イベント特別イベント・レポート

エネルギーから見るリビングラボの実装のヒントとは

「リビングラボの未来を語る~アフターコロナの地方創生」 2020年9月23日(水)開催

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「リビングラボ(Living Lab)」とは、一般的に、市民参加型のイノベーションシステムの拠点を意味します。エコッツェリア協会では、東京大学先端科学技術研究センター(以下、東大先端研)の地域共創リビングラボ、三菱総合研究所プラチナ社会研究会とともに、都市部と地方が抱える課題や目標を共有して向き合えば、より良い未来が実現するのではないかという考えのもと、リビングラボを切り口に連携を続けてきました。

都市と地方の活性化のために、産官学はいま何をすべきなのか、そして次の一手は何か?2019年11月の第1回イベントでは、三者が描く未来社会の実現を加速させる手法・環境・ボトルネックなどについて討議。そして、今回の第2回はオンライン開催として、アフターコロナの暮らしの変化にフォーカスし、「SDGs」をキーワードに議論を深めました。SDGs未来都市である長崎県壱岐市を事例に、同市と包括連携協定を結ぶ東大先端研の杉山正和教授、そして長崎県壱岐市総務部SDGs未来課課長の小川和伸氏をゲストに迎え、壱岐市が取り組んでいる再生可能エネルギーに関する実証研究をケースに、リビングラボの実装に向けたヒントを探りました。

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共創意識の醸成がアフターコロナのカギ

共創意識の醸成がアフターコロナのカギ

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会の冒頭、長崎県壱岐市の白川博一市長の録画によるメッセージが放映された後、トップバッターとして東大先端研特任助教の近藤早映氏が登壇。まず、『ビフォーコロナ時代』の成果として、自身が福島県いわき市で取り組んでいるリビングラボの実施例「エコプロフィット事業」について紹介がありました。

いわき市のエコプロフィット事業は、福島県の『福島イノベーション・コースト構想』に基づいて進められているもので、風力発電による持続可能なまちづくりを支援する形で設定されています。近藤氏によれば、「風力発電」「エネルギー事業」と区切ってしまうと関わる企業が限定される恐れがあるため、「街のパン屋さん、雑貨店のようなプレイヤーにこそ入ってもらう必要がある」と考えていると言います。そこで、環境経営を地域の中小企業に指導・教育するドイツのエコプロフィットを日本で初めて導入し、多様なプレイヤーとワークショップを重ね、具体的なアクションプランの策定まで進めてきました。近藤氏は、この取り組みの今後について、次のように述べて発表を終えました。

「いわき市版エコプロフィット事業はまだ途中段階ですが、現時点までに、課題解決のニーズとシーズを顕在化できたことに加え、参加した方々に『地域経済圏』のベネフィットに対する関心を高めることができたという効果がもたらされたと考えています。そのためこの取り組みは、地域のステークホルダーが協力しあって課題に対してアプローチしていこうという『共創』の始まりになったのではないかと自負しています。せっかく始まったこの共創を途絶えさせることなく、加速していくことこそが、私たちのアフターコロナ時代の地域再生、地域活性の取り組みになると思っています」

Withコロナでも揺るがない、丸の内と地域をつなぐ地盤

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次に登場したのは、エコッツェリア協会の田口真司プロデューサー。エコッツェリア協会は、大手町・丸の内・有楽町の通称「 大丸有 だいまるゆう 」地区に集う企業とそこで働く就業者たちと共に、様々な社会課題の解決に向けたイベント等の実施や、次世代の働き方を模索・実験しながら研究開発に取り組む組織。田口氏は、同協会の概要や活動状況について簡単に説明しました。

「大丸有地区に本社を構える上場企業は約100社に及び、連結売上高を合計すると約130兆円、就業人口は約28万人を数えます。このエリアの価値を高めていくだけでなく、そこに集う人や企業が日本の各地域とつながることで幅広い可能性を切り拓くことができるのではないかという考えのもと、様々な活動を展開しています」

その特徴的なプログラムのひとつとして、田口氏は『丸の内プラチナ大学』を挙げました。丸の内プラチナ大学は、2016年にスタートしたビジネスパーソン向けのキャリア講座で、講座を通じてクリエイティビティを向上させ、人とつながることで、組織での再活躍のほか、起業や地域・社会貢献など様々な可能性を広げることを目的としています。

