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【レポート】第一回ソーシャルグッド会議

何かが始まる予感、高まる期待

スムース / PIXTA(ピクスタ)

より良い社会を求めて活動している人は大勢いるのに、なぜ世の中は良くなっていかないのだろう――?

これは誰もが一度は思ったことのある素朴な疑問ではないでしょうか。その理由のひとつは、活動している人たちがなかなか横の連携を取れなかったことにあるように思えます。先月25日に3×3Laboで開催された「第一回ソーシャルグッド会議」は、そんな現状に一石を投じるものとして、多くの人々からの注目を集めました。

当日集まったゲストプレゼンテーター、参加者はいずれも"どこに出しても主役級"の面々ばかり。CSRやCSVの現状をよく知る参加者のひとりは、「集まった顔ぶれがあまりにも濃くてびっくり。これだけ集まることは稀ではないか」と嘆息していました。

司会を務めたのは、丸の内朝大学プロデューサーとして知られる古田秘馬さん、寄付を集める"ファンドレイジング"のNPO法人「ジャスト・ギビング・ジャパン」の代表理事、佐藤大吾さん、「3×3Labo」オープニングの立役者であるエコッツェリア協会の田口真司さんの3名。この3人だけでも相当に"濃い"顔ぶれですが、さらに濃いゲストが濃密なプレゼンテーションを繰り広げました。

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「ソーシャルグッド」とは何か

「アクション」「プロジェクトアウト」のための会議

司会の3人だけでも相当にすごいラインアップ。左からプロジェクトデザイナー・古田さん、ジャスト・ギビング・ジャパンの佐藤さん、エコッツェリア協会・田口さん

そもそも、このソーシャルグッド会議は何のために開催されたのでしょうか。冒頭、3氏によるラフなトークセッションで解説がありました。

「今、さまざまな社会問題がありますが、それを"自分ごと" にして取り組んで行く人を育てたい。プロデューサー、イノベーター。さまざまな言い方がありますが、肩書きは置いておいて何かを『やりたい!』という人に、トライアルしてもらう場所。ちょっとくらいの失敗はあってもいい。小さなことから大きなことまで、とりあえずやってみようという"プロジェクトアウト"をするための会議です」

と古田さん。3×3Laboが2014年8月までの期間限定であることにも触れ「この期間内にプロトタイプを社会に出すことも大きな意義がある」と指摘。エコッツェリアの田口さんも、「期限が決まっているということは、プロジェクトアウトのためには却っていいこと」と言葉を重ねます。「セミナーや勉強会を繰り返し開催していると、開催することが目的化してしまう。期限を切ると行動に移す方向に行きやすい」。

また、古田さんは「業種の壁、企業、NPO、行政などの組織の壁を越えて、普通なら集まらない人たちが集まって、新しいスキームを作ろうというのが今回の趣旨。この後のプレゼンはいわば話題提供です。プレゼンの途中からでもかまわないので、どんどん質問してください」と古田さんが呼びかけてプレゼンがスタートしました。

豪華プレゼンテーターの競演

今回のプレゼンテーターは、3×3Laboの説明として田口さん、セミナー「3×3Labo」の土谷貞雄さん(くらしの良品研究所 株式会社貞雄 代表)、キリン株式会社CSV本部で「キリン絆」プロジェクトを担当する德田正一さん、キリン絆プロジェクトと足並みをそろえて展開してきた丸の内朝大学、農業復興プロデューサーカリキュラムから尾形慎哉さん、ジャスト・ギビング・ジャパン代表理事の佐藤大吾さん、鎌倉市市民活動部観光商工課担当課長の齋藤和徳さん、株式会社伊藤園の取締役・CSR推進部長の笹谷秀光さんの7名。

このラインアップだけでもボリューム感が伝わるでしょう。ひとり一人のセッションは15分程度でしたが、その中身は非常に濃密で示唆に富むものばかりでした。

株式会社貞雄の土谷貞雄さん土谷貞雄さんは、毎週エコッツェリア、3×3Laboで開催している「3×3Laboセミナー」を「ライフワーク」と位置づけ、「ローカルとグローバル、生産と消費という二項対立では浮き彫りにならないマージナルな領域」の小さな事象を丁寧に積み上げることで「センター、中心の問題が浮かび上がるのではないか」と提案。

