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【レポート】オンラインでもコロナでも。"食"でつながるさんさんキッチン

【さんさんキッチン vol.1】築地の魅力を知ろう! 2020年7月7日(火)開催

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3×3 Lab Futureのコミュニティキッチンと参加者をオンラインでつなぐ初の試み、「さんさんキッチン」。

今回のテーマは「築地場外市場」。新型コロナウイルス感染症の影響で外出が減り、窮地に立っている築地場外市場を応援したいという想いから実現した企画です。

また、3×3 Lab Future側のミッションとして、キッチンと参加者をつなぐ食イベントをオンライン上で盛り上げることができるのかという課題もありました。「空気感、雰囲気を伝えることができるか、他のオンラインイベントとは違った形を探りたかった」とエコッツェリア協会プロデューサーの田口は話しています。

参加者には予め食材とレシピを送付しています。第一部は話題提供、第二部は鬼丸シェフによる調理実演。参加者にはオンラインでリアルタイムに調理をしてもらいます。第三部は、作った料理を肴にしたオンライン飲み会という三部構成で行われました。

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築地場外市場とは?

築地場外市場とは?

近江屋牛肉店当代寺出氏。この日はグリーンバックの前でトーク。オンライン映像では築地場外市場の様子がバックに合成された

築地場外市場の正式名称は「築地場外市場商店街」。築地市場に隣接したエリアにある、専門店による商店街と言っていいでしょう。飲食店のプロ向け商店街で、魚に限らず肉、野菜などの生鮮食品、包丁や鍋などの調理器具、食器などの店舗も並びます。その数は500店舗弱にもおよんでおり、この20年ほどでその魅力が一般にも知られるようになりました。プロ以外の、一般の方の来街が増加、この5年ほどは外国人にも人気となりインバウンド景気で賑わいました。

第一部は、この築地場外市場の肉専門店「近江屋牛肉店」三代目店主の寺出昌弘氏が話題を提供しました。寺出氏は築地場外市場 商店街振興組合の副理事も務めており、市場移転後の築地場外市場の盛り上げ、活性化でも中心的な役割を果たしています。この日は築地の歴史から始まり、現在の築地の成り立ちと魅力、そして新型コロナウイルス感染症流行下の活性化の取り組みと今後の展望について語りました。

寺出氏によると、築地は江戸時代初期に寺町として埋立地に成立した街で、360年に及ぶ歴史があります。大正時代の関東大震災で被災した日本橋から、魚河岸の市場機能が移転され、それに伴う形で各種専門店や関連店舗が市場周辺に定着したのが、現在の築地場外市場の成り立ちです。

当日の資料より。江戸時代初期の築地周辺の様子。右側が築地本願寺。現在の街区の原型が見て取れる。

「もともと日本橋にあった包丁屋などの老舗の専門店がたくさん引っ越してきて今の街を形成しています。150年以上の歴史のある店もあるし、半数以上が50年以上続く店。腕と目利きには自信があり、そこに誇りを感じているのが一番の特徴と言えるでしょう」

寺出氏は築地の歴史をクイズにして参加者に出題、回答してもらい、そして解説するというやり方で説明していったので、分かりやすく、楽しく聞くことができました。あまり知られていないトピックスとして、日本初の外国人向けホテルが築地にあったこと(築地ホテル館。明治の銀座大火で焼失)、発泡スチロールの容器が築地から広まったことなども紹介されました。

そして、築地場外市場の特徴として「目利きがすごい」点を挙げています。プロ相手の商売であるがゆえに、プロが納得するものを扱わなければならないという厳しさから来るものだそうです。

「飲食店のプロは基本的に厳しい。プロの目に適うものを持っていかねばならいので、プロを上回る知識と経験を持たなければなりませんでした。それが"目利き"という形になったのです。だから、一般の人にも自信を持って勧められるし、一般の人にとっては、うまく使い倒せば相当なものを手に入れることができる街でもあるということです」

築地場外市場のサイトで紹介されている「築技」(一部抜粋)。そうした目利きの技は「築技」(つきわざ)として紹介されており、それこそ店の数ほどの築技があるそうです。一例を挙げれば明治5年創業の包丁専門店「東源正久」。400年前の刀鍛冶にルーツがあり、研ぎにも自信があります。プロに包丁を売る際には使っている包丁を持ってこさせ、そのクセを見て取り、研いで新しい包丁に"乗り移らせる"。「売っているのは包丁ではなく切れ味」が当代の口上だそうです。

今後については、築地市場移転後の活性化がこの数年の課題となっており、現在も取り組みを継続しているそうです。2006年にNPO「食のまちづくり協議会」を設立し、築地場外市場の魅力の発信や、体験型コンテンツの拡充に着手。2012年に築地場外市場総合案内所「ぷらっと築地」を開設、2014年には場外市場の食文化の発信、普及を目的とした「TSUKIJI 食まちスタジオ」をオープンしました。キッチン設備も付帯しており、セミナーや料理教室の開催やテストキッチンとして利用できます。また、一般客も利用できる「築地にっぽん漁港市場」(2015年)、「築地魚河岸」(2016年)もオープンし、誘客にも力を入れています。

「場外市場の目利きが選んだ生鮮食品、そして料理道具がワンストップで揃うという、全体がスーパーマーケットのような街と言えるでしょう。500店弱のすべて、一店一店に築技があり、聞けば喜んで教えてくれます。これをうまく使ってもらえれば、こんなに面白い街はないと思う。古い文化が残る街でもあり、銀座にも近く、さまざまな楽しみ方ができるので、ぜひ一度、三密に気をつけながら遊びに来てください」

