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【レポート】ものづくりの伝統が息づく長野県諏訪市 産業界の担い手創出をめざして

【丸の内プラチナ大学】逆参勤交代コースDAY3 長野県諏訪市東京講座(2023年10月26日(木)開催)

8,9,11

11月9日(木)~11日(土)に長野県諏訪市で実施される2泊3日のフィールドワーク「トライアル逆参勤交代」に先がけ、10月26日(木)、2023年度プラチナ大学 逆参勤交代コースのDAY3「東京講座」が開催されました。諏訪市長、諏訪市役所職員も参加する中、冒頭、本コースの講師を務める松田智生氏(丸の内プラチナ大学副学長/高知大学 客員教授/三菱総合研究所主席研究員)は、受講生に向けてこう話しました。

「ここ数年、市長をはじめ、市の職員の方々とのご縁をいただき、諏訪市版逆参勤交代の実現に向けて、準備をしてまいりました。諏訪市は、観光のまちでもあるし、ものづくりのまちでもありますが、人口減少や高齢化の問題にも直面しています。今回は、産業界の担い手創出をテーマに実施する予定です」

次に、諏訪市長の金子ゆかり氏が登壇し、諏訪市の魅力やまちづくり、現状の課題などについてお話いただきました。その後、金子市長と松田氏の対談やグループディスカッションが行われ、受講生の皆さんにとって、諏訪市への理解を深める絶好の機会となりました。

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講演「産業界における担い手創出型逆参勤交代」

講演「産業界における担い手創出型逆参勤交代」
諏訪市長 金子ゆかり氏

image_event_231026.002.jpeg諏訪市の金子ゆかり市長

「日本のおへそ」とも呼ばれる信州最大の湖、諏訪湖の南東側に位置する諏訪市は、なだらかな起伏の続く霧ヶ峰高原や上諏訪温泉など、美しく豊かな自然に恵まれたまちです。また、古くは製糸産業、戦後は時計・カメラ・オルゴールなどの精密加工技術を中心に、ものづくりの伝統が息づくまちとして発展してきました。

講演ではまず、金子市長は、諏訪市の観光やまちづくり、産業について紹介しました。

「令和4年の年間観光客数は520万人に達し、コロナ禍前の約600万人には届かないものの、徐々に回復軌道に乗っている状況です。諏訪市の恒例行事の一つである諏訪湖の花火大会は、おかげさまで今年開催75回目を迎えることができました。湖上ならではの水上スターマインをはじめ、迫力満点の演出が盛りだくさんのイベントです。また、2022年に初めて開催したミドルトライアスロン大会(計100km)は好評を博し、トライアスロンの人気大会ランキングでも上位にランクインしました。このほか、諏訪市では、御柱祭(おんばしらさい)や御神渡り(おみわたり)など、時代を越えて連綿と受け継がれてきた神事も行われています。また、甲州街道沿いには、『諏訪五蔵』と呼ばれる日本酒の酒蔵が集まっています。コロナ禍を経て今年復活した呑みあるきイベントも、多くの方にご愛顧いただいております。まちづくりに関しては、今年度末に開通予定の諏訪湖周サイクリングロードの整備をはじめ、諏訪湖スマートICの開設、上諏訪駅周辺での"歩きたくなるまちなかづくり"社会実験、遊休不動産の活用など、さまざまな取り組みを進めているところです」

続いて、金子市長は諏訪市の産業について説明しました。明治時代、諏訪地方は大規模な製糸場が建設されたことを機に、製糸産業のメッカとして発展を遂げました。戦後はこれに代わって精密機械工業が発展し、諏訪地方の豊富な水と澄んだ空気が精密機械の製造に適していたことから、「東洋のスイス」として名を馳せるまでになりました。

