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【レポート】子どもと一緒にホトリア広場を探検しながら、生きものに必要な環境を楽しく学習

大丸有で生物多様性について考える Vol.2 『生きものつながり大発見~親子で考える生物多様性~ 』2019年3月9日(土) 開催

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大丸有エリアの生物多様性をいろいろな視点から考えるイベントシリーズの第2回、『生きものつながり大発見~親子で考える生物多様性~ 』が3月9日に開催され、この日の3×3Lab Futureには、10名を超える元気な子どもたちの声が響きわたりました。

近年、大丸有エリアには生きものに配慮した緑地や水辺環境が徐々に増えてきており、実はホトリア広場にもさまざまな生きものが暮らしています。今回の講座では、こうした都心に適応した生きものたちのくらしや命のつながりを講義や観察から学び、さらに、ミニアクアテラリウムづくりを通して、生物多様性について親子で考えてみようという内容です。

最初に登壇したのは、株式会社生態計画研究所で環境教育や、生物調査などを行っている佐藤真人氏。「サトちゃんと呼んでくださいね」と子供たちに優しく語りかける佐藤氏は、大丸有エリアの生きものについても調査されている方です。

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「生物多様性」とは。まずはその言葉が意味するところを知る

「生物多様性」とは。まずはその言葉が意味するところを知る

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まずはスライドを使って、子どもたちにとっては少々難しい「生物多様性」について、クイズを交えながら説明を始めました。

「生物多様性って言葉、聞いたことあるかな? 難しいよね。大人でもあまり聞いたことのない言葉だと思いますが、今日は大まかでもいいので、知っていってもらえたらと思います。ではここで、生きものについてのクイズを出します。みんな、世界に名前のついている哺乳類は何種類くらいいると思いますか? 答えは5500種類くらい。鳥は1万種類くらい。植物は27万種類くらい。そして、昆虫は圧倒的に多くて100万種類くらいいます。世界中では今のところおそらく870万種類くらいの生きものが住んでいると言われています。地球にはいろんな種類の生きものが生きているんだなと覚えておいてくださいね」

続いて映し出されたスライドにはたくさんの赤と黒のテントウムシが。それぞれ微妙に柄が違うものの、すべて同じ「ナミテントウ」という種類のテントウムシなのだそう。
「同じ種類でも模様が違う。僕たち人間もそうですよね、同じ人間なのに、それぞれ顔もちがいます。難しい言葉ですが、遺伝子というものが我々の中にあるんですね、それが違うと顔がちがったり、こうやって模様がちがったりします。同じ種の生き物でもさまざまな遺伝子というものを持っています。
じゃあ、なんでみんな同じ遺伝子じゃいけないの? なんでテントウムシさんもそれぞれちがうんだろうね? これは、いろんな遺伝子があることで、さまざまな病気や環境の変化に耐えられるんじゃなかろうかと思います。『みんなちがって、みんないい』って詩人の方が言ってましたけど、それぞれがちがうということは自然界においては大切なことだと言われています。
一言でいうのは難しいのですけれども、生物多様性というのは、ビルの環境、森の環境、川もあったりするいろんな環境にいろんな遺伝子をもった生きものが関わり合いながら、お互いを食べたり、食べられたりしながら生きていることをいいます。なんとなくでいいので、覚えていってもらえたらと思います」

大丸有エリアでも、絶滅危惧種の昆虫たちが発見されている

いろんな生きものがいて、いろんな環境があるということは我々ヒトにとっても、いいことがある、と語る佐藤式。我々は木や土があることで水や酸素を得ているし、食べものや着るものも自然から得ていることがほとんど。そして薬もさまざまな植物からつくられています。実は、こういった我々の衣食住が自然から受けている恩恵をお金に換算すると、その額はなんと、年間で3040兆円! アメリカのGDPの2倍という高額に、「え~!」と、場内の大人たちも皆びっくり。これはつまり、さまざまな生きものがいないと、我々はこの地球ではなかなか暮らしていけないということだと、佐藤氏は説明しました。

「今日来ていただいている大手町や丸の内エリアは生きものが少ないというイメージがあると思います。生き物にとって必要な3つ、食べ物、水、そして敵から身を守る隠れ家が、こういった街中には少ないという気がします。でも我々が10年間調査したところ、結構いました。たとえば大手町の森では『トウキョウヒメハンミョウ』、ハンミョウという虫の仲間がいたり、『ハラビロトンボ』という東京では絶滅危惧種に指定されているトンボさんなんかもいました。これから観察にいくホトリア広場には、『オンブバッタ』というバッタや『コバネイナゴ』というイナゴの仲間、それに『イチモンジセセリ』という蝶々がいました。あとは『ジョロウグモ』もいましたね。皆さんクモはイヤな人もいるかもしれませんが、クモがいるということはそれだけ食べ物になる小さな虫がいるということで、豊かな自然を示す大切な虫なんです。あとは『モノサシトンボ』という細いトンボや、なんと全国的に絶滅が心配されている『ベニイトトンボ』もいたんですよ」

佐藤氏によると、もともと江戸には武家屋敷が多かったことでまとまった緑が多く残っており、その周りのビルの環境さえよくすればこういう生きものが来てくれるのだそう。また、最近では街の中にただ緑を配置するだけではなく、生きものが好む木を植えたり、石垣にもわざと隙間を作って、生き物の隠れ家になるような配慮をしていたりするそうです。

