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【レポート】生物多様性を支える「サンゴ」、そのために何ができるのか

サンシャイン水族館教室~サンゴを学ぼう! 2019年5月30日(木)開催

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日本初の屋上水族館にして、東京・池袋という都会の中で様々な生物に親しめる水族館として人気のサンシャイン水族館。そんなサンシャイン水族館は今、サンゴを保全するための重要なプロジェクトに取り組んでいます。

海の生態系の根底から支える存在であるサンゴを保全していくためには何が必要なのか。それを知るために、エコッツェリア協会はサンシャイン水族館と連携し、特別イベント「サンシャイン水族館教室~サンゴを学ぼう!~」を開催しました。前半は3×3Lab Futureにてサンゴの現状とプロジェクトの内容について紹介がなされ、後半では実際にサンシャイン水族館に移動して普段は見ることのできない水族館の裏側探検ツアーを実施しました。

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楽しみながらサンゴの基礎を知る

楽しみながらサンゴの基礎を知る

「サンシャイン水族館教室~サンゴを学ぼう!~」は、サンゴの魅力を紹介することでサンゴの重要性や、自分たちに何ができるかを考えるきっかけを作ることを目的としたイベントです。そこでこの日は、「楽しみながら学ぶ」がテーマ。サンゴ礁から生まれた鍾乳洞・玉泉洞の地下水を使用した「OKINAWA SANGO BEER」を嗜みながら、サンシャイン水族館でサンゴの飼育や保全活動に取り組むスタッフの方々による講義を聴く形で進行していきました。

まず登壇した堀田明里氏は、「サンゴはクラゲなど刺胞動物の仲間」であることや、「体内で共生する褐虫藻(かっちゅうそう)という植物プランクトンから栄養を得ている」こと、「サンゴは日没後に一斉産卵する」ことなど、サンゴの基礎情報をクイズ形式で紹介していきました。途中、各テーブルにはサンゴの欠片も配られ、参加者は手に取りながらじっくりと眺め、サンゴを体感していました。

image_event190530_02.jpeg(左上)サンシャイン水族館の堀田明里氏 (右上)沖縄で生まれた「OKINAWA SANGO BEER」 (左下)クイズ形式でサンゴを学ぶ参加者たち (右下)サンゴの欠片を手に取り、虫眼鏡でじっくりと観察

海洋生物だけでなく陸上生物にとっても有益なサンゴ、なぜ危機に?

続いて「サンゴについて勉強中」という今井俊宏氏から、サンゴ礁が果たす役割と、サンゴと環境問題の関係性について説明がなされました。

そもそもサンゴ礁とは「サンゴが積み重なってできた地形」のこと。当然海中にあるものですが、地上の生物にとっても重要な役割を果たしています。サンゴ礁は天然の防波ブロックとなっているのです。

「サンゴ礁は複雑な形で、強い骨格を持っています。例えば外洋で10m級の高い波が発生しても、サンゴ礁があると波を打ち消してくれ、陸に届くときには1mほどの小さな波になっているのです。人口の防波堤を造るには、1m辺りで100〜300万円ほど掛かると言われています。。仮に沖縄県を取り囲む防波堤を造ろうとすると、単純計算で4兆円〜12兆円という莫大な費用が必要となってしまいます」(今井氏)

このサンゴ礁を保全しなくてはならない理由はもう1つあります。それは、世界中の海洋生物の種類の約4分の1がここを貴重な住処としているからです。

「海の生態系は下から順に植物プランクトン、動物プランクトン、小さい魚、大きい魚となっており、サンゴは動物プランクトンと小さな魚の間に位置します。私たちの食卓には漁師さんが獲った大小の魚が並びますが、もしもサンゴ礁がなくなってしまうとこの生態系は崩れ、多くの海洋生物が姿を消してしまいますし、当然ながら私たちの家庭にも魚が届かなくなってしまうのです」(同氏)

そんな貴重な存在であるサンゴが危機に瀕しているのは、「サンゴを食べるオニヒトデの大量発生」「河川への土砂の流出」、そして「地球温暖化」という3つが主な要因となっています。このうち3つ目の要因について今井氏は次のように解説します。

「サンゴが健やかに成長するための適正水温は18〜28℃ほどですが、地球温暖化によって海水温が30℃以上になってしまうと、サンゴと共生している褐虫藻がいなくなってしまい、"白化"とよばれる状態になります。白化した時点ではまだサンゴは生きていますが、その状態が続くとやがて死に絶えてしまうのです」(同氏)

このまま地球の海水温が上昇をし続けていくと、今から50年後にはサンゴが姿を消してしまうという予測も立てられています。

image_event190530_03.jpeg(左上)サンシャイン水族館の今井俊宏氏 (右上)海の生態系におけるサンゴのポジション (左下)今井氏からの質問に答える参加者 (右下)自発的にメモを取る参加者も多く、意識の高さがうかがえました

