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【レポート】「日本一長い地下通路」を巡る、大手町エリア地下散歩

さんさんオンラインランチーズ ~丸の内地下大学 東京駅地下通路模型を見ながら地下散歩〜 2021年1月19日(火)開催

9,12

渋谷や新宿、池袋、そして東京――。山手線沿いに並び、神奈川や埼玉、千葉などの周辺都道府県から毎日多くのビジネスパーソンや観光客を集めるターミナル駅には、幾本も走る地下鉄やJRの隙間を縫って巨大な地下の世界が広がっています。中でも日本一長いとされているのが、3×3Lab Futureの位置する大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアに広がる、全長約4kmの東京駅地下通路です。

1月19日に開かれたイベントでは、東京大学大学院・吉村有司研究室に所属する日野裕輝さんと那須昭碩さんが制作した東京駅の地下通路模型を使用し、オンラインでの地下散歩を実施。日野さんが実際に地下通路を歩いて実況中継、那須さんが中継地点にあたる箇所を3×3Lab Futureにある模型で映します。そして、クラブツーリズムの澤内隆さん(オンラインツーリズム研究会主催)をゲストにお招きし、地下通路にまつわる歴史的背景を説明いただきながら、地下に広がる巨大な世界を俯瞰しました。

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いざ、巨大な東京駅地下通路の世界へ

いざ、巨大な東京駅地下通路の世界へ

image_event_210119.002.jpeg 東京駅地下とGoogle Map、模型の3つを同時中継

当日の進行を務めた3×3Lab Futureネットワークコーディネーターの田邊智哉子さんは、東京駅地下通路模型について次のように紹介しました。

「東京大学吉村研究室の日野さんと那須さんが、たった2ヶ月ほどで作ってくださったのが東京駅地下通路模型。いろんな方々に見ていただき、その活用方法についてご意見をいただく中で今回の企画ができました。実際に現地を歩きながら、一方では模型も見ることで、東京駅の構造について俯瞰的に理解するきっかけにできたらと思っています」(田邊さん)

image_event_210119.003.jpeg 3×3Lab Futureで進行を務める田邊さん(左)、解説は澤内さん(右)

▼大手町パークビルの地下、"よいまち"エリア

実況担当の日野さんが、3×3Lab Futureから地下通路へ向かうところから中継がスタートしました。

まず訪れたのは、3×3Lab Futureの隣にある大手町パークビルの地下に位置する"よいまち"エリア。"よいまち"の『よい』には、3つの意味が込められているとのこと。

「1つ目は『良い』まち、2つ目は『酔い』まち、3つ目は『宵』まち。3つ目の『宵』は多くのビジネスパーソンや観光客で賑わう夕暮れ時を指しているそうです」(日野さん)

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このエリアの上には、日本史でもよく知られた平将門の首塚があるそう。

「平将門の首塚は、伝説では京都でさらし首になっていたものが、江戸時代にこの地に飛んできたと言われています。厄災を避けるため、現在まで壊さずに残しているそうです」(澤内さん)

「ビルの設計にも、首塚の影響が見て取れるそうですね」(田邊さん)

「将門の霊がまっすぐに江戸城の登城門・大手門を通過できるよう、ビルの出入口が設計されているそうです。将門の首塚は大手町の守り神として、大切にされているんですね」(澤内さん)

▼地下街を抜けて大手町駅へ

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通常は多くの人で賑わう大手町も、新型コロナウイルスが猛威をふるう今日ばかりは、あまり人影が見当たりません。

「実は、大手町の住民票の登録はごく僅かなんです。ビジネスパーソンで賑わっているまちであることがわかる象徴的なエピソードですよね」(澤内さん)

またこの付近には昔、国の中枢機関が多く点在していたそうです。

「江戸時代は、酒井雅楽頭家(さかいうたのかみけ)、小笠原氏の上屋敷でした。明治時代には大蔵省(現在の財務省)や文部省、総務省の官庁街が広がっていましたが、その後、その付近の建物がすべて霞ヶ関に移動になりましたので、民間に払い下げられたという経緯があります」(澤内さん)

ここで大手町駅構内に足を踏み入れた日野さんが、一度立ち止まります。

「皆さん、このあたりの廊下が若干膨らんでいるのが見えますでしょうか」(日野さん)

「模型を見るとわかりますが、実は、その廊下の下に地下鉄が通っています。地下鉄に関連した配管などの設備が通っているために、盛り上がっているんです」(那須さん)

image_event_210119.007.jpeg3×3Lab Future で模型の撮影、説明を担当する那須さん

▼大手町駅構内を通り、北に進む

アメーバのように広がっている大手町駅地下構内。改めて日野さんが、駅構内案内図の前で足を止めます。

「大手町駅は5つの路線が通っていて、すごい立体感のある駅ですね」(日野さん)

image_event_210119.008.jpeg大手町駅の駅構内案内図

5つの路線とビル群の関係について、那須さんが説明します。

「これは模型を制作していてわかったことですが、大手町はビルの建設が先で、そのビル群を囲うように、地下鉄が通っているんです。ビルの地下2階の下に、さらに半蔵門線が通っていたりして。地下鉄ありきではないからこそ、千代田線から丸ノ内線に乗り換える時に長い距離を歩かないといけなかったりするんです」(那須さん)

