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【レポート】日常のモヤモヤから生まれた事業案を育てよう 「起業家志望」の女性向けプログラムスタート

女性アントレプレナー発掘プログラム2020 ~Program1~ 2020年11月20日(金)開催

8,9

起業に興味があるけれど、どうしたらいいのか分からない。子育てと仕事を両立できるか不安。コロナ禍で生活が変わったため、自分で働く方法を考えるようになった。......そんな「起業」についての悩みを抱えている女性に向けて、全4回の「女性アントレプレナー発掘プログラム2020」がスタートしました。Program1は、「モヤモヤを事業案にしてみよう」がテーマです。

ファシリテーターは「Live Your Life すべての人に、自分らしい人生を。」をキーワードにジョブマッチング事業などを行う株式会社Warisのリクルーティングコンサルタント・矢澤弘美氏。アドバイザーには、新規事業開発コンサルタント、現在は女性医療×AI事業にも取り組むvivola株式会社CEO・角田夕香里氏を迎え、大手町の3×3Lab Futureをスタジオとして全国各地の参加者をZoomでつなぎます。

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実は男性よりも女性のほうが「起業」に向いている

実は男性よりも女性のほうが「起業」に向いている

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矢澤氏は、Warisが女性3名の共同創業者によって立ち上げられ、さらに今はそれぞれ東京・神奈川・ホーチミンと国を越えてテレワークを行っていることを話しながら、「肩ひじを張らなくても、誰もができるものとして起業をとらえてほしい」と優しく語りかけました。

「誰もが起業をしなければならないわけではありません。ですが、起業は誰もができるものです。ALL RAISEという米国団体の調査によりますと、まだまだ男性社会のなかで、女性の起業家への投資はわずか12%にしかすぎません。ですが、女性だからこその気づきやモチベーションがあり、女性は起業に向いていると思っています」と矢澤氏は続けます。

その理由は大きく2つあります。1つ目は、「女性の起業家の多くは課題解決や、自分ができることをやりたいと考えている」ということ。米国ベンチャーキャピタル「First Round Capital」が発表したレポートによると、金銭的リターンを第一の目的に置く男性は15%なのに対して、女性はなんと2%だといいます。2つ目は「女性創業者の成功比率が高い」ということ。男性創業者だけでのスタートよりも成功率が63%高いというデータもあり、女性ならではの巻き込み力や段取り力などは、事業を動かす力となりそうです。

インターネットやSNSなどを使って誰もが発信できる環境が整い、「起業」に取り組みやすくなりました。今は、事業を小さくはじめて、自分らしい働き方と並行しながら育て、自分のキャリアを積んでいける時代です。矢澤氏は「起業するために必要なこと」として、
「①心から熱中できる素晴らしいアイデア」
「②少数ユーザーに愛される素晴らしいプロダクト」
「③強みを補い合い価値観を共にするチーム」
「④小さい勝利を積み重ねる素晴らしい実行力」
「⑤自分の人生において実現したいライフスタイルビジョン」
これら5つを挙げ、事業案を可視化して人に伝える力が大切だと力強く語りました。

続いてこの日のプログラムのゴールである「事業ネタの見つけ方を知る」「事業をやる理由を明確化する」「仮説構築する」を角田氏の講義から学びます。

起業アイデアは「日常」や「原体験」にある

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起業にあたって最も重要なのが起業アイデアの見つけ方です。どこか難しくとらえてしまいがちですが、実は身近なところにあります。

「あなたが情熱を傾けられるものは何でしょうか。または、感情が強く揺さぶられたことは何ですか。自分の身に起きた嬉しかったこと、悲しかった原体験のほか、友人知人の身に起きた嬉しかったことでも構いません。アフリカの発展途上国のニュースを見て心が揺さぶられたことでも大丈夫です。事業ネタは難しく考える必要はありません。これまで生きてきた中で、経験して触れて感じたことすべてが事業のアイデアの種になります」

