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【大丸有】障がい者雇用を変える。多様な働き方を大丸有エリアから全国へ

インクルMARUNOUCHI 施設紹介見学ツアー 2019年10月29日(火)開催

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多種多様な企業が集積する丸の内のオフィス街。ここで働く人々の働き方も実にさまざまです。今回見学ツアーで訪れたのは、新国際ビル5階にある少し特別なオフィス。
入り口には屋内用点字ブロックが敷かれ、ロゴには点字と墨字を組み合わせたオシャレなユニバーサルデザインが施されています。観葉植物が壁に飾られているのかと思いきや、葉物野菜やハーブが栽培されており、一見何をしている企業なのかわからないかもしれません。

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実は、このオフィス「インクルMARUNOUCHI」は障がい者雇用を進めるための拠点として、サポーター常駐型のオフィス運用や本社で働く障がい者への遠隔支援など、企業と連携しながら雇用支援や情報発信を行っています。
運営しているのは、株式会社スタートラインと三菱地所グループ。なぜ、この丸の内で障がい者支援サービス事業を2社が立ち上げることとなったのか、今回の見学ツアーでそのミッションを紹介していただきました。

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障がい者就労の課題は、今後さらに大きくなる

障がい者就労の課題は、今後さらに大きくなる

「インクルMARUNOUCHI」を三菱地所と共に立ち上げたスタートラインは、関東近郊で障がい者雇用を支援する「サテライトオフィス」と屋内農園型障がい者雇用支援サービス「IBUKI(イブキ)」を主に展開し、約150社900名の障がい者雇用における定着支援を運営している企業です。ここインクルは「誰もが働きやすい街づくり」に向けた障がい者雇用の支援・情報発信拠点を目的として丸の内につくられました。ここでは企業が雇用する障がい者が安心して就業を進められる「サポートオフィス(常駐支援)」や「ヴィジットサポート(遠隔支援)」をはじめとして、いつでもだれでも利用可能な「相談窓口」、障がい者雇用に関するセミナーや企業を超えた交流会が開催される「カンファレンスルーム」、そして企業の抱える課題を解決するコンサルティングなどを行っています。

障がい者の安定した雇用を実現するために、国は「障害者雇用促進法」を定めています。雇用する労働者のうち、障がいを持つ人の割合が一定以上になるように義務付けた法律で、この割合を法定雇用率といいます。
法定雇用率は5年ごとに見直され、2018年は2.2%。次の見直し年である2023年には2.6%を見込み、多くの企業が中長期での障がい者雇用を考えています。

では、実際の雇用率はどうなのかというと、厚生労働省の統計では1000名以上の規模である企業は、全国平均で2.25%。東京では2.22%。そして、1000名以下の企業は、全国平均で2.05%以下。東京では1.86%以下となっています。
この数字から、1000名以下の企業では法定雇用率の遵守のための新たな施策が課題であり、特に東京でその傾向が顕著だということが読み取れるでしょう。

また、障がい者の就業定着率にも課題があります。障がいの種別は、発達障がい、知的障がい、身体障がい、精神障がいの大きく4つ。それぞれ1年以上企業に定着する割合として、71.5%、68.0%、60.8%、49.3%というデータがハローワークから発表されています。

この中でも注目したいのが、精神・発達障がいです。精神・発達障がい者の雇用状況は、近年ほかの障がい者よりも増えており、インクルの責任者眞島氏によると「ハローワークで障がい者雇用枠の求人をすると、10人中8人が精神・発達障がい者の応募があります」という状況だそうです。精神・発達障がいが「見えない障がい」と言われているなか、1000名以上の企業でも、いかに長期就業につなげる受け入れ体制を作れるかが課題として上がってきていると言えます。

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「障がい者の定着率は、就労訓練や連携機関が間にあるかないかでおよそ20%近く変わります。企業としてはどのような合理的配慮や支援を進めていくかが課題解決のポイントです」(眞島氏)

「理論手法をベースとした支援」と「働き方モデル」で、大きく向上する障がい者雇用

スタートラインの支援の強みは、特に精神・発達障がい者の長期就業のためのノウハウの蓄積がある点です。精神障がいの中でも一般的によく聞くのは「うつ病」ですが、ほかにも「統合失調症」「不安障がい」「パニック障がい」など多岐に渡り、精神障がい者の雇用を難しくしている原因は、その思考過程の認知に生じる障がい特性にあります。

スタートラインの支援は、ABA(応用行動分析)、ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)、RFT(関係フレーム理論)などの学術的なエビデンスのある理論手法をベースとしています。例えば、精神障がい者はストレスや脳疲労をきっかけに不安な感情に囚われ、自身で思考をコントロールすることが難しくなり、心身の症状も伴って出てきます。

そこでACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)では、生活につきまとう痛みやストレスへの効果的な対処法を学び、豊かで充実した有意義な生活が送れるよう、長期就業に向けた自身の心との向き合い方を習得します。このような支援技術を基にサポートすることで、精神・発達障がい者のセルフマネジメント能力も向上し、実際に精神・発達障がい者のサポートオフィスの1年定着率は83%に達しました。

また、障がい者の長期雇用を進めるためには、仕事へのやりがいを感じ、事業への貢献が必要です。そのために、3つの循環モデル(図1)をインクルMARUNOUCHIでは提案しています。

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図1. 循環型モデルの働き方

まず1つは、「業務効率」に合わせた循環。ある就業者は、週に2回インクルで働き、週3回は本社で働いています。インクルは非常に静かなオフィスなので、「集中したい業務」はインクルで行い、「社内でのコミュニケーションや連携が必要な業務」に関しては本社で行う、といったような業務効率に合わせた働き方の選択が可能です。

