イベント丸の内サマーカレッジ・レポート

【レポート】自分らしさと未来を切り拓く大きな一歩 DAY3

丸の内サマーカレッジ2026 2026年8月12日(水)〜14日(金)開催

4,8,11

3日間にわたるサマーカレッジ最終日。サマーカレッジの最後を飾る講師として登壇したのは、まちづくりの専門家としてキャリアを築き上げた公務員の倉根明徳氏と本プログラムの前身である丸の内サマーキャンプの第1期生であり、現在は金融機関で新規事業創出に携わる伊藤奎祐氏。雲の上の存在であるエグゼクティブではなく、参加者たちの少し前を歩く等身大の先輩たちの言葉は、学生たちの心に深く刺さりました。そして、3日間の集大成となるワークショップの発表、「つくりたい未来に向けて『わたし』ができること」をテーマに学生たちが出した答えとは。

【DAY3スケジュール】
講演5「自分らしいキャリアを切り拓く」
 倉根 明徳 氏(上田市 都市建設部 都市計画課) 
 伊藤 奎祐 氏(丸の内サマーキャンプ(現サマーカレッジ)2018 卒業生)
ワークショップ2:発表準備 
ワークショップ3:発表

続きを読む
"興味・関心"を軸に社会との接点をつくりながらキャリアをデザイン

"興味・関心"を軸に社会との接点をつくりながらキャリアをデザイン

サマーカレッジ最終日、一人目の講師は、現在、長野県上田市役所で都市計画やまちづくりの現場で働くまちづくりの専門家、倉根明徳氏。
「私が考えるキャリアとは、単にどこそこの大企業に入る、昇進する、年収を上げるといった、いわゆる『職歴のスペック』のことではありません。一番大切なのは自分がどういう人生を送りたいかという目的であり、その目的に向かってどのような選択と行動を積み重ねていくか、そのプロセス全体がキャリアであると考えています」
倉根氏は講演の冒頭で、そうキャリアを再定義。そんな倉根氏のキャリアの軸は常に「まちを面白い場所にしたい」という興味関心だったといいます。

 msc2026day3_01.jpg 講師の倉根明徳氏

長野県小諸市で育った倉根氏は、都会のビルやインフラに胸を躍らせる少年だったといいます。そのワクワク感を形にすべく15歳で高専の土木系学科へ進学。そこで人々の営みをデザインする都市計画という分野に出会い、さらなる学びを求めて佐賀大学都市工学科へと編入しました。
そこでの恩師との出会いは、倉根氏の設計思想を根本から覆すものだったといいます。キャンパスの改修計画のシミュレーションで、「ここは車が曲がりにくいので、この木を数本切って道路のカーブを緩くします」といった提案に対し恩師は、「お前はたった一本のラインのために、何十年も生きてきた木を簡単に切るのか」と叱責。この言葉は、倉根氏にその場所の記憶や人々の営みに思いを馳せる「デザインの重み」を突きつけました。そして、佐賀大学での2年間、演習や研究を通じて「なぜ」を考え抜いた経験が、理論を現場に適合させる思考の土台となったといいます。
その後、金沢大学大学院へ進んだ倉根氏は、別の恩師から「研究室にこもらず、生身の住民と対話しろ」と徹底的に現場に出されました。理論を捏ねるだけでなく、ワークショップなどを通じて住民とともにまちを面白くしていく手触り感に、倉根氏は完全にのめり込んでいきました。この思考の徹底と現場への没入の融合こそが、後の組織変革を支えるプロフェッショナリズムの源泉となったといいます。

「学生時代、住民たちとの対話を通じたまちづくりの面白さを知ったが、消極的な行政職員に不満を感じた。じゃあ自分が積極的な行政職員になればいい」という逆説的な決意で2003年に長野県庁へ入庁しました。しかし入ってみると、なかなか希望する都市計画の部署にも行けず、直接現場で住民と泥臭いまちづくりをする機会が少ないことがわかります。そこで倉根氏は、通常業務の傍ら自主的に信州大学の地理系研究室に通ったり、まちづくりのNPOに参加したりと、社外ネットワークを10年かけ地道に構築しました。また、アカデミックな視点も必要だと、働きながら大学院にも通い、博士(工学)も取得。すると、都市計画の専門知識と熱意、社外の繋がりを持つ唯一無二の存在として庁内でも知られる存在となり、念願の都市計画課に異動することができました。
そこで、もっと県庁の立場から、市町村の現場に入り込んで、公民連携で新しいまちづくりを支援する先進的なチームを作るべきだと、新しい部署の設立を提案し上層部に訴え続けました。 諦めることなくおよそ6年、その熱意が実り、ついに長野県庁の中に「信州地域デザインセンター(UDC信州)」という、現場密着型の新しいまちづくり支援組織を立ち上げたのです。
組織を変革するために大事なことは、感情論ではなく、理解ある上司やトップを巻き込むための圧倒的なロジックと、彼にしかできないと言わしめるまでの地道な積み上げが必要だと倉根氏はいいます。 組織内に新しい部署を作ることは至難の業ですが、倉根氏は執念とも言える継続力で、公民連携の新たなモデルを創出したのです。

