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【レポート】「本州最後の楽園・浜松」、首長自ら語るその魅力と課題

逆参勤交代コース 浜松ナイト 2022年8月22日(月)開催

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静岡県浜松市は、豊かな自然に囲まれながらも、ヤマハ、スズキ、ホンダといった日本を代表するものづくり企業も有する政令指定都市です。産業、自然、観光など多くの魅力を持つ一方で、「国土縮図型都市」として日本中の都市が抱える課題も抱えています。では、具体的にどのようなポテンシャルを持ち、どんなところに課題があるのでしょうか。2022年9月に開催する「浜松版逆参勤交代」に向けて、浜松市の魅力と課題を深く知る「逆参勤交代コース 浜松ナイト」が、8月22日に3×3Lab Futureとオンラインによるハイブリッドで開催されました。

当日は3×3Lab Futureに浜松市の鈴木康友市長をお招きし、市長自らプレゼンを行っていただきました。その模様と、参加者とのディスカッションの様子をご紹介します。

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浜松は「国土縮図型都市

浜松は「国土縮図型都市

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2005年に12の市町村が合併し、市としては全国第2位の面積を有し、人口80万人都市となった浜松市。地理的には東京、大阪、名古屋などの大都市圏からのアクセスも良い地域ですが、鈴木市長は浜松市を「自力で発展した都市」と表現します。

「日本には20の政令指定都市がありますが、県庁所在地ではなく、大都市近郊でもなく、産業の力で発展したのは浜松市と北九州市だけです。北九州市の場合は官営工場が置かれ、政府肝いりの下で発展していきましたが、浜松市の場合はホンダ、スズキ、ヤマハといった地場の町工場が世界的企業になることで地域も成長していきました。自律的な発展を遂げて政令指定都市になった唯一の都市と言えますし、『元祖スタートアップの街』でもあるのです」(鈴木市長)

浜松市は、四方を海、山、湖、川に囲まれているだけに自然を活かした観光資源や、170品目を超える多種多様な農産物が盛んに生産されるなど食に関する魅力も持ち合わせています。このように日本全体が持つ魅力を凝縮した都市であることから、「国土縮図型」の政令指定都市とも呼ばれています。ただし、国土縮図型ということは、少子高齢化、限界集落の増加、過疎化の進行など、日本が抱える課題を網羅している地域とも言えます。このような課題を解決し、魅力を引き伸ばしていくために取り組んでいるのが「サステナブルな自治体経営」です。

「恐れ多い話ですが、私が市長に就任する際に目指したのは、江戸時代の名君として知られる上杉鷹山公です。彼のように財政健全化と産業政策に力を注ぎ、浜松を元気にしたいと考えました。具体的な施策として取り組んだのは、行財政改革推進議会の設置です。スズキの相談役を務められている鈴木修さんや、ヤマハの社長を務められた伊藤修二さんなどにご協力いただき、どのように行政を改革していけばいいのかを議論していきました」(同)

審議会での議論を通じて、職員定数や人件費の削減、資産経営の推進、外郭団体の見直しなどを実施していった結果、将来負担比率を政令指定都市平均よりも下げることに成功。現在では政令指定都市の中でもトップクラスの健全な財務状況を維持しています。こうした経営改革は民間からの評価も獲得。ムーディーズ・ジャパンによる格付けでは、優れた財政規律に支えられた高い財政パフォーマンスや、堅実な財政運営の実績に示される強固な行財政運営、国内比較で最も低い債務負担比率などが評価され、最も高いランクを獲得しています。

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「浜松は国土縮図型都市」と前述しましたが、それだけに鈴木市長は「浜松の経営がうまくいけば日本のモデルになれるという思いを持っている」と話します。同市の取り組みには、勢いを失いがちな現在の日本が参考にできる点が多くあると言えるでしょう。

さらなる発展のための3つの取り組み

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財務状況健全化に成功した浜松市では、現在、さらなる発展のためにさまざまな角度からの取り組みを実施しています。この日、鈴木市長がピックアップしたのが、産業政策、農業政策、魅力発信の3点です。産業政策のポイントは、スタートアップの誘致や育成です。冒頭で鈴木市長が「浜松は元祖スタートアップの街」と話したように、同市ではこれまで多くのスタートアップ企業が誕生してきました。しかし、リーマンショック後に新規開業数は激減し、全国平均を下回ることになります。

「本田宗一郎さんが典型ですが、浜松はやらまいか(遠州地方の方言で「やろうじゃないか」の意)の精神に溢れた街だったはずなのですが、いつのまにか"やめまいか"の街になってしまっていたんです。そこで再び事業を興しやすい街にすべく、スタートアップ支援の取り組みを始めました」(鈴木市長)