司会の佐藤さんから「いろんなセクターの人が集まる現場になっていると思う。この後、どんなことが起こればうれしい?」と問われると「アウトプットの目標が必要」と土谷さん。「何かを作るにはジャンプが必要だし、そこにはクリエイターがいなければならないでしょうが、参加した人たちの頭の中を外に出して見えるようにすることで次につながる。展覧会のようなことをしてみたい」。「見えるものにして、(皆で)一緒に考えていくことが大事なんですよね」という古田さんの言葉に大きくうなずいて、「世界のほとんどは矛盾に満ちているはず。今までの消費社会は矛盾を切り捨ててきてしまったけど、その矛盾を正面から考えなければならないと思います」と締めくくりました。

キリン、被災地と東京をつなぎ、人を育てるプロジェクト

「復興プロデューサーカリキュラム」でプロジェクトアウトに取り組む受講生たち。左端が尾形さん

キリンの德田さんは同社の復興支援活動である「絆プロジェクト」の概要を紹介するとともに、その要諦が「3年で60億という予算を投じるスポンサーとしての活動だけでなく、一緒に汗をかくこと」にあると説明します。そして、そのコア事業のひとつが「食文化・食産業の復興」「農業のハード支援」があるとし、6次産業化支援、東北の食のブランド化の取り組みなどを紹介しました。よく知られるものに、「気仙沼茶豆」の復活支援、福島産和梨を使った『氷結』の販売などがあります。

キリンCSV本部の徳田さん司会の古田さんからは「モノからコト、コトからヒトを育てていくというエコッツェリアの取り組みとまったく同じ方向で展開していますね」と指摘がありました。キリンでは被災地で「農業トレーニングセンタープロジェクト」を開設、農業経営者リーダーのネットワーキングを進める一方で、東京では丸の内朝大学が「復興プロデューサーカリキュラム」を開設し、東京からの農業復興、人材育成に努めています。

これを受けて次のプレゼンに立ったのが「復興プロデューサーカリキュラム」から受講生を代表する尾形さん。受講生から同じプロジェクトに参画する8名も並び、プレゼンをサポートしました。尾形さんたちは、今回のミッションであるプロジェクトアウトとして「コミュニティキッチン」をスタートしたとプレゼンテーション。

「都会では食文化の貧困化が進み、地場の食材へのモチベーションも低い。そこを東北産食材とつなぐ"場"を提供しようという取り組みです」

コミュニティキッチンとは、客が調理し、客が食べる仕組み。アメリカで流行りつつある「アセンブリーキッチン」をモチーフにしたもので、食材と調理アドバイザーが用意されており、客は調理して食べるだけ。後片付けの必要もありません。
「東北の食材を用意し、その生産者がナビゲータとして調理をサポートすることで、東北の食材、農業についても理解を深めてもらうのが狙いです」
プロトタイプを2013年11月、14年3月の2回、都内実施して好評を得ているとのこと。プレゼンでは、アイデアから形にするまでの"カオス期"の苦労も語られ、来場者の共感を呼んでいました。

「人の心」を動かすこと。火を点けること

続いてのプレゼンはジャスト・ギビング・ジャパンの代表理事の佐藤さん。佐藤さんは2010年に年間1200億円の寄付を集める世界最大級の寄付仲介サイト「JustGiving」の日本版を立ち上げました。その根底にあるのは「日本に寄付文化を根付かせること」。

ジャスト・ギビング・ジャパン佐藤さん「日本では、個人の寄付は10人中7人がしていますが、金額では4対6で企業が多く、人口もGDPも日本の半分のイギリスよりも少ないのが現状です」
こうした現状に対し、大切なのは「人の心を動かすこと」と佐藤さん。「寄付を促すファンドレイジングとは、ひとりひとりの心に火をつけることです。ファンドレイザー1人が10人の心を動かせば金額以上の価値があると言えるでしょう。ですから、目標としては金額だけでなく、人数も掲げるのも妥当なのではないかと考えています」
現在ジャスト・ギビング・ジャパンが募った寄付は累計で11億円、人数は10万人に上るそうです。

このプレゼンの最中に「一番寄付文化を促進した人を表彰する」という、『ジャスト・ギビング・アワード2014』の表彰式があり、鎌倉市が行った「かまくら想いプロジェクト」が表彰され、授賞のため登壇した鎌倉市市民活動部観光商工課の齋藤さんがプレゼンに移りました。

