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【レポート】言葉の力が人生を切り開く 心とアートをテーマに「美しく生きる」を問い直す

【丸の内プラチナ大学】ウェルビーイングライフデザインコースDay6 2026年1月21日(水)開催

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自分らしく幸せに働き、幸せに生きる人生をデザインすることを学ぶ丸の内プラチナ大学ウェルビーイングライフデザインコースのDay6が2026年1月21日、東京・大手町の3×3Lab Futureで開催されました。今年度のテーマは「心と身体と世界の美しさ~美しく生きる~」です。
同コース講師の前野マドカ氏は冒頭「人々が尊重されながら自分らしく生きられる世界の中で、自分の良さをどう活かして人生を設計していくか。これまで各回『心』、『身体』などについて扱ってきた。今日の講座では、まとめとして美しく生きるということ、心とアートについてゲスト講師にお話いただこうと思う」と講座の狙いについて語りました。

image_event_wellbeing_day6_2.jpegウェルビーイングライフデザインコース講師の前野マドカ氏

ゲスト講師の講演に先立ち、恒例となった「チェックイン」も実施されました。各チームに分かれて「最近1か月で一番嬉しかったこと」についてメンバー間で共有します。「一週間のヨーロッパ旅行で体がしびれるような幸せを感じた」や「息子の成人式での晴れ姿を見て、本人以上に感慨深さに浸った」などと嬉しかったことの報告がされていました。受講者同士の交流も回を重ねるごとに弾み、場が温まったところで講演がスタートしました。

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自分のやりたいことを言葉にすれば、すべての原動力になる

自分のやりたいことを言葉にすれば、すべての原動力になる

本日のゲスト講師、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ理事の及川美紀氏が登場しました。及川氏は1991年から33年間株式会社ポーラで勤務、特に2024年までの5年間は同社代表取締役社長を務めました。ポーラを卒業したのちは、社外取締役や社団法人の理事などに就任し、ウェルビーイングやダイバーシティ、組織マネジメントなどを軸に様々に活動しています。

image_event_wellbeing_day6_3.jpegゲスト講師の及川美紀氏

今回のテーマである心とアートについて、及川氏は「私が付け焼刃で芸術作品の話をするよりも、これまで私を支えてくれたり、心を震わせてくれたりした言葉の力を中心にお話ししたい。私にとって言葉はすごく大事なもの。言葉によってどん底に落とされることもあれば救われることもある。」と語り、まず詩人の茨木のり子氏の「倚りかからず」を紹介しました。その詩について及川氏は「仕事でリーダーとなり、家庭では子育てに多忙な時期に励ましてもらった。誰かみたいなリーダーにならなくていい、誰かの期待に応えなくてもいいと言われているようで、でも同時に自分で決めることの大切さや自分が決める必要があることも教えてくれる詩だった」と言葉の持つ力を実感した経験を明かしました。

及川氏はポーラという老舗企業の中で33年間、組織のリーダーとしては17年間、経営メンバーとしては12年間、そして最後の5年間は社長として、楽しく働く人や辛そうに働く人など様々な姿を見続けてきたと話を続けます。及川氏は日本企業内にある権威主義や責任回避の文化が幸せを低下させ、不幸せを高めた調査結果を引用し、「私も冗談で『33年間滅私奉公してきました』とか『終身雇用系サラリーマンです』と言うこともあるが、会社のためにと己を殺す働き方はよくない。組織の中で自分らしく幸せに働く人を増やしたい」と言います。ではどうしたらよいのか、その解を探るために、及川氏は改めて自身と企業の関係性を見直してみると「信用と身分保障を提供してくれ、人材や仲間がいる。予算もあると考えると会社という組織はとても有益なものだった」と振り返ります。

image_event_wellbeing_day6_4.jpeg33年間の会社員時代に感じた言葉の力を語る及川氏(右)

そして「大切なのは会社のリソースを活用して、いかに自分のWILLを創るかということ。課長や部長になりたいとかではなく、この会社を活用して、いかに自分がやりたい方向に世界を作り変えていくか」が重要だと語ります。そのために言葉の力を活用してほしいと及川氏は受講生に呼びかけました。「自分の作りたい未来を言葉にしてメモしたり、書いたり、喋ったりするうちに、あなたの『やりたいこと』が見えてくる。それはあなたにしかできないことだし、それが内発的動機となってすべての原動力になる」(及川氏)とWILLを言葉にして力を得る大切さを語りました。

会社員こそ評価を求めるのではなく志を言葉にせよ、及川氏の人生を転換させた瞬間

その後、及川氏は会社員時代に言葉の力を実感したエピソードを教えてくれました。ポーラで社長まで務めた及川氏ですが、若いころはリーダー気質ではなく「天下の雑用係だった」と言います。「小中高大、どんなに見返してみても、『長』という肩書をもらったことが無い。雑用はてきぱきやるけど、リーダーにはならない。いろいろ動くけど報われない人というのが私の評価だった」(及川氏)

