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【レポート】熱い想いが形作るサステイナブルなまちづくり

第7回未来まちづくりフォーラム共創事例ピッチ 2025年3月19日(水)開催

「地域が輝くコミュニティづくり~宮崎市の新たなチャレンジ~」登壇者たち

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2025年3月18日~19日、持続可能な未来の実現を目指し、各界で活躍するリーダーが集うコミュニティであるサステナブル・ブランド国際会議2025が東京国際フォーラム等で開催されました。同会議の特別企画の1つとして、地方創生とWell-Beingを軸に地域社会の持続可能な発展と幸福の追求を考える「未来まちづくりフォーラム」が開催され、エコッツェリア協会も後援しています。「地域が輝くコミュニティづくり」では、宮崎市で進む新たな官民連携のまちづくり事例が紹介されるなど、行政、企業、団体が共通の目的を持ってまちづくりを進めることの重要性や、コミュニティや場のつくり方について、「共創事例ピッチ」としてトークセッションが行われました。先駆的なまちづくり事例についてレポートします。

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共創事例ピッチ①「洋上風力を契機とした持続可能なまちづくり」

共創事例ピッチ①「洋上風力を契機とした持続可能なまちづくり」

最初のセッションでは、株式会社JTBの曽根進氏と北海道石狩市の池内直人氏が登壇し、石狩市での取り組みが紹介されました。

池内氏によれば、石狩市は2012年のFIT(固定価格買取制度)を契機として再生可能エネルギー産業が活性化しています。2023年には国内2例目となる洋上風力発電所が稼働し、今後も原発1基分に相当する洋上風力発電所が計画されるなど「大きなビジネスチャンスが石狩市に訪れる」(池内氏)と再生可能エネルギーに期待を寄せました。再生可能エネルギーの影響はデータセンターなどのGX産業や地域のDX化など、関連産業にも波及しています。池内氏は「洋上風力発電で生まれたビジネスチャンスをまちの主役である市民に還元したい」として、札幌との都市型ロープウェイ構想や配送ロボットの実証実験など、市民向けの取り組みも積極的に行っています。

一方で曽根氏は、JTBの強みを生かして石狩市の地域活性化を支援しています。曽根氏は「官・学にまで幅広く持っネットワークを有しているのが私たちの強み」と強調し、そのネットワークを活用しながら、洋上風力関連産業参入に向けたイベントや、小中高生向けの出前講座なども進めてきました。曽根氏は今後、GXやDX、観光コンテンツの造成、空き家開発などを通じて関係・交流人口の拡大にも取り組んでいく意欲を見せました。

image_event_20250319.002.jpeg 左:「JTBの強みを活かして関係・交流人口の拡大に取り組む」と語る曽根氏
右:再エネ事業に期待を寄せる石狩市の池内氏

そして現在、両社が取り組んでいるのは、地元企業や市民が再エネによる変化を「自分ごと化」してもらうことです。風力発電事業への参入を目指す地元企業向けの勉強会や、市民向けのワークショップなどを開催してきました。その結果、「地域でも少しずつ変化が芽生えてきた」(池内氏)そうで、「電力の地産地消だけでなく、地域で生まれたチャンスを地域の活力にする」と抱負を述べました。曽根氏は「これまでは両立が難しかった地域の経済合理性と環境配慮を備えた未来のまちづくりを石狩で実現したい」と展望を語りました。

共創事例ピッチ②「くらしに寄り添い、社会課題を解決するまちづくりを目指して」

続いては、プライムライフテクノロジーズ(PLT)株式会社の取り組みです。PLTは2020年にパナソニックとトヨタ自動車が設立した合弁会社で、まちづくり事業の成長・発展を模索しつつ、人々のより良い暮らしの実現を目指しています。

image_event_20250319.013.jpeg 左:「当社は『未来をまちづくるPLT』として暮らしやまちをしっかりとつく作っていく」と語ったPLTの本山氏
右:ミサワホーム株式会社の若江氏

まずPLTグループのミサワホーム株式会社の若江暁久氏が取り組む「ASMACI神戸新長田」が紹介されました。若江氏によれば、「ASMACI神戸新長田」では、民間病院の建て替え要望と再開発用地の両要件を満たすため、下層を病院、上層をマンションにした複合再開発を行ったと言います。若江氏は「病院が地域の交流や健康を支える機能を担い、ウェルビーイング向上やコミュニティ形成の中心になった。病院、住民、地域にとって付加価値の高い建て替えになった」と語りました。

次に、パナソニックホームズ株式会社の熊谷一義氏は、福島県伊達市でタウンプランナー型のまちづくりを紹介しました。トップダウンではなく、地元の企業や自治体、住民が主体的に地域課題を解決する仕組みで、熊谷氏らはその支援役に徹しました。「私たちがやったことは、地域を良くしたいという想いを持つ企業や人材を掘り起こし、活躍できるフィールドを提供したことだ。今後も付加価値創造型のまちづくりを実践していきたい」と抱負を述べました。

image_event_20250319.004.jpeg 左:パナソニックホームズ株式会社の熊谷氏
中:トヨタホーム株式会社尾崎氏
右:ミサワホーム株式会社小口氏

続いてトヨタホーム株式会社の尾崎彰彦氏が、移住したくなるまちづくりを紹介しました。埼玉県久喜市は都心への通勤圏内であるにもかかわらず、若年人口が増えず、人口が停滞するという課題を抱えていました。そこで同社と東武鉄道が調整役となり、市や企業、大学を巻き込んで保育園の誘致や商業施設の開業などを行い、まちの魅力を高める取り組みを行っています。現在では人口が増加に転じ、「停滞感のあったまちは生まれ変わり、地元の人にも歓迎されている」(尾崎氏)とのこと。

