イベント丸の内プラチナ大学・レポート

【レポート】「食」の魅力をとことん活かす 飛騨市が目指すまちづくりとは

【丸の内プラチナ大学】逆参勤交代コース・岐阜県飛騨市 東京講座  2026年8月28日開催

10月16~18日の3日間、岐阜県飛騨市で開催される2泊3日のフィールドワーク「トライアル参勤交代」に先駆け、8月28日、丸の内プラチナ大学2026・逆参勤交代コース飛騨市「東京講座」が東京・大手町で開催されました。東京講座では、食を中心とした飛騨市の魅力や現状課題、逆参勤交代への期待感などを市長や市職員らからお話いただき、より理解を深めるためのトークセッションや参加者の皆さんを交えたディスカッション、飛騨の食を堪能しながらの交流会などが行われました。

platinum260828_2.jpg逆参勤交代の概念などを説明する本コース講師の松田智生氏

冒頭、本コースの講師を務める松田智生氏が登壇し、「江戸時代の参勤交代とは逆に、首都圏や大都市圏の人材が地域に赴くという考え方で2017年から提唱してきた」と逆参勤交代の概念を説明。東京一極集中の現状を説明しつつ、「都市と地方が人材を争奪するのではなく、共有・循環させることで、個人×地域×企業×学校の『四方良し』を実現できる」と述べました。

続きを読む
「寒暖差と水のおいしさから生まれる高品質な食材を徹底的に活かす」 飛騨市長 都竹淳也氏

「寒暖差と水のおいしさから生まれる高品質な食材を徹底的に活かす」 飛騨市長 都竹淳也氏

platinum260828_3.jpg「食」を中心とした飛騨市の魅力を熱く語る飛騨市長の都竹淳也氏

松田氏のあいさつに続いて飛騨市長である都竹淳也氏が登壇され、飛騨市についてお話いただきました。都竹氏は冒頭、飛騨市が岐阜県の最北端に位置し富山県との県境にあることや、面積が792平方キロメートルで東京23区より一回り小さく、人口は約2万1000人、森林率は93.5%で全国815市の中で最も高い、といった地理的特徴を紹介。「現代における日本の地方自治体の課題は人口減少への対応だが、人口減少は止めることができない現象であり、正面から受け止め、適応すべきもの。その中で飛騨市は『人口減少先進地』である」としました。

また、地域資源の徹底した発掘と活用が重要であるとし、飛騨市では、その積極戦略の一例として、「食のまちづくり」に取り組んでいることを詳しく説明しました。

都竹氏は「10年前に市長就任とほぼ同時期に、鮎釣り名人として知られる室田正氏が、良質な鮎を育む宮川にほれ込み飛騨市宮川町に移住された。室田氏から、広葉樹の豊かな森が生み出す水が鮎をおいしくすることを教わり、そこから食のまちづくりの発想が広がった」と話しました。同じく飛騨市内を流れる、日本有数の急流河川でもある高原川の鮎は、昨年高知で開催の全国利き鮎会においてグランプリを受賞しています。

最近ではお米のおいしさでも群を抜くことを紹介。米の総合的なおいしさを競う「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」で、全国から約5000点が出品される中で飛騨地域のお米は国際総合部門で金賞を多数受賞しており、「最も多かった大会では20本の金賞のうち8本が飛騨の米ということもあった。お米の味が分かる人の間では今や『米といえば飛騨市』と言われている」とアピールしました。

platinum260828_4.jpg都竹氏が話す飛騨市の魅力に参加者らも引き込まれていた

飛騨市の食材がなぜ高品質なのかについても言及がありました。

都竹氏は「最大の要因は『寒暖差と水』」としました。広葉樹の豊かな森から生み出される豊かな水と、例えば夏場の場合、昼間に34~35度あっても、朝の最低気温が20度程度になるなど盆地特有の大きな寒暖差が、鮎をはじめ、お米や日本酒、飛騨牛、トマト、ホウレンソウなど多くの食材の品質を高めていると話がありました。

