イベント特別イベント・レポート

【レポート】野球ファン以外もワクワクさせるFビレッジ 「目安箱」から始まる巻き込み力

北海道ボールパークFビレッジ de ワーケーション(2023年5月23日(火)~6月1日(木)開催)

2023年3月に北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDOHOKKAIDO(以下、エスコンフィールド)」を含む「HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE(以下、Fビレッジ)」が開業しました。エスコンフィールド内のワーケーション施設等において、5月下旬の試合前に、首都圏ワーカーや道内の地域プレーヤーにご参加いただきワーケーションイベントを開催しました。プログラムの中心となる講演会には、Fビレッジの運営を行う小林兼さん、対話とまちづくりを中心に活動する林匡宏さんをゲストにお迎えし、参加者とのディスカッションを実施しました。
現在の日本のスポーツシーンを牽引する最新の施設ということもあり、約8時間のプログラムの中では実際にFビレッジ内を見学し、イベントの終わりには参加者で野球観戦も行いました。参加した方たちからは「ファイターズの覚悟、想い、巻き込む力がすごい。個人としてワクワクした」「勇気が湧いてきた。野球ファンではなくても来たいなと思わせるパワーがあったように思う」など、前向きな意見が数多く寄せられました。

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固定観念にとらわれない新しい空間づくりと、Fビレッジに込められた想い

固定観念にとらわれない新しい空間づくりと、Fビレッジに込められた想い

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小林氏:このプロジェクトを始めた時、「こんなのできないよ」「やる意味がない」と言われることが多々ありました。振り返ると僕自身、子どもの時からそう言われて育ってきたなと感じたんです。同時に、今の子どもたちがその言葉を鵜呑みにして挑戦することをやめてしまったり、可能性を諦めてしまったりするのは嫌だなと思って。「大人が本気を出したら、こういうことができるんだよ」というのを、子どもたちに示したいという思いでプロジェクトを進めています。僕たちのリーダーの言葉を借りれば、大人の熱い思いが集まってできた施設だと言えると思います。

特に意識しているのは、"異業種、地域、行政が一体となって価値のある空間をつくる"ことです。野球だけのための施設ではなく、野球に興味がある・ないに関わらず、多くの方が集うエリアをつくることを目指しています。たとえば、ペットやアウトドア、温泉サウナ愛好家の方々など、野球ファン以外の方たちへのタッチポイントとして、各々に特化した施設やお店を誘致しています。実際、開業から2ヶ月ほどとなりますが、Fビレッジ来場者のうち約4割が野球目的以外での来場となっており、我々が想像していた以上に観光目的でご来場いただいています。

また、未来を担う子どもたちに様々な機会を提供できればと考えています。たとえば、館内にあるミュージアム。こちらでは、"命"をテーマとした展示を行っています。普通、球団がミュージアムを運営すると聞くと、その球団もしくは野球のミュージアムを想像すると思いますが、修学旅行生や地域の子どもたちに野球のない日にも楽しんでいただきたいと思い、野球とは全く別のテーマを設定しています。アートの多様性も感じてもらえたら嬉しいですね。

重要なのは「想い」。職業や立場にとらわれないチームビルディング

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林氏:僕は普段、自分のことを"絵師"と名乗っています。具体的には、司会進行や対話をしながら、みなさんの意見をその場で描き出す......みたいなことを様々な場所でやらせていただいています。また、ただ描いて終わりではなく、考えたビジョンを実現するためにはどうしたらよいかをみんなで話し合いながらまちづくりや事業開発も行っています。

普段、さまざまなプロジェクトに関わらせていただいていますが、プロジェクトにおいて特に重要なのはチームづくりだと思います。北海道江別市の観光協会を刷新するタイミングで全体のプロデュースをさせていただいた時は、立場ではなく、「同じ思いを持つ人たち」でメンバーを構成させてもらいました。ちょうどその時、江別に面白いことをやっている30〜40代の人が集まってきていて。「新しいことをやる雰囲気」から作りたいと思い、その人たちに役員になってもらいました。メンバーは、本当に様々な職業の人たちです。異業種だからこそ思いつく発想があると思っているので、まちづくりにおいてどんな職業に就いているかは関係ない。たとえば「クラフトビール屋」と「トマト農家」の2者がいたら、自然と「レッドアイ作ろうか」という流れになりますよね。面白いねとなったら、実際に作って売ってみたり、やりたいことでイベントをやってみたりと、フットワーク軽く様々なことに挑戦しています。

ファイターズさんにもさまざまな人材がいると思いますが、僕が会わせていただく人はみんな変です(笑)。野球に興味がないんですよ、みたいな人がすごく多い。でもそれって、既成概念にとらわれることなく新しいことにトライする時には必要なことなんですよね。いろいろなところから人材が集まってチームをつくるって、とても大切だと思います。