「丸の内プラチナ大学では、10コースのプログラムを提供しています。この後に登場していただく三菱総研主席研究員の松田智生氏が講師を務める、地方での期間限定型リモートワークを通じて働き方改革と地方創生の同時実現を目指す『逆参勤交代コース』では、これまで北海道上士幌町や埼玉県秩父市、長崎県壱岐市などに実際に赴いて、それぞれの地域の課題や魅力に触れて意見交換を実施してきました」

その他にも、『サッカーやスポーツを通じた地域活性化』を目指しているJリーグとのイベント開催や、宮崎県や静岡県御殿場市および同県浜松市などと連携協定を結ぶなど、エコッツェリア協会は都市と地域の人が一緒になって新しい社会を創っていくための事業やプログラムを多数展開しています

田口氏は「ここ3×3Lab Futureについて、コロナ後もコンセプトは変えずに運営していきたいと思っています。そのコンセプトとは、全国の地域や人々とつながりながら新しい価値を生み出して社会課題を解決することです。今日のようにオンライン形式でもコンセプトを具現化することはできますし、もちろんオフラインという方法を取ることもできます。いずれにせよ、今後もぜひ皆さまと一体となってプロジェクトを創り上げていくスタイルで活動していきたいと強く願っています」という決意表明で発表を締めくくりました。

準備は整った。Just Do It!

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続いて丸の内プラチナ大学で講師も務める、三菱総合研究所主席研究員の松田智生氏が登壇し、「逆参勤交代が拓くリビングラボの未来」と題した発表が行われました。
壱岐市の政策顧問も務める松田氏は、都市部の会社員が一定期間、地方で働く「逆参勤交代構想」を数年前から提唱しています。逆参勤交代は、働き方改革と地方創生を同時に実現する可能性がある構想として期待されており、その実践者が増えることで都市と地域で人材をシェアすることが可能となります。東京などの大都市圏から地方への新たな人の流れが生まれることで、地方に住宅やオフィスが整備され、空き家や廃校の利活用が進み、新たな関係人口が地方の担い手となって多面的な経済波及効果がもたらされると考えられています。松田氏は現在までに、長崎県壱岐市や北海道上士幌町のほか全国6市町村で逆参勤交代のトライアルを実施しており、トライアル参加者に地域の魅力や課題に触れてもらい、現地のキーパーソンとの討議で理解をさらに深め、市町村長を相手に課題解決策やビジネスアイデアのプレゼンを行うプログラムを提供しています。

「逆参勤交代とは、よそ者、すなわち大都市圏の住民が地域の市民と交流して、地域活性化プランを考えることに他なりません。昨今では"ワーク"と"バケーション"を組み合わせた造語である"ワーケーション"という言葉が注目されていますが、私はバケーション型のワーケーションではそのポテンシャルを十分に発揮できないのではないかと考えています。地域の人との"コミュニケーション"、地域での"エデュケーション"、地域に貢献する"コントリビューション"こそが逆参勤交代の本質だと思っています」

そのうえで、松田氏はリビングラボのポイントを「市民参加」「Just Do It」だと述べました。
「自治体や企業だけでなく、壱岐の市民、そして壱岐を訪れる市民のQOLを向上させることが何より重要で、両者の化学反応の触媒の役割を果たすのが逆参勤交代です。市民、市民同士、よそ者、よそ者同士が良い意味での化学反応を起こすことが地域創生には欠かせません。その意味で、逆参勤交代構想はアフターコロナの地方創生を推進するエンジンになり得ると信じています。何より強調しておきたいことは、リビングラボの主語は市民だということ、そして逆参勤交代は、SDGsの「8:働きがいも経済成長も」、「11:住み続けられるまちづくりを」の理念と一致します。今SDGsは胸のバッジをつけるだけに終わっていないかという問題意識があります。"バッジだけのSDGs"からはもう卒業しましょう。そしてまずは一歩を踏み出す勇気が大切だということです。今日この場に、東京大学先端科学技術研究センターの面々が集まっていますし、私が所属する三菱総研の準備も万端です。そして何より、この場にオンラインで多くの方々が参加されています。意識を共有する仲間は揃っていますから、あとは実行あるのみです。"Just Do It!"という部分を強調して発表を締めくくりたいと思います」

