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【レポート】アフターコロナのプロジェクト創出に向けて

ストラテジックミーティング「コロナ禍パンデミック後の世界を考える」 2020年5月27日開催

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5月27日、ストラテジックミーティングオンライン第2回が開催されました。テーマは引き続き「コロナ禍パンデミック後の世界を考える」とCOVID-19を扱います。この日は、インプットとしてStrategic Business Insights (SBI)の高内章氏からの話題を提供していただき、その後質疑応答、意見交換とともに、オンラインツールでのアウトプットを行いました。このアウトプットは事務局で整理し、ミーティング発のプロジェクトの立ち上げに役立てる基礎資料となります。

田口氏は開催にあたり、前回の現状と課題の共有から一歩進め、「パンデミックに対処する方向性を共有し、多様な意見を募りたい」と話しています。

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アウトプットからプロジェクトを創出

アウトプットからプロジェクトを創出

9象限でアウトプット内容を整理している様子

今回は、オンラインツールを利用し、参加者からCOVID-19に関して、現在どのような課題感を感じているか、または取り組みを始めているのかを記入してもらいました。書き込まれた内容の整理には、空間(距離)と時間を各3区分で区切った9つの象限を設定。空間は自身との距離で示したもので、「自分の身の回り」「地域や組織」「社会全体」の3区分、時間軸は、「直近」「数カ月後」「1、2年後」の3つで区分しています。また、これらに対して、自身がどの程度関与しているかも参考情報として記入してもらい、さらに具体的な内容についても記入してもらいました。

「本来、こうしたパンデミックに対しては10年単位の長期の取り組みが必要となりますが、自分自身が現実感を持って取り組める範疇として、今回は時間軸を1,2年までと設定しました。空間的な距離は、社会全体を見るだけでは片手落ちになるので、手前のほうに引き寄せて、細部と全体の両方を往復して考えてもらうよう、遠近をつけて設定しました」

と田口は解説しています。今回は、これらの意見をアウトプットとして整理し、そこから具体的なテーマを抽出してプロジェクト化するのが今回のミーティングのゴールとなります。

インプットトーク 「『人間の活動』という都市の中枢を襲ったCOVID-19」

インプットトーク資料から。COVID-19の感染状況をリアルタイムで公開するジョン・ホプキンス大学のサイトを紹介。

高内氏はSBIで、社会のさまざまな予兆を取りまとめ、これから起こりうるシナリオを描き出し、未来に備えてもらうという、Intelligence Evangelistとして活動しています。しかし、今回は「今は自らの役割を果たすべき持ち場で全力を尽くし、みんなで助け合うことが必要だと思います。今日はそのための話題共有の場にしたい」と話し、「巣ごもりトークの刺激剤」とゆるやかなタイトルで話題を提供しました。

シナリオ作成には、網羅的な社会のスキャニングが必要となりますが、今回のトークは網羅的な内容ではなく、あまり知られることはありませんが、アフターコロナの社会に大きな影響を与えると思われる、6つの話題をピックアップしています。

1つ目が「問い直されるグローバリズム」。移動が大きく制限された世界となり、航空業界や物流業界が縮小を強いられています。世界的にも観光業は大幅な人員カットが進められており、物流業界では今後「ニアショアリング」がニューノーマルになる可能性があると説明。

「便利になるばかりだった世界が、初めて移動を制限されるという経験したことのない状況に追い込まれている。こうした世の中で問われているのは『グローバリズム』のあり方ではないでしょうか。『ism』とはつまり意図を持った考え方ですが、今後、里山資本主義のような方向に行くとか、グローバリズムという考え方自体が問われることになると思います」

2つ目の視点が「エネルギー利用の分岐点」です。例えばタンカーに新型コロナ発症者がいたら、その船は入港できないといったような移動にまつわる脆弱性が、今後エネルギーにはつきまとうことになるのです。こうしたエネルギーを取り巻く背景の変化に応じて、100%天然ガスに依存していたシンガポールが、4000kmの海底ケーブルを敷設してオーストラリアから再エネ電力の輸入を開始することになった例や、デンマークではこのコロナ禍を逆手にとって、CO2削減目標を大幅に進める「グリーンリスタート」を政策決定するなど、エネルギー利用にドラスティックな変化が起きている例があります。日本でも福島県が、再エネ100%化の目標を前倒しにしようという動きが見られます。

