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【レポート】フワッとした思いから人生が変わる旅のコーディネーターになるまで

女性アントレプレナー発掘プログラム2021 ~Program1~2021年7月21日(水)開催

8,11

自己実現の手段として、起業・創業をもっと身近に選べるように。一歩踏み出してみたい女性達に贈る、東京都「インキュベーションHUB推進プロジェクト」女性アントレプレナー発掘プログラムがいよいよ今年もスタートしました。

第1回の講師は、エコ・コンシャス・ジャパン合同会社代表・戸沼如恵氏です。北欧のサステナブルでクールな暮らしに魅了され、その幸福度の高い暮らしのあり方を日本に伝えたいと創業。人生が変わる旅のコーディネートを中心に様々なビジネスを展開し続ける戸沼氏の起業ストーリーを、北欧への溢れる熱い思いと共に語っていただきます。

ファシリテーターは株式会社STORY コミュニケーション・デザイナー・若松悠夏氏。ナビゲーターは株式会社リコー TRIBUS推進室・大越瑛美氏が務めます。今回のイベントは3×3Lab Futureの会場とZoomによる、リアルとオンラインでのハイブリット開催となりました。

冒頭、エコッツェリア協会 プロデューサー・田口は「エコッツェリア協会は、人と人を繋いでまちづくりをしています。創業者にとって大切なことの1つは『仲間を増やすこと』なので、今日は講師の話を聞いて学ぶと共に、ぜひ参加者同士の繋がりを作って下さい」と参加者に語りかけました。

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娘のデンマーク留学をキッカケに最初は勢いで創業

娘のデンマーク留学をキッカケに最初は勢いで創業

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「思ったらすぐに第一歩を始めてしまうのが、意外と大事なのかもしれません」
こう話す戸沼氏の創業は、長女のデンマーク留学がキッカケでした。

戸沼氏は大の旅行好きで、短大卒業後は憧れの大手旅行会社に就職。しかし想像以上の忙しさから3年で旅行業界を離れることになりました。その後、他の業界へ転職し2人の娘を育てながらも充実した日々を送っていました。

時が過ぎ、ある日高校生の長女がデンマークへ交換留学することが決まります。始めは「デンマークってどこ?」と思うほどデンマークについて何も知りませんでした。しかしその国の生活や社会を調べる内にすっかりその魅力にハマっていきます。

「日常にこそ質の高い暮らしを、という考えをはじめ、男女平等、ヒュッゲ(心地よい時間と空間)、石油石炭から自然エネルギーへのシフト。こういった価値観や社会がとても新鮮で、調べれば調べるほど興味が湧いていきました」(戸沼氏)

そんな時、たまたま訪れた新宿で開催していた「Eco Conscious Denmark展」で、デンマーク人の暮らしに対するサステナブルでクール、かつクレイジーなアイデアの展示を目にしました。その素敵なアイデアの数々に時間を忘れるほど魅了され、「このアイデアを何らかのカタチで日本に広めたい!」と戸沼氏の心に火が灯ります。同時期に身内が使っていた事務所を相続したこともあり、「経費の掛からない場があるから、この際会社を立ち上げてしまおうか」と考え、その場で社名を「Eco Conscious Japan」と決定。すぐに友人に電話したところ2人が賛同し、2010年、展示会からわずか1ヶ月、本業を続けながら各自が自分で仕事を作って活動するというスタイルで「フワッと小さく」創業しました。

小さな縁を繋ぎながら動いて踏み固める

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ところが10ヶ月経っても戸沼氏曰く「趣味の延長」のような状態で、中々事業にすることが出来ませんでした。友人2人は戸沼氏と同じような熱量で北欧が好きなわけではないため、結局仕事を生み出すことが出来ず、しまいには離れていってしまいます。そこから戸沼氏は1人で模索する日々が続きました。

しかし1人になったことは、戸沼氏にとって大きな学びであったと言います。
「仲間が離れていったのはとてもつらい経験でした。ただ身軽になったことで気持ちが楽になり、今度は誰にも気を使わず、会いたいと思う人に1人でどんどん会いに行きました。ボランティアでも北欧について話して欲しいと言われれば、全国どこへでも足を運びました。その時の小さなご縁が次のご縁に繋がり、次の仕事に繋がっていったのです。企画書や立ち上げのビジョンも大事ですが、それは動いている内に絶対変わってきます。でもそれは動かないと分からない。1人でもとにかく動いて踏み固めていきました」(戸沼氏)