離島だからこそできる新たなチャレンジを

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ここからイベントは第2部へ移行し、リビングラボの実例として、長崎県壱岐市の取り組みが紹介されました。当日は、長崎県壱岐市総務部 SDGs未来課課長の小川和伸氏がオンラインで参加し、「壱岐市・粋・なSociety5.0~SDGs未来都市として見据えるビジョン~」と題したプレゼンを行いました。
壱岐市(壱岐島)は、九州北部の玄界灘沖、福岡県と対馬の中間に位置する島で、人口は約2.6万人。離島にもかかわらずアクセス至便で、周辺から1日15便のフェリーが就航しています。基幹産業は第一次産業で、生産額の約7割を肉牛生産が占めています。また、麦焼酎発祥の地として知られ、多くの農産物と海産物に恵まれることから「自給自足ができる島」とも言われているそうです。

小川氏によれば、豊かなのは食材だけでなく「歴史」も同様だと言います。
「古くから大陸と九州を結ぶ交易、交流の重要拠点として栄え、魏志倭人伝にも"一支国"としてその名が登場します。島内には280基の古墳群、1000を超える神社が存在し、かねてより"神々の島"と呼ばれてきました」

このように壱岐島は歴史遺産が豊富で、豊かな自然・文化・歴史を活用した地域振興に取り組んでいますが、離島、過疎地域として、少なくない数の課題を抱えていると小川氏は話します。
「経済面で言えば、基幹産業である農業漁業の後継者不足とそれによる停滞傾向、社会面で言えば、人口減少や若年層の島外流出に頭を悩ませています。また、環境面では、九州本土と電力が系統連系されていないため、島内の火力発電で賄っている状況があることに加え、島民の省エネ意識もそれほど高いとは言えません。そのため、再生可能エネルギーへの移行が喫緊の課題となっています」

こうした現状を打破し、地方創生を推進するための施策として、壱岐市はSDGsに注目し、経済・社会・環境それぞれの側面から変革にアプローチしています。
「SDGsの主要原則の中でも、特に"誰一人取り残さない"とする包摂性の部分に注目しました。市民を誰一人も取り残さないことはもちろんのこと、"離島としても取り残されてはいけない"という意識で様々な施策に取り組んでいます」

2018年、SDGs達成に向けた優れた取り組みを行う自治体として、壱岐市は長崎県で初めて、そして離島で唯一、「SDGs未来都市」として選定されています。また、このSDGs未来都市の中でも、特に先導的な取り組みとして「自治体SDGsモデル事業」にも選定され、現在は、SDGs推進関係省庁タスクフォースによる強力な支援を受けながら、SDGsの達成を市政の柱として、地方創生の促進に取り組んでいるところだと言います。

「本市がSDGs未来都市として目指している社会は、壱岐活き対話型社会"壱岐(粋)なSociety5.0"の実現です。2030年のあるべき将来像として、弥生時代以降、2000年間にわたって続く交流対話の島として、島の歴史を未来へつなぐとともに、先端技術を積極的に取り入れて、少子高齢化等の社会的課題の解決と基幹産業である第一次産業を中心とした経済発展を両立させることを目指しています」
その具体的なイメージとして、壱岐市では次の5つの柱を掲げています。

1.一次産業スマートイノベーション
2.自動運転を活用した高齢者の移動サポート・大気汚染の提言
3.若年から高齢まで幅広く交流し、互助関係の確立による安心・安全なまちづくり
4.クリーンで持続可能なエネルギーづくり
5.外部多様な知恵を取り込み、進化と変化を恐れない柔軟で強靭な地域づくり

「この5つの柱に基づき、生産から販売までの各工程に最先端のテクノロジーを組み込むことで、2030年にあるべき六次産業の姿を全国に先駆けて実現していこうと考えています」

