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【大丸有】丸の内健康登山部、富士山へ行く。

1合目から頂上を極める楽しみ(8月23、24日)

自分へのチャレンジ

8月23、24日に渡って、丸の内健康登山部、通称マルケン登山部、初の富士登山がありました。それも「一合目から登る富士山」です。標高3776メートルの富士山。ただでさえ大変そうなのに、何も一合目から登らなくても......という気もしますが、そこはマルケン登山部、座学も交えながら玉原高原、日光、乗鞍と徐々にレベルアップしてきただけに、ただ富士山に登るだけでは面白くない!ということで、チャレンジです。

登山の魅力とは何か、また、健康を考える山の登り方ってどんなものなのか。ちょっとハードですが、楽しさもいっぱい詰まった富士山登山の様子を追いました。

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緑なす裾野を歩く静やかな楽しみ

緑なす裾野を歩く静やかな楽しみ

雨が静かに降る中緑の中を歩くのは穏やかな楽しさがある

初日は朝7時に丸の内集合。昼前には一合目に相当する水ヶ塚公園(1449メートル)に到着し、須山口登山道を通って6合目まで。2日目は3時出発で頂上を目指し、御鉢周り後に下山というスケジュールです。神奈川を過ぎたあたりから雨がパラつきはじめ、"この雨の中本当に登るの?"的な、げんなりした空気も流れましたが、雨が小止みになるにつれてだんだんテンションも上がっていきます。バスの中では健康管理のための活動量計が手渡され、使い方の説明もありました。

活動量計。山道を歩いても思ったよりも消費カロリーは上がらない水ヶ塚公園では、メインガイドの秋山さん(アルパインツアー)から「雨雲レーダーではこれから雨は弱まりそう。がんばっていきましょう」と一言。今日、明日の2日間に渡って専属でガイドしてくれる"富士山ガイド"の都倉洋一さんからも、「富士山は危険もあるので、決して油断せずに気を付けて、でも怖がらずに登りましょう」と挨拶がありました。

というわけで、11時過ぎに須山口からの登山スタートです。「体を慣らし、順応していくようにゆっくり登っていきます」と秋山さんが先頭に立ち、一列縦隊でゆっくりとしたペースで登っていきます。最初の3時間ほどは樹林帯の中を延々と歩き続ける行程。森の中では雨もそれほど気にならず、やさしい雨音に包まれ、静謐な気分にさせられます。

富士山登山というと五合目から上のガレ場のイメージが強いのですが、こんな緑の中を歩く富士山登山もあるのかとびっくりします。また、高度になるにつれて植生も徐々に変わっていくさまを見るのも、ちょっとした楽しみです。富士山ガイドの都倉さんが、折に触れてそこここの植物の説明をしてくれます。富士の裾野は、実はキノコが多く採れることで知られています(わざわざ良いキノコを求めて富士山の裾野に来る料理人もいるそう)。都倉さんも道中、ところどころでキノコを見つけて、名前を教えてくれ、食べられるものは収穫しながら登っていくのでした。

上段左からブナシメジ、ヒラタケ、マムシソウ、(2段)ツルアジサイ、オトギリソウ、クサハツ(毒)、(3段)ホタルブクロ、ギンリョウソウ、オンダテ、(下段)イワツメグサ、フジハタザオ、イワオオギ。このほかにももっとたくさんの植物名や来歴、由来などを教えていただいた

某植物学者は「名前を知ることが、草木を愛することのはじまりだ」と言ったそうですが、そこここの草木の名前を教えてもらうだけで、周囲の風景が変わってきます。なんでもなかった木々、草花がにわかに自分にとって意味のあるものとなって立ち現れてくる。きっかけは「食べられるかどうか」でもいい。専門ガイドと一緒に一合目から登らなければ決して気づくことのない体験であったように思います。

大いに食べ飲み、語る夜

最初は30分間隔で取っていた休憩も、やがて1時間ごとになり、15時になるころには樹林帯を抜け、ガレ場へと入っていきます。目の前はもう「宝永火山口」。この辺から斜度がきつくなり、登る足取りも重くなっていきます。しかも、ここからピークが直上に見えるのが微妙にメンバーのテンションを下げるのです。「うわー、萎える~」「話が違うだろー!」......そう、ガレ場の向こうに見える頂上はあまりにも遠く高くデカく、とても人の登るところには見えないのです。

