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【レポート】グローバルビジネスに必要なのは、プロアクティブなマインド

グローバルビジネス展開プログラム~Program1~ 9月28日(火)

8,9,10

2020年のコロナ禍でオンライン化が急速に進んだことで、地理的な制約や距離という壁を超えたコミュニケーションが可能であることを実感した人は多いのではないでしょうか。離れていても、デジタルを介した意思疎通ができる時代になった今、もはや日本国内だけでなく、海外を見据えたビジネスを考える人も少なくありません。逆に言えば、海外によりチャレンジしやすくなった状況を活かして、ビジネスを世界に広げていくチャンスとも捉えることができます。

「グローバルビジネス展開プログラム」では、グローバルビジネスに精通するスペシャリストの方々を講師に迎え、新規事業の海外展開やマーケティング戦略、グローバル企業との連携など、グローバルビジネスを展開していくうえで必要なエッセンスについてお話いただきます。9月28日(火)に開催された第1回の講師は、シリコンバレーを拠点に活躍する桝本博之氏(B-Bridge International, Inc. / President & CEO)。26年間、シリコンバレーで培ってきた多彩な経験を交えながら、「グローバル・ビジネスへのマインドセットの構築」をテーマに語っていただきました。

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日本の常識と世界の常識

日本の常識と世界の常識

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桝本氏は、日本の大手企業に勤めたのち、1996年にシリコンバレーの企業からヘッドハンティングを受けて渡米しました。同社の日本法人代表取締役を勤めたのち、複数の会社を起業し、2000年にB-Bridgeを設立。誇るべき日本の人材、技術、文化を世界に広める架け橋となるべく、シリコンバレーを拠点に、インキュベーション事業や教育事業を展開しています。

冒頭、参加者全員が自己紹介を兼ねて、海外での経験や今後の抱負について語りました。テニスアカデミーの海外展開を検討中の方、ポーランドを拠点に日本のスタートアップと同国をつなぐ活動に取り組んでいる方など、多彩な顔ぶれがそろいました。B-Bridgeとエコッツェリア協会で、アスリートインターンとして活躍中のプロサッカー選手・森勇人氏(J2リーグ・水戸ホーリーホック所属)とスキージャンプ選手の栗田力樹氏も参加し、和気あいあいとしたムードの中、本題へと移りました。

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今回の講演は「今日の引き出し」と題したテーマリストの中から、参加者に知りたいことや気になることを選んでもらい、それに対して桝本氏が語るという流れで行われました。

最初に挙がったテーマは、「日本の常識と世界の常識」です。

「グローバルスタンダードという言葉をよく聞きますが、人の考え方そのものに、グローバルスタンダードなどというものは、基本的には存在しないと私は思っています。世界に出ていくためには、その国や地域でのスタンダード、もしくは、その製品や産物ごとの常識をよく知ることが大事です。例えば、日本で美味しいと評判で流行っている飲食店があったとします。海外でも流行るだろうと想定して、同じレシピで店を構えてみたけれど、期待した反響が得られなかったケースは往々にしてあります。その逆に、インドに出店して成功を収めているカレーハウスCoCo壱番屋のようなケースもあります。インドのカレーとは全く違う、ジャパニーズカレーという切り口で打ち出したことが功を奏して、日本の珍しい食べ物として受け入れられたのだと思います。また、アメリカで人気のラーメンも、この事例と共通した部分があります。日本ではラーメン1杯600〜700円が常識ですが、アメリカでは当初から15ドルが相場です。日本人の感覚では高いですが、アメリカで食べられる珍しい日本のヌードルとしては妥当だというのが、こちらの人たちの常識になっています」

「その国や地域の常識が、日本の常識と全く違うから無理だと捉えるのではなく、その国の常識に従えたような状態でマーケットインすることができれば、ビジネスとして成り立つ可能性はあると思います」と桝本氏は話し、長年携わってきたバイオテック分野の一例を紹介しました。

酵素免疫測定法の検査キットを販売する日本企業から「このキットをアメリカで販売したいので力になって欲しい」とアプローチを受けた桝本氏。聞くと、日本での販売価格8万円と同額で、アメリカでも販売する前提だったそうです。

