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【レポート】 今森林で何が起こっているのか、自分たちに何ができるのか

飯能の森体感ツアー「日本の森の未来を考えよう」 2022年10月8日(土)~9日(日)開催

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日本の国土の3分の2を占める森林。戦後に植林された森林が利用期を迎える中、「森林の有する多面的機能の持続的発揮」「林業・木材産業の地域資源創造型産業への再生」「木材利用・エネルギー利用拡大による森林・林業の低炭素社会への貢献」を基本理念とした「森林・林業再生プラン」(2009年)が提唱され、全国的に森林や林業への危機意識が高まりを見せています。
一方で、林業に従事する人は長期的に減少傾向にあり、人々の関心は森林から離れているとも言えるでしょう。

日本の森林の現状はどうなっているのでしょうか。また、日本の森林の未来はどうなっていくのでしょうか。

森林の現状を知り、それらが抱える問題について考える飯能の森体感ツアー「日本の森の未来を考えよう」が、2022年10月8日~9日に埼玉県飯能市で開催されました。

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飯能市の森林を歩き、日本の森林が抱える課題を知る

飯能市の森林を歩き、日本の森林が抱える課題を知る

<1日目>西武鉄道 飯能駅→昼食「長寿庵」→子ノ権現 天龍寺→竹寺→温泉「さわらびの湯」→夕食

池袋から電車に乗ること1時間。埼玉県飯能市は、都心からほど近くにありながら、面積の約75%を森林が占めている自然豊かなまちです。古くから林業・織物のまちとして栄え、現在は首都圏近郊の住宅都市として、そしてムーミンバレーパーク開業に伴って観光地としてもにぎわいをみせています。
2005年4月1日には、「森林文化都市」を宣言し、自然と都市機能が調和した、暮らしやすい都市を目指したまちづくりに取り組んでいます。

飯能産の「固定種」にこだわった昼食

参加者一行が飯能駅に降り立ったのは、午前11時半頃。到着早々おそばやうどんが味わえる人気店「長寿庵」に向かいました。

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昼食でいただいたメニューは、「野菜3倍肉汁せいろ(うどん)」。飯能市で採れた南部小麦を使ったうどんと、固定種野菜をふんだんに使ったメニューです。
固定種野菜とは、固定された形質を持った野菜のこと。つまり、他の種との交配をせずに作るため、雑種第1代(F1種)でみられる品質が安定しているというメリットはないものの、個性豊かな風味と高い栄養価を特徴としています。飯能市は標高が高く平坦な土地が少ないため、多くの種を同じ場所で育てることができません。そうした環境のおかげで、複数の種が交配せずに育てられ、固定種の維持が可能となっているのです。
この日の野菜は、のらぼう菜、マコモダケ、おかわかめといった珍しい野菜も多く、生や茹でたもの、天ぷらなど各野菜の味を活かした調理方法で参加者の舌を楽しませてくれました。

お腹も満たされたところで、参加者の自己紹介を行いました。都内からの参加者はもちろん、中には、兵庫県など遠方から駆けつけた参加者も。森林、森林資源、地域活性化など、参加者の興味の範囲はさまざまですが、皆一様にツアーへの期待度は高く、森林を軸とした多様なワークを楽しみにしている様子が伝わってきます。

ツアー2日間を通してのゲストは、一般社団法人森と未来の代表理事を務める小野なぎさ氏。認定産業カウンセラーと森林セラピストの資格を活かし、誰もが気軽に森に触れられるようなサービスの提供を通して、人と森がともに健康で豊かな未来の実現を目指しています。

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2019年から林野庁の林政審議会委員も務める小野氏は、「森を人々の健康に活用したい」という思いから企業のメンタルヘルス改善に関わる事業にも携わり、これまで述べ2,500人を全国各地・海外の森へ案内してきました。さらに、全国の地域と連携しながら森林資源を活用した観光プランづくり、企業研修、人材育成と幅広い事業を展開する森林のプロフェッショナルです。

人気のハイキングコースで森林浴

1日目のガイドは、奥むさし飯能観光協会の山口氏。昼食を終え、バスで訪れたのは子ノ権現 天龍寺。伊豆ヶ岳方面から東側の山々の山頂にある天龍寺は、標高640mに位置し登山の途中で参拝する方も多い寺院です。足腰守護の神仏として広く信仰を集めており、2トンもある鉄わらじがシンボルとされています。

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ツアーで歩いたのは、飯能市でも人気のハイキングコース「子ノ権現・竹寺コース(8.2km、所要2時間50分)」の中から、最も深い森林を楽しめる「子ノ権現~竹寺(約3.0km)」間です。

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まず、森林の入り口で、「五感を使うワーク」を行いました。参加者各々が好きな方向を向き、目を瞑って深呼吸をして五感を働かせます。小野氏が感想を尋ねると、「耳のところを風が通り過ぎました」「コオロギの声や、草の香りがしました」と、参加者から今感じることが口々に語られました。五感が冴えてきたところで、いよいよ森林に入ります。