例えば浜松市にスタートアップを誘致し、成長支援するために、ファンドサポート事業や実証実験サポート事業を展開。特にファンドサポート事業については、市が認定したベンチャーキャピタル(VC)と連携して、浜松市内で事業を行うスタートアップに対して最大4000万円の資金を交付する取り組みです。2022年までに、24社に対して9億円以上を交付しています。「VCはリスクを軽減でき、スタートアップは資金を獲得しやすくなり、市としても有望な企業を呼びやすくなり、三方良し」と鈴木市長は言います。その他にも、企業間のネットワーク構築支援や、首都圏からのオフィス移転の受け皿をつくるためにサテライトオフィスの整備、次世代人材の育成、海外連携などを実施。このような積極的な支援が認められ、2020年には、企業や公的機関、大学などの研究機関によるネットワークを構築し、スタートアップを生み出して発展していく「スタートアップ・エコシステム グローバル拠点都市」に、愛知・名古屋地域とともに認定されました。

続いて鈴木市長が紹介したのが、農林水産業政策についてです。全国有数の日照量に加え、流通の好立地であること、そして中山間地、台地、平野部、沿岸部など多様な地形と土質などから、浜松市では豊富な種類の農産物が生産されています。そこで、食分野や農業従事者の支援も実施しています。例えば経済界や農業界の第一線で活躍する人々を招いて「農業経営塾」を開催。「儲かる農業」を実現するリーダーの育成を試みています。また食以外では、林業への取り組みも積極的に行っており、特に他地域に先駆けて取り組んだのが「FSC森林認証」による木材のブランド化です。ドイツに本部を置く森林管理協議会(Forest Stewardship Council)が「森林が適切に管理されているか」を審査・認証する仕組みで、違法伐採や価値の高い森林の伐採を防ぐ効果があるものです。

「我々が取り組み始めた10年ほど前の時点では、FSC森林認証の注目度は低いものでしたが、この先、森林破壊や環境問題の対策の重要性が高まるだろうと考えてスタートさせました。その考え通り、現在ではSDGsの時代となり、FSC森林認証がされた木材を使う意義が高まっていますし、浜松は市町村別認証取得面積が全国1位となり、日本屈指のFSC認証材供給能力を有する地域となりました」(同)

現在では地元の施設はもちろん、全国で浜松産の木材が使われるようになっています。中でも代表的な施設が新国立競技場や有明体操競技場などの東京オリンピック関連施設で、特に有明体操競技場では、施設建設に使われた木材の6割が浜松産でした。

3つ目に挙げたのが魅力発信に関する取り組みです。浜松のシンボルのひとつであり、後に天下人となった徳川家康公が築城した浜松城は、家康公以降の城主も次々と幕府の中で出世したことから「出世城」とも呼ばれるお城です。この異名は、多くの世界的企業を生み出し、現在進行系でスタートアップの支援を行う浜松にマッチすると考えた鈴木市長は、浜松を「出世の聖地」として売り出すことを考案。ゆるキャラの「出世大名家康くん」を生み出したり、市内のパワースポットの紹介などを実施し、注目を集めています。

もうひとつの観光資源として集中的にPRしているのが水辺です。特に浜名湖や遠州灘にある広大な砂浜を活かして、浜松をビーチ・マリンスポーツの聖地にしようという取り組みを強化しています。2018年3月にはビーチ・マリンスポーツ推進協議会を発足させ、官民連携の動きも強めていますし、例えばビーチバレーでは日本最大級のコートの建設を計画中で、国際大会の招致も検討しているそうです。

「ビーチ・マリンスポーツは、浜松にもともとある資源を活かした取り組みですので、大きな初期費用もかかりません。こうした地域の特性を活かしたコストパフォーマンスの良い取り組みは効果的だと考えています」(同)

水辺を始め、自然と都市の距離が近い点も他地域にはなかなかない利点であり、これに惹かれて移住してきた人も少なくないそうです。

「北海道から浜松に移住してきた方から、『このように都市機能と自然が隣接している街は他にないと感じたので、浜松に来ました』と言われたことがあります。北海道は自然が非常に豊かなところですが、確かに自然豊かな地域には街がないんです。でも、浜松なら市街地から30分もあれば自然豊かな場所に行けますし、すぐにアクティビティが楽しめます。他の移住者の方からも、浜松を『本州最後の楽園』と表現いただいたことがあり、今ではこの言葉をキャッチコピーにしています」(同)

このように浜松の魅力や取り組みを紹介した鈴木市長。最後に、逆参勤交代に対する期待を次のように話し、講演を締めくくりました。

「第一の期待は交流人口を増やすことです。もちろん移住者の増加も歓迎していますが、どんどん人口減少している日本の中で、100人の移住者を他地域と取り合うようなことは不毛だと思っています。それよりも浜松に来ていただくことで地域を知ってもらい、交流人口となり、2拠点居住や多拠点居住のきっかけとなればと思っています」(同)

首長自ら動くことで、職員たちも付いてくる

image_event_220822.005.jpeg鈴木康友浜松市長(左)と、逆参勤交代構想の提唱者である松田智生氏(右)

鈴木市長のプレゼンテーションを終えると、逆参勤交代構想の提唱者である松田智生氏(三菱総合研究所プラチナ社会センター 主席研究員・丸の内プラチナ大学副学長)とのトークセッションへと移ります。松田氏はまず鈴木市長に対して「規制緩和」についてどう考えているのかを問いました。