「製造業は、諏訪市の根幹をなす産業です。現在、製造業を営む事業所は300ほどあり、時計やカメラ、オルゴールなどの製造で培った精密加工技術を活かし、医療や環境、航空宇宙といった他分野に進出している事業所も多くあります。2002年から開催している諏訪圏工業メッセは、地方における日本最大級の工業専門展示会です。22回目となる今年は、300を超える企業・団体が出展し、3日間で2万人の方が来場してくださいました。宿泊・飲食サービス業の事業所は、約400あります。観光地としての素材はそろっていますが、観光客が集中するのは夏場で、冬のシーズンは集客が難しい傾向にあります。東京、名古屋からは、車や電車で2~2時間半とアクセスが良い反面、日帰りで来られる方も多く、通過型観光地になっていることも課題の一つとして捉えています。また近年は、諏訪地域の新たな魅力づくりと、地域課題の解決や地域力の底上げを目指して、魅力的な商品を地域ブランドとして認定する『SUWAプレミアム』を展開しています。新たなチャレンジに挑む地域の事業者の活動を後押ししながら、地域ならではの技術力をアピールするべく、販路開拓や情報発信の支援などに力を入れています」

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「諏訪市も、ご多分に漏れず人口減少の問題を抱えています。現在の人口は約4万8000人ですが、2040年には約4万人まで減少すると推計されています。地域が存続し、その魅力を維持していくためには、やはり産業が不可欠です。諏訪市第6次総合計画(5カ年計画)では、住民が安心して生活し、生計を立てるために重要な要素を『仕事』と捉え、充実した仕事の創出を一つの目標に掲げています。また、人と投資を呼び込むことも重点目標に掲げています。国内のほとんどの地域が人口減少に直面していますが、人材を奪い合っても、根本的な問題の解決にはなりません。
定住人口を増やすことも大切ですが、さまざまなかたちで地域と関わってくださる関係人口を増やしていくことで、住民の幸せ感や充足感を高め、ひいては地域力を高めることができるのではないかと考えています」

最後に、金子市長は、フィールドワークに向けてこう語りました。
「当事者よりも第三者の方が、事の成り行きや真相などを正しく判断できるという意味を持つ"岡目八目"という言葉がありますが、今回のフィールドワークでは、諏訪市にどっぷり浸かっている我々では思いも寄らなかった気づきや知恵を皆さまからいただけるのではないかという期待がございます。お話したとおり、諏訪市には多様な業種がありますが、『こんな方たちに向けてこんな風に働きかけたら、関係人口の増加につながるのでは?』というような、世代と業種を掛け合わせたご提案をいただけると大変ありがたく思います。そうした皆さまからのご提案によって、地域で培われてきた伝統や文化を後世に繋いでいきたい、それが我々の想いです。本日は貴重な時間をいただきありがとうございました」

image_event_231026.004.jpeg金子市長と松田智生氏。テーブルの上にあるのは、江戸時代から諏訪地方で栽培されている"かりん"
実際はマルメロですが、諏訪地方では昔からマルメロをかりんと呼んで親しまれています

続いて、金子市長と松田氏によるトークセッションが行われました。

松田氏:金子市長は、長野県内初の女性市長としてご活躍されていますが、そもそもなぜ政治の道に進もうと思われたのですか?

金子市長:大学卒業後、東京都内の商社に就職し、13年間お世話になっていましたが、母が余命6ヶ月の宣告を受け、看病のため退社し帰郷することになりました。後ろ髪を引かれる思いでしたが、人生では大きな決断をしなくてはならない時もありますよね。諏訪市に戻ってからは、長野県の県議会議員をしていた父の秘書を務めていました。そうこうするうちに父が引退することになり、後を継ぐかたちで県議会議員になったのがこの道に入ったきっかけでした。

松田氏:議員と市長の立場では、どんな点が最も変わりましたか?

金子市長:議員は条例を制定するにしろ、合意形成を図るにしろ、束になってかからないとなかなか難しいところもあります。一方、市長の場合、責任は確かに重いですが、アイデアを実現するスピードは議員の時よりも早いと感じます。

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松田氏:ところで、現状では、どの地域からのインバウンドが多いですか?