寺出氏は最後にそう呼びかけて締めくくりました。

料理でつながるオンライン

第二部は料理のセッション。参加者には予めレシピと近江屋牛肉店提供の食材を送ってあり、オンラインで中継しながら同時調理を行っていくという進め方です。

レシピ考案と料理は3×3 Lab Futureのキッチン担当・鬼丸美穂シェフ。開催前に築地場外市場に足繁く通い、さまざまな店舗の人々と親しくなったほか、参加者への発送のための、近江屋牛肉店での荷造り作業も手伝っています。こうした食への真摯な姿勢は寺出氏からも「信頼できる」と評価され、今回のオンラインイベントの礎となっています。

予め送られていた食材は近江屋特製のローストビーフと、焼豚ブロック。ローストビーフは野菜と合わせて「ローストビーフサラダ」に。「レシピに合わせて、口当たりの良い柔らかさのあるアンガス牛のサーロインを使ったものを用意した」と寺出氏。56度の低温で5時間かけてローストしたという、近江屋でも一二を争う人気の商品でもあります。

焼豚は飲食店向けのブロックで、寺出氏曰く「完成していない肉」。購入した飲食店が最後の味付けや焼きを入れて、そこで店の味となって仕上がるというもので、今回は、特製のタレをつけて、焼豚丼にします。

ローストビーフサラダは各自準備した野菜をカットし、鬼丸シェフのリードでドレッシングを作成。そして盛り付けた野菜のうえにローストビーフを配し、ドレッシングを回しかけて完成。焼豚は、適当な厚さにカットし、脂を溶かして香ばしさを出す程度に軽くフライパンで焼き、タレを絡めて煮詰め、よそったご飯のうえに載せるだけ。このとき、チンゲンサイや小松菜などの青みがあると「『肉ばっかり食べてないで!』とお母さんに怒られるのを防げます」と鬼丸シェフ。時間にして20分足らずで2品を作り、早々に乾杯という運びとなりました。

オンライン飲み会では、参加者から質問を受け付けたり、感想を話してもらうなど、3×3 Lab Futureの現地と参加者、または参加者同士の交流が持たれました。

鬼丸シェフは「加工品を使えば料理がもっと身近になる」と参加者に呼びかけています。

「料理というと、ハードルがすごく高いもののように思っている方も多いと思いますが、実は加工品をうまく使うと簡単に美味しいものを作ることができます。そこをスタートにすると、料理の世界が楽しく、気軽に広がっていくのかなと思います」

また、築地場外市場の魅力を「人とのつながり」ではないかとも述べています。

「最初は背筋を伸ばして出かける街というイメージがありましたが、何度も行っていると『また来たね!』と笑顔で迎えてくれて馴染んでいく。すると、他にもいろいろなお店を教えていただけるようになるんです。そうやって人が人をつないでいく街なんだと思いました。そこで話を聞けば知識も増えていくし、食の楽しさも増していく、そんな面白い街だと思います」

参加者との交流で質問に答える寺出氏

寺出氏も「人」の大切さについて次のように話しています。

「買い物をする街というよりも、人に会いに行く場所だと思ってほしい。そして、人と話してオススメを教えてもらい、美味しいものを食べる。なにかを知り、見つけていくという、スーパーマーケットにはない良さがあると思います」

イベントとしては終了した後も、オンライン会場を開放し、参加者、3×3 Lab Futureの間で歓談が続けられ、楽しい一夜となったようでした。

「オンライン」というチャレンジと可能性

今回のようなオンラインイベントは、築地場外市場にとっても、大きなチャレンジであったそうです。

「もともと築地場外市場は、相対する文化で成り立っていたために、テレビのように不特定多数に向かって、一方通行のコミュニケーションをするということは考えたことすらなかったのです。オンラインでのイベントに対しても似たような危惧を抱いていましたが、実際にやってみると、人と会うことでしか伝わらないと思っていたものが、オンラインでも伝わる、人と繋がれるのだということに気づいた、というのが今回のイベントの正直な感想です」

と寺出氏は述べ、このようなオンラインイベントが、築地に「来てもらう」ための強力なツールになり得るという手応えを得たと話しています。しかし、このようなイベントが成立するためには「信頼感があること」が条件だったのではないかとも指摘しています。

「3×3 Lab Futureの人たちには、何度も築地に来てもらって信頼感を得ることができたのは大きいのではないでしょうか。お互いに何をしたいのか、相手に何を求めているのか、要望がちゃんと相互に認識できたと思います。築地市場の移転、コロナ禍など、街に引き寄せる力を立て直そうとしている時ですが、今回のように外とつながる機会が重要だということも分かったし、それは今回のようにすれば可能なんだということを教えられたと思います」

巷では、さまざまなオンラインイベントが開催されており、効果的な、効率の良いコミュニケーションのあり方がさまざまに模索されていますが、さんさんキッチンは、ユニークなコミュニケーションのあり方でそこに一石を投じることができる可能性もあるのかもしれません。

プロデューサーの田口は、「3×3 Lab Futureとしてもひとつの挑戦ではあったが、空気感を伝えることができたようにも思う。参加者の皆さんものってくれたのではないか」と手応えを感じているとともに、以下のように反省があったとも話しています。

「当初、テレビのように、"ちゃんと"やろうとしすぎていたのですが、参加者の方々とのコミュニケーションの流れを大切にしながらフレキシブルに運営していくことも大事だと感じました。実食の段階ではオンライン上に笑顔が広がり、改めて"食べる"という行為の力を感じた。今後もこのキッチンを活かしたイベントをうまく開催できたらと思います」

コロナ禍がもたらしたのは「人と人の断絶」ではなく、「人と人の新しいつながり」である、そんなことを感じせるさんさんキッチンとなりました。


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