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【レポート】新しい出会いと対話が交差する、学生たちの熱い夏 Day2

「丸の内サマーカレッジ2021」2021年8月11日〜13日開催

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丸の内サマーカレッジ2021、2日目の朝。会場ではテーブルを囲んでパーティション越しに談笑する学生たちの姿があり、オンラインでも徐々に集まってくる学生たちの表情は和やかで、初日よりもリラックスした雰囲気が流れています。この日は3つの講演に加え、本格的なグループワークが始まります。司会を務めるエコッツェリア協会の田口は「もし自分がサービスを提供するなら、こんなことができるのでは?コスト構造は?とアクティブに考えるといろんなことが見えてきます。これから2日間、ぜひそんな前向きな姿勢で臨んでみてください」と呼びかけました。

<2日目のプログラム>

・講演3「グローバルな世界を感じてみよう」

  桝本博之氏(B-Bridge International, Inc. /President&CEO)
・講演4「多様なキャリアのあり方」

  ファリザ・アビドヴァ氏(Trusted株式会社 共同創業者/代表取締役CEO)

  大越瑛美氏(株式会社リコー TRIBUS推進室))
・ワークショップ1 テーマ検討

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講演3 「グローバルな世界を感じてみよう」―桝本博之氏

講演3 「グローバルな世界を感じてみよう」―桝本博之氏

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桝本氏は、日本の大手企業に勤めたのち、1996年シリコンバレーの企業からヘッドハンティングを受けて渡米。同社の日本法人代表取締役を勤めたのち、複数の会社を起業し、2000年にB-Bridgeを設立。日本の素晴らしい人材、技術、文化を世界に広める架け橋となるべく、シリコンバレーを拠点にインキュベーション事業や教育事業を展開しています。この日の講演には、現地からオンラインで登壇。シリコンバレーで多くのイノベーションやビジネスが生まれる理由や、これからの時代を生き抜くうえで不可欠な思考のエッセンスについて語りました。

Google、Facebook、Apple、Intelなど名だたる企業がこの地から誕生し「IT企業の聖地」として知られるシリコンバレーですが、歴史を振り返ると、もうひとつの魅力が見えてきます。1849年、新しく発見された金鉱に人々が殺到するゴールドラッシュが起きました。600人ほどしか住んでなかった地域に、夢と野望を抱いた25万人もの人が世界各地から訪れたのです。「ここに来れば何かが起きるという遺伝子は、時代を超えて脈々と受け継がれている」と桝本氏。

「全米で見ると、外国人の割合は4分の1ほどですが、シリコンバレーは人口300万人の36.8%が外国人。さらに、全米の特許の約17%はここから生まれていて、ベンチャーキャピタルの投資金額の約50%がここに集まっています。なぜ、シリコンバレーでは多くのイノベーションやビジネスが生まれるのか? シリコンバレーとは、単なる場所ではなく、いい意味でその環境に感化され、マインドセットが変わる場所、あるいはマインドセットが形成される場所です。そのマインドセットによって、ヒト、モノ、カネが循環するエコサイクルが成立しているのです」

グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリン、ヤフー共同創業者のジェリー・ヤン、テスラの共同創設者のイーロン・マスクなど、シリコンバレーには、世界的に活躍する外国人起業家が多くいます。今から100年ほど前には、ワイナリーの経営で大成功を収め「カリフォルニアのワイン王」と呼ばれた長澤鼎、飛行機を用いた稲作で名を残した「ライス王」の国府田敬三郎など、シリコンバレーが位置するカリフォルニアで活躍した日本人がいましましたが、今日のシリコンバレーで、外国人起業家たちと肩を並べる日本人の存在は、残念ながら見当たりません。