角田氏が4年間で携わってきた新規事業サポートの中の原体験は、お子さんを預けて仕事をする方が子どもの成長をオンタイムで知りたいという思いや、コロナ禍でリモートワークに疲れていることなど。日々の生活のなかで感じた思いが事業案になっています。

不妊治療の患者向けデータベース「cocoromi(こころみ)」も角田氏の原体験が大きなヒントになりました。不妊治療を行う中で、仕事との両立の大変さや医療用語の難しさ、客観的なデータエビデンスが欲しいと感じて自分が欲しかったサービスを作るきっかけになったと角田氏は話します。

起業をしなければならない理由を明確にする

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アイデアを見つけたあとは、なぜその事業を自分がやるのかを知り、ストーリーを考えます。その方法が「Will(やりたいこと)」「Can(できること)」「Must(やるべきこと)」の3つの視点から理由を見つけること。ここでは、「コロナ禍でのリモートワーク疲れ」を課題とした場合に、それぞれのフェーズで押さえるべきポイントを見ていきます。

「ワークで見えてきた課題感に対して、何を実現したいのか、どう変えていきたいのかを考えるのがWill であり、自分の意志が最も影響します。たとえば、コロナ禍のリモートワーク疲れを課題としたとき、まず考えられるのが、肩がこるなどの身体的な疲れです。また、20代の新卒の人であれば、リアルではなくオンライン中心の状況において、上司や同僚とのコミュニケーション不足により心が疲れる原因になるかもしれません。では、どうやって彼らに心の豊かさを届けようかと考えたときに、彼らの心情の背景やどのような環境を求めているのか、などを整理することも必要です」(角田氏)

続くCanのステップでは「何ができ、どのようなアプローチができるか」を洗い出します。自分の強みを棚卸してどんなリソースがあるのかを明確にし、具体的なシステムを使って解決する方法を見つけます。「リモートワークのコミュニケーション不足で心の疲れが起きている」が課題であれば、SEの経験を活かしてコミュニケーションツールを作る、心理カウンセラーの経験があれば会話をするなど、今の自分自身ができることを書き出します。今までの仕事を振り返って、他の人よりスムーズにできることや時間をかけずにできること、人より努力せずにできること、努力してでも楽しいことを考えることにもヒントがあるようです。

その上で、「外部要因や前提条件を考える」のがMustのフェーズです。たとえば、オンライン上のコミュニケーションで解決できることは無いか考える、スピード感のある開発をする、といった条件をおさえながらも、新型コロナウイルスが収束しても使えるようなサービスを作りだすなど、サービスを行う上で欠かせない前提条件を棚卸します。

ここで、参加者からは「Canのフェーズでは、どのようにチーム作りを行うと良いか」といった質問が出てきました。角田氏のおすすめは、ネット上のプロダクトを利用すること。新規事業のプロトタイプ検証時には、最大10名のプロボノから問い合わせを受けたことがあったと角田氏は話します。また、「肩書やキャリアがないとトライできないのでは」という質問に対しては、角田氏・矢澤氏ともにスモールスタートからはじめ、走りながら小さな成功経験を積み重ねるのが大事という意見が一致しました。

「私自身、Excelで自ら数百人のレポートをまとめることからはじめ、小さな成功体験を続けてシステム開発を行いました。細かくマイルストーンを置くことも重要です」(角田氏)

事業計画書をつくるための仮説検証

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最後に、事業の仮説を構築し、事業計画書に持っていくステップについてのパートです。

「事業の仮説を立てるには、顧客が誰で、どんな事に困っていて、どんな努力をしていて、その上でも解消されない不満が何かを考えます。その不満を解決するサービスを提供し、いかに顧客に価値を感じてもらうかをストーリーにすることが大切です」(角田氏)

ここで最も大切なのは、「その事業は誰を幸せにするのか」。すなわち顧客が誰かということ。そのために顧客セグメント、課題が生まれる背景を細かく捉えます。たとえば「共働き家庭で子供の成長が見守れない」という課題のターゲットについて考えると、パートタイムかフルタイムか、勤務地と住まいの距離、マンションか戸建てか、趣味や休日の過ごし方などそれぞれの環境は異なります。これを書き出して、ターゲットを誰にするか、顧客ペルソナを明確にしてグループ分けを行い、どこに優先度を置くかを決めていきます。