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「森林には免疫力を高める効果があって、一度森林に入るとその効果は30日間持続するんですよ」と小野氏。ヒノキぼっくりや、木々の香りを楽しみつつ、森林や生えている木々に関する豆知識を紹介します。
その一方で、「木々が密集している場所では、光が届かずに木々の成長が阻害され、雨や風で木が倒れてしまったり、下層植生が育たない森では土壌が弱くなり土砂災害につながることがあります」と、現代の森林が抱える問題点を解説します。参加者たちは、真剣なまなざしで小野氏の説明に聞き入っていました。

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「マイスティックを見つけて、穴を掘ってみましょう。土の中の様子を観察したり、匂いを嗅いでみてください」(小野氏)

少し開けた場所で、2つ目のワークが始まりました。参加者たちは、各々近くに落ちている木の枝を拾い、穴を掘ります。「葉っぱが落ちて微生物に分解されて土となり、木の栄養になります。土は1年で1mmほどしか積もりません」と小野氏。「生えている木の種類や微生物によって香りが変わるので、森によって香りがまったく違います。皆さんが掘った穴も、こんなに近くにあるのに匂いは違うと思います」と続けます。
別の参加者の掘った穴の香りを嗅いでみて、「全然違う!」「こんなに近い場所なのに......」と参加者同士の会話も弾みます。

「森林の"持続可能"とは、ずっと同じ状態を維持することではなく、破壊と再生を繰り返して成長を続けるのです。成長した大きな木が雨風で倒れてしまっても、倒れた後に光が差し込み、小さな木々が成長をはじめます。社会と森は同じように、生態系が循環して活性化されていくんです」(小野氏)

森林浴で疲れた身体をリフレッシュ

森林浴を終え、再びバスに乗って訪れたのは、天然温泉「さわらびの湯」。さわらびの湯は、飯能市名栗市地区にある日帰り温泉です。泉質はアルカリ性単純泉で、森林浴で疲れた身体を癒してくれる、登山客やキャンプ客に人気のスポットでもあります。

身体を癒した後は、ホテルに行き、夕食です。

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用意いただいた夕食は、宿泊ホテルである「マロウドイン飯能」が観光庁の事業で企画・開発した「ベジタリアン弁当」。豆腐のスープも付いて、野菜だけで作られたとは思えないほど大満足の夕食でした。

夕食を食べながら、1日目の感想や実際に森林を歩いたことで感じた課題を発表します。

「無心で森林を歩くことで、清々しい気持ちになれました。結構な距離を歩いたにもかかわらず疲労をあまり感じることなく、森林の良さを改めて実感しました」

「今日の森林は杉・ヒノキばかりで、まさに林業の森だなと感じました。木質バイオマス発電を取り入れたり、サイクリングコースをもっと推進していくことで、ますます市として盛り上がりを見せるのではないでしょうか」

「今、50年前に植樹された木の活用方法を決めなくてはいけない局面に来ています。現代のライフスタイルに合った新たな活用方法を模索していくことが課題だと感じました」(各参加者)

参加者たちの率直な感想を受け、小野氏はこのように呼びかけました。

「今日散策した森は、整備が不十分な場所があるなど学ぶことが多い森だったと思います。これが飯能の、日本の森林の現状です。明日のワークも含めて、どうすれば日本の森林がより良い未来につながっていくのかを意識して、皆さんでアイディアを出していけたらと思います」

食事中も、自然と森林に関する話に花が咲きます。義務教育課程で農業を学ぶ機会はあるのに林業について学ぶ機会がないこと、林業に対する国の補償制度が不十分であることなどについては特に議論が白熱。楽しい時間もあっという間に過ぎ、1日目を終えました。

西川材の活用を学び、飯能の林業の未来を考える

<2日目>朝食→西川バウム→昼食「OH!!!」→天覧山→西武鉄道 飯能駅解散

西川材を使った加工体験

2日目のガイドは、奥むさし飯能市観光協会の山崎氏。最初に吾野駅から徒歩15分ほどの場所にある西川バウム合同会社に向かいました。西川バウムは、地元の西川材を活用した木材製品を企画・開発する会社です。

西川材は、杉やヒノキといった木の種類や産地を特定する名前ではありません。「西の方の川から流れてくる材木」という意味で、江戸時代に付けられたニックネームのようなもの。荒川の主流はいくつかある中で、飯能地域の材木だけが西川材と呼ばれます。それは、江戸時代から、飯能地域の森林は間伐や手入れがしっかりされていたため、品質の高い木材として区別されていたからと言われています。西川材の特徴は、木がまっすぐで色艶が良く、節が少ないことであり、柱材に適した木材とされています。

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最初に、「吾野の家」を見学します。吾野の家は、西川バウムが行っている「西川の森と里山クラブ」の活動の一環としてリノベーションされた古民家です。現在は、民泊申請中でゲストハウスとして活用しようという動きが進んでいます。 木材や建築物に興味のある参加者は、柱、欄間、天井の木材の使い方にも目が行きます。また、西川バウムの代表・浅見氏に質問したり、西川バウムが手がけた椅子の座り心地を試したりしていました。