また、コロナウイルス禍に密集が禁止される中、従来開催してきた農業まつりを中止せずに「分散」という発想に転換し、「飛騨市まるごと食堂」というイベントを開始。結果的に食のまちづくりを大きく印象づける成果を挙げたとしました。これは、市内の農家と飲食店が直接コラボし、飛騨市内の農園の食材を使った料理を市内40店舗以上で展開する取り組みと説明しました。

このほか、プロ野球・中日ドラゴンズとのコラボスポンサーゲームを2023年に開催した際、和食麺処サガミを展開するサガミホールディングスの社員らが観戦に来ており、飛騨市の食の取り組みに感銘を受け、すぐに都竹氏へ連絡があったといいます。

その後、2024年から飛騨市の食材を使ったフェア「飛騨市まるごと食堂 with 和食麺処サガミ」を展開。この取り組みをきっかけに、2025年からはサガミの社員が飛騨市宮川町へ赴き、伝承作物「万波そば」の草刈り作業から収穫までを手伝うなど、交流がさらに深まりました。

2026年には、飛騨市以外では初めてとなる万波そばの提供がスタート。フェア全体では飛騨市の食材を使用したメニューが、初年度(2024年)は4,462食、翌2025年は9,579食、そして今年2026年には10,253食と、年々認知度が高まっていることも説明しました。

同じくコロナ禍に、都竹氏と偶然のきっかけでつながった元公邸料理人で出張料理人としても活躍する工藤英良氏を、2021年に岐阜県内では初となる飛騨市「食の大使」に任命。市主催のイベントなどに参加してもらい、食の情報発信力強化につながったことも紹介しました。

都竹氏は、「今までお話したことはすべて偶然からスタートした。地域資源を生かしたまちづくりに関し、市としては大きな方向性だけ決めておき、瞬発力で政策をやっていく。つまり、転んだときにつかんだわらを交換していくと最後にわらしべ長者になるという『わらしべ長者モデル』といえる。これが飛騨市の食のまちづくりになる」とした上で、「ぜひ皆さんにも逆参勤交代で飛騨市に来て、市の政策立案スタイルに関心をお持ちいただき、豊富な食を大いに楽しんでいただきたい。それぞれの立場で何か関わって、こんなことができるのではないかと盛り上がって形になれば、それこそわらしべ長者モデルにつながるのでは」としました。

platinum260828_5.jpg市職員から現地フィールドワークの具体的な概要説明があった

続いて、飛騨市ふるさと応援課、食のまちづくり推進課の職員から、10月16日(金)~18日(日)に開催される逆参勤交代の現地フィールドワークの行程の説明がありました。行程は以下の通りです。

10月16日(金) 1日目
13:30 集合・オリエンテーション
14:00 市長挨拶・参加者との意見交換
14:30 市長によるまち歩き
18:00 市長・職員も交えた交流会

10月17日(土) 2日目
9:30 地域課題や取り組みについて市職員より紹介
10:00 万波そばの圃場視察【宮川町】
11:00 万波そば試食
12:00 あばれ鮎試食(鮎釣り名人室田氏と交流)
13:30 池田農園視察【古川町】
14:30 政木農園視察【河合町】
15:30 みつわ農園視察【古川町】
18:00 飛騨市食の大使 工藤英良氏による特別レストラン

10月18日(日) 3日目
9:00 市長へのプレゼン準備
10:30 市長へのプレゼン・意見交換
12:30 昼食・お弁当
14:00 飛騨古川駅 解散
(内容変更の可能性あり)

都竹市長が提唱する「関係人口3段階説」とは

platinum260828_6.jpg都竹氏が考える関係人口についてなどトークは盛り上がった

続いて、都竹氏、講師の松田氏、エコッツェリア協会コミュニティ研究所長の田口真司氏の3者によるパネルディスカッションが行われました。

冒頭、飛騨市における関係人口の取り組みについての話があり、都竹氏は関係人口を「関心人口」「交流人口」「行動人口」という「関係人口3段階説」という独自の概念を提唱。市が運営する、入会費・年会費無料の地域応援・交流コミュニティ「飛騨市ファンクラブ」会員約1万9000人のうち、約1割がイベントなどに参加する「交流人口」、さらにその1%相当が実際に現地で活動する「行動人口」であるとしました。

