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【レポート】「起業」目指す女性たちが事業ピッチに挑戦、小さな自信や気づきのタネに 

女性アントレプレナー発掘プログラム2020 ~Program4~ 2021年2月15日(月)開催

8,9

東京都の「インキュベーションHUB推進プロジェクト」の一環として、2020年11月にスタートした「女性アントレプレナー発掘プログラム2020」。起業したいが、何から始めたらいいか分からないといった悩みを抱える女性に向けた、全4回の体験型プログラム。最終回となるProgram4のテーマは「初めてのピッチ体験」です。

ファシリテーターは、「Live Your Lifeすべての人に、自分らしい人生を」をキーワードにジョブマッチング事業を行う株式会社Warisのリクルーティングコンサルタント・矢澤弘美氏。アドバイザーには、新規事業開発コンサルタント、現在は女性医療×AI事業にも取り組むvivola株式会社CEO・角田夕香里氏を迎え、参加者をZoomでつなぎます。

前回学んだ「効果的なピッチストーリーの作り方」の実践編として、今回は立候補したプログラム参加者が自身の事業アイデアについて5分間ピッチを行い、角田氏のほか、本プログラムを主催するエコッツェリア協会の田口真司が講評を行いました。

冒頭で矢澤氏はピッチを聞く参加者に向け、「自分の聞く立場を設定すると面白いと思います。ピッチイベントには、投資家や銀行の投資担当者・オープンイノベーションを探している大企業の新規事業担当・エンドユーザーなど色々な立場の方がいるので、自分がその立場でどう聞くのか是非意識してみて下さい。あとは何を解決しようとしているのか、ユーザーはどこにいるのか、なぜお金を払ってでもそのサービスを使いたいのか、なども意識してみましょう」とアドバイスします。

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乳児検診をきっかけに女性の産後うつをケアする(鮫島美智子氏)

乳児検診をきっかけに女性の産後うつをケアする(鮫島美智子氏)

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トップバッターは山梨県で4人の子育てをする鮫島氏。最近は社会問題として挙げられつつもまだ認知度の低い母親の産後うつに関して、子育て中に何度も参加した乳児検診の機会を活用したソリューションを提案します。

冒頭で、女性の就業率を表すM字カーブは解消されつつあるとはいえ、非正規雇用・核家族の割合も増加していることから、母親の抱える負担は以前よりも増していることを挙げ、次のように続けます。「私自身も子育て中にアイデンティティクライシスという大きな問題に直面しましたが、女性の産後うつの発生率は10%~15%と言われており、去年は約8万人の母親が産後うつに直面しています。これは第一子だけでなく第二子・第三子でも起こり、社会と繋がりの薄い孤独の中で子育てをしなくてはならないという母親の生きづらさが社会問題として発生しています」

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公的なサポートや子育て支援NPOも多くある中で、それでも産後うつが発生してしまうのは取りこぼしがある為だと鮫島氏は指摘。そこで「ジブンマネジメントラボ」という組織を立ち上げ、保護者が必ず参加する乳児検診という機会をもっと活用し、母親の子育てや生き方をサポートしていきたいという思いに至りました。

乳児検診の場を活用したサービスは、公的サポートの紹介/マインドセットワークショップの開催/パートナーとの連携をサポートするタスク共有アプリの提供/公的サポート実用に向けたヒアリングを考えているそう。このサービスで、鮫島氏の暮らすような地方都市においても、乳児検診の市民満足度アップ、公的サポートの運用実績上昇、M字カーブ解消による自治体の税収増加、移住促進などを実現し、このロールモデルを人口減少・少子化などの問題を抱えた全国の地方自治体に広げていきたいと将来の展開を語ります。「公的サポートや子育て支援NPOで足りない部分を、ジブンマネジメントラボのサービスと掛け算にすることで、点と点から面にしたい。これからの時代のお母さんの心と日常を支援していきたい。」と意気込みを見せます。

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▼講評
「M字カーブの一般論に対する問題提起の仕方が上手く、第二子・第三子の時でも同じ問題が起こるのは、男性や一人っ子の親は知らない方もいるのではないかと思うので、原体験を盛り込んでいたのは凄く説得力がありました。今後としては、サポートをさらに具体化し、ターゲットの年収や都市部か地方都市かなどエリアがもう少し明確になると聞き易くなると思います」(田口)

「ストーリーはとても良かったので、次はさらに具体的に何をやりたいのか、このシステムを実現する上で、誰をどんな順番で巻き込んでいけばいいのか考えてみましょう。また締めの部分は、ターゲットを意識して考えると良いと思います。例えば資金調達が目的であれば必要な費用を示したり、保険会社ならPOCを一緒に実施したいとか、大企業なら福利厚生に導入して下さいなど。それぞれのオーディエンスに向けて、最後にスライドを1枚追加するとより伝わりやすくなると思います。是非実現してほしいです」(角田氏)

親も子供も納得できる放課後時間を提供する(崎田裕子氏(仮名))

