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【レポート】静岡県伊東市のまちづくりを考える3日間

【丸の内プラチナ大学】逆参勤交代・静岡県伊東市フィールドワーク(2023年2月3日〜5日開催)

8,9,11

ビシネスパーソンの遊び場、丸の内プラチナ大学で人気を集める「逆参勤交代コース」。逆参勤交代とは、魅力と課題のある地域をテーマに地方での期間限定型リモートワークを通じて、働き方改革と地方創生の同時実現を目指す構想です。

2022年度、5つの地域で実施される2泊3日のフィールドワーク「トライアル逆参勤交代」では、受講生それぞれの視点でその地域ならでは魅力や課題を発見し、最終日に各市長に対して地域活性化につながるビジネスプランの発表を行います。今年度最終回となる5回目に訪れたのは、静岡県伊東市。2023年2月3日(金)~5日(日)に同市で開催されたフィールドワークの模様をお届けします。

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シャッター街化する商店街、地元キーマンとの対話を通じて"関わりしろ"を探る

シャッター街化する商店街、地元キーマンとの対話を通じて"関わりしろ"を探る

<1日目>
伊東駅集合→中心市街地視察→オリエンテーション・昼食→ISOLA伊豆高原チェックイン→伊東市概要説明→地域のキーマンが抱える課題説明→意見交換→温泉

<2日目>
エクレアホール→昼食→城ヶ崎海岸→大室山→旅の駅ぐらんぱるぽーと→懇親会

<3日目>
課題解決プランまとめ→昼食→伊東市副市長へプレゼンテーション→道の駅マリンタウン→伊東駅解散

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フィールドワーク1日目、2月3日(金)の10時過ぎ、JR・伊豆急行伊東駅に本コースの講師を務める松田智生さん(丸の内プラチナ大学副学長/高知大学客員教授/三菱総合研究所主席研究員)をはじめの受講生12人が集合しました。受講生は20代から50代と幅広く、また、これまでの回に比べて女性の参加者も多く見られました。

伊東市産業課の里見和彦さんの先導で駅前に広がる商店街(湯の花通り、キネマ通りを抜けて、あんじん通り)を歩き、まちの様子を観察することからスタートしました。伊東に遊びに来た人に歩いてほしいルートであるものの商店街の空き店舗が目立つようになり、シャッター街化している問題を他の地域と同様に抱えています。そこで、伊東市の活性化策(チャレンジショップ、伊東のアンテナショップ)の説明を受けながら歩きました。

視察した商店街は、かつては個人商店で栄えていましたが、駐車場を確保しづらい等の問題から郊外のより便利な店舗に人が集まるようになり、今はにぎわいをどう創出するかが課題になっています。参加者はこの商店街を実際に歩くことで、最終日の発表に向けて可能性や課題を見つけ出す時間を過ごしました。

湯の花通りにある飲食店で昼食に地魚を使った丼を食した後、今回の宿泊場所となるワーケーション特化型施設『ISOLA伊豆高原』へ移動。午後は施設内で、伊東市概要についての説明や、地域のキーマンが抱える課題説明がありました。

伊東市企画課 川村清文さん「伊東市の人口減少について

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伊東市の総人口は、ピーク時の2005(平成17)年に7万2441人だったのが、その10年後の2015(平成27)年には6万8345人に減少しています。将来人口展望は、2060(令和42)年には3万人を切り、今の人口約6万5000人を維持することは不可能であることから、伊東市は約3万6600人を維持できるよう目標を立てています。課題については、高校生へのアンケートで、これからも伊東市に住み続けたいかを尋ねたところ、市外へ希望が7割と答えたこと。戻ってきたくない理由には、娯楽施設がない、働く場所がないなどが挙げられました。

伊東市産業課 里見和彦さん 「関係人口創出事業(中心市街地活性化)」

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1日目の午前中に見学した商店街では、後継者がいないことによって閉店した店舗が多数あります。閉店しても店主がそのまま住んでいるため、シャッター街化することを問題視していない場合も。また、借主に自宅のトイレを貸すことはできないなど、空き店舗貸し出しをするにしても問題があります。現在は、NPO法人『R-ship』に業務委託しながら、商店街への導線を考えたマルシェの開催や商店街でのアート作品展示など、活性化に向けて取り組んでいます。

伊豆急行株式会社 伊豆急ホールディングス 代表取締役 土方健司さん

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"伊豆とともに生きる"を創業以来の理念に掲げている『伊豆急行』。鉄道事業が根幹にあるために他の地域に移ることはなく、この地域に向けた事業を伊豆急グループで行っています。輸送人員がコロナ前でも最盛期1000万人の半分に減少したため、観光依存型の事業構造からの脱却、沿線の社会インフラ強化、老朽化設備の更新、伊東を愛する人々との関係強化をグループの課題にしています。今後の地域課題の解決策の一つとして期待される関係人口を増やすにあたり、受講生はどのような環境やサポートが必要か、それが整ったら地域にどんな貢献ができるかについて考えて欲しいです。