桝本氏は、世界のGDPを表したグラフを紹介し、次のように話しました。

「ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた1970年代を経て、過去30年の日本経済の成長は、ほぼ横ばいの状態です。カンボジアやベトナムなどの国を日本から見た時、発展途上国という言い方がされていましたが、実際に発展していない国は日本だったりします。日本が安全で美しい国であることに変わりはないけれど、世界から見た時に、日本がすごい国というのはもう違うかもしれない。その意味では、今後、日本人だけで技術やビジネスを生み出そうとするのではなく、海外の人たちを巻き込んでやることも、日本がグローバルに発展するための得策のひとつと言えます」

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桝本氏はこう話したうえで、シリコンバレーをめぐる3つのポイントについて説明しました。

1つ目は「マインドセット=考え方」。「人によって、物事に対する考え方や見え方はさまざまだということを認識しましょう。自分の常識で、他の人が多分こう思っているだろうと捉えるのではなく、自分の考えをきちんと伝えることが重要です。逆に言えば、人々がどんな風に考え、物事を見ているかを聞く必要があります。そのために大切なのは、コミュニケーションを取ることです」

2つ目は「起業家精神(アントレプレナーシップ)」。「これは、会社を興すための技でも想いでもなく、あくまでもチャレンジするマインドのこと」と桝本氏。「例えば、コロナウイルスが流行して困ってしまった。どうしようと悩んでいたけれど、コロナ禍だからこそ、意外とできるようになったことがあるぞと切り替えていける、そんなマインドを皆さんには、ぜひ持ってほしいと思います」

続けて、氏は、大企業とスタートアップという2つのイノベーションの重要性について触れました。

「大企業思考とスタートアップ思考のどちらがいいですか?と、日本の方からよく聞かれるのですが、優劣をつけられるものではありません。大企業が生み出す安定した持続的イノベーション、スタートアップの成長する破壊的イノベーション。このどちらも重要です。起業家精神には、持続的イノベーションを起こす人たちのニーズを認めたうえで、破壊していく。そんな姿勢も含まれているといえます」

3つ目は「リーダーシップ」。リーダーシップを育むためには、知識、人間力をつけること、挑戦と失敗を繰り返すことが大切だと桝本氏。

「挑戦したら必ず失敗します。それを繰り返せる環境に身を置くことが重要です。人間力は、挑戦と失敗がなければ育ちません。マインドセット、起業家精神、リーダーシップは、なぜシリコンバレーだと構築されるのか?主な理由は3つあります。まず『多様性』があること。世界中からさまざまなバックグラウンドを持つ人たちが集まり、多種多様な考え方やアイデアが存在しています。次に、失敗が許容される『フェイルファースト』の文化が根付いていること。失敗を次のステップに繋げることに重点が置かれています。3つ目は、『トライ&エラー』。シリコンバレーには何度失敗しても、挑戦できる環境があります」

「究極を言えば、日本にシリコンバレーを作るのは難しいと思う」と桝本氏。

「日本には、失敗が許容されない文化と平準化を目指す風潮が根強くあります。そのため常識の幅が極めて狭く、平均を超えて上にいくと、出る杭は打たれる状態になり、下にいくと落ちこぼれとみなされてしまいます。対して、シリコンバレーは常識の幅がものすごく広い。逆に言うと、非常識だらけです。同じことをしても、日本とシリコンバレーとでは『そんな非常識な!』『すごい!』と言われる違いがあります。同じ頑張るなら、シリコンバレーという場をうまく活用して、世界に向けて発信する方がいいのではないかと私は思います」

シリコンバレーのような文化を構築するために必要な要素として、People、Process、Placeの3つの「P」を変えることが重要だと桝本氏は話します。

「昔からの友人も大切ですが、新しい友人を作ることも大切。コロナ禍の今だからこそ、オンラインで色んな人たちと交流して、チャレンジや目標を広げていけるチャンスです。国内だけに目を向けるのではなく、英語サイトの情報も調べてみてください。例えば、シリコンバレーで日本語を勉強している人たちの集まりなど、共通の興味に関するコミュニティに参加してみる。英語なんて怖くありません。その中で、日本のことを一番知っているのは皆さんです。そのコミュニティで仲良くなって、英語を教えてもらうことだってできるでしょう。新しい場所に行ってみる、今までと違ったやり方をしてみる。そこで自分がどんなことを考えたか。ログをつけていくと、自分の成長が実感できるかもしれません」