サンゴを殖やす2つのアプローチ

サンゴが絶滅する未来を避けるために、サンシャイン水族館では2006年からサンゴの保全やサンゴ礁の再生を実現する「サンゴプロジェクト」をスタートさせています。このプロジェクトは、サンゴの役割や魅力を「知る・感じる」、サンゴの現在の状況を「伝える」、そして実際にサンゴを「守る・育てる」という3つの柱によって成立しています。プロジェクト開始時から担当している鶴橋梓氏からは、このうち「守る・育てる」活動について詳しい紹介がなされました。

「サンゴの殖え方は2つあります。1つは折れた枝が岩に再固着して成長していく無性生殖で、もう1つは一斉産卵した卵が受精し、成長していく有性生殖です。サンシャイン水族館では無性生殖でサンゴを殖やすプロジェクトを"サンゴ返還プロジェクト"と、有性生殖でサンゴを殖やすプロジェクトを"サンゴ礁再生プロジェクト"と題して取り組んでいます」(鶴橋氏)

2つのプロジェクトはいずれも沖縄県恩納村を舞台として行われています。「サンゴ返還プロジェクト」の場合、恩納村からサンシャイン水族館に母サンゴを輸送し、その枝から新たなサンゴを成長させ、ある程度成長ができたら恩納村の海へ戻すという取り組みです。この取り組みサンゴの増殖に貢献するだけではなく、万が一の備えにもなると鶴橋氏は話しました。

「もしも沖縄の海の環境が悪化してサンゴに大きなダメージが生じても、そのサンゴのDNAはサンシャイン水族館で保管されているので、また復活させることができます。ですから、水族館でサンゴを展示しているのは皆様を楽しませるだけではなく、DNAバンクとしての意味も持っているのです」(鶴橋氏)

「サンゴ礁再生プロジェクト」の方は、恩納村海域においてDNAを判別したサンゴを育成し、DNAが異なるサンゴを配置することで、受精しやすい環境をつくるというものです。

「サンゴはDNAが異なるもの同士でないと有性生殖ができません。サンゴのDNAの違いは外見情報だけでは判別は難しいのですが、私たちは沖縄科学技術大学院大学と共同研究を行い、その判別ができるようになりました。その結果、このサンゴ礁再生プロジェクトに取り組めるようになっています」(同氏)

このような取り組みによりサンゴを守り、サンゴが生きられる海を守ろうとするサンシャイン水族館。最後に鶴橋氏は、次のようなメッセージを投げかけて講演を締めくくりました。

「今回紹介したような活動で私たちはサンゴを殖やそうとしていますが、海の環境が悪い限り、どれだけ殖やしてもすぐにダメになってしまいます。ですから、海の環境がこれ以上悪化しないことがどれだけ重要なのか、皆さんにも考えていただきたいと思っています。

そして、これからもサンゴを保全する大切さを多くの人に広めるためにアプローチをしていきたいと思っていますので、私たちがご一緒できるプロジェクトがあれば、ぜひお話を聞かせていただければと思います」(同氏)

image_event190530_04.jpeg(左上)サンシャイン水族館の鶴橋梓氏
(右上)「サンゴ返還プロジェクト」で移植したサンゴは5年で15倍ほどに成長するとも (左下)サンゴの魅力や大切さを伝えるためのアイデアを募集していると鶴橋氏 (右下)最後に、サンシャイン水族館の丸山克志館長も挨拶を行いました

サンゴのために、私たちには何ができるのか

3×3Lab Futureでの講義が終了すると、一行は池袋のサンシャイン水族館へと移動し、水族館探検バックヤードツアーを行いました。出発前、鶴橋氏から次のような「心得」が紹介されました。

一. 水族館の中の偽物(造り物)と本物の違いを感じるべし
一. サンゴ水槽の照明にかけるスタッフの熱い思いを感じるべし
一. 水族館の裏側では、とにかく臭いに気をつけるべし
一. 水族館の裏側ではとりあえず、体感してみるべし
一. 都会ならではの水族館の秘密を聞くべし

「とにかく五感で水族館を感じて見てください」という氏のコメントを受け、参加者は皆、楽しみながらツアーに参加します。ガイド役のスタッフに積極的に質問を投げかけたり、滅多に見ることができない施設を写真に収めたりと、童心に返ったようにバックヤードを巡っていました。

image_event190530_05.jpeg(左上)レプリカ手に持ち説明する堀田氏 (右上)サンゴ幼生育成水槽 (左下・右下)ツアー終了後に集合写真

こうしてこの日のイベントは終了。参加者は満足感を覚える一方で、改めてサンゴの重要性に思いを馳せているようでした。海や陸、多様な生物の生活を支える存在であるサンゴ。その保全のために私たちには何ができるのか。大きな気づきを得られた1日になったことでしょう。


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