msc2026day3_02.jpg 自らのキャリアについて語る倉根氏

UDC信州のコーディネーターとして、長野県内の様々な地域に入り込み、徹底的な対話によるまちづくりをコーディネートして5年、21年勤めた県庁で順調に昇進していた倉根氏でしたが、2025年に再び大きな決断を下します。それは、現場により近い上田市役所への転職でした。「市役所に入って住民たちと対話をしながらまちづくりがしたい」という強い初期衝動に立ち返ったのです。
県庁で「変わる(組織変革)」をやりきったからこそ、納得感を持って「やめる(次のステージへ)」を選択できたのだといいます。 安定したキャリアを捨てることが確信に満ちた選択となった背景には、長年のネットワークを通じた徹底的な対話がありました。多角的な視点で未来を検証し尽くしたからこそ、リスクを超越するパッションに従うことができたのです。

倉根氏は最後に、ニュージーランド視察へ行った際に聞いた、スポーツ教育の現場で使われていたこんな言葉を学生たちに贈りました。
「Good try, Unlucky」
ゴール前で積極的にシュートを打ったなら、入っても入らなくても「Good try」。挑戦したこと自体に最大の賛辞を送り、失敗はUnluckyとして捉える。失敗を恐れずに、自分自身の興味関心を信じて、ぜひ一歩を踏み出してほしい、と。

倉根氏の人生、そしてキャリアの選択に強い関心を示した学生たちは、質疑応答の際も熱が入っていました。
「組織内の反対勢力への対処法は」との質問には、「感情的に戦わず、鉄のメンタルとロジックで対話すること。そして味方を増やす粘り強さを持って」とアドバイスしました。 「正解のない中での意思決定の基準は」との問いには、「徹底的に世界を広げ、多くの選択肢を見た上で、これだけ見て選んだのだから後悔はないという圧倒的な納得感を持つことが、決断の覚悟を生む」と失敗を恐れる学生たちの背中を推しました。

msc2026day3_03.jpg 質疑応答の様子

「学生」という立場を武器に、一歩を踏み出す

丸の内サマーカレッジの講演の最後に登壇したのは、本プログラムの前身である丸の内サマーキャンプの第1期生であり、現在は事業会社で新規事業創出に携わる伊藤奎祐氏。8年前、学生としてこのプログラムに参加したことが人生の転機になったという伊藤氏は、自身の挫折経験を包み隠さず語りました。

msc2026day3_04.jpg 講師の伊藤奎祐氏

学生時代の伊藤氏は、「いい大学に入り、大企業に就職すれば安心」という、よく耳にする"正解"を疑うことなく信じていました。ラグビーと勉強をひたすら頑張れば、その道が開ける。それ以外の選択肢を知る機会がなかったといいます。しかし高校3年生からの数年で、その"正解"は崩れ落ちていきます。15年間打ち込んできたラグビーは、高校最後の大会でわずか3分間の出場に終わりました。一浪して臨んだ受験も、思い描いた結果にはならない。絶望的な挫折が続いたのです。
進学した大学で始めた新たなスポーツも途中で挫折。就職活動の時期を迎えた時、愕然としたといいます。「これまでの学生生活で、一番本気で頑張ったことは何ですか。そこで何を得ましたか」----面接官のこの問いに、答えることができなかったのです。
強い自己嫌悪と劣等感を抱えていた伊藤氏に、転機は思わぬ形で訪れます。電車内でスマホゲームをしていた最中、手が滑って開いてしまった就活サイトからのメール。そこにあったのが、丸の内サマーキャンプの開催案内でした。 偶然のきっかけで参加を決めたサマーキャンプ。その3日間の出会いは、伊藤氏が抱いていた画一的な社会人像を根本から覆しました。そこにいたのは、大企業に属しながら地域活動に情熱を注ぐ人。複数の拠点を軽やかに移動しながら夢を語る人。みな、目を輝かせていました。サマーキャンプをきっかけに足を運ぶようになった3×3Lab Futureで、個人会員の方からかけられた言葉が、停滞していた伊藤氏を突き動かす指針となりました。 「ラグビーで、迷ってプレーすることなんてないだろ。考える前に、まず目の前の相手にタックルにいくぐらいの気持ちでやれよ」 ラグビーになぞらえたこの助言が、伊藤氏の腹にすとんと落ちました。とにかく行動し、走りながら考えればいい----。