「当時のアメリカでは、この類のキットは450ドルが相場でしたので、どんなに新しいものであっても販売するのは難しいでしょうとお伝えしました。しかし先方は、販売価格や原価計算の手法など、自社のやり方を通したいと言います。ご理解いただくまでに大変苦心しましたがようやく合意を得ることができ、450ドルで販売したところ、なんと日本の20倍売れたのです。大学教授をはじめ、アメリカ国内のオピニオンリーダーや専門家にもお使いいただき、科学雑誌などのメディアにも多数取り上げられました。その結果、このキットはアメリカで売れたことで拍車がかかり、日本でも売れるようになりました」

次のテーマは、「情報と事実の違い」です。

「これは非常にシンプルな話です。アメリカや海外各地の情報を集めようとした時、日本の検索エンジンを使って日本人が書いた記事を探して読み、その内容を鵜呑みにするのはおすすめできません。あの情報を信じていたのに、実際は違っていたということが非常に多いからです。ではどうすればいいのか。まずは、その国や地域のサイトを見てみることです。調べようと思えば、外国の情報も簡単にインターネットで得られる時代ですから、日本だけでなく現地のサイトなどにもアクセスしてみてください。現地の人が正しい情報を発信しているかと言えば、それは日本と同様、精査しなければなりません。しかしその土地に行ったこともない人が書いている内容と比べれば、より事実に近い情報が得られるとも言えます。つてがあれば現地の知り合いから話を聞くことも有用だと思います。いずれにしても、その地域の情報を知ることが、事実につながる正しい情報の取り方だと思います」

ネットワークの作り方、メンテナンスの仕方

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次なるテーマは「ネットワークの作り方とメンテナンスの仕方」です。

「ネットワークの作り方としては、やはり現地に行くのが一番です。最近、シリコンバレーに頻繁に出張に来られている日本企業の方から、"従来会うのも難しかった相手から、よく来てくれたと歓迎されるケースが増えている"と聞きましたが、多くの場合、コロナ禍の今は、思うように現地に行くことはできません。それは海外の人も同じなので、オンラインでつながっていくのもひとつの方法だと思います。例えば、少し前にオンラインイベントで講演した際、約30名の参加者がいました。ダイレクトメッセージをいただき、皆さんとつながりましたが、そこで終わらせるのではなく、一人ひとりの方とオンラインで1時間ほど個別にお話する機会を作りました。実は、今日ポーランドから参加くださっている方ともここでつながったのですが、この方を含めて半数の方とは今でも交流を続けています。このようにオンラインの場で大勢に出会ったあとに、1対1でコミュニケーションを取ることを続けるのも、メンテナンスのひとつの方法だと思います」

日本のオンラインイベントには、できるだけ積極的に参加するように努力しているという桝本氏。氏が暮らすシリコンバレーと日本の時差は17時間なので、日本で夜8時から開催されるイベントに参加する場合は、同日の朝3時となります。しかし、現地時間が早朝、深夜であろうと、声が掛かれば、さまざまなイベントに顔を出しているのだそうです。

「日本のオンラインイベントに参加することは、私にとって、オンライン上のアウトバウンドです。皆さんは逆で考えてみてください。日本で夕方以降に開催されるイベントにシリコンバレーの人を呼ぶのは、時差の関係もあって、基本的には難しいです。そこで、まずは自分から現地のイベントに参加してみるのです。"日本は今、真夜中ですが、興味があったので参加しました!"と言えば、歓迎されるでしょう。それを経て、"今度日本でもイベントを開催するのですが、アメリカからも参加しやすい時間に設定したのでご検討ください"と伝えれば、参加してもらえる確率は上がると思います。このように、オンラインでアウトバウンドからインバウンドにつなげていく流れは、今だからこそできることですし、コロナが収束したら対面で会いましょうと言い合える関係性を築いていくこともできると思います」

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さらに桝本氏は、海外の人々とのネットワークの作り方やメンテナンスの仕方について、自身の経験を交えながら、さまざまなティップスを紹介しました。

「プロモーションなどの目的で日本から一時的にアメリカに滞在し、現地の人と名刺交換をして、ネットワークが構築できたと思うのは違うと思います」と、氏は警鐘を鳴らします。