すごい斜度で、歩くのもキツイ参加メンバーは20名弱。これまでのマルケン登山部の活動で顔なじみの面々もいれば、初めての顔合わせという人もいて、最初のうちはお互いの表情も固かったのですが、ここまで来るとすっかり打ち解けて、皆で声を掛け合いながら、急な斜面を登っていきます。いきなりのガレ場は足元が不確かなもの。お互いにグチとも文句とも取れる声を、それでも楽しげに交わしながら、6合目までの最後の行程を歩き、16時に「宝永山荘」(2500メートル)に投宿したのでした。

宝永山荘にて。後列真ん中が実川さん。前列左から2人目が都倉さんこの日はわずか5時間歩いただけですが、後半のガレ場もあって、それなりにみな疲れたようでした。17時にはお茶とカレーの夕食が出て、「お茶をいっぱい飲めるのが何よりもご馳走」と、みな心行くまで食事を楽しみました。男性陣は「カレーだけじゃ足りない!」と焼きそばを追加で頼んだり、そのうち山では貴重かつ高価なビールや日本酒を頼む人も現れて、あれ、疲れてるんじゃなかったの?と山小屋の方からも笑われていました。

しかし、酒のアテには、都倉さんが道中取ってきたキノコの炒め物が出たり、富士山登頂世界記録(1673回)を持つ実川欣伸さんも加わったりして、酒宴は大いに盛り上がりました。登山といえばストイックなところばかりが注目されますが、こういうふわっとした楽しみもある。マルケン登山部にとっても貴重な体験となったのではないでしょうか。

夜道はつらいよ――6合目から9合目

さて、アタックの2日目。
この日は2時起床、3時出発です。気圧、気温等が通常とは大きくことなる高度になり、行程にも注意が必要になります。2日目のメインガイドは児玉さん(アルパインツアー)。児玉さんは昨日海抜ゼロメートルから6合目まで上がったツアーメンバーのガイドもしてきましたが、まったく疲れた素振りを見せない超人のような人。「気温も低く、ケガもしやすい。特に注意して登りましょう」とアタック開始です。6合目から新7合目のルートは「足場も悪く、特にきついところ」と都倉さん。最後尾からメンバーを注意深く見守りながらサポートします。

この行程で語るべきことは多くありません。暗闇の中、ヘッドライトで照らされる足元だけを見ながら黙々と登り続けます。見上げれば頂上へと続く明かりの列。体温と気温のバランスに気を付けながらの休憩、栄養補給、水分補給をこまめに繰り返していきます。暗闇の中歩くのは、想像以上に疲労感と徒労感が強く、気分も少しふさぎがちです。そんな時間に終わりを告げたのは、空に差し込まれた曙光でした。

新7合目を過ぎた4時30分ころ、東の空が赤く染まります。曙光の朱が雲を群青に浮かび上がらせ、次第に染めていくさま。海外に行くと「日本人は日の出が好きだなあ」とよく揶揄されるのですが、これを見て、美しくないと思う人がいるでしょうか。完全な日の出は5時ころでしたが、日が昇り切るまでのグラデーションを、思い思いに足を止め、写真に収めるマルケン登山部メンバーなのでした。

一方で、この辺りから標高は3000メートル付近に達し、高山病のリスクも高くなります。児玉さんから「動きはゆっくりと、スローモーションで呼吸は深く」とお達しが出ました。特に呼吸は大事ですが「吸うことを意識してはダメ。息を"吐く"ことを意識して」と、呼吸の仕方まで細かく注意が出されました。このエリアは特に慎重に歩みを進め、新7合目の2790メートルから元祖7合目の3010メートルまで上げるのに1時間以上かけています。メンバーも疲労がたまってきたのか、言葉少なで、テンションも下がり気味でした。しかし、日が昇り、雲も切れて視界が開けたことで、「あの辺が芦ノ湖だ」「あれは千葉?」「新宿の副都心が見える!」と景色を楽しみながらなんとか踏破していきます。そして6時20分、ガスに覆われた8合目に到着。頂上までの最後のルートへ入ります。

頂上、剣ヶ峰へ。そして下山。

8合目付近では万年雪も残っており寒さも一段と厳しくなります。しかし、疲労のピークが過ぎたのか、あるいは頂上が間近に見え始めたせいか、足取りはゆるやかながらも意外なほど軽く、さくさくと登り続けます。視界は一層開け、遠く西は御前崎、東は房総までもが一望に収められます。「千里の目を窮めんと欲し更に上る一層の楼」。この感覚を、ここまでビビッドに味わえるのは、日本では単独峰の富士だけなのかもしれません。