こうして伊藤氏は、学生という立場を最大限に活用した行動を開始します。個人名刺を作成し、都内の共創施設などに飛び込みました。会場設営や片付けを率先して引き受けることで、現場の信頼を得ていきました。提供できる対価が少ない学生であっても、意志と労力を差し出せば機会は開かれる----学生であることに引け目を持たず、むしろそれを入場券として使う。その姿勢が、やがてシリコンバレー派遣という大きなチャンスへとつながっていきます。
現在は事業会社で新規事業の創出に挑む伊藤氏は、こう言います。 「社会人の時間は、思っているよりずっと一瞬で過ぎていく」 会社員として、自分のキャリアを主体的に描ける状態をつくれているか。それが問われ始めるのは、35歳ごろではないか----。そうしたキャリアを築くには、2つの土台が欠かせないと伊藤氏は考えています。社内外に広がる信頼のネットワークと、自分の中に持つ複数の判断軸です。どちらも育つまでには10年ほどかかるというのが実感だといいます。しかも20代後半以降は、仕事でも私生活でも状況が変わりやすく、学生時代と同じように時間を使えるとは限りません。だからこそ、動き出すなら大学生である今。それが、この日の講演に込められた警鐘でした。 ただ、伝えたかったのは危機感だけではありません。時間が限られているからこそ、「学生」という最強の特権を活かしてほしい。自身の経験に基づくその言葉は、学生たちへの力強いエールとなりました。
そして最後に、伊藤氏はこう語り、講演を締めくくりました。 「サマーカレッジでの学びを知識として終わらせず、ぜひアグレッシブにアクションを起こしてみてください。ここに来ている皆さんは既に一歩目を踏み出しています。これからの小さな一歩の連鎖が、10年後の皆さんの人生を、想像もつかないほど豊かで自由なものにしてくれるはずです」

msc2026day3_05.jpg 質疑応答の様子

伊藤氏の話は、学生にとって「自分ごと」であったようで、質疑応答も熱を帯び、 社会に出れば1年や2年の遅れは「ミリ単位の誤差」に過ぎず、自分のパッションを優先してほしい等と、等身大のリアルな話が繰り広げられ、極めて実践的なマインドセットが伝授されました。

クロストークでは、学生たちが今できることはという質問に、倉根氏から、例えばお味噌汁とおかずを同時並行で作るように、限られた条件の中で複数の成果を出す「マルチタスクの習慣」を身に付けることで「時間」を創出することができるというアドバイスが送られました。最後は、組織で叩かれることを恐れず「出る杭」として突き抜け、他所から引き抜かれる人材を目指してほしいという力強い激励で締めくくられました。

msc2026day3_06.jpg クロストークの様子

昼食の後は、最終発表に向けた作業。
会場は熱気と活気に包まれていました。昼食時から議論をするグループ、ホワイトボードと向き合い試行錯誤を繰り返すグループ、模造紙に絵や文章を分担して書き込み始めるグループ、実際に発表のリハーサルをするグループ、振り出しに戻って自分たちが言いたいことは何なのかを再び問い直すグループもありました。

msc2026day3_07.jpg

msc2026day3_08.jpg ワークショップ発表準備の様子

そしていよいよ発表。発表順はくじ引きで決定され、11グループが5分間のプレゼンテーションに挑みます。

最終発表会:つくりたい未来に向けて「わたし」ができること

全11グループが、孤独の解消や自己肯定感といった現代社会が抱える課題に対し、演劇や朗読、サプライズを交えた様々なプレゼン方法で発表、多角的な解決策を提案しました。