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後半、桝本氏は次の4つのゴールを紹介し、学生たちに向けてエールを送りました。

・Achievable Goal=達成可能なゴール
・Stretch Achievable Goal=ちょっと努力しないと達成できないゴール
・Jumping Achievable Goal=ジャンプしないと達成できないゴール
・Big Hairy Audacious Goal(BHAG)=大きく困難で大胆なゴール

「自分のゴールは何かを常に考えましょう。BHAGは、皆さんが生きていくうえでのミッションといってもいいと思います。ゆくゆく自分はこうなるぞというゴールなしに、達成できるゴールだけを追いかけるのでは成長しません。手を伸ばしたり、ジャンプしたりを繰り返しながら、最終的なゴールに向かっていく努力をしてほしいと思います。キーワードはBe Proactive。好奇心をもって、積極的かつ前向きに動いていきましょう。今日、この場での出逢いは、偶然の出逢いです。セレンディピティは、偶然の出逢いからくる喜びであると私は捉えています。自分とは違う常識を持つ人たちとのネットワークを作り、こんな考え方もあるんだなと興味をもって、つながっていってほしいと思います」

講演4 「多様なキャリアのあり方」―ファリザ・アビドヴァ氏

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ウズベキスタン出身のファリザ氏は、サマルカンド国立外国語大学卒業後、神戸大学に留学し、異文化コミュニケーションと国際関係についての研究を行いました。2010年、SOPHY株式会社を東京で起業し、3,000人を超える日本のトップ企業の幹部とマネージャーの育成に従事。さらに「社会と個人の生活が、グローバルレベルで向上するようなイノベーションを加速させる」というビジョンに掲げ、2016年、Trusted 株式会社を設立。あらゆる規模の企業に市場活動の拡大を促進し、ビジネスの成長を実現させる包括的なソリューションサービスを提供しています。事前に学生たちから寄せられたコメントには、起業したい、グローバルでキャリアを築きたい、社会課題を解決したい人が多くいたことから、ファリザ氏は自身の起業体験をもとに、起業の7つのポイントについて語りました。

1つ目のポイントは「Dare to Dream」。「大きな夢を持つことは、非常に大切です。そして、どんなに大きな夢でも、恥ずかしがらずに信頼できる周りの人たちに話した方がいいです。何度も話しているとそれが当たり前になって、人を紹介してもらえたり、自信を持つことにもつながると思います」とファリザ氏。

氏が最初の会社を立ち上げるきっかけは、友人のひと言だったといいます。

「大学時代、私はキャリアについて漠然としか考えていませんでした。そんな折、『異文化理解は面白い分野だし、ビジネスにも必要だから、それをビジネスにしてスタートすれば?』と友人が背中を押してくれました。自分が起業するとは夢にも思わず『絶対無理でしょ?』とその時は思ったのですが、気になって調べてみると、最低限20万円あれば、株式会社を設立できることが分かりました。当時、貯金はゼロでしたが、20万円なら貯められると思い、何の事前計画もなく、会社を作りました。私の弱みでもあるのですが、やると決めたらすぐに行動を起こすタイプです。皆さんにおすすめできる最善の方法ではないけれど、やり方はあとで見えてくるので、とりあえずスタートしてみることも大事だと思います」

2つ目のポイントは「Dig Deeper」。なぜ起業するのか、なぜこのプロジェクトをやるのか、その理由を自分自身に問い、掘り下げておくことが大切だとファリザ氏は話します。

