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【レポート】起業・副業で避けて通れない「税務」を学ぶ 失敗しないための基礎知識

【丸の内プラチナ大学】ライフシフト起業コース DAY6 2026年1月19日(月)開催

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自分らしい起業の準備を整え、自身のビジネスを考えデザインする丸の内プラチナ大学のライフシフト起業コースが1月19日、東京・大手町の3x3Lab Futureで開催されました。Day6は同コースの中で毎年人気の「税務を理解する」をテーマに、起業や副業で避けては通れない税務について学びを深めました。同コースの講師はナレッジワーカーズインスティテュート代表取締役塚本恭之氏が務めます。塚本氏は冒頭で「税務は起業において絶対学んでおかなければならないが、1人で学んでも嫌になる。今日は一緒にゲスト講師の解説をしっかり理解して、皆さんの今後の起業に役立ててもらいたい」と受講生らに呼び掛けました。ゲスト講師は税理士の吉村知子氏で、個人事業主や中小企業の経営者を対象に顧問契約を提供するほか、確定申告支援や副業支援などのオンラインコンテンツ販売も展開されています。

image_event_lifeshift_day3_2.jpeg ライフシフト起業コース講師の塚本氏
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個人か法人かの分かれ道、また副業における注意点とは

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塚本氏の紹介を受けて登壇した吉村氏は、まず「起業の基本編」として個人事業主として起業するか、法人として起業するか、それぞれのメリットとデメリットから語り始めました。

image_event_lifeshift_day3_3.jpeg ゲスト講師の税理士の吉村氏


「個人事業主としてビジネスを始めるメリットは最小限の資金で簡単に始められる点。デメリットとしては信用力が低く、大きな金額の取引がしづらい。他方、株式会社や合同会社といった法人から始めるメリットは、経費の幅が広く節税がしやすいこと。役員報酬も支払うことができ、人も雇いやすい。デメリットは法人設立や税務申告、社会保険の強制加入などコストがかかること。特に厚生年金の負担は大きい。それぞれの長所・短所をしっかり検討することが大切」(吉村氏)。続けて「仮に法人を設立するとして、一番必要なものは何か」と受講生らに問いかけました。「資金」などの答えが出ましたが、吉村氏は「覚悟だ」と言います。

「法人を設立するためには腹を括ることが一番大事。なぜなら法人は一度設立してしまうと簡単に辞められない。赤字でも毎年7万円ぐらいの税金がかかる地域もあり、家賃や専門家報酬などの固定費もある。法人を辞めるにも解散・清算の手続きが必要で、それにもお金が必要。また法人を辞めたからと言って、個人事業主に戻ることも簡単ではない。私は『小さく始めて大きく育てる』ことをお勧めしている。まずは個人事業主として売上や利益が安定した後に法人を設立する方がいい。焦る必要はない」とアドバイスしました。

吉村氏は起業準備を進める際のいくつかの注意点を話します。「個人事業主の確定申告の方法は青色申告と白色申告があるが、青色一択。必ず青色申告承認申請書を出してください。理由は節税の幅が断然広い。家族に対して払った給料を専従者給与控除として原則全額必要経費で計上できたり、少額減価償却資産の特例により30万円未満の資産を年間300万円まで購入金額全額その年の経費にできたり、最大65万円の所得金額からの特別控除もある。青色申告にしない理由はない」(吉村氏)

他方、法人としてスタートする場合には設立コストや資本金に関して注意を促します。「合同会社か株式会社かで大きく異なるのは設立のコスト。合同会社は総額約8万円に対して、株式会社は約22万円必要」と言い、「資本金を100円程度にする方もいるが100円では会社運営はできない。金融機関からの融資などを考えても最低50万円程度は用意して欲しい」と語りました。これらの点に加えて、吉村氏は届け出書類や税金、起業後に検討して欲しい事項として創業地域の助成や補助金についても述べたうえで起業の基本についての話を終えました。

image_event_lifeshift_day3_4.jpeg 起業時の注意点について吉村氏は丁寧に解説


続いてのトピックは「副業の税金」です。吉村氏が「副業で最も大きな論点」と言い、SNSでも話題になるのが事業所得か雑所得かの区分です。「副業は節税メリットがあるので皆さん事業所得を選びたがるが、なんでも事業所得にできるわけではない」と言います。吉村氏は「法律上、事業所得と雑所得の境目は明記されていないが、国税庁が出した判断基準の一つは帳簿の有無。帳簿があれば事業、なければ雑所得という指針が示されている。売り上げが少ないのに、なんでもかんでも事業所得にしてしまうのは危険。特に副業の事業所得で赤字を出して、本業の税金還付を受けることを税務署は嫌うので気を付けて欲しい」と所得区分について解説しました。

インボイス、経費、AI税務調査 これからの起業家が知っておくべき実務の勘所

3つ目のトピックは2023年10月から導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)です。そもそもインボイス制度とは何かといえば、吉村氏によると、消費税の仕入れ税額控除の金額を正しく計算するために導入された制度だそうです。Tから始まる13桁番号が記載された適格請求書を発行できるのは消費税の課税事業者だけで、課税売上高が1000万円以下で免税事業者となっている場合は適格請求書を発行できません。吉村氏はこのインボイス制度の目的を「益税をなくすため」と言います。

