シリーズVOICE

【VOICE】日野裕輝さん、那須昭碩さん

東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 修士2年

Q1
あなたはいま、どのようなプロジェクト・仕事に取り組んでいますか。また、それに取り組むきっかけについて教えてください。
A1

日野さん 大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアに関わるプロジェクトとしては、2020年の秋に「東京駅地下通路模型」の制作に取り組みました。以前からお世話になっていた吉村有司特任准教授から、大丸有エリアの地下全容を把握する模型制作の話があり、同じ大学院の友人である那須君を誘って活動を始めました。3×3Lab Futureとのご縁は、模型制作のためにスペースを使わせていただくことになったのがきっかけです。
模型は、実際に地下の階段の高さを測ったり、段数を数えて高さの比率を出しています。地下の段差を全て把握できたので、例えば車椅子の方用の地図アプリに、僕たちの持っている情報を活かすなどバリアフリーの側面でこの模型の情報を提供できる可能性があるのではないかと思っています。また、地下にいながらも外の光を浴びることのできるスポットが明らかになるなど、新しい発見がたくさんありました。

一方で、模型に対して感じている危機感もあります。それは模型自体に魅力があっても、そこに意味を持たせることが非常に難しいということです。模型が完成すると皆さんの視点で興味を持ってくださるのですが、完成した後にどのように管理・展示され、どのような役割を果たすのかという部分までしっかり考えておく必要があります。また、模型制作にまつわるストーリーがあるからこそ、模型の魅力が最大限に引き出されるという側面も忘れてはいけません。そういった意味では、僕らが制作した模型は、Google Earthでは表すことのできないものを伝える地図になっていますし、3×3Lab Futureでネットワークコーディネーターの田邊さんが模型のストーリーを多くの方に伝えてくださることがポイントになっていると思います。

那須さん 最初は研究ベースのプロジェクトとして制作を始めましたが、研究だけではなく模型を活用したイベントなどもできるのではないかという話になりました。そこで実施したのがオンラインの「地下散歩イベント」 です。まず、日野君が地下通路を歩いて実況中継し、僕が中継地点にあたる箇所の模型を映します。さらに、3×3Lab Futureの個人会員で、長年地理の教師を務められていた澤内隆さん(クラブツーリズム)に解説いただき、歴史的背景と照らし合わせながら参加している方々と一緒にオンラインで散歩しました。
また、3×3Lab Futureで制作を進めているうちに様々な個人会員さんとの出会いがあり、ARの技術を持っている方に建物の入口の情報と模型を連携していただきました。これによって模型が、アナログとデジタルの中間を表現する媒体となり、今後駅などに置かれる地図の新しいモデルになり得るのではないかと感じています。

Q2
仕事や個人の活動において、あなたが大切にしていることは何ですか。
A2

日野さん 僕らが制作した模型は、今は透明なガラスと木枠を組み合わせてテーブルにし、3×3Lab Futureに設置して個人会員の方々に使っていただいています。元々DIYが好きなこともあってテーブルを作ったのですが、このように自分のためでなく、制作を依頼した方の希望を掘り下げて一緒に試行錯誤しながら作ることが好きなんですよね。
自分自身が一方的に何かを与える、受け取るという関係性ではなく、色々な人の生き方、悩み、なぜ苦労しているのかという部分にまで踏み込んで、構造的に考えながら寄り添うことのできる人間になりたいと考えています。

那須さん 模型制作や企業でインターンシップをしてきた中で感じたことは、言われた作業をこなすだけの仕事はしたくないということです。例えば、上司から資料のまとめを頼まれた際に、そこにいかに自分なりのバリューを付け加えて渡せるかを意識することが大事だと感じています。今後も何か活動する際には、自分がやる意味や価値というものを大切にしたいと思います。
また、もう一つインターンシップに取り組む中で意識していることは、今後僕のポジションに入る人が動きやすい環境を残しておくということです。誰がこのポジションに入ってもその人が持っている価値を発揮しやすいような環境を残すことができれば、サービスにとってプラスなだけでなく、僕自身の価値にもつながると思っています。

Q3
あなたにとって3×3Lab Futureとはどのような場所ですか。
A3

日野さん 僕にとって3×3Lab Futureは、自分を知ることができた場所です。エコッツェリア協会の方々や個人会員の大人たちにたくさん甘えて、やりたいことを自由にやらせてもらうことができました。施設に集う方々は圧倒的に自由でありながらも、自分の活躍してきた特定の分野で自信のある方が多くとても強いコミュニティだなという印象を抱いています。何より、皆さん複数の名刺を持っているのが衝撃的でした(笑)
学生の僕からすると「社会人」という時点で別次元の存在で、さらに3×3Lab Futureに集う方々は自分のやりたいことに挑戦している人たちですよね。これから僕が社会人になると、ますます皆さんのすごさが身に染みて分かってくると思うのですが、先輩方のようにやりたいことに積極的に挑戦できる社会人を目指していきたいです。