「理由が明確になっていれば、どんな大変なことがあっても頑張っていくことができます。最初はお金を稼ぎたい、有名になりたいでもいい。モチベーションは自分が成長していく過程で変わっていくものなので、その都度自分と向き合い、理由をはっきりさせておくことをおすすめします。ちなみに、私が起業した当初のモチベーションは、安定した収入を持つことでした。 もうひとつお伝えしたいのは、若い頃からひとつのプロジェクトに決めなくてもいいということ。私も興味のあることがたくさんあって、複数のプロジェクトを同時並行で進めてきました。たくさん失敗もしましたが、その中で学んだことが今に活きています。たどり着くまでに10年かかりましたが、死ぬまでやり続けたいと思えるミッションを見出すことができました」

3つ目のポイントは「Reality Check」。「トライ&エラーを繰り返すことができる余裕があるという意味でも、起業はできるだけ若いうちに始めた方がいい」と話す一方、「必ずしも、全てを投げ打って起業するのはおすすめしない」とファリザ氏。大企業で働きながら、その会社のリソースを使ってサイドプロジェクトとして始めるなど、パラレルなやり方があることも胸に留めておいてほしいと呼びかけました。

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4つ目のポイントは「Brand yourself with your passion」。

「いろんな人と会う時に、自分がどんな風に覚えられたいかを考え、『自分の夢やプロジェクト=パッション』のキーワードを決めておくことが大切です。私の場合は、クロスボーダーイノベーションです。対面でも、SNSでもいいので、自分がやっていること、やろうとしていることをどんどん発信していきましょう。やがて人は、皆さんのことをそのキーワードで覚えてくれるようになり、必要な情報を教えてくれたり、人を紹介してくれたり、コラボレーションのお声がけがあるなど、チャンスがどんどん広がっていきます」

5つ目のポイントは「Emotional Rollercoaster」。社会に変革を起こすようなプロジェクトを進める場合、結果が出るには時間もかかり、日々直面する問題のスケールも成功するたびに大きくなっていきます。その中で自分をしっかりとコントロールして進めていくためには「EQ(心の知能指数)」を高めることが大切だといいます。

「規模の大きなプロジェクトを担っている人や高いスキルを持つ人ほど、自分を疑い、自信を持てない人が多いです。かくいう私もそうでした。社会人になっても、これを完全に解決することはできないけれど、今自分のモチベーションが上がっている、下がっているという風に、自分の心の状態を認識し、理解するように努めると、自分をうまくコントロールできるようになります。EQは習得したり、トレーニングによって高めていくことが可能です。ぜひ皆さんも今のうちから身につけておいてください」

6つ目のポイントは「Enjoy the Journey and Celebrate the Small Wins」。

「大きな成功は、そう頻繁にあるものではなく、10年に1回くらいです。それを実現することだけに夢中になると、途中で息切れしてしまうので、小さな成功を祝うことも習慣にしてみてください。会いたい人に会うことができた、聞きたかった情報を知ることができたなど、日々の小さなゴールを達成できたら、自分にご褒美をあげましょう。もうひとつ大事なのは、他者と自分を比較しないこと。比較するべき相手は、1週間前、1ヶ月前、1年前の自分です。頑張って続けていれば、必ず成長を実感できますし、自信もついて、モチベーションも上がって、プロジェクトを進めていくことができます」

7つ目のポイントは「Tips and Tricks」。「社会を変えるというくらい大きな夢を叶えるためには、最低でも10年はかかると覚悟しておくことが大事」とファリザ氏。

「そのうえで、あきらめずに長続きさせられるかどうかが、成功を左右します。続けていくために大切なのは、なんと言っても心身の健康です。オン・オフを切り替えるために、ビジネスのことを考えない時間を持ちましょう。私は、キックボクシングと筋トレをやっていますが、友達と話す、メディテーションやヨガなど、方法はいろいろあると思います。最後に皆さんにお伝えしたいこと。それは、どんなプロジェクトでも夢でも、誰でもできるということ。情熱を持ってあきらめずにずっと続ける。それしかないと思います。あきらめずに頑張って、私たちの世界をより良くしてください」