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そんな及川氏がリーダーになる転機は、本社から出向した会社で美容担当リーダーや販売促進担当リーダーというリーダーの肩書を与えられたことです。リーダーになってから、色んな人の期待に応えるために及川氏は懸命に働き、そしてその頑張りを見た周囲から褒められるほどに成績を残していきました。しかし、及川氏の頑張りは次第に「傲慢」へと変化していきました。「同じ仕事を10年も続けていればうまくできるのも当たり前。でも私は課長や部長のことを軽く見ながら『私がいなくなったらこの事業所はうまくいかない』と思っていた」(及川氏)

さらにそんな態度は次第に本社へと向き「私は子どもを育てながら懸命に取り組み、出向先で苦労しているのだから認めて欲しい」という強い想いとともに、本社課長職の昇格試験を受けることに。結果は不合格。試験結果のフィードバックには自己中心的、未来のビジョンがない、彼女を推薦した上司の視点を疑うという厳しい評価が記載されていました。ところが当時の及川氏は、本社は分かっていない、上司がきちんとしてないからだとすべて他責にして、業務中や会議中などは不遜な態度や発言が多くなっていったそうです。

そんな時、敬愛するポーラショップのオーナーが及川氏に「このままドブに落ちていくつもりか、これ以上私たちをがっかりさせないで」と叱責、上司からも「昇格して何がやりたいの」と問われたそうです。上司に対して何とか絞り出して言った言葉が「私を育ててくれたこの事業所が大好きだから一流にしたい」でした。及川氏は言います。「自分でも『はっ!』とした。当時の事業所のメンバーは一緒に子育てをしてくれるようなメンバーだったので、だからみんなにすごく恩を感じていた。そしてその言葉を聞いた上司はにっこり笑って『ぜひ取り組んで、明日からでも』と答えてくれた」と言います。このやりとりを及川氏は「私の人生を変えた言葉だった」と語りました。

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その言葉がきっかけとなり、昇進試験に落ち態度も良くなかった社員は、次の日から「一流」を探す旅人に変貌しました。「一流の組織とは」「一流の販売施策とは」「一流の会議とは」と様々な問いが生まれてくるようになり、その問いへの答えとして、あれをやりたい、これもやりたいという志や未来志向が生まれてくるようになりました。

「私は35歳まで役に立つ人間になりたい成果をあげたい、評価されたいという自己中心的な人間だった。でもだんだん仲間のこと、お客様のこと、社会のことを考え出すと共感の輪が広がり、仲間が増え、影響力を持てるようになってきた。この経験から私は自分にしかないもの、自分の内発的動機を言葉にすることの大切さを学んだ」(及川氏)

最後に及川氏は再び茨木のり子氏の「自分の感受性ぐらい」という詩を紹介し「自分の志を大事にしてほしい。他人のせいにせず、自責で考えていくためには、正しい問いを立てることが大切。『どうしたらもっと稼げるか』ではなく『何のために働くのか』という問いに、『どうしたら期待に応えられるか』ではなく『私は社会で何を実現するのか』という問いを立てて。そして自分で自分の人生を考え、言葉にしながら、次の扉を開けていってほしい」と締めくくりました。

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写真左:及川氏の感想を共有した後、質問事項を考える受講生ら
写真右:受講生からは次々に質問が投げかけられ質疑応答は時間いっぱいまで続けられた

各チームでは及川氏の話の感想を共有し、受講生から「及川さんの言葉一つ一つに人生の重みがつまっていて、感動が止まらなかった」という感想が聞こえました。その後はチームとして質問を考える時間が設定され、質疑応答へ。「叱られた時の感情の対処方法は」と問われた及川氏は「メモ帳に怒られたことや褒められたことを書き写す。そうすることで一旦自分からその感情を離す。そしてそのメモ帳を年に1回見返す。そうすると冷静に当時の状況を見返すことができる」とアドバイスしました。また、言葉が凶器となることもある現代のSNSについて「私もSNSに投稿しているが、投稿前に一度寝かせる。誰かを傷つけてしまわないために、自分の言葉を少し寝かせて冷静に見返すことが大切だ」と答えました。

image_event_wellbeing_day6_9.jpeg質疑応答で一流について語る及川氏(右)

また別のチームから「一流とは何か」との問いに、「私はまだ旅の途中だが、ひとつだけ思っているのは感謝やリスペクトできる人が一流ではないかと思う。一流の人は助け合うし、利己と利他のバランスが取れているように見える。他者へのリスペクトと感謝がある人が一流の入り口として大事ではないか」と語りました。これらの質問のほかにも、問いの立て方や課長になってから変えたものや変えなかったものについてなど、多岐に渡り、時間いっぱいまで続き、Day6は大盛況のうちに終了となりました。

及川氏の語りは、成功談でもノウハウでもなく、「自分は何のために働くのか」という根源的な問いを、受講生一人ひとりに差し出す時間でした。肩書きや評価に振り回されるのではなく、志を言葉にすることで人は変わり、周囲との関係も世界の見え方も変わっていく。美しく生きるとは、他者を尊重しながら、自分の内側にある問いと誠実に向き合い続けること。その第一歩は、自分自身の言葉を持つことなのだと、静かに、しかし力強く教えてくれる講座となりました。

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丸の内プラチナ大学では、ビジネスパーソンを対象としたキャリア講座を提供しています。講座を通じて創造性を高め、人とつながることで、組織での再活躍のほか、起業や地域・社会貢献など、受講生の様々な可能性を広げます。

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