東日本大震災の経験からデンマークスタディツアー開催へ

2011年5月、戸沼氏は友人と東日本大震災の瓦礫の片付けを手伝うため東北を訪れました。津波による惨状と原発事故によって引き起こされた事態に「日本はどうなってしまうのだろう...」と大きなショックを受けます。しかし、かつてデンマークでは原発によるエネルギー政策が、市民の反対運動によって風力発電などの再生可能エネルギーによるものへと方針転換されたことを思い出します。戸沼氏はいてもたってもいられず、すぐにデンマークのロラン島へ向かいました。エネルギー施設・農場・学校を取材し、さらに元々原発建設予定地だった場所を訪れ、そこに風力発電機が建設されている光景を見た時は涙が溢れたと言います。「日本の未来もこうなって欲しい。日本で北欧のことを一生懸命発信していたけれど、まずは日本人にデンマークへ来てほしい」。戸沼氏の心が定まります。

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帰国後、旅行会社に勤めていた経験を活かし、2012年5月に「第1回デンマークスタディツアー」を企画、20名の参加者が集まりました。そしてツアー参加者も風力発電機の光景に同じように涙し、帰国後に何らかの活動を始めていく姿を目の当たりにした戸沼氏は「これだ!」と確信したと言います。

自分のベストを積み重ねて強みを磨き、人生が変わる旅のコーディネーターに

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こうしてデンマークとフィンランドのツアーを催行していく内に、2014年には「フィンランドの教育ツアーを作って欲しい」という依頼が入ります。自分でツアーを主催する仕事から、ツアープログラムを作るという仕事が生まれたのです。このように旅行会社ではなく独立したツアーコーディネーターとしての立場が確立されていくなかで、毎年ツアー数が増え、年間10本以上の北欧ツアーコーディネートの仕事を受けるようになりました。最初のフワッとした思いが、ようやく事業化していったのです。

「ツアーを作る時はその時の最大限のコネクションを使い、参加者が期待する以上のツアープログラムを組む。どんな仕事でも自分のベストを積み重ねる。これが私のモットーです。そしてベストを積み重ねてきたことで、強みが磨かれてきました。強みとは誰にも負けない、事業の軸になる部分です。私の強みは『強い想像力とそれを形にしていく力』『強い人脈』『好き嫌いなく人とフラットに関われる力』ですが、これらは仕事をして人と関わる中でぶつかり、失敗しながら磨かれてきたと思います。皆さんもぜひ自分の強みは何かを考えてみて下さい」(戸沼氏)

このように強みを磨くことで、戸沼氏のツアーは宣伝広告費0でも売れ続け、催行率ほぼ100%、今では多くの人から「人生が変わる旅」と言われるまでになりました。

質疑応答

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戸沼氏の起業ストーリーの後は、参加者はグループワークで感想のシェアを行いました。戸沼氏のエネルギーに影響されてか、会場・オンライン共に参加者同士の会話が弾みます。グループワークの後は、戸沼氏へ様々な質問が投げかけられました。

▼「一緒に事業を始めた仲間が離れていった時、どの様に感じましたか?」(参加者)

「今思えば熱量がそもそも違うので当然だなと思います。『仲間』と『仕事を一緒にする人』は違うということを、強烈な痛みと共に理解し学びました。ただいつも仕事を作ってあげないと、と気を遣っていたので気持ちはすごく楽になりました」(戸沼氏)

▼「感情の波がある時、どの様に自分の気持ちを上げてきましたか?」(参加者)

「コンサルなど相談相手を必ずもつ様にしています。自分で解決するよりも聞いてもらう方が早く解決するし、違うエネルギーが入ってくるのが良いです。そうすることで気持ちがアップダウンするのではなくニュートラルでいられます。 また仕事が増えて幅が広がってくると、求められることが多くなり自分が今どこにいるのかが分からなくなることがあります。自分は何がやりたかったのか、何のためにやっているのかを、相談相手と話すことで軸を戻すようにしています」(戸沼氏)

▼「昨今若い人が失敗を恐れる傾向にあり、自分が相手に何を提供できるのかと考えてしまいがちです。人に会うことをどの様に考えていますか?」(参加者)

「私の動き方の特徴は、メリットを考えずに人に会い、縁を作っていくことです。一見自分には関係ないと思っても、縁は繋いでおこうといつも思っています。人は会いに来てくれるとすごく嬉しいし、会うと何かが始まります。特に始めたばかりの人や若い人は、自分がこの人に会って何になるのだろうと考え過ぎて会うのをやめてしまいがちですが、もう少し会ってみる、それで嫌だったら次は会わないでも良いのではないでしょうか」(戸沼氏)

