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【レポート】ライフイベントを共に乗り越える夫婦から見る、仕事と家庭のバランス

女性アントレプレナー発掘プログラム2021 ~Program2~ 2021年8月2日(月)開催

5,11,17

キャリアについて考える女性たちが起業・創業を選択した多様なゲストのライフヒストリーを聴き、参加者同士の対話を通じて「私のありたい姿」についてー緒に考える「女性アントレプレナー発掘プログラム2021」。Program1「私の創業ストーリー」に続いて、Program2のテーマは「仕事と家庭のバランス」です。

今回は、ユニークなキャリアを構築し、夫婦でさまざまなライフイベントを一緒に乗り越えてきた、西部沙緒里氏・山本尚毅氏のお二人がゲストです。西部氏は、2016年に株式会社ライフサカスを創業し、不妊や出産など「産む・産まない・産めない」にまつわる体験談を集めたWebメディア『UMU』の運営や、大手企業での企業内人事・人材開発職務経験を活かした「女性活躍と健康支援」の研修・アドバイザリー事業などを展開してきました。2020年には東京から群馬に一家で移住し、一般社団法人かぞくのあしたを創業、西部氏を中心に運営を行っています。

本プログラムを主催するエコッツェリア協会 プロデューサー田口真司に加えて、ファシリテーターには、株式会社STORYのコミュニケーション・デザイナーを務める若松悠夏氏、ナビゲーターには、株式会社リコーのアクセラレータープログラムTRIBUSを立ち上げた大越瑛美氏を迎え、大手町の3×3Lab Futureから、会場の参加者と全国各地の参加者をZoomでつなぎます。

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病気と不妊治療をきっかけにした創業と、夫婦間の攻めと守りのバランス

病気と不妊治療をきっかけにした創業と、夫婦間の攻めと守りのバランス

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株式会社ライフサカス創業のきっかけは、西部氏自身の「病気」と「不妊治療」でした。自分自身が病気と向き合うなかで、なかなか公に語られにくい「命を生み出すプロセスで個々人が抱える悩みや葛藤」についての話をオープンに語れる場をつくりたいと思うようになりました。

「当時は、恥ずかしながらビジネスモデルをきちんと描けていなかったものの、同じように原体験を持つ心強い創業メンバーが揃っており、勢いがあったことから、とんとん拍子に事が進みました」(西部氏)

しかし創業2年が経った頃にどん底期を迎えます。当初計画していたプロダクト開発がうまくいかず、事業を軌道修正することになってしまったのです。人との交流も無くなり、会社の解散を考えるほどでしたが、山本氏や当時のチーム、近しい友人知人たちが伴走してくれたことで、翌年には立て直しが図れたと、西部氏は当時を振り返りました。

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家族として、また良きパートナーとして生活を共にしながら、個人としてそれぞれに活動をされてきたお二人。ファミリー・ライフヒストリーの年譜を見ると、個々に大きな挑戦をされ、苦労を乗り越えられてきた様子が伺えます。年譜から二人とも「守り」の時期はありますが、二人とも同時に「攻め」の時期がないことについて、意図してバランスをとっているのか、偶然このようになっているのかと質問がなされました。

「基本的に他人に巻き込まれてエネルギーを出すタイプで、目的達成のためには自己や家族を犠牲にすることも厭わなかったため、自分を上手くマネジメントできないことが多々ありました。ターニングポイントは、第一子誕生のあとの育休でした。育児の隙間で、やってみたいと思っていたことを、生活のペースを崩さないように小さくはじめてみました。全力投球しないとダメだみたいな意識から抜け出し、自分のやりたいという気持ちをゆるく持ち続けられるように、マネジメントする感覚がわかったので、2016年以降は安定している感じです」(山本氏)

