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【レポート】若者よ、ソーシャルマインドを抱け

ユヌス&ユースソーシャルビジネスデザインコンテスト

ビジネス化への方向転換か

どちらかと言えば3×3Laboは、オープンイノベーションやソーシャルビジネスそれ自体というよりも、多様な人が集まり、そこへ至るマインドセットを行う場所という印象が強いのではないでしょうか。もちろん、そこからの生まれるプロジェクト、ビジネス化が最終的な目的ではあるにせよ、事前の「ワイガヤ」を作るところに注力してきたのがこの1年半の足跡であったように見受けられます。

その意味で、勘繰るならば若年層向けのソーシャルビジネスコンテスト関連のイベントが開催されたことは単に珍しいというよりも、ビジネス化へ向けた方向転換という意味において象徴的な出来事であったのかもしれません。9月6日に開催された「Yunus & Youth Social Business Design Contest」の第3回ワークショップは、3×3Laboにとってもさまざまな意味で興味深く、意義深いものであったのではないでしょうか。

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YYコンテストとは

YYコンテストとは

YUNUS&SHIIKI SOCIAL BUSINESS RESEARCH CENTERのサイトより

「Yunus & Youth Social Business Design Contest」とは、マイクロクレジットのグラミン銀行で知られるムハマド・ユヌス博士と交流のある九州大学が主催するもので、今年で4回目の開催。2009年に九州大学とグラミングループが提携、「グラミン・クリエイティブ・ラボ」(GCL)が九大内に設置されたことをきっかけに、2011年にユヌス&椎木ソーシャルビジネス研究センター(SBRC)が設立され、SBRCが主体となって2012年から同コンテストを開催してきました。

毎回、ユヌス博士の来日時に本選のコンペティションを開催するスケジュールで、そこへ向けたワークショップを複数回開催し、予選で本選出場者を絞り込みます。第2回目までは九州で開催してきましたが、昨年から東京で開催し全国から出場者を募集。また、今年からは「ユース」の枠を拡大し、学生に限らず35歳を上限として社会人参加も募るようになりました。

今年は7月から参加者の募集を開始し、8月から9月まで全3回の事前ワークショップを行い、9月19日に予選会を実施、10月8日に本選を行う予定となっています。学生部門で9チーム、社会人部門で6チームの参加があり、本選には学生5チーム、社会人3チームが出場し、ユヌス博士ほか並み居る審査員を前にプレゼンテーションを行うことになります。

メンターが寄り添って共同作業

9月6日に開催されたワークショップは、予選会直前ということもあり、収支計画を中心とした持続性のある事業計画を立てることをゴールに講義とワークを行いました。講義ではNPO法人Press Centerの代表理事を務める奥本智寿美氏が「収支計画のつくり方」と題し、実践的なソーシャルビジネスの設立と運用の方法を多くの実例を交えて伝授。主催のSBRCの井上良子氏からは、具体的なプレゼンノウハウの講義などもありました。

ワークショップで特徴的なのは、1チームに1人、必ず外部からのメンターをアテンドさせている点。メンターも公募されたもので、経営者やコンサルタントらが務めます。特に学生は、夢や希望やアイデアはあっても、実践的ビジネスのノウハウに欠けるところがあります。最初から最後まで一貫して同じメンターが寄り添うことで、ビジネスプランに現実味が生まれ、学生のモチベーション低下を防ぐ役割も期待されるようです。

この日も午後の大半を使って、参加者がメンターとともにビジネスプランやプレゼン資料の精査を行いましたが、いずれのチームでもメンターとの信頼関係が強く結ばれているように見受けられたのが印象的でした。

なぜユースの起業なのか

SBRC・井上氏

SBRCの井上氏によると、社会人部門では個人参加が多く、社内ベンチャー立ち上げよりも、社会課題解決を強く意識した転職に向けたステップアップとして参加している人が多いそうです。3×3Laboでは、丸の内朝大学、丸の内プラチナ大学で見られるように、社会人が培ったスキルを社会的課題にどう利用するのかという視点での取り組みが多く見られるため、社会人側からの視点は分かりやすいでしょう。

逆に、学生はスキルに欠け、社会経験も少ないが「高いモチベーションを持っていることが強み」と井上氏。「確かにシーズが必ずしもあるわけではなく、社会的なニーズへの深い理解が欠けている点は否めない。本来ならリサーチを含む長いプログラムで取り組むべきかもしれないが、このコンテストをきっかけに本気で起業に取り組むようになる学生たちもいる」。SBRC設立後、この5年間で5つのソーシャルビジネスカンパニーが発足し、新たに2社が設立を準備中。コンテスト発では2013年に1社が設立され、今も順調に経営されています。

また、コンテストの目的は「ユヌス型」の会社経営の普及にもあると井上氏。ユヌス型の株式会社経営とは「利益の最大化ではなく、社会問題の解決こそが目的」「投資家は投資額を回収するが、それ以上の配当は受け取らない」「投資額以上の利益は、ソーシャルビジネスの普及に使う」など7つの原則に基づくもので、「CSV」が、既存企業が社会課題解決をビジネス化するフレームワークになっているのとは若干異なり、ソーシャルビジネス起業のフレームワークとして使うことができるでしょう。

ユヌス型の可能性を

井上氏は、今後「YYコンテストや、SBRCのような組織が全国各地に展開していくことができれば」と期待を寄せています。ユヌス型は株式の配当がなく、資本主義経済の中では「ニッチなモデル」ではあるが、「社会課題解決のためのツールとして普及してくれれば」と井上氏。昨年から東京開催に踏み切ったのもそのためです。さらに、SBRCでは今後、コンテスト後のフォローアップ支援に加え、コンテストの結果にとらわれずにソーシャルビジネス起業を後押しするためのファンド組成なども行っていく予定です。

10月8日には、ユヌス博士も来日し審査委員長を務めた本選が、東京・六本木で開催され、会場には200名を超える一般観覧者も来場したそうです。最優秀賞に選ばれた社会人部門、学生部門の2チームは、11月にベルリンで開催される「グローバル・ソーシャル・ビジネス・サミット」にも出席する予定とのこと。
ソーシャルセクターを担うNPOの多くが収益性と持続性に欠けている今、ユヌス型ソーシャルビジネス起業の可能性は決して小さくありません。若者たちが真剣に社会の在り方を考え、その解決モデルを考案する場に今後も注目していきたいと感じました。


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