その実例として、壱岐市では"スマート農業"の実証実験を進めています。具体的には、アスパラガスのハウス栽培において、土壌にセンサーを設置し、水分量の分析を行って遠隔操作で水を散布できるように、自動潅水のシステムを導入していると言います。
「散水の手間暇を軽減することにより、誰でも就業可能な環境づくりに取り組んでいます。本市のアスパラガスの生産高は年間340tですが、実はその1割、すなわち約30tのアスパラガスが、味や品質には問題がないにもかかわらず、"形や色が不揃い""傷がある"という見た目の問題で規格外品扱いとなっています。そこで本市では、株式会社ピエトロさんと協力してアスパラガス料理のレシピを共同開発し、電子レンジで温めるだけで食せる商品をECサイトで販売しています」

ピエトロ社との連携のように、SDGsの推進には様々な企業との連携が不可欠との考えから、壱岐市は平成27年に富士ゼロックス社と連携協定を締結。壱岐が暮らしやすい島であり続けるために何を変えるべきか、一人ひとりがやるべきことは何か、壱岐の未来はこうあって欲しい、といった意見を市政に反映させるための対話会"みらい創り対話会"を開催し、島内外の知見を集め、安心安全な街づくりにつなげるための取り組みを実施しています。
小川氏は「島内の高校生はSDGsへの関心が非常に高く、対話会の参加者も、実は約半数が高校生です」と目を細めます。

「環境面で言えば、『環境ナッジ』による行動変容を促す取り組みを進めています。省エネ活動の推進を例に挙げれば、中学生に環境教育プログラムを学んでもらい、その学びを通じて大人たちに環境の大切さを伝えてもらう。子どもたちが重要性を認識することで、自然に大人の行動変容を促す形を進めています。その他、エネルギー面では、東大先端研と連携して"水素"を活用した実証実験を進めています。このように本市では、先進モデルとなる事業を複数実施しています。今後も、離島だからこそできる新たなチャレンジを続けていきたいと考えております」

水素で養殖された美味しいフグはいかが?

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続いて登場したのは、東大先端研の杉山正和教授です。
長崎県壱岐市の小川氏も少し触れていましたが、東大先端研と壱岐市は、再生可能エネルギーの導入拡大と活用、水素社会実現による脱炭素、持続可能な街づくりなどを目的とした連携協定を結び、水素を活用したエネルギーマネジメント実証実験に取り組んでいます。この実証実験は、再エネ電力から水素を製造・貯蔵することでエネルギーの安定供給を目指すもの。「なぜ壱岐市で水素を?」と疑問に思った人も多いかもしれませんが、杉山氏は次のように回答します。

「太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは次世代エネルギーの筆頭候補ですが、いずれも"天候任せ"の再エネで、火力や原子力と違って"電力が不足しそうだから、追加で発電しよう"と思っても、補完的に発電できないデメリットがあります。再エネ電源は言わば"調整力がない電源"で、この電源だけで日本社会を回していくことは難しいと言わざるを得ません」

一方で、再エネが抱えるそのマイナス面を解消できる存在が「水素」だと杉山氏は話します。
「太陽光や風力で発電した電力で水分解を行うことで、エネルギー源としての水素を製造することができます。この方法を使って水素を製造して蓄えておけば、"使いたいときに追加で使えるエネルギー"を確保することができ、さらに製造から使用までの全工程においてCO₂フリーなエネルギーシステムを確立することができます。もっと大きく言えば、エネルギーの自給自足すら可能になります。私は、水素を使ったエネルギーの自給自足をぜひ実現させたいと思い、日夜奮闘を続けています」

では、なぜ"壱岐市"で水素を活用したエネルギーマネジメント実証実験に取り組んでいるのでしょうか。杉山氏は「離島は自給自足に適しているから」と説明します。
「東京のような都市部は土地が限られているため、すでに存在しているエネルギーと電力網に頼らざるを得ませんが、離島にその制約はありません。もし壱岐市でエネルギーを自給自足で賄うモデルを構築できれば地方創生につながりますし、すごく大きな価値を発信できると考えています。もちろん水素発電システムはまだ確立されていないため、直近で見れば価格が高くついてしまうかもしれませんが、10年後の2030年あたりを目指して少しずつ広めていけば、離島なら採算が取れるようになると考えています」