顧客のターゲット層が明確になるとターゲットの世帯数が分かり、メインターゲット層が何%いて、単価はいくらになるかという市場規模が算出できます。同時に、初年度はグループAの市場シェアを狙い、2年目、3年目はグループB、Cへの展開を行うというように数年先を視野にいれた事業計画も見えてきます。

合わせてターゲットへのヒアリングも重要です。ターゲティングがずれるとマーケティングの戦略も営業の戦略もすべてが変わってしまいます。初めに細かくグループ分けを行っておくと、ひとつのグループがだめだったときの事業戦略の切り替えもスムーズです。

「私の場合は、自分の治療を振り返りたいと考える人をターゲットに定めました。似たようなサービスで相談プラットフォームを提供しセカンドオピニオンをとるものもありましたが、主体的に治療に取り組める人をターゲットにして差別化を図りました」(角田氏)

ここで気になるのが「ヒアリングの対象はどのように見つけるか」。この質問に対しては、角田氏ご自身の経験として、アロマディフューザーを作ったときにアロマ検定の会場で300人にインタビューを行った経験が語られました。また、Instagramの妊活アカウントで300~700人をヒアリングしたことや、企業向け事業の場合はヒアリングサポートを行うサービスを使うなどネットや他のサービスを活用することも大切だと話します。

また、「クライアント獲得をどのように行うのか知りたい」という声には、サービスが受け入れられたときと失注したときを分析して需要性が高い企業をリストアップし、シェアを高めるといったアドバイスがありました。「セグメントを絞ることが大切」というのも角田氏、矢澤氏共通の意見です。初めは小さな土俵でナンバーワンになり、シェアを取ってからサービス内容を調整して別のグループに展開するのが事業をスケールするコツだと語りました。

事業計画書をつくるためのおすすめフレームワーク

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フレームワークを使ったストーリー構築、差別化のコツについての説明が続きます。

▼カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップは、ユーザーの行動とその感情の変化を時系列でまとめるもの。ターゲットの課題が生まれる前、課題を感じたとき、課題を感じた後の動きなどの「行動」、に合わせてどんな「思考」がなされ「感情」が動くかを表にします。

「不妊治療でいうと、病院を検索する、治療を開始するといった行動があります。そこから仕事との両立が難しい、長期間の治療になるといった課題が見えてくるので、どんな行動をとるか顧客を分析します。このように顧客の課題を広い視野でとらえて、他社に負けないサービスを作ります」(角田氏)

▼競合商品のリサーチで差別化を図る
競合商品のリサーチもおすすめです。インターネットで競合を検索し、顧客インタビューのときに他社サービスの使用実績をヒアリングすると顧客単価も見え、何にフォーカスして差別化すれば良いのかが分かります。

「競合製品がない」と思った場合でも、思わぬところに競合がいることも。角田氏がアロマディフューザーを手掛けたときの競合は、実は「香りを入れて持ち歩ける小さなアロマ瓶」でした。「手段・手間がかからない」「オイルで手が汚れない」という課題解決で差別化を図りました。

「どうすれば、自分の商品がお客様に選ばれるものになるかを考えます。たとえば、お子さんの成長を見たいという課題には、最終的に動画を撮影してスマートフォンと連携するサービスを作りましたが、先生への声がけなどアナログな対応では解決できない課題を整理しました。既存製品との差別化には、ポジショニングマップや製品スペック表も便利です」(角田氏)

事業案出しから仮説検証までを一気に行った今回のプログラム。参加者からは、「友人のお子さんが抱えている課題がきっかけで起業を考えるようになった」、「コロナ禍で職を無くしてしまったことを機に起業の道を考えている」、「地方にいるのでオンラインでの開催が嬉しい」といった声が上がり、さまざまな環境に身を置く参加者が集まる幕開けとなりました。

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