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【レポート】さまざまなキャリアの女性たちが創出する、新しい農業ビジネスの可能性とは

Japan Harvestライブ「女性がけん引する、これからの農業」2020年10月31日(土)開催

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2020年10月31日、⾷と農林漁業の祭典『ジャパンハーヴェスト』のプログラムのひとつとして、「女性がけん引する、これからの農業」が開催されました。

国連が掲げた国際目標として世界中から注目されている「SDGs(持続可能な開発目標)」。そのなかでも「農業」は主要な目標に位置付けられており、これからの社会を作っていくうえで極めて重要な産業です。
昨今、日本の農業の現場では特に女性たちが、自身の経歴や得意分野を活かして目覚ましい活躍を遂げています。本イベントでは、農林水産省が推進する「農業女子プロジェクト」のメンバーである3名の女性農業従事者がパネリストとして登壇しました。日々の仕事内容や農業にかける思い、今後の農業の課題などのさまざまなトピックスを通じて、女性ならではの視点から農業の新しい可能性を探ります。

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農業者から農業経営者へ変わりつつある女性農業従事者

農業者から農業経営者へ変わりつつある女性農業従事者

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はじめに、本イベントのプレゼンターである上岡美保氏(東京農業大学 国際食料情報学部 国際食農科学科 教授、「食と農」の博物館 副館長)から女性農業従事者の強みや、過去から現在に至る変化・特徴について説明をいただきました。

これまで農業は3K(=ツライ、キタナイ、キケン)というイメージがあり、家族経営も多く、男性農業従事者がメインであるようにとらえられていました。しかし現在は積極的な女性農業従事者の参画もあり、その認識が変わりつつあります。
とりわけ、2013年より農林水産省が取り組んでいる、女性農業従事者自身のアイデアで農業の発信・発展を目指す「農業女子プロジェクト」の動きは目覚ましいもの。ホームページ上のコラムには、「女性が輝く、地域ブランドを立ち上げて活性化させたい」「自然・農業・文化を次世代に伝えたい」「食品加工やキッチンカーなどの6次産業で農業を盛り上げたい」といった意見が並びます。

「農業女子の活動は、全てSDGsに繋がっている。農業を通じて、地域を、日本を、世界を変えられる大きな可能性がある」と、上岡氏は語ります。

「新規参画した女性農業従事者の前職はさまざまであり、今までの経験・専門知識を巧みに活用して農業女子自身が異業種コラボをしているといえるでしょう。農業の経験が少なくても、農業女子プロジェクトは全国の仲間とSNSなどのネットワークで繋がっており、そこで悩みを相談するなど情報交換のできる環境があります。また、農作物の購買層である主婦目線に立った商品開発や販売の工夫ができることも、農業女子の強みの一つです」(上岡氏)

上岡氏からは、農業女子プロジェクトメンバーの堀川さちさんのコラムより、新・農業の3Kは「希望、輝き、幸福」であるとの紹介がありました。
農業の現場で活躍することで、女性は家族の理解や支援を受けやすくなりつつあります。男性のような体力がなくても、地域で農業に従事する同世代の女性がいなくても、農機具の進歩やネットワークにより女性でも農業に参画しやすく、また、自身の経歴を活かして、これまでにないアイデアを農業分野に取り入れている女性農業経営者も増加しています。
これからの日本農業の維持・発展には女性のパワーが期待されています。

つづいて、今回のパネリスト3名(古沢昌子氏、瀬川知香氏、島田馨子氏)にパーソナルヒストリーを語っていただき、それぞれの経験を踏まえたパネルディスカッションを行いました。

image_event_201031.003.jpeg(左上)古沢氏、(左下)島田氏、(右下)瀬川氏

スマート農業で、農業とより深く携わる

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古沢昌子氏(いなほ総合農園)は、栃木県塩谷郡の広大な土地で米・麦・大豆・蕎麦などを家族で生産し経営しています。いなほ総合農園では農作物の生産から販売までを行っており、消費者のニーズに合わせて加工、商品化と6次産業にまで展開しています。

農家の3姉妹の長女に生まれた古沢氏は、短大を卒業後に異業界で事務の仕事を経験した後、父親から家業を引き継ぎました。結婚、出産を経て現在農園主となった古沢氏は、ロボットやICTを取り入れて効率化する「スマート農業」を取り入れた経営をしています。

「スマート農業を取り入れるにあたり農園の土地を細かくアプリに登録する必要がありました。手間もかかって大変でしたが、委託をしやすくなったというメリットがあります。また、うちの農園は水稲がメインということもあり、作業を進めるうえでどうしても機械に頼らざるを得ないところも多くあります。そういった農機具の使い方をきちんと覚えていけば、女性でも無理なく農作業を行なうことが可能です。機械を有効活用した農作業を体験して『私一人でも農業ができる!』という自信を持ちました」(古沢氏)

スマート農業で労力を削減できたことにより、今まで以上に多岐に渡る種類の仕事を行なうことが可能になりました。そんな古沢氏だからこそ、強く感じる農業の魅力があります。

「生産だけではなく、加工・事務・配達・販売など、農家はいろいろなことができます。そして、頑張って取り組んだことは、そのまま自分の喜びにもなって返ってきます。これから新規参画する方には、ぜひそういった喜びを知ってもらえたらいいなと思います」(古沢氏)