「Forbesがコロナ禍の早期の段階で、コロナがエネルギー需要低下の『炭鉱のカナリア』になると解説していたように、エネルギーを取り巻く環境は大きく変わると思われます。原油の先物価格が一時マイナスになるという衝撃的な事態も起きたのはその象徴的な事例。日本でもエネルギーの安全保障の考え方を見直すべきかもしれません」

3点目は「新技術実装実験場『中国』」。コロナ禍を利用し、中国がトップクラスの技術を社会実装し、アメリカに匹敵する技術大国になる可能性です。もともと中国は高い技術力を持っていましたが、社会への実装が進んでいませんでした。しかし、COVID-19の拡大を受けて、習近平が先端企業に実証実験の推進を指示、配送用ロボット、AIによるCOVID-19識別・顔認証システム等の実用化が強力に進められています。

「COVID-19のため差別を受けてアメリカから追い出された中国人技術者、研究者が本国に戻って水を得た魚のように活動しているそうです。中国はコロナ禍から早抜けする可能性もあり、この実装実験がパンデミック後の中国の体力を決めることになるかもしれません」

4点目が「公器としての企業」のあり方が問われるという指摘。GMの人工呼吸器の製造、アリババのマスク製造、ランボルギーニのF1チームが人工呼吸器の開発に取り組むなど、トランプがなぞらえた「戦時生産体制」ではありませんが、企業が公の利益のために、私利を離れ、本業を越えて活動している例は枚挙に暇がありません。「企業は社会の公器である」という理念が問われています。

「パンデミックがフィルターとなって、企業の公益性を試しているとも言えるのではないでしょうか。『企業の公益性』とは行き過ぎた利益至上主義を批判するときにしか言われない言葉でしたが、パンデミックの今は好意的なシーンで使われています。このパンデミックで行動しない企業は、今後『あの時何もしなかったよね』と指弾されることになるかもしれません」

5点目が「草の根のイノベーション」です。これは「技術の民主化」でもあると高内氏。COVID-19の拡大を受けて、世界中で在野のハッカーが、オープンソースでさまざまなソリューション、ツールの開発に取り組みました。人工呼吸器の部品や医療消耗品を、3Dプリンターで製造するためのプログラム開発やデータ化なども行われたそうです。

資料から。現代社会がいかにリーンかを、病床数と保健所の変化で追った。効率性重視の結果、極めて"無駄のない"リーンな状況が生まれたが、トイレットペーパー騒動を見るまでもなく、リーンな社会は緊急時に非常に脆弱であることが、改めて明らかになった。

「平時だったら特許がどうのとなってなかなかできないこと。公共性が権利を上回った現象で、20世紀はおろか21世紀初頭でさえ見ることのできなかった世界です。こうした活動の多くがノンプロフィットに偏っているために、大企業が今後どのように対抗していくのかという問題も起きるかもしれません」

そして最後の6点目が「歪なソーシャルディスタンス」。要は社会のさまざまな「分断」です。COVID-19によってさまざまな格差が明確になり、社会問題化しようとしています。例えば教育では、オンライン授業が可能でコロナ禍でも授業が進められる私立学校がある一方で、公立学校ではネット接続環境や端末が揃えられず、授業が進められていません。ホワイトカラーとブルーカラーの分断もあります。アメリカではCOVID-19が蔓延している状況でもブルーカラーワーカーの90%が有給休暇を取れない一方で、ホワイトカラーは94%が取得。これはひいては子どもの安全の格差にもつながるかもしれません。また、日本ではまだ顕在化していませんが、ドメスティック・バイオレンス(DV)も大きな問題になろうとしています。在宅時間が長くなるために、DVの加害者から逃げられないという歪な距離感によるものです。

最後にまとめとして、コロナが襲ったのは、都市機能の本質である「人と人の間の活動」ではないかと指摘し、次のように述べています。

「都市は、大勢の人間の分業を許容することで成り立つ、人間の欲求を満たす互助システムです。誰が設計したわけではありませんが、欲望の需給が生まれ、それに付随する雇用が生まれ、それが積み重なって、極めて精巧なバランスによって都市を成立させているのです。しかし、それも人間がつながらなければ決して成立しないもので、その意味で都市の機能とは人間の機能だと言えます。今回のパンデミックは、その中心部分を襲ったのだと考えてみてはどうでしょうか」

さらに言えば、近代都市は効率化をすることで生産性やその価値を高めてきた歴史がありますが、それは平時に最適化された極めてリーンな状態であり、緊急時には脆弱であることも明らかになりました。