益税とは、免税事業者が取引価格に消費税相当額を含めて受け取りながら、納税義務がないために結果として手元に残る分を指します。吉村氏の解説をまとめると、例えばBさんがAさんから100万円分の仕入れをした際、BさんはAさんに消費税を含めて110万円を支払います。その仕入れをBさんはCさんに対して300万円で売却し、CさんはBさんに消費税を含めて330万円を支払った場合を考えます。インボイス制度導入以前には、Bさんが収める消費税は売上にかかる30万円から仕入れで支払った10万円を差し引いた20万円でした。しかしインボイス制度導入後、Aさんが免税事業者である場合、Aさんが納税すべき10万円の消費税はBさんが負担することになり、30万円の消費税を納税しなければなりません。

このような例を引き合いにして吉村氏は「今は、免税事業者と取引すると取引相手は税負担が増えてしまう。そのため取引を控えるということになりかねない。皆さんも事業を開始する際にはインボイス制度の登録要否を一度検討してみてほしい。例えば取引相手が大手企業であれば導入せざるを得ないかもしれないが、BtoCや個人を対象にした場合などは登録せずとも影響しない可能性もある。事業内容や状況に応じて検討して欲しい」とアドバイスしていました。

image_event_lifeshift_day3_5.jpeg 休憩中も税務に関する話題が絶えない


次は「起業・副業のお金の管理」として経理に関する話題に移りました。吉村氏は「お金の管理が苦手な人は多いが、売上や費用が分からないと事業の現在地が把握できなくなってしまう。今はクラウド会計があり、安価で便利、入力は最低限で効率的、リアルタイムで損益が把握できる。メリットしかないので活用して欲しい」と言います。

そして何が経費になるかという疑問について吉村氏は「事業に関係があり、売上に紐づくものが経費です。多くの方が、『これは経費にできますか』と聞いてくることが多いが、ちゃんと売上に貢献しているものは経費になります。税理士に判断をゆだねるのではなく、皆さんが判断してください」と呼び掛けていました。そして間違えやすい経費として、「交通系ICカードへのチャージ」「1人社長の福利厚生費」「税金」などを挙げます。「ICカードなどへのチャージは単に現金を利用しただけなので経費にならない。また福利厚生は従業員のためのもので、社長にはない。税金で経費になるのは事業税だけ」と解説しました。一方で経費として見過ごされがちなものとしては「慶弔費」、「割り勘で払った経費」、「自動販売機で購入した飲料」は集計してあれば経費にすることができるそうです。

image_event_lifeshift_day3_6.jpeg 起業家が苦手とする経理について具体的な事例を交えながら話す吉村氏


最後のトピックはAI時代の税務調査です。個人事業主が近年ますます税務調査の対象になっています。そして、その原因を吉村氏はAI(人工知能)の導入だと言いました。「税務署は税務調査にAIを導入している。特に中小企業と個人事業主への調査対象について、約8割をAIで選定している。その結果2024年は前年に比べて追徴課税が38億円増加した。AIを使って不自然な記載が多い申告書やキリの良い数字などを検出していると言われている」(吉村氏)。また税務調査の頻度については、利益が出ている法人で3~5年に一度、個人事業主は10年に一度、個人事業主から法人にした年度などもよく調査されるそうです。

税務調査の論点の多くは「経費がビジネスなのかプライベートなのかという点。どれだけ会社の規模が大きくなってもこの論点が一番多い。過去には高級ブランド品やスーパーでの食材購入費、プライベートで宿泊した高級ホテルの代金なども否認された」と吉村氏は様々な事例を交えながら解説しました。そして「去年経費に入れてOKだったとか、友人や知人から経費にできると聞いたとか、それは税務署が去年のデータを見ていないだけで必ずしもOKとはいえない」と納税者が勘違いしやすい点についても指摘していました。そのうえで「皆さんもある程度のリスクを取って起業しているので、経費をたくさん使いたい気持ちは分かるが、きちんと説明ができるもののみにしてください」と話していました。

吉村氏が話を終えると続いて質疑応答が行われました。受講生の多くが日ごろから疑問に思っていたことも多いようで、経費や税務調査、事業形態など様々な点に関する質問が続きました。以下に吉村氏が答えた質疑の一部を抜粋します。

Q:個人事業では家賃も経費になるという話だったが、持ち家の場合は
A:個人事業の場合であれば、明確な理由があれば固定資産税を一部計上している方もいるが、細かなシミュレーションが必要。

Q:10年ぐらい会社員をやりながら個人事業主として副業しているが、これまで税務調査は来たことが無い。いつかは絶対調査されると思っていたほうがいいか。
A:大体目安として10年に一度調査があると思っていたほうがいい。売上が小さいから調査が無いわけではない。

Q:一般社団法人における税務的に留意しておくべき点は
A:社団法人を設立したい方は、信用力や公的なイメージを持てると思うが、税務上では、非営利だからと税金がかからないようにするのは難しい。きちんと非営利団体における事業と言う理論づけができるかがポイント

image_event_lifeshift_day3_7.jpeg image_event_lifeshift_day3_8.jpeg 受講者からは経理の質問が上がった


起業や副業において税務は避けて通れない現実ですが、正しく理解すれば恐れるものではないということがよくわかる講座でした。時間の限り質疑応答が続き、受講生にとっても自分の事業と向き合い、判断する力を養う貴重な機会となったはずです。

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