那須さん 3×3Lab Futureって落ち着く場所でありながら、良い緊張感もありますよね。本当に刺激があって、いつ伺っても飽きない場所だと感じています。 模型を制作している期間も、集中して作業する日もあれば、模型に関心を持ってくださる個人会員の方々とお話できるひと時もあって、多様な時間を過ごすことができました。

Q4
3×3 Lab Futureで、こういう企画やイベントがあったら嬉しい、というコンテンツは何ですか。
A4

日野さん 学生たちの価値観を揺さぶるイベントを開催してほしいです(笑)
3×3Lab Futureは、大丸有エリアを通じて、学生の視点を外の世界に広げられる唯一無二の場所だと感じています。つまりは、東京しか見えていない日本の学生たちを外の世界へ連れ出す"異世界ワープポイント"のような存在になってほしいです。大手町の3×3Lab Futureに来たと思ったら「あれ?宮崎にいる...?」と感じるような、そんな世界を創れたらとても面白いなと思います。

那須さん 3×3Lab Futureでデスクワークだけでなく、クラフト作りができる場所があれば嬉しいです。僕らは、個人会員の方が活動する横で模型を制作していたからこそ、たくさんの方が興味を持ってのぞいてくれたのだと思っています。実際会員さんとお話しすると、「実はこんなものを創っていて...」とカバンの中にあるものをどんどん出してくれるんですよね(笑) それぞれクリエイティブに制作されているものがあるのだと感じたので、それが表に出るような場を設けるともっと面白い空間になると思うし、交流もさらに活発になるのではないかと感じます。

Q5
あなたのお気に入り(街、お店、サービス、本など)を教えてください。
A5

日野さん 映画「もののけ姫」がお気に入りの作品です。好きなところが二つあって、一つ目は宮崎駿監督の圧倒的なストーリー作りと作画です。あれだけの熱量と聡明さで作り上げているのが本当にすごいと思っています。
もう一つは、物語全体を通して、日本の現在の「教育」と「地方」を考えさせる内容になっているという点です。時代の中で一番勢いがある場所として「たたら場」が出てきて、みんなそこで働く人たちに憧れている。今は「たたら場」は存在しないし、時代も進んでいるのに、現代人はあの頃の人たちよりもある意味苦しい生活をしているのではないかと思います。逆説的ではありますが、視点を広げることの大切さを感じることのできる素晴らしい作品なので、僕のお気に入りです。

那須さん 僕は、友人におすすめしてもらった「武器になる哲学」(著:山口周)という本がお気に入りです。中学、高校時代は社会、倫理が苦手だったのですが、この本は哲学を実務に即して書いてあるので分かりやすいなと思っています。
この本には、人間はおおもとの性質が似ているということが書かれていて。それに沿って考えると、最近出てきた面白い考え方をする人、組織にいるちょっと尖った人たちも、結局は何かしらの哲学での概念に当てはめられるのではないかと気が付きました。哲学の概念を知ることで、これから人生で起こることが俯瞰できるのではないかと感じています。就職活動を控える学生さんにもおすすめの本ですね。

Q6
今後の夢や挑戦したいことは何ですか。
A6

日野さん 僕が挑戦したいことは"革命"です。日本の中には、もっとたくさんの人を幸せにできるはずなのに機能していない仕組みがあるのではないかと感じています。日本を変えるとなったら自治体ごとでの挑戦が必要だと思っているのですが、ただ、今の僕ではどうしたら良いのかまだまだ方法が分からないので、まずは企業に就職することにしました。東京のコンサルティング会社で働くことが決まっているのですが、なぜそこを就職先に選んだかというと、5年、10年に一度ある政策などに携わる機会があるからです。
「そんなに思想があるなら官僚か政治家になれ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、僕の性格的にそれはちょっと向いていないかな...と思うので(笑) より良いものを大切にして残す日本を創るという意識を常に持ちながら、僕なりの角度で社会を構造から変えていけるように頑張りたいと思います。

那須さん 生活の基盤となるインフラ作りを、世界の必要とされている国で挑戦していきたいです。鉄道、発電所、水道などを作るような仕事に携わりたいと思い、商社に就職することが決まりました。
これまでは「何かを創る」という目標のために建築を勉強してきましたが、新しい環境でもその経験がきっと活きると思いますし、今後も夢に向かって頑張っていきたいと思っています。

日野裕輝 (ひの・ゆうき)
東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 修士2年

家具や内装の設計・施工が趣味なほか、劇作やグラフィックデザインなど幅広く活動している。大学院進学後は、東京一極集中の解消や若年層の幸福度の低下など社会構造の問題への関心が強く、ボトムアップでの価値観の転覆を日々夢想している。

那須昭碩 (なす・あきひろ)
東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 修士2年

幼少期からものづくりに熱中。2016年東京大学入学。建築を志し、建築学科に進学後は製図室に入り浸る生活を送る。一方で、建築以外にもオンライン学習サービスの立ち上げや運営などに尽力。大学院に進学後はより視野を広げ都市解析や広域のインフラに興味が移り、来年度からは総合商社に就職予定で、海外インフラ事業や不動産開発への貢献を志している。

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