講演4 「多様なキャリアのあり方」―大越瑛美氏

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大越氏はカリフォルニアの短大を卒業後、リコージャパン株式会社(当時:リコー販売株式会社)に新卒入社し、コピー機周辺のアプリケーションのプリセールスを経て、株式会社リコーへ出向。360°カメラ「RICOH THETA(リコー・シータ)」の立ち上げメンバーとして、マーケティングやコラボレーションを担当。その後、環境事業開発拠点である環境・エネルギー事業センターでのオープンイノベーションに従事したのち、リコーのアクセラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」を立ち上げ、運営事務局を担っています。この講演では、学生時代から現在のキャリアに至る経緯を交えながら、企業で働く中で心がけてきたことについて語りました。

ホテルマネジメントを学ぶために、カリフォルニアの短期大学に留学した大越氏。ところが半年後、その学科がなくなってしまったため、ビジネスやデザインなど興味のある分野にシフトし「寄り道的な学び」を堪能したそうです。「学びたいものを好きに学ぶことができ、求める学生にはとことん応えてくれる環境があった」と氏は話します。

アメリカの自由闊達な空気の中で充実した留学生活を過ごした大越氏は日本に帰国し、2008年4月リコージャパン株式会社に入社。そこで"逆カルチャーショック"を受けることになります。

「会議に出席しているからには自分の意見を発してもいいだろう、と思い意見を言っていると、周りの方々にたいへん驚かれました。ネガティブな意味ではなく、積極的でいいですねという反応でしたが、これには私自身もびっくりしました。営業部を支援する職種として採用されたのですが、全くの新人だったので専門知識はなく、入社して1、2年はひたすら勉強の日々。3年目にようやく実務に携わるようになりました。この頃から、社外の場にも積極的に参加するようになり、そのひとつが、エコッツェリア協会の田口さんが携わられていた『一般社団法人 企業間フューチャーセンター』が企画する活動です。そこには、年代も職種も異なる人たちが集まり、さまざまな社会課題について話し合い、一緒に考えていく場がありました。同期の女性から『大越さん、こういうの好きそうじゃない?』と言われて興味を持ち、行ってみたのが最初のきっかけでした」

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2011年3月11日、東日本大震災が発生。大越氏は「趣味のバックパッカーで出会った友人が放ったひと言に衝撃を受けた」といいます。

「"見知らぬ国にバックパックひとつを背負って行ける私たちが、被災地に行けない理由が分からない"という友人の言葉を受けて、自分にできることは何かを深く考えるようになりました。そんな折、東北地方で行われる夏祭りの警備のボランティア募集を見つけて、これなら私にもできるかも?と思い、参加しました。数日間の滞在中、いろんな方たちとの出会いがありました。東京に戻ってからも交流を続ける中、現地のお母さん方が作っているミサンガやネックレスを東京で販売することになり、ボランティアで販売員を務めたこともあります」

大越氏の社外での活動が活性化していくにつれて、社内での仕事にも変化が起きました。

「主体的に活動したり、人と出会うことが好きならやってみませんか?と社内の方にお声がけいただき、2012年、『RICOH THETA』を立ち上げる新規事業の部署に異動しました。7人ほどの小さなチームで個人向けに新規商材を販売していくという、これまでの法人向けのシステム販売とは全く異なる仕事で、戸惑いながらも新しいチャレンジだと思い取り組んできました。この部署ではマーケティングにも携わり、デザインフェスタやウェザーニューズとのコラボレーションが実現しました」

2016年、再び転機が訪れます。以前から希望していたオープンイノベーションによる新たな環境事業の創出を担うリコー環境事業開発センター(静岡県御殿場市)への異動が決まったのです。

「ここでは新規事業のマーケティングを担当しました。オープンイノベーションというと社内×社外のイメージがあると思いますが、例えばリコーグループ内の技術AとシステムBをかけ合わせて、実験的に検証しながら営業の方にも入ってもらい、お客様に新たな価値をご紹介していくという、社内×社内のオープンイノベーションも実現可能な部署でした。製造現場の人たちと密接に関われたことも、私にとって新しい体験でした」