「私は近年安定感のある夫(山本氏)と比べて元来浮き沈みが多く、事業ピボットするような試練の時期も経験しましたが、夫からは常にお尻を叩かれているような感覚で、彼から優しい言葉をかけられるとか、直接的に支えられていると感じることは正直多くありませんでしたね(笑)でも、互いに見つめ合うよりもそれぞれ前を見ている同志という感覚で、その方向は必ずしも同じではないものの、共に歩んでいる感じはしています」(西部氏)

「夫婦」を「事業パートナー」に置き換えてみると、二人の「距離感に対する姿勢」や「異なる考え方」「不一致な部分を理解する」という点は事業を行ううえでの学びのヒントとなります。

祖母から戦時中の話を聞いていた山本氏が、根底に「どのように生き抜くか」を考えていることからも、二人の夫婦、事業パートナーとしての関係性は、共倒れすることなく自律しながらも干渉しすぎない、バランスのとれた様子がうかがえます。

「得意な人が得意なことをする」夫婦の役割分担

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若松氏からは、「経済的な意味でも家庭を成立させるためにシビアな判断をすることは大事ですが、家庭内の役割分担はどのように決めましたか。偶然に決まっているのでしょうか」という疑問が出てきました。

これに対して、山本氏は、実家では母親が家計管理を行っていたため、「女性がお金の管理をするもの」と思っていたものの、西部氏と比較した時に自分の方がうまくやれる見込みがあったため、自身で行うようになったと語ります。

この回答を踏まえて西部氏からは、「金銭管理だけではなく料理も山本氏の方が効率よくできた。私も料理はするが、効率重視なら夫の方が長けている。この意味で、得意な人が得意な役割をすることが良いと思う」と明快な回答がなされました。

家事労働の役割分担についての西部氏の発言に、会場ではうなずく参加者の姿が見られました。

夫婦コミュニケーションは、テキストメッセージを積極活用

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夫婦の役割分担の話から、相手に要望を伝えたい場合などのコミュニケーションの取り方に話が及びます。

田口から「攻めと守り、料理の話、どちらも阿吽の呼吸で分かると思うが、相手にこうなってほしいという希望があるとき、在宅が中心になり仕事でもプライベートでも一緒だと、感情面のコントロールや相手に委ねる部分、こうしてほしいという部分の切り分けをどのようにしているか」と質問が投げかけられました。

「なかなか難題なのですが、我が家の工夫としては、夫婦間のメインコミュニケーション手段の一つにテキストチャットを取り入れています。もともと私は、夫婦の会話や感情の処理は、面と向かって対話をするべきだと思ってきましたが、夫(山本氏)は私に限らず人と込み入った話や感情の交換を対面のみでするのがそんなに得意ではないことが分かったので、それを受け入れる方法を探りました。テキストメッセージは、リアルより劣ると思われがちですが、考えようや使い方によっては、テキストでも十分会話はできるし、感情の交換もできます。
今もコミュニケーションの取り方の最適解を探していますが、対面にこだわっていた自分のリミットを外しテキストも良しと考え直したことで、結果、コミュニケーションの"総量"は満たされていると思えるようになってきました」(西部氏)

「同時に複数のことを考え、処理したくなる癖があるため、車の運転中が最もコミュニケーションがとれていると感じています。そのため、運転中の会話は景色とセットでよく覚えていますね」(山本氏)

それぞれにとって都合の良い方法やタイミングを探り、把握することは、夫婦間コミュニケーションを深める一助となりそうです。

移住をきっかけに創業したことへの想い

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それぞれで活動を進めてきた中、2021年の移住を機に群馬県内に社団法人を立ち上げられました。その背景について、お二人はこう話します。

「『一般社団法人かぞくのあした』という法人を設立し、今のライフステージで群馬を選んだ価値を最大化したいと思っています。夫婦ともに流された先で環境を面白がるということを意識しており、そこに群馬というフィールドが与えられたので、群馬で事業をつくるための受け皿にしよう、と思ったのが設立のきっかけです」(西部氏)