金子市長: コロナ禍前には及びませんが、中国をはじめ、アジア系の方が最も多く来られています。一方、10年ほど前から、日本の漫画や映画などといったクールジャパンへの興味もきっかけになっているのでしょう、欧米では日本が非常に人気です。円安の影響もあり、最近欧米の方が都内でも増えていると聞きますが、諏訪市も欧米の方が増えてきました。

松田氏:今後は、海外からの技術系人材も諏訪市に誘致できそうでしょうか?

金子市長:来ていただけると、大変嬉しく思います。

松田氏:諏訪市には、「奇跡の集落」と称えるべき後山地区があります。この地区について、皆さんにご紹介いただけますか?

金子市長:後山地区は、諏訪湖の南西の山道を車で20分ほど上がっていった先にある小さな里山集落です。平均年齢70歳とも言われる約30世帯ほどが暮らす、いわゆる限界集落の位置付けにはなりますが、重度の要介護者はゼロで、皆さん、朝早くから仕事に勤しまれています。市街地から離れた山の中ゆえ、農産物の交配が避けられる。これをメリットととらえ栽培するピュアホワイト(純白のトウモロコシ)や信州ひすいそばなど、地区の人たちの主体的な取り組みから、後山ならではの名産品が生まれています。

松田氏:日本は世界で最も高齢化の進んでいる国であり、人口減少、介護の問題も抱えています。しかし一方では、そんな日本がどこに向かっていくのか、海外から大きな注目を集めていますし、欧州の学会などでも日本の好事例を知りたがっています。私も驚いたのですが、今、ドイツの大学では、過疎化・高齢化が進む徳島県勝浦郡上勝町の葉っぱビジネス(料理を彩る葉っぱ・つまもののビジネス)について教えられているんですね。そう考えると、住民の平均年齢が70歳とも言われる中で重度の要介護者がいない後山地区は、教科書に載るような好事例になる気がしています。今回のフィールドワークでも訪問する予定ですので、皆さん楽しみにしていてください。

続いて、諏訪市役所(経済部産業連携推進室)の職員の方が登壇し、11月9日(木)~11日(土)に開催されるフィールドワークの行程を説明しました。主な内容は以下のとおりです。

11月9日(木)
・オリエンテーション
・視察、意見交換:(株)小松精機工作所、宮坂醸造(株)
・立石公園散策
・懇親会

11月10日(金)
・視察、意見交換:後山地区、(株)信州諏訪ガラスの里、(株)竹屋、(株)共進、諏訪湖リゾート(株)
・懇親会

11月11日(土)
・課題解決プランまとめ
・諏訪市長へのプレゼンテーション

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続いて、参加者は4~5人のグループに分かれて、今日の気づきや諏訪市に対して自分ができそうなことなどについて共有しました。グループディスカッションに参加した金子市長は、「アイデアにあふれる皆さまがいらして、早くも提言をいただいたような気がいたします。フィールドワークの実施が、さらに楽しみになりました。11月、諏訪市でお待ちいたしております」。最後に、松田氏が、「人口減少社会で我々ができることは、人材の争奪戦ではなく共有と循環です。その意味でも、諏訪市の逆参勤交代に力を注いでいきたいと思っています」と述べ、東京講座を締めくくりました。

image_event_231026.007.jpeg金子市長(左から2番目)と参加者の皆さん

その後行われた懇親会では、諏訪五蔵の日本酒をはじめ、きのこや蜂蜜など、諏訪市の食材を使った料理を囲んで和気あいあいとした交流の時間がもたれました。2泊3日のトライアル逆参勤交代では、どのような "世代と業種を掛け合わせた提案"が生まれるのでしょうか?次回のレポートでは、その模様をお伝えします。乞うご期待ください。

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