮮でした」(梶氏)

「地元の人間からすると当たり前の光景でも、皆さんは立ち止まってシャッターを切り始めることがありました。普段は気づかない自分たちの街の魅力を教えてもらい、嬉しかったですね」(峯岸氏)

壱岐イルカパーク&リゾートを運営するIKI PARK MANAGEMENT株式会社の高田佳岳氏は、東京のビジネスパーソンと触れ合うことで、自社スタッフの成長につながったことを収穫に挙げました。

「今回皆さんを受け入れるに当たり、どのようなことをするかはスタッフに一任しました。自分たちで何をするかを考え、結果的にイルカのトレーニングプログラムを人用にカスタマイズしたプログラムを提供したのですが、自分たちで色々な準備を重ね、スキームをつくり、人に提供してくれた。そうした経験をできたことは、皆の成長につながったと感じています」(高田氏)

(2)逆参勤交代に感じる課題について、壱岐市企画振興部長の本田政明氏は次のようなコメントを残しました。

「2泊3日の短期間でしたので、どうしても"良いところ"ばかりを見てもらう形になりました。実際には今回お見せできなかった課題も多くあるので、今後も定期的に壱岐を訪れていただき、地域の課題を掘り下げてもらえればいいなと思います」(本田氏)

実際に"ヨソモノ"として壱岐に入った高田氏は、ヨソモノだからこそ忘れてはならない視点があると言います。

「私自身、壱岐の自然や食に魅了されて移住したので、壱岐は最高の場所だと思っています。ただ、"自然"や"食"という括りで考えると、他の人からすると必ずしも壱岐である理由はないんです。だからヨソモノとしては"感動した"で終わるのではなく、なぜそれが良いのか、あるいは他の地域と比べて差別化できるポイントはどこなのかを突き詰めていく必要があると思います」(高田氏)

高田氏のコメントに、松田氏も首肯しました。

「日本には自然はどこにでもあります。その中で、地方を再訪する動機は、"あの海をもう一度見たい"ではなくて"あの人にもう一度会いたい"の方が強いと思うんです。今後は、そうした人を起点にしたプロモーションが有効なのではないかとも思っています」(松田氏)

また、(3)より良い逆参勤交代にするための改善点については、「一過性のイベントにしない継続性」「討議やプレゼン時間の延長」「どんな参加者が来るのか事前情報の提供」などが挙げられました。中でも今後のポイントになりそうなのが、高田氏が触れた「地域にプレゼンしたものを具現化する仕組みづくり」です。

「せっかくいい提案をしても、何の形にもならずに消えてしまうのはすごくもったいないことです。例えば地域おこし協力隊を受け入れる自治体は最大400万円の補助金を交付されるので、そうしたお金を使って実際に行動に移せるようにする仕組みが作れれば、より良くなるのではないでしょうか。もちろん、補助金や助成金頼りではいけませんが、何の資金も与えられないとできるものもできないので、可能な範囲で対応していけば、より良い逆参勤交代につながっていくと感じました」(高田氏)

各氏の逆参勤交代への思いは尽きませんが、セッションも終了の時間を迎えます。最後に松田氏は、今後の逆参勤交代のポイントを3つ挙げました。

1つ目のポイントは、マスボリュームを動かすことです。江戸時代は参勤交代をしなければ改易やお家取り潰しという罰則がありましたが、逆参勤交代の場合も、実施しなければ企業の法人税を上げるというような強制力を持ってマスを動かすことで、普及が進むと考えています。また逆参勤交代は、SDGsの「No.8 働きがいも経済成長も」や「No11 住み続けられるまちづくりを」と親和性が高く、大企業でSDGsを掲げる企業は、先ず逆参勤交代をせよと言いたい」

2つ目はビジネス化です。逆参勤交代を通じて地域課題を解決し、それをビジネスにつなげることで、地元企業や都心の企業に利益をもたらすことができれば、さらなる広がりを見せるでしょう。

そして3つ目が未来人材育成です。今回訪れた3地域は大学がないので、高校を卒業した子どもたちは地元で就職しないのならば外に出ざるを得ません。それ自体は仕方のないことですが、多様なキャリアがあることを彼らに教えていく必要はあるはずです。そこで、逆参勤交代で訪れたビジネスパーソンが、子どもたちにキャリア論を説いていくと、気づきを与えられると思います。もちろん単なる自慢話ではいけません。むしろ、しくじり先生のような失敗論を紹介すると、非常にいい反応が得られるのです。だから今後の逆参勤交代では、「丸の内しくじり先生」を展開していきたいと考えています(笑)」(松田氏)

無事に2年目のシーズンを終え、数々の収穫を得たトライアル逆参勤交代。この取り組みは来年度も続いていきます。"勝負の3年目"はどのような展開がなされるのでしょうか。期待とともに注視していきたいと思います。

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セッション終了後、各地域から取り寄せられた食材とお酒に舌鼓を打ちながら、再び夜の逆参勤交代が執り行われました 。


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