離島はその特性上、もともとエネルギーコストが高くなりがちです。だからこそ、離島では自給自足のようなシステムが受け入れられやすい土壌があると杉山氏は考えています。
「システムが確立できれば、太陽が出ているかぎり、風が吹いているかぎりどんどん電気が溜まっていきます。その価値は極めて大きいですし、社会にものすごく大きなインパクトを与えるのではないでしょうか。だからといって、誰もが簡単に水素エネルギーシステムに飛びつくわけではありません。社会的な価値や意義がどれだけ大きくても例えば、現在の電気代の10倍もの電気代が要求されるとなれば普及させることは難しいでしょう。とはいえ、現在の2~3倍程度の価格なら"使ってみてもいい"と考える人が増えていくのではないかと考えています」

見通しについてそう話す杉山氏ですが、先行きのシナリオを楽観視しているわけではありません。
「電気代や燃料代だけでこの問題を論じてしまうと、『コストパフォーマンスが悪すぎて導入できない(普及しない)』という話になりがちですから、それ以外の価値をカップルしてアピールしていくべきだと考えています。例えば、壱岐市は逆参勤交代の適地である、素晴らしいリゾート地である、などです。これらは大きな価値づけになると思います」

カップリングの候補として杉山氏が考えているのは、エネルギーと「食」を結びつけること。その一環として、氏は壱岐市で水素発電を使ったフグの養殖に取り組んでいます。
「壱岐市の特産品のひとつに、養殖トラフグがあります。フグは敏感な魚であり、水を絶えず浄化しておかなければ成育しません。そこで、養殖池の水の浄化に使用する電気を水素で発電するシステムを導入し、少しずつ広めていくことを考えています。燃料電池で発電すると"熱"が生じますから、その余剰熱を使ってフグ池の温度を高めることにも役立てることができます。やる気さえあれば、このシステムはすぐに導入することができます。スモールスタートでも構わないので、まずやってみることが重要です」

こうした再エネの大規模貯蔵システムの確立には、かなりの初期投資が必要になることは想像に難くありません。だからこそ、杉山氏はエネルギー以外の価値とカップリングすることが不可欠だと考えています。
「オーガニックワインに価値を感じる人が多いように、再エネで育てられたフグ、すなわち"再エネフグ"と聞けば、より美味しく食べることができるのではないでしょうか。そうした付加価値をつけていくことが大事だと思っています」

最後に、杉山氏は「地方創生では、手持ちのカードを自分で作ることができる」と話して、プレゼンを締めくくりました。
「カードゲームの場合、配られたカードで勝負するしかありません。対照的に、地方創生をゲームに例えた場合、カードを自分で作ることができます。良い気づきがあれば、見方によっては無意味に思えたものを"エース""切り札"として用意し、使うことさえできます。だから再エネも単なる電気や燃料というふうに単視眼的にとらえるのではなく、頭を柔らかくして、広い視野で考えていってほしいというのが私の願いです。松田さんの話にもありましたが、すべてのパーツが揃うまで待っていても世の中を変えることは難しく、まずは壱岐市など小さなユニットでスモールスタートし、まずやってみることが大事。小さな成功事例を積み重ねていくことで、次の大きなフェーズに移行できると信じています」

企業が地域、社会に対して握るカギとは

杉山氏のプレゼン終了後は、登壇者への質疑応答が行われました。
エネルギー問題における世界と日本の土壌の違いや、離島の特性について質問がありつつ、企業に勤める参加者が多いこともあり、街や大学として、企業との連携に関する期待や課題はあるか投げかれられました。

小川「いろいろな事業や市政についてご提案をいただく機会は多いものの、それがなかなか事業に結びつかないということは、どこの自治体にもあるかと思います。
壱岐市の場合、富士ゼロックス社との連携がなぜうまくいっているのかと考えた時に、お互いが win-win の関係になるというのはもちろんですが、やはり企業の本気度が大きいように思います。
実は富士ゼロックス社とは一般社団法人を設立しておりまして、地域活性や地方創生に関する事業を協働で行うべく、それぞれ出向して一つの組織を作っています。そういったイーブンな関係性ができているということがポイントだと考えています」

杉山「これから大学自身が起業家となるという話はなくはないものの、現状、社会実装していくのは企業であると思います。地域の特性をうまく利用した上で、そこに新しい価値を導入していくことの担い手に企業がなっていく必要があると考えています。
単純に現在の貨幣価値で割り切るということだけではなく、それがこの先どういう波及効果を持つのか。最初はデモンストレーションとして損するかもしれませんが、それを大きく広げていこうという機運を持ってまずは取り組んでみるという事例を、離島や地域を舞台にして行うと良いのではないかと思います。
おそらく、そうしたことを仕掛けられるのはまずは資金力がある大手商社かもしれませんが、それだけでは裾野が広がらないので、技術力の高い中小企業などと地域がうまく連携する仕組みを作り、起動的に実践できると良いですね」

