ワーキンググループ環境経営サロン・レポート

【環境経営サロン】2014年度環境経営サロンレヴュー

2015年3月20日(金)開催

2014年度の環境経営サロンの最終回が3月20日(月)に開催され、38名(24社・団体)が参加しました。
道場主の小林光氏(慶応義塾大学大学院特任教授/元環境省環境事務次官)から、環境への取り組みを経済に結びつけるための考え方をうかがい、これからの環境経営サロンのあり方を共有しました。

【プレゼンテーション】

・『環境取り組みは経済の味方』
小林光氏(慶応義塾大学大学院特任教授/元環境省環境事務次官)

環境と経済の関係性

小林氏ははじめに、環境への取り組みと経済との関係性について触れました。「環境の話と経済の話は常にセットです。これまで私たち人類は自然に対して費用を支払うという思想を持たずに浪費だけしてきました。現在では地球環境を保全し持続可能な社会を実現させるために環境への費用を負担するのが必然という考え方が定着してきましたが、新たな負担は企業収益を圧迫します。企業は収益をあげることを使命とする存在であり、余計な支出は抑えたいという発想を持つことはいたって自然です。では果たして、環境への取り組みを控えれば収益性が高くなるということが言えるのでしょうか。京都議定書で日本は6.0%の温室効果ガス削減目標を持ちました。2012年には目標を達成しましたが、実質的な削減はわずか0.6%で残りの5.4%は森林等の炭素吸収能力を高めること、および日本国外の排出量削減に協力することで得た炭素クレジット※による削減です」。京都議定書で日本より大きな目標が与えられていたドイツやイギリスは実質的な削減で目標を達成していています。その結果1990年には日本よりも排出量が多かった両国の排出量は、現在では日本を下回っています。また、アメリカも大幅な削減を達成、議定書に署名・締約していない中国も6割近い大幅な削減を達成しました。「つまりこの22年間日本の企業にとって環境保全は大きな負担ではなかったのです。では、そのお陰で経済的な繁栄を享受できたかというと、そのような現実ではなかったことはご存じのとおりです」(小林氏)。
※炭素クレジット:先進国間で取引可能な温室効果ガスの削減量証明のこと。自国の削減努力では削減しきれない温室効果ガス排出分を、排出枠を余らせている国からクレジットとして買い取ることができる。

一方で環境に投資することは経済にマイナスの影響を与えるのでしょうか。ミクロ視点では環境保護のために支出をすることで企業の損益が悪化し生産・雇用投資が減少するというのが一般的な見解です。マクロ視点でも非生産目的での支出は物価の上昇を招き購買力の低下を生み、その結果景気が後退するというのが定説です。しかし実際には環境への投資がGDPを押し下げる要因にはなりませんでした。小林氏は「環境に対する投資が、新しい環境ビジネスを生み出して経済に好影響を与えたことがその理由です。つまり環境は経済の足を引っ張るどころか足しになっているのです」と話します。小林氏の自宅は、太陽光発電、太陽熱給湯・床暖房、壁・屋根下高断熱など30を超える環境対策を施しているエコハウスです。試算によるとそれらの対策にかかった費用は34、35年で回収できるそうです。「家という場において、時間はかかりますが、商売でもないのに元が取れるものがほかにあるでしょうか。もっとも個人の家であればそれでいいのですが企業の場合はそうはいきません。そこで企業がどうやって元をとり儲けていくのか、それを考えるための場が環境経営サロンだと考えています」(小林氏)。

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学びを深め実践のステージに

学びを深め実践のステージに

小林氏はこれまでの環境経営サロンの議論の中で見えてきた、環境ビジネスを成功させるための3つのコツを披露しました。「①環境以外のほかの価値も追求することで成立させる(コ・ベネフィット)、②多数の参加者を積極的に巻き込む(コ・デザイン)、③参加者が互いに共進化することで取り組みが発達する(コ・エボリューション)」。これからは環境を守りながら儲けを出す経済への移行を進めるための土俵を整備するステージだと小林氏は語ります。「教育や活動体験などを通じて環境の価値がわかる人間、目利きを育てる。その人間たちが環境の価値を高め、その結果環境のために資金が動き、さらに知恵や技術が高まる、このような好循環を生み出すことができます。そのためには、まずは実例を作り出すことが必要、まだまだ学ぶべきことはたくさんあります」とまとめました。

小林氏の講演に続き、エコッツェリア協会のワーキンググループの一つである「CSRイノベーションワーキンググループ」の活動を、合同会社志事創業社代表の臼井清氏と事務局の山下智子氏が紹介しました。
CSRイノベーションワーキングは、エコッツェリア協会会員企業中心に月に1回程度CSR実務担当者が集い、CSR実践事例の発表やフィールドワークを通じて持続可能な社会のあり方を学ぶ場です。「ESD(エデュケーション・フォー・サステイナブル・デベロップメント)実践の場として、参加者が互いに教え合い気付きを与え合う場として、活動を通して参加企業同士の関係性も深まっています」(臼井氏)。1年間の活動成果を企業ごとに「エコのまど」としてまとめ、日本ビルの3×3ラボで公開しています。

続いてエコッツェリア協会平本真樹氏から、2015年度の環境経営サロン企画素案が披露されました。2015年度はこれまでの流れを踏襲した学びの場としてのサロンと実践を積み上げていくための新たな場の2本立てを構想しているそうです。学びの場としての環境経営サロンはこれまで同様に、経営者による「イノベーション推進、人材育成、アイデア創発」などのテーマによる講演と、参加者がCSV的視点で共有するためのワークショップ、そして交流で構成されます。新たな実践の場として博報堂の協力を得ながら、環境・CSR関係部署の方だけでなく、新事業・新商品開発の担当者も巻き込み、学びを実践に移してく連続ワークショップを企画中です。

この後、博報堂によるワークショップを参加者全員で体験し、2015年度の取り組みに向けたイメージを共有しました。

参加企業、団体(50音順)
旭硝子株式会社
株式会社伊藤園
株式会社イトーキ
オムロンヘルスケア株式会社
鎌倉ソーシャルグッドキャピタル株式会社
株式会社観光交通プロデュース
株式会社クレアン
慶応義塾大学
佐川急便株式会社
一般社団法人CSV開発機構
合同会社志事創業社
シャープ株式会社
ダイキン工業株式会社
ナレッジワーカーズインスティテュート株式会社
公益財団法人日本防災協会
日本郵政株式会社
株式会社博報堂
株式会社パソナグループ
光が丘興産株式会社
株式会社日比谷アメニス
前田建設工業株式会社
株式会社三井住友信託銀行
三菱地所株式会社
三菱UFJ信託銀行株式会社

環境経営サロン

環境経営の本質を企業経営者が学びあう

エコッツェリアに集う企業の経営者層が集い、環境まちづくりを支える「環境経営」について、工夫や苦労を本音で語り合い、環境・CSRを経営戦略に組み込むヒントを共有する研究会です。議論後のワイガヤも大事にしています。

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