また、現在高校生たちと一緒にプレスメイキングを行うプログラムも実施しています。授業の中に入らせてもらって、約40人の学生とまちづくりを進めており、今は札幌・大通公園の活用を模索しています。空間づくりやまちづくり自体も大切ですが、そのプロセスも重要な学びの一部だと感じていますので、若い子たちの経験となればと思っています。また、大人だけでなく若者とチームをつくることも重要だと思います。若い子たちの「やってみたい」というエネルギーは非常に大きいので、その力を借りながらより良いまちづくりを行っていきたいと考えています。

高速PDCAで加速度的なまちづくり

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講演会の後半では、小林氏、林氏によるトークセッションが行われました。

小林氏:ここを訪れる皆さんには、この空間を一緒につくってほしいと発信しています。その方法のひとつとして、「Fビレッジおじさん」というツイッターのアカウントを開設しました。このアカウントには、目安箱の役目を果たしてもらっています。ベンチが少ないから増やしてほしい、ここの段差が危ないから印をつけた方がいいなど、皆さまからの声をハッシュタグ「#聞いてよFビレッジおじさん」を介して集めています。集まった意見の中から、「やれることは全部解決」をスローガンに、多くの改良を行ってきました。そして、その様子をSNSを通して発信しています。自分たちはこれを高速PDCAと呼んでいるのですが、これが成り立っているのは、お客様がこの空間のことを自分ごと化して、もっと良くしたいと思ってくださっているからだと感じています。

林氏:PDCAサイクルのプロセスを見せているのは、本当にすごいですよね。中にはクレームに近いものもあると思いますが、その辺りはどのように運営されていますか?

小林氏:とにかく一つひとつ解決して、できないものはできないとお答えする、シンプルな方法で運営しています。中にはクレームもありますが、そもそもこのエリア全体の完成度自体がまだ40%くらいだと思っているので、不備はあるものだと思っています。そういう意見がきた時は、割り切って取り組んでいます。

ハレとケが交差し、混ざり合う。必要なのは、どんな日常が求められているかを知ること

小林氏:久しぶりに林さんにお会いするということで、聞きたかったことがありまして。Fビレッジのこれからのフェーズとして、住む人と観光でいらっしゃる人が同居できる、行楽地とまちを掛け合わせた新しいまちへ展開したいと考えているのですが、林さんから見て、自分たちに足りないものってなんだと思いますか?

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林氏:日常と非日常ってテーマとしてすごく難しいんですよね。僕も明確な答えが出ていないんですけど、「その地域にどんな日常が求められているのか」をしっかりリサーチすることが必要だと思います。

僕が実際に携わっている事例をひとつご紹介します。先ほどご紹介した高校生との企画では、大通公園を観光地としてだけでなく、市民にも必要とされる公園にするためには何ができるかを考えています。大通公園って、"公園"という名前はついていますが、年中いろいろなイベントが開催されていて、観光目的のお客さんがたくさん集まってくる。ただ、イベントが行われていない時に、市民の人たちにとってこの公園がどういう役割を果たしているかについては議論の余地があるんですよね。そこで、まちにどんな場所が欲しいか、高校生たちに聞いてみたんです。すると、「自習スペースが欲しい」という声が多くて。家だと集中できないからどこかフリースペースで勉強したいけど、まち中にそういう場所が全然ない。だったら、大通公園につくってみようということで、実証実験的にイベントとしてワークプレイスを設置してみました。イベントって、それ自体を見たら一時的なものですが、その先に常設の居場所をつくる未来をみるための実験の場でもあるんですよね。「このまちで暮らしたらこんな日常があるよ」みたいなワクワクを考えていくことがすごく大事かなと思います。

多世代が集まるみんなの居場所をつくるために

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小林氏:この空間をつくるにあたって強く意識したのが、多世代の方たちが集う場所になることです。特に、地域の未来を担う子どもたちが、日常的に来て遊べるような場所でありたいと思っています。そのために、野球の試合がある日もない日も小学生以下の子どもは無料で入れるようにしています。また、お父さん、お母さんだけが仕事の都合で来るのではなくて、家族で来て、親が仕事の間子どもたちは球場で遊んで、仕事が終わったら家族みんなで遊んだりごはんを食べたりするみたいな過ごし方をしてもらえたらいいなと思います。シニアの方たちにも気軽に立ち寄ってもらいたいですね。

林氏:めっちゃ大事ですよね。世代ごとに見ているものやニーズが違うので、多世代の人がどんな過ごし方をしているかがイメージしやすいと、立ち寄りやすくなると思います。たとえば、お父さんが野球観戦をしている間はお母さんがサウナに入っていて、子どもはこっちで遊んで......なんてそんなにバラバラにはならないかもしれませんが(笑)、どういうシーンがあるといいかを考えていくことは大事で、楽しめるポイントを作ってあげるというのは我々の領域でも大事だなと思います。

小林氏:首都圏もしくは他の地域から訪れて、このエリアで楽しんでいただいて、他の方も誘ってまた来ていただく......という流れを生むことは、自分自身がやりたかったことのひとつでした。今回、道外の方々にもご参加いただいて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。また、自分たちもあらためて気を引き締めなければならないと感じました。一度訪れただけで満足してしまうようなことがないよう、これからも頑張りたいですね。

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[HOKKAIDO BALLPARK F VILLAGE]ホームページはこちら

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