一般社団法人伊豆高原観光オフィス 利岡正基さん

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自身でペンションを経営しながら、伊豆高原の観光事業者の団体窓口をしています。伊東市において移動手段が限られていることから、公共交通の整備が今後重要になってきます。伊東市の総合計画には、持続可能な地域公共交通を確保・維持することが盛り込まれ、デマンド乗合タクシーの試行運転も実施。新しいモビリティのアイディアを求めています。また、伊豆高原では、ペット、自然、アートをベースに新たな観光客層の獲得だけではなく、ワーケーションなども取り入れながら最終的には協業するなどして持続可能なまちづくりができたらと思っています。

NPO法人『R-ship』 梶山俊樹さん

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2019年に伊東市でNPO法人『R-ship』を設立。伊東市の認知度が低く、インパクトのある発信ができていない、おもてなしが十分でない、他の温泉地、海まちとの差別化ができていないなどの課題が伊東市にはあります。そこで、若者への訴求力を意識したアップデート、今ある資源の利用、2つ以上の掛け合わせ、若い世代に向けた働きかけをキーワードに『R-ship』では活動を行っています。その際、他の地域の事例を持ってくるのではなくその土地に合ったものを行うこと、今後の継続性を考えて1日100万人を集客するのはなく毎日1000人集まることを大切にしています。未来を創造する若い世代を育てるため、クリエイティブに考える力を養うようなアイディアを求めています。

説明を受けた後、3グループに分かれて意見交換を行いました。伊東市のキーマンにそれぞれのグループに参加してもらい、受講生たちは伊東市の現状や活動内容についてさらに詳しく話を聞きました。

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1日目の夕食は、『ISOLA伊豆高原』の施設内にあるバーベキュースペースで。夕食後はキャンプファイヤーを囲んで話し込む受講生の姿も見られました。

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2日目の午前中は、サテライトオフィスやコワーキングスペースなどを備えた「Eclair Hall(エクレアホール)」の見学からスタート。受講生たちは施設内を一巡した後、この施設を運営する合同会社うさぎ企画・代表の森田創さんの事業内容や、埼玉県と静岡県東伊豆町で二拠点生活を送る大杉潤さんの人生100年時代の生き方について話を聞きました。

合同会社うさぎ企画・代表の森田創さん

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首都圏から関係人口を定着させる「人づくり」、関係人口と地元住民との交流拠点をつくる「場づくり」、移動手段を整えて広域交流を促す「足づくり」の側面から、地域の可能性を見出して活性化につなげています。会社組織から離れて独立する場合、地域とのコミットメントなくいきなり独立するのは難しいため、遊びに行くうちに地域との接点ができたら独立しやすいと考え、保養所として使われていた会社施設を転用してエクレアホールをつくりました。この地域の特性は、新しいもの好き、ゆるくて優しい、食べ物も豊富で一揆もなかった土地柄のため穏やかなど。新しいことをやるにも適地だと思われます。課題としては、ビジネスや実証実験をするにしては量が少なく、ITリテラシーも首都圏よりは遅れている点が挙げられます。

研修講師・経営コンサルタント・ビジネス書作家 大杉潤さん

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人生100年時代、自分でルールを決める人生を歩むためには「キャリアの自律」が必要になり、そうするためには「トリプルキャリア」(働く期間を3つのフェーズに分けて考えることで「生涯現役」のライフスタイルを目指すこと)の考え方が大切です。精神科医の和田秀樹さんは、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの材料となるトリプトファンを肉や大豆のたんぱく質から摂取すること、太陽の光を浴びることでセロトニンが増えることを健康のために推奨しており、私は良質なたんぱく質と太陽があるという理由で伊豆を選びました。

2日目午後は、伊東市の主産業は観光であることから、その魅力を知るために自然景勝地を訪れました。

最初に訪れたのは、城ヶ崎海岸です。約4000年前に大室山が噴火した時に流れ出た溶岩によって海岸で、特に全長48m、高さ23mの「門脇釣り橋」は断崖絶壁のスリルを味わえる絶景スポットとして人気を集めています。この場所は映画やテレビ、CMのロケ地としても有名で、アイドルグループ『乃木坂46』のミュージックビデオにも登場。その動画にアクセスできるQRコード付きの看板も設置されており、新たな観光の仕方につながる工夫が見られました。

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城ヶ崎海岸を散策後、車で約15分移動して大室山に移動。国指定の天然記念物で、約4000年前の噴火によって形成されたと言われています。リフトを使って山頂まで登り、直径300m、周囲1000m、深さ70mの噴火口跡を周回する「お鉢めぐり」を体験しました。山頂からは富士山をはじめ南アルプス、伊豆七島、房総半島まで見わたすことができる大パノラマ展望を楽しみ、自然あふれる伊東の豊かさを実感する時間は、地域課題を解決するプランを具体化していくプロセスの一助になりました。

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2日目の夜は、伊東市役所の職員も交えて懇親会。お互いのことをさらに知り、地域のために自身で何ができるかについて思考を深めていきました。