近藤「地域が持続可能であるという未来を描く時には、企業は企業でも、地域の企業に担い手になってもらうということが欠かせないと感じています。
例えば、いわき市でのエコプロフィット事業を通して見えてきたことは、地域の企業が自分たちの無駄になっている資源をほとんど把握していないということ。Aという工場でどのような材料があるか、B という小売店は何を欲しているかという情報交流ができると、地域で資源が循環していくと思います」

松田「SDGsや地方創生は一部の意識の高い人や、やる気のある人というスモールボリュームだけが発信していくのでは市場が広がりません。大丸有地区には28万人もの就労人口がいるわけで、このマスボリュームを動かすことが大事だと考えています。それから『程よい強制力』が日本人には効果的です。例えば、SDGsを掲げる企業は社員研修で壱岐に行く、それを実践した企業は法人税が減税となるなど、何か制度設計ができれば良いのではないかと考えています。
私がこれまで地域との関わりの中で分かったこととして、実は、能動的でなく、上司の指示であったり、人に誘われて地域へ訪れた人の方が、その地域を好きになる傾向があるんです。だからこそ、地域とのつながりに、これから興味を持つ可能性のある『潜在関係人口』をいかに動かすかが大事だと考えています」

田口「壱岐市もフィールドワークを行った、丸の内プラチナ大学『逆参勤交代コース』には、企業に在籍する方が多くご参加されています。
我々もそうですが、日頃、企業人として発言するときは、組織内で精査してからの提案となるためアイデアが狭まってしまう。個人としての発言はアイデアに溢れる一方で、実行力が足りない。だからこそ、逆参勤交代、そしてリビングラボとして、そのバランスを取りながら活動を進めていきたいと考えています」

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最後に、リビングラボへの今後の期待を語って本イベントは締めくくられました。

近藤「みなさんのお話を伺って、地域活性化に向けて大切なことは"実践すること"だとあらためて感じました。さまざまな地域で、アイデアがあるが実践する人や組織がなく動けない、という状況もあると思う。そこを打破していくように、リビングラボを推進していきたいと思います」

杉山「リビングラボを実装するには、やはり人のつながりが大事で、そのつながりの中でアイデアに対していかに感度良く実行していくかがポイントだと思います。
逆参勤交代を例に考えたときに、参加者の行き先選択の決め手となるものは、まずはその地域に魅力があるということ。それは、地理的な条件だけでなく、"人"の魅力が大きいのではないかと思います。将来的に、逆参勤交代の希望者が全国各地好きな地域を選べる、ふるさと納税のような広がりが生まれると素晴らしいですね」

小川「昨年度の逆参勤交代への参加者からは、それぞれとても具体的な提案をいただきました。まだ実現には至っていないものの、プロジェクトを動かせないかと、課を横断して検討しているところです。離島は"日本の縮図"ともいわれるように、壱岐も可能性を秘めた島だと感じています。積極的にいろいろなことにチャレンジして、島の良さを引き出しながら取り組んでいきたいと思います」

松田「例えば、壱岐=東洋のダボス、という存在を目指せると良いですよね。経済のことを知りたければダボスという小さな街に集まるというように、リビングラボの未来像を知りたいときには壱岐に行くべきだ、といった時代になるかもしれない。そうして活動が大きくなっていくことで、シビックプライドを高めることにつながるのではないかと思います。
もうひとつ述べたいことは、"市民主語"の大切さです。再生可能エネルギーの導入で雇用が増える、都市部の大人が地域の子どもたちの教育に貢献するなど、リビングラボを実装することで市民にとってのメリットを提供できるようにしていきたいと思います」

田口「今回のイベントはオンライン開催となりましたが、コロナ禍の影響を見ながら今後フィールドワークも実施していきたいと考えています。新時代だからこそ見えてきたこともたくさんあると思いますので、ぜひみなさんと一緒に取り組んでいきたいと思います」

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