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【レポート】都市養蜂の未来へ(後編)

第1回 BEE COMミーティング 2020年2月8日(土)開催

11,13,15

日本全国の養蜂家・事業者を集め、養蜂活動から広がる新しい価値創造の可能性を探る「BEE COMミーティング」。前半では銀座ミツバチプロジェクト、大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアの取り組みを皮切りに、東京から2件、京都、島根、愛知と、全国の5事例が紹介されました。続く後半では、事例発表を元にしたワークショップを実施し、養蜂による地域活性化についてアイデアを議論しました。

※前編はこちら

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ワークショップとアイデア発表

ワークショップとアイデア発表

すべての事例発表の後、参加者によるワークショップを行いました。テーマは「事例発表を聞いて」と「養蜂活動を街づくりや地域活性化に活かすアイデア」の2点で、特に後者のテーマは、今後のBEE COMミーティングの方向性にも役立てようというものです。30分ほどのワークの後、各テーブルから内容のシェアを行いました。

※以下発表順。田中氏、村上氏からのコメントがあった場合は、末尾に付記する。

【グループH】
「単価が高いのでコストとの見合いが問題とはなるが、ハチミツは保存が効くことから、災害時の備蓄として利用してはどうか。巣箱のオーナー制度、大人向けのリカレント教育として利用する、というアイデアも出た。他、小中学校への出前講座で、ハチミツを通して生物多様性を教えていくことも重要ではないか」

【グループG】
「現在日本各地でハチミツプロジェクトが行われているので、各地の取り組みをマップ化してはどうだろうか。さらにアプリにして広げていることにも役立てられるのではないかと思う。老人ホームで養蜂をやると、老後の楽しみにもなるのではないかと思う。 また、多くの人はハチミツが画一的な味だと勘違いしていると思う。地域ごと、季節ごとまったく違う味であることを、季節のイベントなどを実施して知ってもらうことも重要だという考えもあった。ほか、プロモーションでは、アイドルに『養蜂ガール』に就任してもらうというアイデアもあった」

【グループF】
「巣箱を持っていって、出張講座を開く。ハチミツ自体の、食べるという用途以外の、いろいろな効果について知ってもらうようにすることも大事。ほか、ミツロウなどハチミツ以外の副産物を利用することも考えると、より資源の有効活用ができると思う。最近では、ミツバチの死骸も肥料にできるという話もあるそうだ。
養蜂を広めるために、プレゼント用ハチミツを作るのはどうかというアイデアもあった。プレゼントは人に渡す、伝えるというプロセスが生じるので、広めるのに役立つのではないかと思う」

田中氏「副産物利用では、時期になるとオス枠を入れてオスを集めるが、その死骸が栄養いっぱいなので、それを健康食品の企業などに持っていこうと思ったが、ダニもついてしまっているためにアレルギーの問題もあって難しいことが分かった。とはいえ、大切な生命なので、大事に使いたいと考えていて、魚の餌などに使ったらどうかということも考えている」

【グループE】
「都市養蜂は街の衛生も絡んでくると思うので、ゴミ拾いや掃除などクリーン作戦と絡めていくべきだと話し合った。他、マンションの組合と連携して屋上を使った養蜂や、小中学校の授業と連携する、花屋とコラボする、絵本の読み聞かせ等、さまざまなアイデアが出た。
事業性のある取り組みとしては、主に海外からの観光客を想定した体験ツアー。また、今日ここに集まっている皆さんが作っているハチミツや関連商品を販売するセレクトショップを作るのも良いのではないか。
ほか、都市養蜂における収支構造を知りたいという意見も出された。私も含め困っている人が多いようだ」

田中氏「収益性はどこも悩むところだと思う。我々も昔は理事でお金を出し合ってなんとかしていたが、それでは続かない。ぼったくりだと言われながらも、単価を上げて提供する等、価値を生み出す取り組みをなんとか展開してきた。近年は、屋上に植えたコウゾとミツマタで作った和紙が、マリオットホテルで使ってもらえることになって、だいぶ収益が改善されそうだ。補助金に頼らずに、地域ごとに、どのような価値を生み出すかはしっかり考えるべきところだと思う」