「この消費中心のリーンな生活を必要とする人も多いのですが、COVID-19を改める機会としてはどうでしょうか。すべてを変えることはできなくても、必ずレジリエンス向上に向けた解決の糸口はつかめるはず。そのためには、まずは自分の持ち場で全力を尽くすこと。我々は多様な生活断面を持っており、そこからさまざまな気付きを得ることもできるはずです。このコロナ禍の先にすべきことは、社会をかつてあったように元通りに『再現』することではなく、『新たな創造』ではないかと思います。我々はそれを『パンデミック・レガシー』と呼んでいます。今日は、皆で課題と気付きを共有し、ともに取り組んでいくための一歩としてもらえればと思います」

多様なテーマでクロストーク

発言者をピックアップ

後半、ブレイクアウトルームを利用し、グループに別れた議論を行うことも検討していましたが、書き込まれた内容に基づいて、主だったメンバーから発言してもらい、テーマごとの課題感を共有するやり方を採用しました。取り上げられたトピックスは「地方」「観光」「環境」「働き方」「教育」「コミュニケーション」等、多岐に渡るものでした。

「地方」の議論では、実際に地方を舞台に活動している者や地方からの参加者が発言。3.11から「地方創生」を経て、地方への回帰や地域活性化の動きは活性化したように見えるものの、決してうまく行っているわけではない現状が紹介されたほか、コロナ禍によって「村社会」の弊害が浮き彫りになっていることなどが話題に上りました。

観光産業については、アフターコロナのツアーのあり方として業界から提言されている「マイクロツーリズム」の議論となりました。マイクロツーリズムとは、地域住民が近隣を旅するというもので、短期的には地域内で観光産業のテコ入れを図るものとなりますが、長期的には地域の魅力の再発見や、地域内ネットワークの強化といった側面もあります。COVID-19の流行がある程度落ち着くまでは、マイクロツーリズムによって地域の魅力を磨き、来たるアフターコロナに備えるべきだという議論となりました。

環境を巡っては、高内氏の話題提供にもあったように、COVID-19を機に加速しようという動きが見られています。デンマーク、ドイツ、中国に続いて韓国でも取り組んでいくことが宣言された事例の紹介があり、すでに世界的潮流となっているにも関わらず、日本には情報があまり入って来ておらず、政策化の動きもなく、民間の活動も活性化していない状況の指摘がありました。とは言え、若者はセンシティブで情報にもタッチしていることが多く、若年層から活動が広がりそうだという見方もあります。

その一方で、COVID-19で経済活動が停滞したためにCO2の排出量は急速に減少したのですが、パリ協定で定められた目標には程遠いという話題もありました。これは、温室効果ガス削減がどれだけ難しいことなのかを、関係者に改めて痛切に感じさせるものであったそうです。

「教育」については、大学で教鞭を執っているメンバーがいたことから、小中高ではなく大学の話題となりました。示唆的であったのは、教育の時間・空間が大きく変わったとする見方です。Zoomで講義をすると、全国どこからでもアクセスでき、人数も講義室や教室のキャパに左右されず500人も受けることができたりもする。映像や音源はアーカイブできるので、受講生はノートを取るような知識伝達の手間を掛ける必要がなく、考えることに集中できるようになる。「9月入学」が俎上にのりましたが、「教育の時空間の規制がなくなることをもっとシリアスに考えたほうがいい」という指摘がありました。

他にもさまざまな議論が行われましたが、いずれも今後のプロジェクト創出の方向性に対して示唆的で有意義な内容となりました。

プロジェクト創発に向けて

記入された意見の傾向をグラフ化したもの(記入データから筆者作成)。クロスしてみると身近なテーマほど時間軸が短期に寄り、テーマの距離が遠く(広く)なるにつれ、時間軸も遠くなる傾向がある。大勢に応じたほうが良いか、例外的なテーマ・取り組みからアプローチするのか、どちらにしても内容の濃いプロジェクトが立ち上がりそうである。

今後、3×3Lab Futureの運営サイドでアウトプットの整理を行い、それを元に次回以降プロジェクトの創出まで行いたいとしています。3×3Lab Futureは単なるコワーキングスペースではなく、イノベーションのエコシステムを構築することを目指してきました。開設して4年目を迎え、具体的なアクションを創出する動きを加速していましたが、図らずもCOVID-19がその起爆剤になることになりそうです。今後のストラテジックミーティングの動きにご注目ください。


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