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3日目午後は、伊東市副市長をはじめ伊東市の人々に課題解決プランを発表する時間です。これに向けて午前中は、各自で集中してプランをまとめました。『ISOLA伊豆高原』の施設内でパソコンに向かい、この2日間で見聞きしたこと、これまでの自分の経験を織り交ぜながら、オリジナルのプランを練り上げました。プランを発表する際、松田さんからは主語を"私"にして主体的に何ができるかという内容であること、What(何をするか)、Why(なぜするか)、Who(私はなにを担うのか)、Whom(誰を対象にするか)、How(どのように実現するか)を網羅することに留意するよう説明がありました。

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午後のプレゼンテーションには、伊東市副市長の中村一人さん、企画課課長の菊地貴臣さんをはじめ、伊東市のまちづくりのプレイヤーなどが参加しました。

今回は、以下のプランが発表されました。
1)伊東お菓子ぃ共和国 シンボリックスイーツプロジェクト
2)自己探求と対話がテーマのコミュニティ「Love oneselfで、Onenessを」
3)「姉妹都市(伊東市、諏訪市)の交流創出・展開」プロジェクト
4)湯の花通り&キネマ通り 伊東駅から食べ歩き&日帰り入浴プロジェクト
5)伊東できっかけづくりを支援「Now Get the Chance!!」プロジェクト
6)漁港直送の白身魚を、お客に選ばせて、目の前で揚げるフィッシュ&チップスと、それを提供する飲食店が集積した駅前商店街を、新たな集客コンテンツに育てる「EAT♨️ BAR STREET」プロジェクト
7)外国人フレンドリーな伊東を目指す Come to Yunohana Street Project
8)伊東市サブカル魅力発見プロジェクト
9)「ペットと泊まろう!」金土日、伊豆ファミリーワーケーション
10)「伊東ミライカイギ」プロジェクト
11)「ペットにやさしいまち」強化プロジェクト① トリマーになるなら伊東!ペットケアの専門学校(寮付き)を誘致
12)「元気アーティスト丸ごと応援シティ 伊東」プロジェクト

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プレゼンを受けて、中村副市長から以下のコメントがありました。

伊東市副市長の中村一人さん

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笑いが絶えないプレゼンで、自由で楽しい時間からアイディアが生まれてくると思いました。短い滞在ではありましたが伊東市のことを知って強みも弱みも指摘していただき、自分たちが弱みだと思ったことが意外と強みになるとも教えてもらいました。受講生の交流がこれからも続く中、伊東市も一緒に長いお付き合いができたらと思います。提案したものが実現に向かわないことがありますが、1つでも実現に向けて行動していきたい。今回は限られた時間でのプレゼンでしたが、予算、誰がやるのか等、もう少し深掘りした検討ができればと思っています。

受講生に今回のフィールドワークについての感想を聞きました。

山川夏菜さん
いろいろな受講生、伊東市で活動する人と出会うことができました。多様性を受け入れる年上の方々と出会えたことが私にとって衝撃的で、いろんな生き方があって良いということを学びました。また、私は伊東市に1年半住んでいた経験がありますが、2日目に見学したエクレアホールのような場所があるのを知りませんでした。以前住んでいた時にやり残したことがあるように感じていましたが、地域で活躍する人と今回つながることができて前向きな気持ちで伊東に戻ってくることを検討したいと思いました。

臼井清さん
伊東は一言で言うなら"ほのぼの"。年齢はバラバラですがすごくエネルギーを持っている地域で活躍する人たちと会って、刺激をもらった一方で浄化されました。また、今回は大室山が印象的で、一方だけ開けている場所はありますがこのように360度見える場所は珍しく、パワースポットのように感じました。今回、逆参勤交代のフィールドワークに初めて参加して、参加者同士のつながりもできて、2泊3日と短い期間ではありましたが、これから何かが醸成されていくような雰囲気がありました。

フィールドワーク全体について、松田さんにも振り返ってもらいました。

丸の内プラチナ大学副学長 松田智生さん

今回の伊東市のフィールドワークはコロナ渦もあって2年越しで実現しました。2017年からのトライアル逆参勤交代のなかで、今回は女性の参加が全体の過半数を初めて超えました。消費意欲は女性の方が高く、人生のゲームチェンジを比べると女性の方が軽やかに行動できるので、これからのまちづくりや地方創生は女性なしには回らないと思っています。また、今回は多世代の参加ですが価値観の押し付け合いがなく、異質な人材・多世代により化学反応が起きているようにも思いました。今回の12の提案は、大きく分類すると、食、インバウンド対応、若者等の未来人材育成、ペットなどに分かれます。個別の提案となりましたが、今後は協力し合いながら進めていくことも可能です。続けること、深めること、広げることが今後は大切で、一過性にしないでぜひ取り組みを続けていって欲しいです。

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2泊3日のフィールドワークはあっという間に終わりましたが、ある意味これからが本番です。受講生たちは連絡先を交換し合い、再会する約束をして伊東を後にしました。

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