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【レポート】さんさんピッチで生まれる個性のコラボレーション

さんさんピッチvol.5 〜年末スペシャル!〜 2019年12月4日(水)開催

8,17

2019年度から2ヶ月に一度定期的に開催されている「さんさんピッチ」。3×3Lab Futureの個人会員同士の交流を深めるために始まりましたが、毎回個性豊かな活動内容が紹介され、この会から会員同士のさまざまなコラボレーションも始まっています。第5回目の会場は3×3Lab Futureを飛び出し、特別コラボとして三菱地所本社食堂「SPARKLE(スパークル)」にて開催。今回も多種多様な背景を持った4人の登壇者がピッチを大いに盛り上げました。

■田瀬和夫さん:SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO
■臼井清さん:合同会社志事事業社 代表
■石川紀子さん:NEC(日本電気株式会社)
■八木橋パチ昌也さん:日本IBM株式会社 コラボレーション・エナジャイザー

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SDGsを企業戦略に。子供たちへ目標とする未来を引き継ぐために

SDGsを企業戦略に。子供たちへ目標とする未来を引き継ぐために

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ピッチのトップバッターは、SDGパートナーズ有限会社の代表を務める田瀬和夫さん。3×3Lab FutureではSDGsのセミナーで度々コラボさせていただいており、SDGsを企業戦略に取り入れるコンサルタント事業をされています。 田瀬さんの原点は、2004年から2014年まで所属していた国連での活動にありました。

「私を人道支援の世界へと導いてくれたのは、2019年10月22日にお亡くなりになられた緒方貞子さんです。素晴らしいという言葉では言い表すことができない、歴史的な人物でありました。私も含めて、国連の関係者でこの方と働いていた人はいつの間にか全速力で走っている自分を見つけるのです。『人間は生きてさえいれば、明日がある』ということをよく口にしながら、数々の人命を救う活動をされていました。亡くなられた時には、悲しいというよりも『とうとう緒方さんの意志を次に伝える責任がこちらに回ってきたな』という思いが湧いてきました」(田瀬さん)

田瀬さんのキャリアに大きな影響を与えた緒方さん。その思いや活動は、文章としてまとめられた「持続可能な開発目標(SDGs)」に引き継がれています。SDGsの全体像をつかむためには、前文と宣言の部分を理解することが重要だと田瀬さんは説明します。

「宣言には『present and future generations』『Leaving no one behind』『In larger freedom』『Well-being』と大きく4つあります。すべてをつなぐと、『世代を超えてすべての人が自分らしくいきられる世界を、私たちは次の子供たちに渡したいのだ』と書かれているわけです。SDGsが提示する数字目標だけでは理解しにくかった概念も、こういった世界観を目指しているということが分かれば、企業もSDGsを取り入れやすいのではないでしょうか」(田瀬さん)

SDGsの数字目標を取り入れることは、企業経営に支障をきたすと敬遠する企業もあります。しかし、そうではないと田瀬さんは説明します。
「利益を上げる過程で、社会の中に善をなすことに反対する経営者はほぼいません。この善の部分がSDGsなんです」(田瀬さん)

「企業が利益を上げる中で社会に善をなすべき」というSDGsに取り組む大義と同時に、小義として「SDGsは世界の変化を先取りするものであり、イノベーションと新市場の源泉である」「顧客が環境や人権などSDGsに適った商品やサービスを求めている」「優秀な人材が企業のサステナブルな組織運営に大きな関心を持っている」ことが挙げられます。

田瀬さんが企業をコンサルティングする上で、まず取り組むのは経営理念をSDGsに明確に関連づけること。つまり会社の強みが社会とどう関係しているかを経営者に定義づけてもらうということです。そして、事業を運営していく上で生じる人権と環境への問題に目を瞑らないことが大事だと言います。

SDGsを経営の意思決定に取り入れ、さらに人権の部分でも取り組んでいる会社が世界で増えつつあります。企業人権ベンチマーク(CHBR)が今年発表した、人権対応企業ランキングでは190社が採点されました。
「ファーストリテイリングさんが日本企業ではトップ。実は、昨年から私がアドバイザーを務めています。日本の企業がもっとトップに上がってくるような取り組みを盛り上げていかなければなりません。SDGsが採択された2015年に生まれた私の娘が今4歳です。この子が15歳になる2030年に、目標とする社会を引き継げるかということが私のこれからの課題です」(田瀬さん)

社会と社員をつなげる「プロボノ」で生まれる新たな価値

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次に登壇されたのは、NECでエンゲージメント推進室に所属する石川紀子さんです。NECはグループ会社も含めて10万人以上が働く巨大企業。石川さんは、その社員たちが会社の方向性に賛同して、それぞれが働きがいを持って仕事に取り組めることを目指しています。