2つ目は、「コンディション」に合わせた循環。精神・発達障がい者は、体調面に不安を感じており、うまく働けるか、どんな上司と付き合うことになるのか、精神的な不安が体調に影響されやすい特性があります。そこで、数ヶ月から半年くらいの期間をとって、自身のセルフマネジメントや実際の業務をインクルで行いながら、段階的に本社勤務を実現するといったケースの選択も可能です。

この時、本社で管理する方にもインクルに来てもらい、間にサポーターが入りながら業務を行います。障がい者一人一人の特性に合わせて、どういったコミュニケーションの仕方がいいか、どういった配慮をしていけばいいかを企業側と連携して理解を深めていくのがポイントだと眞島氏は説明します。

「最終的には、企業様の中でどう進めるか決定をしていただきます。障がい者が本社で働き始めてから職場環境を整えるのと、事前に人事や管理者がインクルで理解を深めていただくのでは、その後の業務の関わり方が変わり、定着率にも影響しますね」(眞島氏)

3つ目は、「キャリアプラン」に合わせた循環。本人の希望として、将来は本社で就業しキャリアを広げたい場合、キャリアアップの準備を支援します。

キャリアップに向けてサポーターと関わりながら、自身の障がい特性の把握や課題への対応、業務における補完方法を一緒に検討します。セルフマネジメントを行いながら業務を習得し最終的には本社へ異動します。必要であればヴィジットサポート(遠隔支援)を適宜提供するというようにステップを踏んでいきます。

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「本人・本社・支援側の3者の役割が揃うことで就業フェーズ(図2)を進めていくことができます。初めは本人の障がいの受容と気づきに焦点をあて、ある一定のラインから本人が目標を設定して、実行し、成長するフェーズへと段階を上げていく。この過程の進めるにあたっては見極めが非常に大事で、インクルの循環型モデルという働き方を取り入れると、フェーズの見極めやフェーズを効果的にあげることができ、活き活きとした働きにつなげていくことができます」(眞島氏)

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図2. 就業フェーズ

眞島氏は本人の働きがいのベースとして、企業側の「安心できる環境」や本人が「必要とされていると感じること」が重要だと強調。しかしそこで、企業側には『配慮』と『甘え』の線引きの問題が出てくると言います。
「適切なフィードバックがないと本人のやりがいにつながっていきません。企業と連携して適切なアセスメントの土台を作りながら、我々は支援する立場として循環モデルという働き方の提供を行っています」(眞島氏)

大丸有エリアが多様な働き方の発信地となるために

見学会の後半では、三菱地所株式会社の大谷氏が街づくりの観点からインクルの意義を説明しました。
三菱地所グループは、大丸有エリアを中心にさまざまな企業とパートナーを組んで、街で活動する人々への施設のサポートサービスを展開しています。例えば、子育てワーカーのための保育所誘致や、メンタルの不調を訴える方たち向けの心療内科やリワーク施設との提携、英語での医療サービスなどを提供。
2018年からは、インクルの新設を皮切りに障がい者雇用の支援施設に力を入れていきたいと強調する大谷氏。

「インクルを立ち上げる前に、大丸有エリアの企業様にヒアリングしたところ障がい者雇用の課題や問題点などが上がって来ました。また、それぞれに多様なケースが生じていたため、施設を作る上でさまざまなニーズやサービスの選択肢を提供できる必要があると認識しました」(大谷氏)

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また、障がい者雇用に関する情報がなく、ほかの企業がどういった取り組みをしているのか知りたいという要望もあったため、情報発信の場としての機能を持たせることも重視したそうです。

「2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、街のユニバーサルデザイン強化が必要とされています。そこでエリアで最も訪日旅行者が集まるインバウンド施設のユニバーサルデザイン強化の監修をインクルにお願いしました。このように、インクルが持つノウハウを街全体に展開する試みも行っています。」(大谷氏)

こうしたまちづくりの一環として、スタートラインとともに立ち上げたインクルですが、この1年間で少しずつ認知度が上がり、エリア企業のニーズとサービスのマッチングがうまくいくようになってきたと言います。

「インクルに参画する企業様と一緒に運営する中でさまざまなアイデアが出て来ます。働き方の循環型モデルも、ある企業様からアイデアが上がって来たものです。蓄積させた先進事例を大丸有エリアで広く共有することで、さらに新しい働き方やサービスを全国にも伝播させていくことができるのではないかと考えています」(大谷氏)

最後の質疑応答では、参加者の方々から自社の障がい者雇用に関する課題の共有が行われました。
その中でも、障がいと加齢が重なり以前と同じように仕事ができなくなってくるケースについては、スタートラインでも同じようなケースに取り組んだ例があり、今後の課題としても重要なものであると眞島氏は指摘。

年齢とともに企業内での就業が困難になってきた障がい者が、前向きな形で福祉的就労へ移行できるようなサービスはニーズがあるのではないかと参加者から声が上がりました。
これに対し、眞島氏は共感を示しつつ、企業側が求める人材の考え方と、障がい者の方自身がどういった働き方を望むのかを慎重にヒアリングした上で、どうしていきたいかを十分話し合うことが必要だと指摘。
今後のサービスとして、十分検討していく必要があることが共有されました。

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今後、一層働き方の変化が求められる日本。インクルが発信する多様な働き方の提案に今後も注目です。


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