親子で、ホトリアの生きものを探すゲームに挑戦!
意外なほどたくさん出会えた生きものたち

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さあ、講義の後はいよいよ屋外に観察へ向かいます。珍しい生きものも住んでいると聞いて、子どもたちも俄然張り切っている様子が伝わってきます。ただ探すだけではつまらないから、と、佐藤氏お手製の「ホトリア生きものビンゴ」という用紙が配られ、同じテーブルに座った親子数組がチームとなって、見つけた生きものでビンゴを目指します。生きている虫に配慮して、素手でつかむのではなく、筆を使って落として捕獲する方法を佐藤さんが皆に伝授し、出発します。

生きものを探すのはホトリア広場のそれほど広くないエリアだけですが、子供たちが佐藤さんの講義で習ったように、水辺や隠れ家になりそうな場所を意識して探していくと、ダンゴムシや鳥の羽などが次々と見つかっていきます。見つけた子どもたちは大喜びですが、お父さん、お母さんは「本当にいろいろいるんだ」と、驚かれている様子でした。見つけたものは佐藤さんのチェックを受けて、ビンゴカードに印をつけてもらいます。見事にビンゴを達成したチームも現れました。

ビンゴゲーム仕立ての楽しい観察会の時間が終了すると、生きものはすべて元いた場所へ返します。そして、続いてはアクアテラリウムに使う、木の採取へと移動します。

ホトリアの街路樹をつかって、ミニアクアテラリウムづくり

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ここからの講師は「大将」こと、Garden Life Desing ニワシゴトの風間曜氏にバトンタッチ。この界隈の植木の手入れを担当する庭師でもある風間氏は、ビルの横にそびえ立っている大木「シマトネリコ」について解説し、近くにはこのシマトネリコの子どもが生えているのでそれを探して、そっと抜きましょうと、やり方を説明します。こんなにも見上げる大きな木に小さな子どもがいると知って、子どもたちは目を輝かせます。植え込みに入った子どもたちは、それぞれシマトネリコの幼木を2、3本見つけ、3×3Lab Futureに持ち帰りました。

ミニアクアテラリウムづくりに必要なキットが配られ、風間氏が一つ一つ製作の手順を説明していきます。サンプルはあくまで見本にするだけで、皆さん自由に作っていいとのこと。人間や動物のフィギュアも子どもたちがそれぞれ気に入ったものを選びますが、フィギュアを選ぶ顔はみな真剣そのものです。今回、ガラスポットの中に入れる小さな石は底石に適度なバクテリアも含んだ「天然黒ボク土」と、植物の根元には多孔質の「ハイドロボール」という焼成粘土で、空気を中に閉じ込めているため、植物は空気と水とで成長できるのだそう。その石などを隠すようにミズゴケを敷くと、小さなガラスの中に陸地が出来上がります。コケを入れると水やガラスが汚れそうにも思えますが、サンプルのガラスはほとんど汚れていません。実はそこにも、生きもの同士のつながりが関わっていました。
「私のこのテラリウムは3か月以上洗ってませんが、石の中にあるバクテリアが分解してくれたり、今からお渡しするミナミヌマエビが掃除をしてくれます。メダカの食べ残した餌を食べてくれたり、時には脱皮した自分の皮でも食べたりします。そしてイシマキガイは窓の掃除屋さん。窓にずっとくっついて、窓についた緑の苔をたべてくれる。なので、3か月洗ってなくてもガラスがきれいなままなんです。エビと貝が掃除をしてくれます。この子たちは直射日光が嫌いなので、特に夏場は直射日光に当てないように気をつけてくださいね」と、風間さんが説明してくれました。

小さな陸地に採取したシマトネリコに、ヒトと動物のフィギュアを飾ったら、子どもたちはメダカ、ミナミヌマエビ、イシマキガイという水生生物を受け取ります。それらを入れれば、ミニアクアテラリウムの完成です。

小さなアクアテラリウムから学ぶ、生きものたちのつながりや環境

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小さなアクアテラリウムですが、その中にはこの日学んだ「生きものに必要な3つ」水辺、メダカなどの食べ物、隠れ家となるシマトネリコと水生コケ、それぞれがきちんと入っています。完成後にはテーブルごとにそれぞれの製作意図を発表し合いました。

観察に、アクアテラリウムづくりに、子供たちは終始大はしゃぎでしたが、参加されたお父さん、お母さんたちも、
「普段は会社帰りに来ているのですが、子どもをここに連れてきたのは初めて。虫や木を採ったり、とにかく子どもがすごく喜んでいたので、来てよかったと思いました」
「アクアテラリウムは自分で採った木で作るので、買ってくるのとは全然思い入れが違いますよね。一つ一つ丁寧に説明してくれてわかりやすくてよかったです」 「この辺りで働いているのですが、これまで全然生きものに気がつきませんでした。今までとは違う視点で見られたのでとても楽しかったです」
「コンクリばっかりだと思っていたのに、意外に生きものがいるんだなってびっくりで、本当に面白かったです。子どもと一緒になって楽しみました」と、好評でした。

最後に佐藤氏、風間氏は、このアクアテラリウムを見ながら生きものに必要な環境について考え、ぜひご自身の近くの生きものについても観察してほしいと語り、この日のイベントを締めくくりました。

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