吾野の家を見学した後は、西川材を使った箸・カフェボードの加工を体験しました。お箸作りの講師は、萠工房の水田氏。木工の工具で一番オーソドックスな鉋を使って、西川材のヒノキでお箸を作ります。カフェボードは、さまざまな形や色、木目の木片からお気に入りの1枚を選び、サンドペーパーで磨いていきました。

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「昔は柱材に適した木が『良い木』とされていましたが、材木屋の視点で良いかどうかを判断するのではなく、都心から近いという立地を活かして、実際にお客さんに木材を選んでいただいたり、材木の特徴に合った活用方法を提案できる体制を整えることで、もっと楽しく材木を活用していけるのではないかと考えています。
また最近は、もりとまちがドアでつながっているような関係性を築きたいという思いから、『もりまちドア』という取り組みを行っています。例えば、森のことを知りたいときに、まちのカフェや飲食店で情報を得られる、逆に、森に来た人には、私たちがまちの情報を教えてあげる。こうした双方向のコミュニケーションに飯能市全体で取り組み、"飯能は森とつながったまち"というイメージを発信していきたいですね」(浅見氏)

発酵のテーマパーク「OH!!!」で発酵ランチを堪能

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OH!!!は、「ご飯がススムキムチ」で知られるピックルスホールディングスグループが2020年にオープンした、発酵のテーマパーク。敷地内には、発酵食品のショップ、レストラン、発酵食品づくりが体験できる施設があり、今回のツアーでは発酵食品を楽しめるレストラン「Femy_」で昼食をいただきました。
メニューは、「鳥取県産"大山鶏"塩麹漬け薪火焼き」。塩麹で柔らかく・まろやかに味付けされた鶏肉を飯能市の間伐材を使った薪で香ばしく焼き上げ、醤油麹と青唐辛子の山椒漬けの2種類のソースでいただきます。付け合わせは、キュウリの醤油漬けと大根の麹漬け。お米は、小豆と一緒に炊き込んだ熟成発酵玄米であり、発酵食品をふんだんに楽しめるメニューとなっていました。

「とてもおいしかったです。身体にやさしい食事を、都心と比べてお手頃な値段で楽しめて大満足です」(参加者)

味も量も大満足の食事を終え、ツアーの最終地点である天覧山に向かいます。

天覧山で飯能市を一望

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標高197mの天覧山は、登山口から約20分と気軽に登れることから飯能市の中でも人気の山の1つです。天気が良ければ山頂から富士山が見えますが、ツアー当日は残念ながら曇りだったためスカイツリーまでしか見えませんでした。

食後にちょうど良い運動もでき、森林を歩いてリフレッシュしたところで飯能駅に戻り解散です。

ツアーの終わりに

最後に、ガイドの山崎氏とゲストの小野氏から飯能市の森林の魅力や課題について語られました。

「飯能市は緑と清流のまちであり、そこが魅力だと言えます。これほど豊かな森林を都心から1時間で体験できることは、飯能市の大きな強みと言えるでしょう。
今回のツアーを通して、都心で暮らしている方たちに非日常を味わうことでリフレッシュしてもらいつつ、森林を体感することで負の部分も含めた森林の現状を知ってもらい、森林に対する問題意識や考えを持つきっかけになれたなら、意義のあるツアーになったと思います」(山崎氏)

「荒川の上流域にある飯能は都心に近く、とても森が多い地域です。そんな飯能の森林で土砂崩れが起こると、土砂がそのまま川に流れ、都心にもその川の水が届きます。都心の暮らしと飯能の森林は直結しているとも言えるでしょう。都心に暮らしている方は、ぜひ一度飯能を訪れて"どういうところが自分たちの暮らしの原点なのか"を体験していただきたいと思います。今後も多くの方に森の現状を知り興味を持っていただける機会を作っていけるといいなと思います」(小野氏)

二日間のツアーを終え、参加者からはどのような感想があったのでしょうか。

「豊かな自然がある飯能市は、都会に住む人がリフレッシュに訪れるには最適な場所だと思います。西川材の現状を知り、現代のライフスタイルに合った新しい活用方法が見出せるといいなと思いました。都会の人が気軽に遊びに行ける"開いた森"を飯能で展開し、一緒に盛り上げていきたいです」

「とても満足度の高いツアーでした。現地の方のリアルな声を聞けたことで、飯能市の森林の抱える問題を身近に感じることができたと同時に、それらの問題を体験を通じて自分の中に落とし込むことができました。今後は何らかの形で飯能の地域活性化や、材木利用に貢献していきたいです」

「食や森林を通して、飯能市の懐の深さを実感できた2日間でした。飯能市を盛り上げようとしている方々の思いや誇りも感じることができ、今回のツアーを通して学んだ飯能市の魅力や課題を自分でも発信していきたいですね」(各参加者)

ツアーを通して飯能の森を体感し、森林の現状を学んだことで、それらの未来がどうなっていくのか、この先自分たちがどのように関わっていくのか。参加者一人ひとりの今後の動向に大きな期待が募るツアーとなりました。

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