行動人口として活躍している人はどういった分野や世代の人かという問いに対して都竹氏は「農業系のものが最も多いが、ほかにも街のイベント支援や集落の蕎麦づくりの手伝い、湿原のヨシ刈り、ユネスコ無形文化遺産の屋台曳きなど多様なプログラムがあり、参加いただいている」としました。年齢層は主に30代~50代で、「移住者同士のつながりにも効果がある」としました。

platinum260828_7.jpg熱量の高い参加者との新たな化学反応に期待を寄せる田口真司氏

松田氏から、大丸有エリアの就労人口35万人の1%が動けば日本が変わるという考えについて問われると田口氏は「熱量の高い人同士が引き合うことが重要で、3×3Lab Futureや丸の内プラチナ大学のコミュニティで熱量の高い人を集め続けることを目指している」としたうえで「今回現地フィールドワークに参加される方々は相当熱量が高く、新たな化学反応が生まれることを期待している」と述べました。

松田氏からは、大企業がなかなか逆参勤交代に踏み出せない壁をどうしたら崩せるか問われた田口氏は「10年前と比べると変わってきている。丸の内プラチナ大学の取り組みを通じて『やってみてつながること』や『山を一合上がると見える景色が変わる』ということを言い続けており、特に、若い人に(地方に)来てもらうことが改めて重要」と指摘しました。

platinum260828_8.jpg楽しいことを追求することが新たな価値を生み出すと話す都竹氏

また、今年4月に飛騨市内で開学した「コー・イノベーション大学」とはどのようなものかという問いがあり、都竹氏は「民設民営の大学で、地域づくり人材の育成を目的としている」と説明。大きなキャンパスは持たず、街中の空き店舗などを改修してキャンパスとし、1年次は飛騨で学び、2年次以降は全国15カ所の拠点で地域留学し、4年次には自由な活動を立ち上げるという独自モデルを持つと付け加えました。初年度は50人が入学し「学生自身が入学式をプロデュースするなど主体性の高い学生が集まっている」と述べました。

参加者に対して都竹氏は「『何か面白いことをやりましょう』という姿勢が大切であり、そこから必ずアイデアが生まれる」としたうえで「計画を立てすぎると計画以上にならないが、計画を立てなければ計画以上のことが生まれる」と強調。「楽しいことを追求することが新たなプロジェクトや価値を生み出す」とメッセージを送り、パネルディスカッションを締めくくりました。

platinum260828_9.jpg各テーブルでは参加者が自己紹介や飛騨市でやってみたいことなどを話し合った

その後、各テーブルで参加者同士が自己紹介や飛騨市でしてみたいこと、などを自由にディスカッションする時間も。活発な話し合いが行われた後、各テーブルの代表者が感想を述べ合いました。「コスプレイヤーを観光客として地方に誘致する取り組みを進めている。10月の訪問は難しいが、来年以降、飛騨市に貢献したい」といったコメントがあったほか、愛知県に単身赴任中の男性は「かつて、家族で飛騨高山旅行を計画したが妻が(観光ガイド誌の)『るるぶ』を見て『魅力的な場所がない』と判断し実現しなかった」と打ち明け、「感度の高い層には伝わる魅力が一般的な観光客には伝わりにくいのでは」としました。今回の東京講座に参加し、色々と知ることができたことで、「ぜひリベンジし、家族で飛騨高山を訪問したい」といった声が聞かれました。