村上「大丸有では、Suicaで買い物をすると、地域の環境活動基金に1円が寄付される『エコ結び』というシステムを導入している。"広く浅く"お金を集めようというもので、今回のミーティングもこの予算を使っている。都市計画的には、カナダ・アメリカで導入されている『BID(Business Improvement District)制度』を日本にも導入しようという動きもある。つまり、まちづくり全体でお金を集め、養蜂にも利用しようという考え方だ」

【グループA】
「ミツバチ以外にも、まちづくりに転用が可能な取り組みがあったら、それを知りたいという話が出た。使えそうなノウハウを共有して都市養蜂に役立てたい。
また、都市養蜂では、企業やビルにぜひ協力してほしいと考えた。ビルひとつ・企業ひとつにできることは小さいが、例えば季節ごと、月ごとに変わる蜜源を、それぞれのビルの屋上に植えてもらうというのはどうだろうか。
企業の継続的な参画を促すには、社会貢献だけでなく、企業にとってもメリットのある形に組み込めれば良いのではと思う。CSRだけだと業績が低迷すると協力しなくなってしまう。利益とつながっていれば、業績に左右されずに継続できるのではないか。
また、共同住宅くらいのサイズでの養蜂だったら、住民同士の出資で可能になるうえ、地域のコミュニティづくりにも役立つだろう。『隣の家の人が分からない』という社会課題解決にもつながるのではないか」

田中氏「企業からいかに協力を引き出すかは、今も課題だと思っている。最近では巣箱に広告を付けるとか、期末に寄付を出してもらうとか、作業に人を出してもらうとか、さまざまな形で協力をいただいている。
しかし、私たちが今一番願っているのは、ITの技術者、資金調達や商品開発のプロ、販売やプロモーションに長けた人など、その道のプロ、専門家が関わってくれることだ。とはいえ、以前会計コンサルファームから来たプロボノの人が、こちらの思いをまったく無視して『あれはダメ、これはダメ』ということしか言ってくれなかったことがあり、もっとうまくスパイラルを描けるようなお手伝いの仕方をしてほしいと思ったことがあった。難しいところだが、そういうところに企業の方の、タレントの一部だけでも寄せてもらえればというのが今考えていることだ 」

村上「マンションの自治会等で養蜂をやるのはアリだと思う。企業ごと、ビルごとに花を変えるというのはすごくいいアイデアだが、今の状態のままだとそれは無理かもしれない。企業、ビルは、それぞれの敷地の中で外構を考え、完結しようと考えるものだ。その意識を変える必要があるだろう。
一方で、2019年に国交省が都市緑地法において『市民緑地認定制度』を創設した。簡単にいえばこれからの緑地は『量よりも質』を目指そうということで、民間事業者の固定資産税を減免して原資に充てて、地域で緑地を作ろうとしている。このあたりを今研究しているので、ぜひ皆さんと一緒に取り組みたい」

【グループB】
「都市養蜂は収益性が大事だという議論から始まり、どこも収支が良くないというところで議論が進まなくなってしまった。アイデアとしては、小さなミツバチプロジェクトは発信力・知名度に欠けているため、地域に根ざした他の活動グループとつながり、異業種間ネットワークを作って地域のブランド価値を全体として向上させる活動をしてはどうかという話題があった」

田中氏「『つながり』こそが、このミーティングのテーマ、目的だと思う。あるプロジェクトは、目の前に大学があり、近くに遊園地や商業施設があるという恵まれた立地であったにも関わらず、自分たちだけで活動していたために、後に続く人がいなくなり、結局静かに終息してしまった、ということがあった。積極的に周囲とつながらなければ広がらないし、続かないのが都市養蜂だと思う。ミツバチの仲間だけじゃなくて、それ以外の地域の人たちともつながれば、賛同者も増えて、協力してくれるパートナーも見つかるようになるのだと思う」