「日本でも、名刺交換するだけでは関係性は構築できないように、アメリカでも、リアルな場で一度会っただけでは、相手が自分のこと覚えている可能性すら極めて低いです。本当につながりを持ちたいなら、少なくとも滞在中にもう一度会いにいく"二度会い"をした方がいいと思います。あるいは、名刺交換する際、自分の会社や仕事の内容など、相手の記憶に少しでも強く残るように具体的に伝えておくことです。その上で、帰国後に再度コンタクトし、オンラインでの面談を打診するという風にしていくと、関係性をメンテナンスしやすくなるのではないかと思います。特にリアルの場合は、会う頻度も大切でしょう。例えば、日本企業で営業を担当している人が年間6回アメリカを訪問するというミッションを課せられたとします。この場合、2ヶ月おきに行くのが妥当かもしれませんが、果たしてその頻度で会って、良い関係性が作れますか?という話です。相手によっては、初期段階で打ち解けなければ腹を割って話さない人もいれば、段階を踏むことで心を開いてくれる人もいるでしょうし、そこは見極めていく必要がありますが、私なら最初の月は2回会いに行く、もしくは、最初の4ヶ月は毎月会いに行くという風にして、先に関係性を作っていきます。それができれば、あとは電話やメールでも十分に意思疎通が図れる場合が多いからです」

本当につながりたい人がいる場合、「いかに相手のことを事前に調べ、その懐に入っていくかが重要」だと話します。

「日本とシリコンバレーをつなぐべく、シリコンバレーにカレッジを創設するプロジェクトを進めているのですが、自分たちの力だけでは難しいところがあり、ある大学の学部長のお力添えをいただきたいと思いました。その方が何に興味を持っているか、今、最も希望していることは何か、日本との関わりなど、事前にできる限りのことを調べておき、お会いした際にその内容について触れてみました。すると、"それこそまさに私が悩んでいたことです"と言い、学長に掛け合ったあと3日後には覚書を送ってくださいました。相手のことを調べるのは、その気になればそれほど難しくないと思います。インターネットだけでなく、その人が関わる団体や会社につながりのある人を探して話を聞いてみるなど、いろんな方法があります。その過程において、相手のことをきちんと理解していけば、結果的にお互いが興味を持ち合える関係になれると思います」

FacebookやLinkedInなどのSNSで、人々が簡単につながることができる便利な時代になりましたが、「これには一長一短がある」と桝本氏は話します。

「皆さんがSNSでつながっている人の中にもきっと、顔すら思い出せない人がいますよね? 中には、ある人と知り合いだということを利用して、第三者とつながってSNS上でネットワークを広げていく人もいて、こういう使い方は個人的に好きではないのですが、うまく活用すればいい方にはたらく場合もあります。東日本大震災が起きた2011年、シリコンバレーから東北に向けて何かできないかと思いSNSでグループを立ち上げてみると、150人ほどの人が集まってくれました。私たちの活動を支持してくださる方を募るべく、弁護士にその旨を記した書面を用意してもらい、アメリカのさまざまな大企業の社長に宛てて送りました。その書面には、私の携帯番号を載せていたのですが、1件だけ電話がかかってきたんです。なんと、オラクル創業者のラリー・エリソンの第一秘書からでした。"シリコンバレーでも日本人が集まって活動していることに、私は敬意を表したい。何かあった時は、皆さんの活動を支持していると言ってもらってかまわない"というエリソン氏からの伝言を聞いた時、心が震えましたね。こんな風にアメリカでは、ダメ元でアプローチしてみると思わぬチャンスを掴めることもあると思います」

大切なのは、プロアクティブなマインド

最後に、桝本氏は、グローバル・ビジネスへのマインドセットについて次のように話しました。

「海外に進出すること自体早すぎるのではないか、英語が話せないからコミュニケーションが図れないというように、減点法でものごとを考える文化は日本特有のものなので、取り払うのは難しいかもしれません。でも、できるだけ加点法を取り入れて、『Try to be proactive=プロアクティブなマインド』で挑んでいただきたいと思います。英語が話せないなら、相手の興味を惹く内容であることを前提に、日本語で話し、相手を巻き込むくらいの意気込みでその懐に入り込んでいく。そんな感覚で、積極的かつ前向きに動いていくことが大切です。ただし、日本には日本のルールがありますので、あくまでグローバルに出ていく上での心がまえであることをご理解いただければと思います」

「グローバルビジネス展開プログラム」Program2では、2015年にシリコンバレーに設立されたTakeoff Point LLC. 執行役社長、大阪大学非常勤講師の石川洋人氏を講師に迎え、「失敗しない新規事業のためのマーケティング戦略」についてお話いただきます。乞うご期待ください。

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