「NECは今まで『海底から宇宙まで、ICTで社会を支えている』ということを公言して事業を進めてきました。しかし今は『社会価値創造型企業である』という表現に変わりました」(石川さん)
社会価値創造型企業とは、社会問題をNECの事業で解決し、「NECビジョン」という社会のあるべき姿を実現する、という意味が込められています。

その目標を掲げる中で、「社会問題を社員たちが自分ごととして捉えづらい」という課題が浮き彫りになったと言います。
「NECは、『世界が抱える社会課題にデジタルの力で答えを』と掲げていますが、目の前の仕事をする上では、あまり意識しなくてもできてしまいます。社員にとっては社会や地域が遠いのです。NECは世界一の技術をたくさん持っていますが、社員一人ひとりが社会感度を高めることで、社会課題を解くことにもっと技術を活用できるのではないかと考えています」(石川さん)

そこで、注目したのが「プロボノ」です。プロボノとは、企業に所属して身につけたスキルや経験を活かしたボランティア活動のこと。元は、アメリカの弁護士たちが弁護士費用を払えない人々をボランティアで弁護する活動から始まったと言われています。 働き方改革の一環で、NECでは兼業が可能となり働く上でのコアタイムもなくなったそうです。しかし、今まで1つの企業にしか務めたことのない社員の多くは、「いきなりセカンドキャリアで社会に出るのはハードルが高い」と感じていることがわかりました。 プロボノを通して、地域社会へ飛び出し自分たちのスキルが世の中にどれだけ役に立つのかを体験することで、パラレルキャリアの可能性を見つけてもらいやすくなると石川さんは実感しているそうです。

「プロボノを通して社会感度の高い人材の育成を目指してきましたが、地域社会で活動することでさまざまな気づきが出てきました。地域課題に取り組んでいるのは行政だけではなく、市民活動家やNPO、一般市民まで幅広い人々が活躍しています。そういった方達と課題解決する中で、事業の新しい価値を見出すことが可能となり、新しい事業につながることも少しずつ増えてきています」(石川さん)
プロボノ活動を体験した社員からは、「社内で関わったことのない人とプロボノ活動で仲良くなり、以前よりも社内での仕事がしやすくなった」という声も上がっています。

自由なビジネスマンであれ!次世代の働き方モデルを体現

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今回3人目の登壇者は、八木橋パチ昌也さんです。八木橋さんは、36歳で初めて正規社員としてIBMに就職した異色のビジネスマン。コラボレーション・エナジャイザーという肩書きを持っていますが、その活動範囲は多方面に渡ります。今回は、現状分析や未来洞察などに使われるフレームワーク「STEEPV(スティープブイ)」を用いて八木橋さんを紹介していただきました。

「STEEPV」とは、Social(社会)、Technology(技術)、Economic(経済)、Environmental(環境)、Political(政治)、Value(価値)の頭文字です。 まずSocial面での八木橋さんの活動として、IBM社内SNSの推進役を2018年まで請け負っていたことが説明されました。そこで得た組織開発や人材育成、ナレッジマネジメントなどの知識を活かし、現在はフリーランスでその分野のコンサルタントを請け負っているそうです。

Technology面では、AIを活用したIoT事業について取材をし、社内外向けにブログ記事やウェブサイトコンテンツを作っています。これが現在のIBMでの八木橋さんの仕事。そして、IBMでの仕事以外にも他の会社とアドバイザー契約をしており、毎月給与をもらっているそうです。Economicの八木橋さんの視点は、「さまざまな働き方を同時にした方が楽しい」というもの。また、多面的な働き方をしていることをオープンにすることで、社会の変化を促すことを目指していると言います。

八木橋さんは自分自身のマニフェストとして、SDGsを取り入れています。そのSDGsとは、ゴール16「平和と公正をすべての人に」、10「人や国の不平等をなくそう」、12「つくる責任つかう責任」、4「質の高い教育をみんなに」の4つです。 八木橋さんはトレッキングが趣味で、自然の大切さを意識することが多くなったと言います。
「自然を楽しむということが贅沢品とならないように、Environment(環境)を意識した自分にできる範囲での啓蒙活動に積極的に取り組んでいます。今日も、この会のために料理が提供されていますが、フードロス削減のためにみなさんに声がけすることも活動の1つになります」(八木橋さん)
この環境を意識した生活は、12「つくる責任つかう責任」に対する八木橋さんのコミットメントだそうです。

Politicalでは、八木橋さんがハマっているデンマークの社会・政治について話していただきました。
「デンマークの民主主義は『公平・公正』を重視しています。10万円を平等に全員にあげても仕方がない、本当にお金を必要としている人にあげることが大切、というデンマークの公正な文化が私は好きです。そして、『利己主義とはまた違った個人主義』もデンマーク特有ですね。自分が無理をしないのはもちろん、人にも無理をさせない。デンマークは幸福度が高い国ランキングで上位ですが、こういった文化が根底にあるのではないかと思います」(八木橋さん)