「得意」を掛け合わせた農業

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瀬川知香氏(Sweet×Sweet)は、鹿児島県南九州市頴娃(えい)町でコーンの農家と、頴娃の暮らしを体感できる「暮らしの宿 福のや、」の運営、農業の体験プログラム企画・実施などを行なっています。人と関わることが好きだという瀬川氏は、旅行系の専門学校を卒業後、旅行会社と観光協会の勤務を経て、農家へ嫁いだ後に農業の道を歩み始めました。

瀬川氏の農場ではスイートコーン・ヤングコーン・ポップコーン・西洋人参の栽培を、商品パッケージ・加工まで一貫して丁寧に行なっています。つくり手は瀬川氏の夫、伝え手は瀬川氏自身と、お互い得意なことで農業に携わっています。
「暮らしの宿 福のや、」では宿泊・日帰りでトウモロコシの収穫のほか、ワークショップや街歩きなどが体験できます。観光ガイドも務めていた瀬川氏が、その経歴を活かし「得意」を農業に掛け合わせて出来上がった体験プログラムです。滞在した利用者にプログラムへ参加してもらい、モノだけでなく「体験」を売りファンを作ることが、収益に繋がると考えています。
「美味しいものを作るにはまだまだ先輩方には適わないけれど、人の魅力・景色の良さを知ってもらうことで農業に関心を持ってもらい、『じゃあ、その産地に行ってみようか』と思ってもらえるように、農業と観光の連携を進めています」(瀬川氏)

実は瀬川氏の夫は、もとは頴娃町の一大産地である茶畑の農家でしたが、「自分の好きなもの、美味しいと思うものを、自信を持って栽培したい」という思いから独立し、頴娃町で唯一になるコーン農家を始めました。

「従来の『農業』という枠組みにとらわれず、自分の好きなことや、得意なことを掛け合わせる。そうすることで新しい考え方や選択肢、顧客の層など、可能性が広がると思います。新規参画する方はあまり難しく考えず、いろいろな人と関わり合いながら、自分らしい農業の形を見つけていって欲しいと思います」(瀬川氏)

※「暮らしの宿 福のや、」の「、」には、それだけで終わりではなく、様々な地域の繋がりが広がっていく意味が込められている。

未経験から農業の世界へ

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島田馨子氏(株式会社ゆうゆう農場)は大学卒業後、印刷営業・広告代理店・会計事務所を5年ずつ経験し、小笠原旅行をきっかけに移住に関心を持ち、その後神奈川県相模原市の農業法人「株式会社ゆうゆう農場」へと転職しました。ゆうゆう農場では会社の同僚とともにネギ、ナス、ホウレン草、ブロッコリーなど季節の旬に合わせてさまざまな野菜を栽培しています。

3社目の会計事務所に勤務している時、激務でオフィスに閉じこもりがちになった島田氏は「このままでいいのか?」と自問自答した末、小笠原旅行へと出かけます。そこで出会った美しい景色と自然に魅了されて移住と農業に興味を持ち、偶然訪れたゆうゆう農場で食べたトマトの味に感激し転職を決意しました。 農業の知識や経験は一切ありませんでしたが、前職で培った販促品企画制作、営業事務、人員手配などの経験を活かして体系的に業務の見直しを行なった結果、転職後わずか3年で年商を3倍にするという偉業を成し遂げます。

島田氏は、女性が未経験で農業に新規参画することのハードルは、世間で考えられているよりも低いと感じています。
「農業というと長年の勘や経験がないと経営が難しいイメージがあると思うのですが、実際はそんなことはなく、データに基づいて、しっかりと目標を持ち、分析し、自ら考えて行動することを意識できれば、未経験でも十分に活躍できます。新規参画するからこそ、既存のやり方にとらわれない新しい形の農業へ挑戦していくことが可能です」(島田氏)

農業には女性ならではの視点が活かせるとも考えています。

「農業は比較的自分で仕事のスケジュールを組むことができ、家事や子育てと並行してパートナーと作業を行なっていくこともできます。そして、女性農業従事者は消費者の厳しい視点を持っていることが、経営として考えた時に大きな利点であると思います」(島田氏)

新しい農業を盛り上げるために

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農業女子プロジェクトには高校・大学などの教育機関が協力し合い、次世代の農業女子を育てていく「チーム"はぐくみ"」があります。農業は持続可能な職業選択としても、若い世代から注目を集めています。
これからますます産業としての広がりが期待される農業ですが、新たな可能性を作り出すには、「やり方を変えるところは変える、踏襲するところは踏襲する」といった構造・意識の変革も必要です。従来、力仕事が多かったために労力が評価基準となっていた「農業」ですが、今後は消費者とのコミュニケーションが鍵となり盛り上がっていくことが予想されます。

イベント後半のパネルディスカッションでは、「工夫している点や課題」についてプレゼンターも交えて活発な意見が交わされました。パネリスト3名からは共通して「農業は楽しい」「自分の力で農業を盛り上げたい」「周りの人に伝えたい」という強いパワーが伝わってきました。
農作物を口にしている以上、農業従事者だけでなく、おのずと消費者も農業という産業には関係しているといえます。消費者も食育などを通じて農業を学ぶことが、SDGsの掲げる「陸の豊かさも守ろう」、「つくる責任、つかう責任」、そして何より「住み続けられるまちづくりを」という課題に対して不可欠な行動となるのではないでしょうか。


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