続いて、駅に隣接する大手町フィナンシャルシティにやってきました。

「このエリアには、大手町温泉もありますよね。皇居ランをした方がよく休憩でいらっしゃるとか」(田邊さん)

「1500メートルの深さから湧出していて、カリウムやナトリウムが豊富に含まれているので血行が良くなる効果があるそうです」(澤内さん)

掘り下げるほど見つかる地下のおもしろさ

現地と模型を合わせたハイブリッドな散策により、地下の姿がよりクリアに浮き彫りになったところで、後半は視聴者とのディスカッションへと移ります。

▼模型から見るバリアフリーの課題

まず議題に上がったのが、地下のバリアフリー化について。今回模型を制作する中で受けた印象を、日野さんが話します。

「バリアフリー化でいうと、大手町は特に配慮して設計されている印象があります。制作過程でわかったことですが、階段に近いところには、必ずエレベーターやエスカレーターが置かれていました」(日野さん)

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一方で、今ほどバリアフリーの意識が高くなかった時代に開発された有楽町エリアは、まだ階段とエレベーターが少し離れた場所にあったり、ケアされていない段差があったりする部分も見られたと言います。

模型に、一番段差が少なく通れるルートや、エレベーターやエスカレーターの位置を光で投影して示すなどすれば、ユニバーサルな使い方もできるのではといった参加者からの意見もありました。

また、他の駅の地下とはどのような違いが見られるかという質問には、那須さんが最初に答えます。

「大丸有エリアはビルと一体的に開発されているので、面として地下が広いんです。渋谷は渋谷川を避けながら地下鉄やJRを通しているので、すり鉢状に奥に深くなっている。模型を作ったら、全然形が違ってくると思います」(那須さん)

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▼地下通路模型とデジタルの融合

デジタルに知見のある参加者からは、地下通路模型のデジタル化に関する提案もありました。

「乗換案内や位置情報サービスを手がける企業のご担当者と意見交換をしていたときに、地下空間の中にどんなコンテンツがあるかということを、その場にいる人や飲食店からどんどん情報発信できるプラットフォームを作りたいというお話がありました。デジタル化された地下空間にみんながリアルタイムでコメントを残せたりすると面白いのではと思います」(参加者)

「デジタル化はいくつかハードルがあって、どういう形になるのかまだまだ描けていない部分があります。とはいえ、個人的にはARなどに興味が出てきたところですので、そういうところも深掘りしていきたいです」(那須さん)

具体的なコンテンツの部分では、長年ガチャガチャの企画に携わってきたという参加者から、地下通路にあるお店をガチャガチャのコンテンツにするといった提案も。

「たしかに、入ったことのないお店って敬遠しがちですが、ガチャガチャをまわしてお店のミニチュアとランチ券が入っていたら、行ってみようとなりますね!」(田邊さん)

▼こんな使われ方もしていた!東京マラソン時の地下街

東京マラソンのボランティアを経験したことがあるという参加者からは、地下活用にまつわる意外なエピソードがありました。

「東京マラソン当日は、地上はランナーが走るため、一般の方には地下通路を使って東京駅や有楽町に抜けるルートを案内します。そのためボランティアは、大丸有の地下構造を毎年研究しているんです。もう少し有楽町エリアの方も見せていただけると、すごく役立ちます」(参加者)

今回は大手町の様子が中心となりましたが、今後は丸の内・有楽町エリアを中心とした地下散歩も検討されるそうです。

制作をしてわかったこと、地下通路模型のこれから

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田邊さんから、今回の模型制作にあたって苦労したことや、模型のこれからの活用法について、日野さんと那須さんへ質問がありました。

「今回の模型制作にあたって一番苦戦したのは、高さの調整です。建物の輪郭や地下の長さなどはマップからわかるのですが、高さの情報はネットにもどこにも落ちていない。階段の段数を数えたり、実際に自分たちで測ったりして、全体の模型を調整していきました。高さを揃えていくと、ビルと電車の関係性も見えてきて、そういう発見にはワクワクしましたね」(日野さん)

「大手町は、網羅的に地下が繋がっているのですが、有楽町の方を見ると、まだまだ繋がっていない部分も多いんですね。なので、今後は有楽町側が開発されていくんだろうなという推測をしています。また現在、三菱地所さんは常盤橋エリアを開発されていますが、今後そのエリアが盛り上がると、日本橋の方にさらに地下通路が伸びていくと思うので、そうしたらまた地下模型を作り直せたらなと思っています。また、模型では地下鉄の駅もリアルに再現していますので、駅関係の方に見ていただいて、何か実務的な提案に繋げられたらと考えています」(那須さん)

マップからサイズをひろったり、実際に現地に足を運んで測ったり、さらにそこから緻密に計算したり。実際の1000分の1のサイズというこの模型を作る工程には、想像を絶する苦労があったに違いありません。それにもかかわらず、ワクワクをにじませながらこれからの使い道について笑顔でお話してくれたおふたりが印象的でした。模型は、今後も3×3Lab Futureで展示予定とのこと。さまざまな活用に期待が高まります。

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