会の最後に総括として松田氏は「飛騨市を舞台に、自らを主語として、この街でこんなことが起きたら面白いとか、飛騨市の方々と交流してこんなことができたら面白いといったワクワク感を膨らますことが大切」と締めくくりました。

platinum260828_10.jpg交流会では飛騨の食材をふんだんに使った料理が振る舞われた

交流会は会場を変えて行われ、料理研究家で3×3Lab Futureキッチンコーディネーターを務める鬼丸美穂氏から、今回のイベントのために準備した「寒干大根とはところしと飛騨地鶏の煮物」をはじめ、「生きくらげと春菊ときゅうりの春雨サラダ」、「パレルモと甘とうがらしとなすの焼きびたし」など、地元から取り寄せた食材を使った料理の数々のほか、地酒の「蓬莱」「白真弓」などが振る舞われ、東京にいながら飛騨の味に舌鼓を打ちました。

platinum260828_11.jpg飛騨の食材や地酒を楽しみながら参加者同士の深い交流が図られた

「地域の方々に会えることに期待」 参加者から様々な声

参加者からは、「面白いことをやろうとする姿勢の起点が『人』である点が非常に興味深いと感じた」とし「高山には行ったことがあるが飛騨には行ったことがなく、今回を機にぜひ訪れたい」との声が聞かれました。この方は、現地フィールドワーク参加も計画しており、「過去の丸の内プラチナ大学の現地プログラムにも参加したが、地域の方々に会えることを最も期待している。地域で活動する方々から刺激を受けることが自分にとっても大きな意味がある」と話しました。

また、別の参加者は「川の水と地域環境が食の豊かさを支えているという循環の仕組みに感銘を受け、それを地域振興に生かしている点も素晴らしいと思った。10月の現地フィールドワークには仕事で参加が叶わないが、内容には非常に魅力があり、仕事でなければ行きたかった」としました。

もう一人の女性は「飛騨市のことはある程度知っていたが、すでにファンクラブなどさまざまな取り組みがあるにも関わらず、さらに貪欲にプロモーション活動を行おうとする姿勢に感銘を受けた。もうこれでいい、ではなく、使えるもの(資源)は徹底的に使う、という姿勢が飛騨らしさではないか。実際に現地で食の体験もしてみたい」と話しました。

東京にいながら、飛騨市の魅力や、関わりしろを発見できる充実の時間はあっという間に過ぎ、参加者らも満足した様子で会場を後にしました。10月に実施する現地フィールドワークに向け、最高のキックオフとなり、今回は現地参加が叶わない人にとっても、飛騨市は一度訪れたい場所になったようです。現地フィールドワークでは、現地の皆さまと参加者らがどのような「化学反応」を起こすことができるか。今から開催が楽しみです。

(取材・執筆:那須慎一)

丸の内プラチナ大学

あなたの「今後ありたい姿」「今すべきこと」とは?

丸の内プラチナ大学では、ビジネスパーソンを対象としたキャリア講座を提供しています。講座を通じて創造性を高め、人とつながることで、組織での再活躍のほか、起業や地域・社会貢献など、受講生の様々な可能性を広げます。

おすすめ情報

イベント

注目のワード

人気記事MORE

  1. 1日本橋川を、探検しよう!〜 Sixフロートに乗って、都心の水辺へ〜
  2. 2【丸の内プラチナ大学】2026年度開講のご案内~第11期生募集中!~
  3. 3【大丸有シゼンノコパン】夏と秋の間の森を「眺る」 ― 五感で楽しむ、植物の豊かな香りや味わい ―【緑地を探ろう!】
  4. 4CSV経営サロン2026 第2回 海の課題を価値に変える ~海洋プラスチック問題とアップサイクルビジネスの可能性~
  5. 5【ランチタイム】丸の内の「小さな生きものたち」一斉調査!! 花の受粉を助けるまちの虫さがし ~秋編~
  6. 6【丸の内プラチナ大学】丸の内プラチナファーム「野菜からはじまる、太田ものがたり "美味しさを支える農家の挑戦と畑の今"」
  7. 7大丸有でつながる・ネイチャープログラム大丸有シゼンノコパン 秋
  8. 8【丸の内de地方創生】岡山県津山市と、次の仕事をつくる。ー「地域産業 × 首都圏企業」の共創可能性を考えるー
  9. 9【丸の内プラチナ大学】逆参勤交代コース 岐阜県飛騨市フィールドワーク
  10. 10【レポート】自分らしさと未来を切り拓く大きな一歩 DAY1