【グループC】
「このグループでは『知る』『分析』『活動』『ゴール』という4つの段階で進めようという話になった。
『知る』とは、ミツバチ、ハチミツに関する知識を得ようということ。例えばハチミツの味は環境によって大きく左右されることから、土地を知るためのリサーチをするといったこともそれに当たる。他にも巣箱の中の空気は健康に良いとか、そういった知識を調べ、広く共有するのが第一段階。
そして、ハチミツの味を科学的に『分析』するのが第2段階。これによって、味のラベリングをして、ハチミツを客観的に評価すると、さらにその価値を共有しやすくなる。
第3段階の『活動』とは、これらの知識や分析をもとにした活動をするということで、例えばハチミツを健康に役立てるツアーを作るといったこと。そして第4段階の『ゴール』では、養蜂タレントや4コマ漫画などで広く知ってもらうことがステップとなる。最近では各地でコーヒーフェスタが開催されているが、同じようにハチミツフェスタをやったらどうかというアイデアもあった」

田中氏「はちみつマイスター協会の『はちみつフェスタ』を銀座で開催して5年目となるが、毎年3000人くらいの来場がある。ミツロウ講座などすべて満席になるし、1年分のハチミツを買っているのではないかというほど大量に買う方もいて、興味を持つ人の多さには驚くばかり。それを見るにつけ、発信は大事だと強く感じている」

【グループD】
「持続可能な都市養蜂を実現するには、やはり企業を巻き込むことが必要だろうという議論となった。お金を集めるということだけでなく、企業にとっての養蜂の価値を高める工夫も必要だ。例えば企業が養蜂をやっていることが優れた人材の採用に役立つとか、生物多様性のABINC認証と絡めて、企業価値に転用しやすいようにするといったアイデアがあった。また、そうした企業が集まれば、東京ハチミツのブランド価値を高める活動にも繋げられるのではないかとも思う。
ハチミツの利用率を上げるために、8月21日を『ハニーの日』、旦那が奥さんにハチミツをプレゼントする、という日に認定したらどうだろうか。ハチミツが腐らないように、愛も腐らない。そんな表現になったら、面白いかもしれない」

田中氏「「8月のその頃は、オスが巣箱から追い出される時期なので(笑)、タイミングは考えたほうがいいかもしれないが、おもしろいアイデアだと思う」

すべての発表を終え、最後に田中氏からまとめとして次のような発言がありました。

「以前、大学の先生方などと都市養蜂についてさまざまな議論をしたときに、NPO、NGOが社会性を高めることで世界中から資金が集まるような時代になる、という指摘があった。今まさにそういう時代になっているのではないか。日本全体で1700兆円という資金が滞留しており、山野が荒れているといった自然環境を巡るさまざまな社会課題にはまったく資金が回っていない。明らかに社会の仕組みがおかしいのであり、これから社会は進化しなければならないのだと思う。私たちも都市養蜂の資金が足りないという議論から突き抜けて、私たちの生活はこうあるべきだ、社会はこうあるべきだということを示し、社会の仕組みを変えていく力にならなければならないだろう。その意味で、ぜひ、多くの皆さんの知恵を結集して、社会を変えていくモデルを都市養蜂から作り上げたい。愛知商業高校の発表をご覧になっておわかりのように、日本の未来は決して暗くない。もう少し、次の展開にすすめるため、皆さんと議論を深めていきたいと思う」

この日出されたアイデアは、エコッツェリア協会や丸の内ハニープロジェクト実行委員会が中心となり、実現を目指して動き出します。今後も、BEE COMミーティングを定期的に開催し、活動のプラットフォームの構築なども進めていく予定です。

懇親会では登壇者らのハチミツを試食。味の違いを楽しんだ。

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