最後のValueでは八木橋さんの3つの価値観を披露していただきました。
1つは「幸福中心主義」。自分が幸福になることで、初めて人に幸せを伝えることができるのではと考えています。2つ目は「混ぜなきゃ危険」。人は価値観の異なるもの同士が交わることで新しい発見や価値観をつくることができ、一方で誰かの常識は誰かの非常識と言うこともできます。つまり人同士は混ざらなければわからないことがたくさんあるので、積極的に混ざらないのは危険だというのが八木橋さんの考えです。そして、3つ目は「フューチャーデザイナー」。八木橋さんは、デンマークの会社と一緒に年に2、3回ワークショップを開催しています。その中で積極的に取り組んでいるのが「未来をデザイン」すること。
「自分の欲しい未来ってなんだろうとイメージして、そこに近づくために自分が起こせるアクションを考えることが大切です。アクションという名の一石を投じれば水面に波紋が生じます。その波紋は直接自分の描く未来には繋がらないかもしれないけれど、つながる道筋をつくるかもしれません。だから、石を投げる人をたくさん増やしたいと思って活動を続けています」(八木橋さん)

想像力1つで未来はハッピー。積み重ねた経験を掛け合わせよう

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最後にお話しいただいたのは合同会社 志事事業社 代表の臼井清さん。エコッツェリア協会が企画する丸の内プラチナ大学で講師を務めるほか、3×3Lab Futureの活動に多数携わるベテラン会員です。今回は、人生100年時代を想像力でスタートしようというテーマのもと、臼井さんの取り組みを紹介していただきました。

臼井さんは元々サラリーマンをしていましたが、その頃に「あるショックな出来事」があったと言います。サラリーマンの印象を小学生に聞いたインタビューで「真面目にコツコツ働いて、いつかリストラされる人」という回答を見たことです。自分の子供にはそう思われたくないと決意した臼井さんは、海外赴任や新規事業の立ち上げなどを積極的に任される、いわゆるエリートサラリーマンを目指します。

しかし、順風満帆で出世していたある日、突然社内失業に見舞われました。会社に所属していながら仕事がない状態だったため、臼井さんは有り余る時間を自己の内省に当てます。そこであることに気づいたと言います。
「サラリーマン生活だからこそ得られた財産と、サラリーマンだからこそ背負ってしまった荷物。そのどちらも『経験』であることに気がつきました。経験は財産にも荷物にもなるけれど、経験が思いこみになってしまうときにマイナスになってしまいます。自分絶対主義に陥ると、他者に対して不寛容になってしまうのだと実感しました」(臼井さん)

人生100年時代に増えていくもので困るものには「病気」、うれしいものは「時間」。そして、減っていくもので困るものは「お金」、うれしいものは「責任」であるとグラフを使って説明する臼井さん。物事にはマイナスとプラスの面が必ずあり、これからの予測しづらい世界に対しては柔軟な想像力が大切だと訴えます。 また、課題に対しては正解ではなく、一緒に進む人々の納得感が大切であることも強調しました。

「私は、課題に対してロジカルな答えを出すことが好きではありません。病院にはみなさん行きたくないと思いますが、病気にかかったら行かなければならない。嫌々ながら私も行くでしょう。でも、ドイツにホテルのような病院が実在します。病院食もきれいな器に美しく盛られ、非常に美味しそうです。ここだったら病気になってでも行きたいと思いませんか。これがアート視点での課題解決です」(臼井さん)

「東京には、アート視点が足りない」と語る臼井さんが今取り組んでいるのは、アートでいろいろな形のソリューション提案をするということ。アートを生み出すための想像力は、経験値を積み重ねた人ほど発揮できる潜在能力を持っていると言います。しかし、持っている材料をワンパターンにしか利用していないために想像力が広がらないのだと臼井さんは考えています。

「想像力を発揮すれば、未来が予測できなくてもハッピーに生きていくことができます。私が関わってきた人々の中には、サラリーマンだったけど180度方向転換して、すごく面白い生活を楽しんでいる人がたくさんいます。ぜひ自分の持っているものを掛け算していろんなことに取り組んでみましょう」(臼井さん)

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4人のピッチが終わると、3×3Lab Futureから提供された料理とともに歓談交流の時間が持たれました。1人10分のピッチと短い時間ではありましたが、今回もそれぞれ個性ある活動をしていることが明らかとなり、また新たなコラボレーションが生まれそうな期待感がありました。 さんさんピッチは、今後も個人会員の交流をどんどん促進していきます。「なんだか楽しそう」「もっと詳しく聞きたい」と思った方は、ぜひ一度3×3Lab Futureに足を運んでみてはいかがでしょうか。


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