その後、大越氏はリコーの経営企画に異動し、社員の声を活かした経営改革として、社内起業家の育成&スタートアップアクセラレータープログラム「TRIBUS」の立ち上げに携わることになりました。これまで社内外で得た知見や体験を総動員し、プログラムの設計から携わり、現在は同プログラムの運営事務局を担っています。

「TRIBUSは、事業と人々を育む事業創造のための挑戦の場です。社内外からイノベーターを募り、リコーグループのリソースを活用し、イノベーションにつなげるプロジェクトで、誰もが参加できるグラデーションのような参加形態を意識して設計していることが特徴的です。本業と掛け持ちしながら社内副業制度を使いプログラムを支える『サポーターズ制度』には、350名以上の社員が在籍しています。採択チームごとに、リコーグループ社内のリソースや資源、各部署との連携を担うカタリストをアサインしているほか、ゆるくつながって応援するコミュニティ機能も付加しています。2019年のプログラムはフェイス・トゥ・フェイスでの開催でしたが、2020年からは新型コロナウイルス感染拡大の影響により、全てオンラインで開催しています」

社内から生まれたプロジェクトには、人々の心と生活をアートの力で豊かにするというビジョンのもと、リコーのスキャニングやプリンティング、3Dデータ生成技術を活用して現代アーティストとの共創で作品を制作する「StareReap(ステアリープ)」や、インドの農村部に女性の下着生産の雇用を創出し、女性の地位向上に貢献することを目指す女性向けの下着・アパレルブランド「Rangorie(ランゴリー)」などユニークな取り組みがあり、現在進行形で進化を続けています。

最後に、大越氏は学生たちに向けてこう話しました。

「私が心がけてきたことは、企業の中で自分らしく価値を発揮することです。私のように何かひとつ特出したスキルがなかったとしても、"人と人をつなぐリエゾンとしての役割"を担う生き方もあるんだなと受け取ってもらえたら嬉しいです。コロナ禍で働き方のルールが変わり、2020年3月からは原則テレワークでの勤務になりました。地域プロジェクトに携わる機会が増え、東京勤務であることがボトルネックになってきたため、先週、京都郊外に拠点を移しました。川や山に囲まれた自然の環境は、私にとってすごく豊かな環境ですが、他の人からすれば『なぜ、そんな田舎に住むの?』と映るかもしれません。皆さんもぜひ、自分にとっての豊かさについて考えてみてください。ますます複雑化する社会の中で、成功を定義するのは難しいですが、自分が豊かだと感じることに素直に向かっていくことが、皆さんが目指す成功への手がかりになるかもしれません」

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2日目の後半は、約2時間をかけた本格的なグループワークが行われました。最終日にグループで発表する「ビジネスプラン」について深掘りするために、各グループでディスカッションを行い、ストーリーラインを作り上げていきました。ディスカッションを始めるにあたって、エコッツェリア協会の田口は、「Who」「Whom」「What」「Where」「When」「Why」「How」「How Much」という「6W2H」を記入するシートを配布し、次のように話しました。

「まちづくり、環境、キャリアなど、グループごとに共通した大テーマがあると思いますので、今一度、それについて話し合ってください。その後、チームとして打ち出したい活動プランやプロジェクトプランをこのシートを使ってまとめてみてください。6W2Hの中でも一番重要なのは、WhomとWhyです。誰のために、何のためにやるのかをしっかり考えましょう。できれば、How Muchも記入してください。お金を意識することを考えてみてほしいと思います。もう一つ大切なのは、持続可能なビジネスを考えること。進める中で『これって、本当に持続可能ですか?』と自分たちに問いかけましょう」

最終日は、SDGsをテーマとした2つの講演が行われるのち、ビジネスプラン発表に備えた準備を行うワークショップと、3日間の集大成として、会場、オンライン各チームのプレゼンテーションが行われます。

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