「以前、中山間地域における医療活動の円滑化を図るためにオンライン診療の実証実験を行ったことがあります。浜松では、このようにテクノロジーを活用したり、工夫をしたりすることで地域課題を解決していきたいと考えています。例えばドローンを使って過疎地に薬を届けられると医療アクセスが向上しますが、技術的には可能なものの、規制によって実装はできません。また、高齢者の買い物支援のために、地域の主婦の方々が自分たちの買い物をしたついでに外出困難な高齢者の買い物をするという動きが出たことがあるのですが、運送業者として登録しないと貨物自動車運送事業法に違反するということで止まってしまったこともあります。このように、課題を解決する技術や手段はありながらも、全国的な規制によって阻害されている現実があることから、今後の日本の成長には規制緩和が非常に重要です」(鈴木市長)

こうした規制緩和に相対していくのが市長の仕事でもあると鈴木市長は説明しました。この話を受けて、松田氏は「逆参勤交代人材の副業・兼業による解決」と「第二住民票の交付」を提唱しました。

「浜松もそうだと思いますが、地域が抱える課題のひとつに担い手不足があります。そこで逆参勤交代で首都圏から来た人材を副業・兼業という形で採用し、販路開拓やDXを担ってもらうなどの方法もあると思います。また、協力してくれる人材に対しては『第二住民票』のようなものを交付すると、さらなるシビックプライドの醸成も期待できます」(松田氏)

また松田氏は、将来的な丸の内プラチナ大学浜松分校の実施も提案しました。

「浜松分校では、30代や40代、50代以上の社会人が浜松の地で学び、社会参加できる場を提供します。これを第二義務教育とすることでほどよい強制力を課せば、人が動くことにもつながります。江戸時代の参勤交代も強制的に人々を動かしていました。そこには当然苦労もありましたが、結果的に街や街道が整備されるなどのメリットも生じています。浜松分校にはそうした効果も期待できるでしょう」(同)

松田氏の提案を受けた鈴木市長は、「浜松はもちろん、周辺地域も含めて取り組めるものだと感じた」と述べます。

「例えばスタートアップに関する取り組みは、浜松を含めた遠州地方の8市1町で取り組んでいますが、そのような広域連携で取り組むのもいいと思いました。さらに、東三河や南信州、あるいは豊橋、飯田なども加えていくと、さらに多くの人や地域に影響を与えられるでしょうし、面白い取り組みを生み出せそうです」(鈴木市長)

鈴木市長と松田氏のトークセッションを終えると、参加者同士のディスカッションを経て、質疑応答へと移ります。ある参加者からは、「どのようにリーダーシップを取ってプロジェクトを進めているのか」という質問があり、鈴木市長は次のように回答しました。

「特別なことをするというよりも、私が発信することに対して同じノリでできる人が出てきて、自然と彼らとチームを組んで動いているような形です。お世辞抜きで浜松市の職員は優秀だと思っています。それを感じたのは市長になったばかりの頃でした。選挙で掲げたマニフェストを一期目の4年間で達成するため、各部署の部長を集めて4年間で達成するための戦略計画を作ってもらったのですが、全員がスピーディーに立案してくれたので粛々と実行していくことができたのです。おかげで、地方自治体の優れた取り組みを表彰する『マニフェスト大賞』では、第3回のマニフェスト大賞 首長部門の最優秀賞も受賞できました。優秀な職員とともに動けている点が大きいと感じています」(同)

「付け加えるとすると、言いっぱなしにするのではなく、自分も一緒にやっていくことが大事だと思います。私はよく『市長の仕事は営業と喧嘩だ』と説明するのですが、規制緩和に関する時は私が先頭に立って喧嘩をします(笑)。また、オリンピック施設に浜松の木材がたくさん使われているという話をしましたが、新国立競技場の設計担当が隈研吾さんに決まった時には、真っ先にアポを取って浜松の木材を売り込みに行きました。このように、首長が自ら動くことで、職員が付いてきてくれるのだと思っています」(同)

浜松が先進的な取り組みを多数実現できる秘訣を紹介したところで、この日のイベントは終了の時間を迎えました。最後に鈴木市長は、参加者に対して次のようなメッセージを贈り、講演を締めくくりました。

「浜松のイメージは『うなぎ』と『餃子』だけという人も少なくないと思います(笑)。確かに強烈な見所がある場所があるわけではりませんが、今回紹介したように実はいろいろな資源があるのです。それに、我々では気づかなかったけれど、外から来た人だからこそ気づく魅力もあるはずですので、意外な視点からの発見を期待しています。ぜひ、現地に来て、地域の人々と話をしていただき、新たに議論をしていただきたいと思います」(同)

市長自らのプレゼンテーションによって、本州最後の楽園・浜松の魅力を伝えたこの一夜。参加者たちにはどのように映ったのでしょうか。それを知るためにも、後日に開催された「丸の内プラチナ大学 逆参勤交代コース 浜松市フィールドワーク」の模様を改めてレポートします。乞うご期待ください。

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