次の事例として、ミサワホーム株式会社の小口太郎氏が東京都大田区での取り組みについて紹介しました。大田区は都内有数の町工場が集積する地域ですが、技術者の高齢化による人材不足という課題を抱えています。そこで同社は、小学校跡地を活用し、共同住宅、店舗、コミュニティセンターが一体となった施設を開発しました。小口氏は「この施設により、試作から量産までのものづくりのエコシステム構築や人材育成が促進され、地域の活性化と防災機能向上を目指している」と語りました。

PLTの本山氏は最後に「今までは競合他社だった会社がひとつのグループになることで、多様な解決法を皆さんに提案できる。これからも相談事があれば当社にご相談いただきたい」と呼びかけました。

共創事例ピッチ③「地域が輝くコミュニティづくり~宮崎市の新たなチャレンジ~」

最後のトークセッションでは、エコッツェリア協会コミュニティ研究所長の田口真司、宮崎市総合政策部都市戦略課公民連携推進室の岩見健太郎氏、一般社団法人宮崎オープンシティ推進協議会(MOC: Miyazaki Opencity Council)の杉田剛氏が登壇し、公民連携の新たなコミュニティづくりについてディスカッションしました。

image_event_20250319.005.jpeg左からエコッツェリア協会の田口、宮崎市役所の岩見氏、MOCの杉田氏

MOCは、2024年4月に発足した官民連携の団体で、行政のほか、スタートアップや地元企業、地元産業が混じり合い、これまで生まれなかったようなイノベーションを生み出そうとしています。MOCは2025年4月に市内の高千穂通りに設置された「みやざきイノベーション共創拠点」を宮崎市と連携して運営し、地域活性化の場づくりにも取り組んでいます。

田口が所属するエコッツェリア協会は、大丸有地区のまちづくりを推進するだけではなく、宮崎市などと連携協定を締結するなど、地域とのつながりを積極的に築いてきました。そのような経験をもとに田口は「まちづくりは『箱モノ』があってもそれですべてが解決するわけではない。共通の目的を持ったいくつもの取り組みを組み合わせていくことで、厚みのあるまちづくりになる」と連携の重要性を強調します。

岩見氏は所属する宮崎市の公民連携推進室について、従来のようなハード面の連携ではなく、民間が持つソリューションやノウハウを政策に活かす部署だと紹介。同氏は、「もはや行政のリソースだけでは地域課題や社会課題を解決できる時代ではない。行政は、MOCのような団体を通じて多様な企業や団体と連携できる場をつくり、共に取り組みを進めなければならない」と語りました。

杉田氏からは、MOCの役割を①スタートアップ発掘・育成、②地元企業のオープンイノベーション、③農業・食産業の活性化、④交流・共創の場づくり、の4本柱に位置付けられていると説明されました。

image_event_20250319.016.jpegエコッツェリア協会の田口

田口は「従来はイノベーションだと言ってハード(施設)を先につくり、人が集まらないという事例が散見された。しかしMOCは、昨年の創設以来、まずはネットワークや人集めにしっかりと取り組んだうえで拠点をつくっている。コミュニティは人に紐づく。何かしたいという情熱を持っている人を中心にコミュニティが形成されていく。そんなネットワークに共創拠点のような場ができると『偶然の出会い』を誘発し、イノベーションが加速度的に進んでいく」と、有機的なコミュニティが拠点において活動できる素地がつくられていることを高く評価。

杉田氏はこれに応えて「これからの宮崎には『変わった人』が必要。異質な人がいることで、他の人も『こんなこと喋ってもいいんだ』という心理的安全性が生まれ、自由にアイデアを語れる」と人集めに取り組んだ経験から、多様な人々が集う意義、そして人々が集える拠点の意義を語りました。

image_event_20250319.017.jpeg 左:行政だけで地域課題を解決できる時代ではない」と語る岩見健太郎氏
右:「宮崎にはいい意味で異質な人が必要」と語るMOCの杉田剛氏

また田口は「従来の官民連携は発注と受注など主従関係になりがちだが、MOCは両者が一緒に手を取り合って進んでおり理想的」と語り、それに対し、岩見氏は「大事なことは理想のまちや子どもたちに残す未来について熱い想いや本音をぶつけ合うことだ。そんな本音のぶつかり合いによってMOC設立という従来とは違う公民連携に結び付いた」と振り返ります。

杉田氏も「イノベーションやエコシステムなど、カタカナ用語は地元の方に伝わりにくいときもある。自分たちの言葉で仕組みを丁寧に説明して、地元の人の理解を深められたら」と地元の理解を得るには想いや本気度が必要だと示唆していました。

最後に岩見氏は「宮崎市でいろんなことにチャレンジできる、宮崎に来ればいろんな人たちに会える、新しいビジネスとして価値が見出せると思ってもらえる、そんな場をつくり上げていきたい」と想いを語り締めくくりました。

image_event_20250319.008.jpeg 左:会場では多数の来場者が宮崎市の事例について耳を傾けていた
右:MOCの取り組みは官と民が手を取り合って進む理想的な形と評す田口

今回のフォーラムで紹介された事例は「まちづくりは人づくり」という言葉を改めて想起させるものでした。地域の人が集まり、主体的に参加することが持続可能なまちづくりにつながっていく。持続可能なまちづくりの主役は、常に人であるということを再認識させられました。今回の事例のような特色ある地域活性が行われることに、ますます期待が高まります。

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