ワーキンググループCSRイノベーションワーキング・レポート

【CSRWG】"留職"はイノベーションのプラットフォーム

2014年9月9日開催

エスタブリッシュな企業が行う「留職」がテーマ

9月9日、CSRイノベーションワーキンググループのフィールドワークセッションが、品川の日立ソリューションズで開催されました。

テーマは「社会課題解決を起点とした事業創出に向けて」。日立ソリューションズは、NPOクロスフィールズと提携し「留職」を実施しています。今回は、サブタイルを「"留職"プログラム体験談」と題し、留職でインドネシアの現場に飛び込んだ若手社員のリアルな体験を語ってもらい、社会課題解決型ビジネス、BOPビジネスと言えば聞こえはいいものの、トライするのは決して簡単ではない新興国におけるビジネスと、そこに飛び込むことで得られた経験がどのように人材育成に役立つのか、その"肌感覚"を感じ取るフィールドワークを行いました。

留職体験をした日立ソリューションズ金融システム事業本部の持田健一氏をメーンプレゼンターに、同社ブランド・コミュニケーション部の増田典生氏、NPOクロスフィールズの代表理事、小沼大地氏をゲストに迎えて話を伺いました。ファシリテーションは企業間フィーチャーセンターの臼井清氏、エコッツェリア協会の山下智子氏が行いました。

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高まるNPOのプレゼンス、顧客の向こうの「社会」

イントロダクションとしてまず日立ソリューションズ増田氏のプレゼン。同社が留職プログラムに取り組むようになった背景と運用のサポート体制などについて解説がありました。

同社は「ICTを通じて社会課題を解決し、社会に貢献していく」ことを社を挙げての方針として掲げています。「本業はBtoBが基本ではあるが、その向こうにお客様(custmer)がいて、さらにその向こうには地球社会(soceity)があると捉え、お客様と地球社会の発展に貢献する。つまり、BtoBtoCtoSです」と増田氏。

さらに、最近はNPO、NGOのプレゼンスの高さに注目しており、「BtoNtoCtoS」という今まで日本にはないビジネスのやり方も今後増えていくと見込んでいるそう。「イギリスではNPO法人が5万あり、その市場は5兆円と言われている。日本は8000法人で、2500億円程度。今後日本でもこの分野が伸びていく可能性が大きい」。

また、同社のソリューション「電子カルテ」や「電子黒板」の例を挙げながら、「事業計画を、自社リソースではなく、社会課題解決を起点に置いて考えるようになった」と説明。新しいフィールドと新しい視点を持つことにより、要素技術の新しい組み合わせによるイノベーションを生んだり、新しいサービスの提供に至っているとも解説しました。

同社の留職プログラムへの取り組みはこうした背景をもとに成立しています。
具体的には2段構えの体制を取っているとのこと。志望者を募って社内で2か月のワークショップ。その後参加者から選抜された1名が実際に新興国へ「留職」する。留職する際には、このときのチームのメンバーが国内スタッフとして現地の活動支援も行います。また、留職に合わせた社内評価制度の枠組みも整備したそうです。

「弊社では、留職を人材育成と事業創生と捉えている。具体的なビジョンを描き、異なった環境の中でわずか2か月で成果を出さなければならない。タフで、深く広い"人間力"が培われる。これを経験した社員は、世界どこに行っても仕事ができるようになる。今後も留職プログラムを拡大していきたいと考えています」

また、最後に増田氏はNPO、NGOとのかかわりを改めて強調。「攻めのCSRとはCSV(Creating Shared Value)と等しい。このShared Valueすなわち共有価値には、必ず共有する相手がいる。その意味でCSVとは"Collaborate for Shared Value"でもあると思う。そのコラボする相手として、今後はNGO、NPO、行政も視野に入れ、セクターを横断した事業展開をしていく必要があるだろう」と語りました。

"青黒い人"を味方に

この増田氏のプレゼンを受けて登壇したのがクロスフィールズの小沼氏。「事前打ち合わせなしで来たので、話そうと思っていた内容の大半は増田さんに話されてしまった(笑)」と笑いを誘いましたが、「でも実はこれって驚くべきこと。企業とNPOの人間が話すことが同じというのは、今までなかった。そういう時代になったのだと感慨深い」と、留職に象徴されるように、企業とNPOの関係が変化していることを示しました。

クロスフィールズが提供する留職とは、「いわば企業版海外協力隊」であり、企業の第一線で活躍する人材を、新興国の現場に送り込み、ビジネスとして社会課題解決を行うという「圧倒的な原体験」をしてもらうのが狙い。「リーダー育成」「新興国の現地を理解する」「新しいアクションによる社内活性化」を主な目的としています。

「今はリーダー育成と社会課題解決という2つの目的が強い相関性を示している。リーダー育成がうまく行くところは、課題も解決される。課題が解決されているところではリーダーも順調に育成できる。正の相関関係にあるといえるでしょう」

モデルのひとつとなっているのはIBMが行っているグローバルリーダー育成と肌感覚のニーズの発掘を目的とした新興国への人材派遣です。クロスフィールズが提携している国内企業は現在20社余り。企業ごとに目的も、担当部署も異なるが、留職プログラム参加は30代が中心とのこと。いきなり留職として現地に放り込むのではなく、その前のプロセス――日立ソリューションズなら2段階の1つ目のプロセス――もクライアントとともに策定し進行しています。