鎌倉市市民活動部観光商工課 ・齋藤さん齋藤さんによると、鎌倉市は面積比では京都の8倍の観光客が訪れる一大観光都市でありながら、日帰り客が多く、利益が税収に反映されないうえに、観光地の整備などに掛かる費用が膨大であるのが悩みなのだそうです。そのため、近年観光資源を活用した収入確保に取り組むようになり、観光パンフレットなどの印刷物への広告収入、2013年には海水浴場のネーミングライツを年額1200万円、10年契約で販売することに成功しています。その次に着手したのが「観光ルート板」設置の費用を寄付で集める「かまくら想いプロジェクト」だったのです。

「1基10万円のルート板を10基設置するとし、1口1万円で、100名限定で募集したところ、わずか3週間でいっぱいになりました」と齋藤さん。ルート板には寄付者の氏名が刻まれるという特典もついてくるそう。「100名限定、刻銘するというプレミアム感が受けたのだと思います。市外の人で占められるかと思っていましたが、半数が市内からの寄付で、市民にもきちんと愛されているのだと実感できました」。 ジャスト・ギビング・ジャパンの佐藤さんは「鎌倉市の例を受けて自治体で寄付を募る動きが活発化してきました。一種の"能動的納税"のようなものかなと思います」。地方行政の財政難は深刻で、PPP(Public Private Partnership:官民パートナーシップ)やPPF(Private Finance Initiative:民間資金活用)、業務の民間委託などが注目をされていますが、「寄付」もまた新しい財源として期待を集めることになりそうです。

ジャスト・ギビング・ジャパンで募集された「かまくら想いプロジェクト」への寄付

ソーシャルグッドの要は「人」

最後のプレゼンテーターは伊藤園の笹谷さん。2013年にはISO26000を受けて新しいフェイズに突入したCSRのあり方を分かりやすく解説した『CSR新時代の競争戦略』を上梓するなど、CSR分野のトップランナーの1人です。プレゼンは伊藤園の取り組みの紹介を中心にしつつ、日本には伝統的に「ソーシャルグッドを重視する歴史があった」と喝破します。

伊藤園 笹谷さん。迫真のプレゼン「売り手良し、買い手良し、世間良し。いわゆる『三方良し』が日本の伝統です。企業、消費者、社会の三者がトリプルウィンの持続可能な未来を築く必要があるのです」

そのために必要なのは「3つのS」だと笹谷さん。
「ひとつめのSは『CSR』。ISO26000によって企業だけでなく、あらゆる団体の社会的責任が問われるようになっています。そして『CSV』。マイケル・ポーターが提唱して以来、日本でも定着しつつあるといえるでしょう。そして最後に挙げたいのが『ESD(Education for Sustainable Development)』です。これは日本発の概念で、2014年11月には名古屋で『ESDユネスコ会議』が開催されることになっています」
そして、3×3Laboが、3Gear、3rd Placeの掛け算であることにひっかけて、「ぜひともこの『3S』も3×3Laboに加えて欲しい」と語りました。

非常に歯切れ良く、軽いジョークも交えながらインパクトのあるプレゼンで会場は拍手喝采。打ち解けて"あったまった"雰囲気で懇親会に移りました。

懇親会は非常に盛況を見せました。先ほどのプレゼンを会話のネタに、お互いが抱えているリソースや悩みを腹蔵なく話し合うシーン。行政も企業もNPOも個人もいます。普通なら決して話し合うことのない人、出会う機会がない人同士が情報交換し、次のステップに備えるのです。実は、これこそがソーシャルグッド会議の"本体"なのではないか、そう思える一幕でした。

司会の古田さんが冒頭指摘したように、ここから「プロジェクトアウト」させるのが本会議の狙いです。これから組織の壁を越えていったい何がアウトカムしてくるのか。これだけのプレーヤーが集って取り組むことに、期待とともに空恐ろしさも覚えるほどです。それは、もしかしたら巨大な何かがゴトリと音を立てて動くときに感じる感覚に近いのかもしれません。今後もソーシャルグッド会議は毎月開催予定だそう。社会課題を「自分のこと」と考えている人はぜひ参加してみてください。


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