▼「戸沼さんの事業は利益を考えずGiveに溢れているように見えます。利益をどの様に考えていますか?」(参加者)

「利益を考えず仕事をしているわけではありませんが、利益はついてくると考えています。安ければツアーに来てくれるという考えは全く無く、お金を払ってくれたお客様が金額以上のものを受け取れるようにツアーを作っていますね。そのために自分の仕事の価値を上げていきたい思いは常にあります。 だから自分はどれくらいの金額の仕事ができる人間なのか、ということは常に精査しています。お客様がより質の良いものを受け取っていけるように自分の時間とエネルギーを使っているので、質が上がっていったらそれなりに金額も上げて仕事をしていきたいと考えています」(戸沼氏)

▼「戸沼さんの人と関わる方法について教えて下さい」(参加者)

「日本と北欧の方と同じくらいの頻度で関わりますが、自分の仕事にどれくらいの価値をつけるのかを考えるのと同じくらい、相手の仕事の価値を尊重したいと考えています。相手にこれくらい支払いたいなと思いながらツアーを作っていて、請求書がきたら即支払うようにしています。大きな会社は支払いが遅いですが、私は関わりの中で支払うことを信頼の一つだと考えています」(戸沼氏)

▼「どうしたら自分の強みを磨いて、自分を信じることが出来ますか?」(参加者)

「自信はいつもあるわけではなく、自信が無いことも沢山あります。だから自分1人で頑張ろうとせず、苦手な部分は他の人に任せるようにしています。私は0から1の立ち上げが得意ですが、1から2は不得意です。特にWEB関連や事務的なことは苦手ですが、2人の娘がライターとWEBデザイナーなので、パンフレット作りなどを担当して貰っています。自身の無い部分は他の人で補完することで、このチームなら大丈夫だという自信をつけています。自分を信じるのと同じくらい、相手を信じて任せることは意識しています」(戸沼氏)

▼「自分のベストをどうやって重ねるのでしょうか?」(参加者)

「北欧ツアーを始めた頃は集客ノウハウが全く無く全てが手探り状態、ツアーに人が集まらない時期もありました。特に2回目のデンマーク・フィンランドツアーは15名が最小開催人数なのに5名しか集まらず、その時は可能性がある人全員に会いに行き、必死に声をかけ続けました。最後は奇跡的に15名集まりましたが、私はとにかくやれることの全てを出し切ることでベストを積み重ね、ダメだったら諦めようという発想でやっています」(戸沼氏)

▼「辞めたいと思ったことはありますか?」(参加者)

「辞めたいと思ったことはありません。東日本大震災での出来事から全く思いがブレなくなりました。日本の方をまず北欧に連れて行って体感していただきたい、という思いでやっています」(戸沼氏)

事業を行う上での3つの軸

最後に、戸沼氏は事業を行う上での軸を次のように話します。

1つ目は『仕事をすることで健康になる』
「事業を行った結果、忙しくて不健康になったら意味がありません。よく食べよく寝て家族と過ごす時間があり、ストレスを沢山抱えない。せっかく起業したのに、それらが失われては元も子もありません。仕事をすることで健康になることをとても大切だと考えています」

2つ目は『四方よし』
「自分・相手・社会に良いだけでなく、地球にとっても良いことなのかを常に確認しています。会社を立ち上げた時に感じた原点の一つである、どうしたら環境に良く世界がサステナブルになっていくか、というのが今でもブレない軸です」

3つ目は『北欧で自身の暮らしをよくする』
「なぜ北欧なのかを考えると、事業のためだけでなく私個人の人生を良くするものだと感じたからです。だから幸福度の高い北欧で見て体験して教えて貰ったことが、本当に自分の暮らしの中に生きているのかを確認しています」

戸沼氏は「創業をした当時は勢いで走っていましたが、最終的には自分は何のために存在して仕事をしていくのかを考えるようになりました。皆さんもぜひ考えてみて下さい。この場で集えたことを一つの縁だと思って、繋がり合って下さい。皆さんがやりたいことを実現する小さな一歩を応援しています」と参加者に語りかけ締めくくりました。

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次回Program2のテーマは「仕事と家庭のバランス」です。夫婦でお互いがやりたいことをどの様に実現しながら仕事と家庭を両立させているのか。講師である夫婦のリアルから学んでいきます。

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