クロスフィールズのミッションとは「社会の未来と組織の未来を切り拓くリーダーを創る」こと。クロスフィールズが定義するグローバルリーダーには7つの条件があります。
1)ゴールを描く力
2)対話する力
3)巻き込む力
4)挑戦する力
5)やりきる力
6)現地の課題を理解する力
7)社会の未来と組織の未来を切り拓く力

「最近はこれに賛同してくれる企業が増えてきた」と小沼氏。「CSV時代が到来してきた感がある。CSVは社会課題を解決するイノベーションを起こすためにあり、留職はその切り口と考えるべきだろう」。その一方で、「広まったことにより、CSVが陳腐化することも恐れている。大事に育てていきたい」と語りました。

また、増田氏から、エスタブリッシュな企業で留職プログラムのような新しい取り組みを始めることの難しさの指摘があり、「小沼さんには、(日立ソリューションズの)役員をいつもクールに、ロジカルに口説いてもらった」と、取り組みが始まるそのはるか前から、二人三脚でプログラム推進に向けて活動していたことを明らかに。小沼氏も「若者のように青臭いところを持ちながらも、熟練の腹黒さがある、そんな"青黒い"人に出会えればうまくいく」と、カタい企業で留職プログラムを推進するコツを話しました。

世界中、どこでも通用する人材

2013年9月~11月、留職プログラムでインドネシアで事業開発に取り組んだ持田氏が最後のプレゼンター。留職を通じて得た経験を報告してもらいました。

会社が設定した目的は、「現地の文化を理解し、主体性・積極性をもって現地の人と協業すること」「社会視点で課題解決するイノベーション事業を創出すること」の2点でした。具体的には、現地のNPOの活動の一環である地域の移動図書館の貸し出しシステムを開発、運用すること。

「この会社の目的とは別に、個人として 1)多様な環境へ適応できるようになること 2)実行力をもって、自ら課題解決を実行すること 3)想定を超えた事態に対応する力を身につけること、という3つの目的を持って臨みました」

現地に入る前にヒアリングも重ね、ある程度まで対応ソフトウェアを開発しておき、現地ではスタッフトレーニングをし、実運用を図る心積もりであったそうです。しかし、実際に現地入りしてみて、さまざまな想定の"ズレ"があったことに気づかされたそう。ひとつはNPOに対する認識のズレであり、もうひとつはニーズのズレでした。

「NPOというと日本ではボランティア的なイメージが強かったが、インドネシアでは社会的役割が大きいことを知り、自分に求められている役割の大きさを改めて認識」した。また、ニーズのズレは最大のハードルとなりました。事前に用意していたソリューションはまったく使えないことが分かり、「そもそも求められていたニーズが異なっており、開発要件を一から再定義する必要に迫られた。また、現地のスタッフの体制などの状況も事前の想定と著しく異なっていた」。

このため滞在期間中は改めて黙々と開発にいそしみましたが、再び困難に直面したのが期限終了2週間前。現地NPOの代表に開発したシステムを見せたら「イメージと違う」と一刀両断されたのです。慌てふためいてすり合わせをしようとすると、その原因となったのは「ひとりで仕事をしていた僕に対する不信感」だったことに気づいたと言います。

「システム開発のために一人の作業に没頭するあまり、コミュニケーション不足になってしまっていた。信頼関係がなくなったために"ちゃんとやっているのか、できているのか"という不信感が募った結果だった」
そのため、今度はコミュニケーションをとりながらフィニッシュ作業を行い、見事にミッションの実現にこぎつけたのだそうです。

留職を終えて、振り返ってみると「得たものは3つあったと思う」。
「ひとつは"自分なり"のリーダーシップ。リーダーとは"ぐいぐい"行く、そういうものだと思っていた。でもそうじゃない。ひとりひとりが、それぞれのやり方でリーダーシップを発揮すればいい。自分なりに本質を捉え、自分の言葉で伝え、周囲の行動を引き出すことができればいい。
2つ目は、ギャップを認識するということ。それはつまり、事前にしっかりと想定し、準備をしておき、それでもなお"違う"ことを認識するという作業が必要だということ。ギャップがあるから気づきもあり、学ぶこともでき、そこから新しいアイデアが生まれてくる。最後に、グローバルで戦える可能性。もちろんこれは自分ひとりの力ではなく、国内のサポートメンバーや上司、同僚の力があってこそ。こうした体制があれば、もっと海外で日本企業のプレゼンスを高めることができるに違いないと感じた」

そして最後に「なぜSEを目指したのかを思い出させてもらった。今後はアジア市場に届くサービスを開発し、社会に貢献していきたい」と今後の抱負を語ってプレゼンを締めくくりました。

"留職したい!"

プレゼン後は、各テーブルで「自分が留職したら」という想定でディスカッションを重ね、最後に数人の感想を全体共有しました。興味深かったのは、その多くが「うらやましい」「行きたい」という思いであり、さらにいえば「自分も仕事を通して社会に貢献したい」という思いでした。CSRとは「企業の果たすべき責任」ですが、同時に「個人の意思」でもああります。それを新興国というフィールドで、うまくつなぐのが留職であるのでしょう。小沼氏のさわやかなプレゼン、持田氏のはつらつとした経験談に、いつも以上に盛り上がって今回のワーキングも終了。その後懇親会も非常に盛り上がったのでした。


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CSRイノベーションワーキング

未来を想像し、次の時代のCSRを実施し、体感する

エコッツェリア会員企業を中心に、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)について学びあいます。さらには、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)をめざし、学びから実践に向けたアクションづくりを行います。

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