7時10分、9合目着、8時ちょうど9.5合目着。長く伸びた列を上から見下ろし、写真を撮ると、元気に手を振る面々。もうすぐ頂上、というときになって、再びガスが出始めましたが、9時ちょうど、一行はようやく頂上の鳥居をくぐりました。

左が頂上入口の神社。右は剣ヶ峰(最高峰)の道標

この後、登頂の感動もそこそこに馬の背を通って剣ヶ峰へ向かいます。これもまた非常にきつい行程で、「登頂したんだからもういいじゃん」と思ったのは筆者一人ではなかったはず(と思いたい)。しかし、せっかくの最高峰、剣ヶ峰を極めずしてどうするということで、がんばって登頂。その後は痛む足を引きずりながら、それでも楽しく御鉢周りをし、11時45分、銀明水から下山開始となりました。

下山では「注意をそらさないように」と注意がありました。登り以上に足元に注意が必要で、体力も必要です。「おなかが空いているとは思うけど、何を食べようか、とか考えちゃダメ」と児玉さん。「おいしい昼食が待っているから我慢してがんばれ!」と励まされながらの下山行でした。しかし、こちらの下山ルートは比較的なだらかな斜面で歩きやすいのが救いでした。一行は注意しながらも足取り軽く、8合目の「赤岩八号館」に着。ニンニクのたっぷり効いたカレーを食べて、本当に最後の下り行程に挑みます。

実はこの後、御殿場ルートの「砂走り」へと入りました。ここはよく知られた"駆け降りる"ルート。足場が砂になっており、小走りにステップを踏みだすと、ブレーキを軽くかけるだけで程よいスピードで下っていくことができるというありがたいルートです。唯一の難点は砂埃がひどいということ。マスク、スパッツが必須です。もちろん、駆け下るのにもそれなりに体力は必要で、あまり運動不足だと漫画のように転がり落ちる可能性もなきにしもあらずでしたが、さすがはマルケン登山部のメンバー。軽々と下っていくさまに、ベテランガイドの都倉さんも「みんなびっくりするくらい健脚だなあ」と驚いていました。8合目を出たのが13時過ぎでしたが、6合目まで下るのに1時間とかかりませんでした。

慣れると意外と楽しい砂走り

もっと楽しくなる登山へ

さすがに帰りも一合目まで......なんてことはなく、5合目からバスで助かりました。マルケン登山部の常で、下山後は温泉でひとやすみ。この日は御胎内温泉の健康センターでゆるりと湯あみをし、食堂でくつろぎました。参加したメンバーに話を聞くと、一様に「面白かった」。ある男性は「体力的には自信があったけど、想像以上にきつかった。甘くないですね。でも富士山を走るトレイルランをやっている人を見て、自分もやりたくなりました」。女性メンバーも多くおり、「初日きつかったし、軽はずみに応募しちゃったかなと思った」そうですが、「一合目から歩くとキレイな山だったし、楽しかった。今までは低い山を登ることが多かったのでいい満足感です」とコメント。ただ、やはりみな口をそろえて言ったのが「一合目からはもういいかな」と言う声。しかし、その目は楽しそうに輝いていて、来年あたりに「もう1回行ってみる?」と言ったら、たぶん行ってしまうんだろうなーという雰囲気に満ち溢れていました。

メインガイドを務めた児玉さんは、「マルケン登山部の活動を5月から始めていたが、8月でいきなりハードルを上げすぎたかなという感はあります。ただ、一合目から歩くというあまりやらないツアーで、自分への挑戦ができたのではないかなとも思う。今までの登山とは違った、歩く意味、楽しさを感じてもらえたのでは」と、今回のツアーに手ごたえを感じていたようでした。

マルケン登山部は、気軽に山を楽しんで健康になろうという"サークル活動"です。山に登るという純粋な楽しみはもちろんのこと、植物や動物などいろいろな楽しみ方もあるし、マルケン登山部では温泉やバーベキューなどの山登り以外の楽しみも用意しています。翌日、翌々日にはまた仕事だ、というオフィスワーカーには、帰りのバスで熟睡できるというのは、非常に大きな魅力であり、負担減であると思います。

取材して感じたのは、「体力的に無理」「別に山に興味ない」とかいう人にこそ、一度体験してほしいということ。なぜなら筆者もそうだったからです。正直言ってきつかった。しかし、それ以上に楽しかった。「わざわざ苦労しに高いところに登るなんて信じらんない」と思っていましたが、なるほど、これは登る気持ちも分かるなーとしみじみ感じた1泊2日の富士山行なのでした。特に1合目からは植生の変化がおすすめです!


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