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続いて、「自分たちの子供を通わせたい学童施設がない」という学童保育に対する思いから生まれた崎田氏の事業アイデアの発表です。

小学生の子供を2人もつ共働きの崎田氏は、「子供に良い放課後を過ごさせてあげたい」という思いから様々な習い事に通わせましたが、土日も習い事の準備に追われ、英語のアフタースクールに通わせれば子供が英語嫌いに。公立の学童施設からは頻繁に事故報告があるなど、思うように納得のいく放課後を見つけることが出来ませんでした。

また、子供が育ち盛りであるため、ご飯をしっかり食べさせてあげたいのに、夜7時に帰宅してバタバタご飯を準備し9時には子供を寝かしつける生活に、子供への罪悪感と働く親の負担の大きさを感じたと言います。

さらに日本の公教育だけでは不安だけれども教育移住まではできない、アフタースクールも英語とプログラミングばかり。このような学童保育と教育への思いを友人と話していたところ、友人も同じような不安を抱えており、それであれば自分たちで納得のいく学童施設を創ろうと崎田氏はYouth And Mindを友人と共同設立。2022年4月に、アフタースクールのオープンを目指しています。

設立を目指す学童の3つの特徴について、「1つ目はゆとりのある時間の提供。一般的な学童保育は学習プログラムが忙し過ぎたり、遊ばなくてはいけない雰囲気がありますが、家みたいにボーっとする時間と空間をつくり、親子両方に食事も提供したい。2つ目は英語やプログラミングではなく、非認知能力を高めるプロジェクト型学習を取り入れます。3つ目は、アプリを通じて感謝や希望を伝えられ、子供・スタッフ・関わる大人の3者間の信頼を構築しやすくするシステムを導入することで、心理的安全性の高い場としたい」と話し、親子共々忙し過ぎる放課後問題の解消と、将来のためになる新しい教育を提供したいと語ります。

子供の教育費を惜しまないが教育移住まではできないといった世帯年収の高い層をターゲットに都内に展開予定で、学童保育の場として使っていない時間はスキルシェアスペースとして貸し出したり、アプリが上手くワークすれば販売も視野に入れていると言います。

「Youth And Mindは、放課後を家族にとってかけがえのない時間とし、親と子の成長を促すことで、10年後の未来を作っていきたい」と崎田氏は熱く語りました。

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▼講評
「学童保育の問題もよく耳にする身近な社会問題で、子供を産むと大変という負の情報も蔓延している中で、ぜひこういったサービスを広げていただきたいですね。ターゲットが明確化されているので、回り始めたら本当によく回るサービスだなと感じました。今後はファーストユーザーをどう掴むのかをより具体化していくと良いと思います」(田口)

「最初の背景の掴みはとても良かったので、コンテンツの魅力ももっと具体的に伝わると良いと思いました。また原体験は伝える上で強みになりますが、独りよがりな課題と取られないように極力客観的なデータも提示できると良いですね。その他、価格の受容性をアンケートで取るなどしてデータ化すると、資金調達のピッチでは説得力が増すと思います。集客については体験学習を研究している大学教授などお墨付きになりそうな方をイベントに招いて、その話を聞きに来た潜在ユーザーを取り囲んでいくといったような考え方もあると思います」(角田氏)

起業に向けて、ファリシテーターからのエール

3名のピッチを終え、最後に角田氏は、「自分のアイデアや事業を振り返った時に常に今何が足りない要素なのか、ここをもう少し具体化して考えたいなど色々気づきがあると思います。それを明日からまた補充していくと良いビジネス提案になっていくので、ずっとやり続けていただきたい。サービスは常に自分が今持っているもの、足りないもの、目指したいゴールに対しての差を意識しながらやっていくので、皆さんぜひ引き続き頑張って下さい」とエールを送りました。

また、当協会の田口は、「今時のビジネスは突拍子もないアイデアでやるケースはまずなくて、大体はすでに誰かがやろうとしていたり、悩んでいたりするものが多いと思います。だから自分の持っているアイデアは周りにどんどん発信した方がいい。それで真似されたらタイミングが悪かったと割り切る。思い描いても、やり切る人は1%もいません。こういったピッチの機会はもちろん、近所の人や友人にも沢山話すと、アイデアもどんどんブラッシュアップされていくと思うのでぜひ頑張ってほしい」と参加者の背中を押しました。

今回ピッチを行った参加者は、「1回ピッチをやると今後どんどん出来るようになる気がする」、「ピッチでは味方につけたい人まで想定できていなかったが、応援してくれる人を探すために行うのも良いかもしれないと感じた」など、それぞれが小さな自信や気づきを得たようでした。オーディエンスの参加者も「自分のアイデアをもっと具体的にし、次回は自分がピッチを行いたい」と意欲を見せています。

全4回の「女性アントレプレナー発掘プログラム2020」を通して、事業アイデアを見つけてブラッシュアップし、発信するまでの一連のプロセスを密度濃く、楽しく学ぶことが出来るプログラムになったのではないでしょうか。近い将来、参加者の中から女性起業家が生まれることに期待が膨らみます。

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