「知らない土地のことを考え動きながら、面白がりたいがまず第一。そして、今は県内の中心市街地近郊から東京に通っていますが、いつか群馬の豊かな自然とともに生活ができるようになったら良いな、という願望を叶えたいです」(山本氏)

以上の話を受けて若松氏は、「お二人のビジョンが一致していたので、社団法人の立ち上げに至ったのでしょうね。ライフイベントは、想定できないことがほとんどだと思います。その都度お二人が、自分と家族のあり方についてコミュニケーションをとりながら積み重ねていき、振り返り、整理されていっているのだなと感じました」と所感を述べました。

パートナーシップ、家族の考え方

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仕事と家庭のバランスについては参加者としても共感できる点が多くあり、会場とリモートとそれぞれで感想のシェアも盛り上がりました。その後、家計・収入事情や子供が生まれる前と後の環境・心境の変化、テキストコミュニケーションに対する質問などが飛び交いました。

最後に、山本氏・西部氏の両氏から感想および参加者に対してメッセージをいただきました。

「家庭内のコミュニケーションの話を公開することは想定していませんでしたが、お話することでの気づきもあり改めて勉強になったなと思います。自身はやろうと思ったときに何も相談せずにやる性分で、西部氏にはそのようなところも許容してもらっているなと、甘えの部分と信頼の部分があるのかなと思っています」(山本氏)

「まず伝えたいことは、私たちの関係性を成功事例、ロールモデルとして受け止めないでほしい、ということ。というのも、私たちもまさに発展途上であり、皆さんと同じように悩みながら生きているので、これからも今回のテーマを一緒に探求していきたいです」(西部氏)

西部氏からはパートナーシップと家族のあり方についても補足がありました。

「個人的なモットーとして、パートナーシップは『各論と総論で捉える』ようにしています。この観点で私は、相手との関係性を「各論NG、総論OKなら結果オーライ」と考えています。というのも、生まれ育った自身の家族でさえ理解しきれないのに、人生の途中から関わる人を完璧に理解することはできないですよね。お互いにとって完璧な存在になれないのもある意味自明です。だからこそ総論で、人としてこの人は大きく間違っていない、という信頼感が相互にあれば、各論でダメ出しをしたとしても、関係性そのものが破綻することはないと思います。 これは、相手を受け入れる、折り合いをつけるということにおいても大事なポイントだと思っています」

真摯なコメントについて、参加者からはうなずく姿が見られました。

「また、『家族は、他人同士の集まりなので、それ自体が社会実験であり、人との交わりは化学反応だ』ということも思っています。異質なものが交わっているので、変化に翻弄されることは当たり前です。だとしたら、それを嘆くよりは面白がったほうが良いし、生産的ですよね。 相手は変えられないから、自分が変われ、とよく言いますが、経年変化で振り返ると、相手も多かれ少なかれ絶対に変わっているものです。今この瞬間、相手を変えられないとしても、自分が相手と共に生きていると、見えないものも含めて、影響を与え合っていけることももう一つの真実だと、私は思います。そうして、変化し続ける関係性をお互い楽しんでいきたいです」

プログラムの最後には、次のステップへ向けた「気づきの振り返り」を行い、自分自身との対話の後、グループごとにシェアを行いました。今回の振り返りのテーマは「アクセルを踏むタイミングとは」でした。 参加者は西部・山本両氏の「ビジョンが明確になったときがアクセルを踏むタイミングである」というコメントに共感し、改めて気づきを得たようでした。

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次回は、Program3「地域との共創」です。働く女性を応援したいという想いから"まちに開かれた"保育園を東京都中央区に創設した高原友美氏と、埼玉県飯能市をはじめとする地域活性化や日本の森林保全に取り組む伊藤恵里子氏。お二人の共通項は「バリキャリ時代の経験」と「地域に根ざした活動」です。様々な経験を積まれたお二人に、これまでとこれからを語っていただきます。

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