msc2026day3_09.jpg

msc2026day3_10.jpg 様々な手法で発表する学生たち

各グループ発表内容ダイジェスト
 1.Iグループ:学生主体で運営する「3×3寺子屋」。学生自身が主体となり、学年を超えて「好き」に没頭できるサードプレイスの運営。大人が用意した場ではない自律性が評価されました。
 2.Dグループ:仮面で匿名性を保ち本音を叫ぶ「マスカレードクレイブ」。日本特有の否定される恐怖を物理的に遮断し、本音を語り合う。段階的に仮面を小さくし、最終的に素顔になることで自己肯定感を高める方法を提案。
 3.Eグループ:「思いやりの循環」をコンセプトに、無償の親切を循環させるシェア傘の具現化、市場経済を超えた信頼インフラの価値を提示。経済合理性を超えた「最初の1人のアクション」が社会の空気を変える仮説を演劇で表現しました。
 4.Jグループ:心の余白を生むことが人生の質の向上に直結すると定義した上で「祭り」を再評価。効率化が追求される傾向にある学校や職場・オフィス街全体、そして東京と地方のつながりも含めて祭りの開催を提案。
 5.Gグループ:屋上での「焚き火」を通じた対話。炎というメタファーを用い、自己受容と本音の交流を促進する。
 6.Aグループ:既存の学校施設が多種多様な利用が可能であることを再評価、多世代交流拠点へ。一過性のイベントではなく「日常の温かさ」の持続を追求。
 7.Kグループ:空き家の活用と「看板」による世代間交流。高齢者の家に看板を設置し、昔遊びなどを通じて子どもたちとの接点を作る。
 8.Fグループ:マンション内の孤独を解消する「みこし対決」を提案。共同制作というプロセスで、希薄な隣人関係を再構築する。
 9.Hグループ:日常の「しょうもないニュース」の掲示。些細な笑いを介在させ、硬直した社会に遊び心で介入を試みる。
 10.Cグループ:空き店舗を活用した留学生との「グローカル横丁」の展開。多文化共生をまちの活力に変える具体的実践案。
 11.Bグループ:全員への手書きメッセージ配布というサプライズ。他者との接続を即座に実行し、場の一体感を創出した。

講評は、地方創生に関わる事業を展開するMYSH株式会社の向井裕人氏(代表取締役)と尾崎里空氏。向井氏は「まずは実行してみよう。専門性×興味に、情熱という3枚目のカードを掛け合わせることで、唯一無二の価値が生まれる」と説き、尾崎氏は「グループワークで感じたもやもやは真剣な証。社会の中でアクションを起こしバリューを生むことで、霧は必ず晴れる」と鼓舞しました。どの講評も、学生たちのアイデアを、この丸の内サマーカレッジの思い出で終わらせずに社会実装の種へと昇華させる愛ある言葉でした。

msc2026day3_11.jpg 講評をする向井氏(左)と尾崎氏(右)

緊張と笑いと興味と感心で表情豊かに5分の発表で3日間の集大成を見せてくれた学生たち。講演やフィールドワークで多くのものを得た中で、対話を深めながらアウトプットに取り組んだワークショップの発表は、まさに彼らのつくりたい未来への明るい始まりの一歩となりました。
そして最後に総括として、初日に登壇した長岡健氏が、今回の丸の内サマーカレッジで得たものを、明日からの日常で活かす際に必要なポイントを3つ提示しました。
 •主体性 (Agency):既存のルールや期待をいい意味で無視し、「やりたいからやる」という内なる声に従う姿勢。
 •好奇心 (Curiosity):論理を超えた「Because I like it!」という純粋な情熱。
 •利他性 (Altruism):まず「半径1m」の誰かを笑顔にすること。その小さな連鎖が社会全体を変えるうねりとなる。

msc2026day3_12.jpg 丸の内サマーカレッジ2026の総括を語る長岡健氏

事務局からは、今後も彼らの挑戦を支えるサードプレイスであり続けることを約束。この3日間で生まれた「内発的な情熱」が、厳しい現実の中でも消えることなく、半径1mの日常から未来を照らし続けることを確信し、サマーカレッジ2026は、幕を閉じました。

msc2026day3_13.jpg 3日間のプログラムを終えて、記念撮影や連絡先を交換するなど盛り上がる学生たち

<<DAY1   <<DAY2

丸の内サマーカレッジ

未来の社会へのアイデアを仲間と共に創り上げる

高校生・大学生等が、他学校の仲間と交流し、様々な社会人の生き方をのぞきながら、これからのサステイナブルな社会に向けたアイデアを考えるプログラム。

おすすめ情報

イベント

注目のワード

人気記事MORE

  1. 1日本橋川を、探検しよう!〜 Sixフロートに乗って、都心の水辺へ〜
  2. 2【丸の内プラチナ大学】2026年度開講のご案内~第11期生募集中!~
  3. 3大丸有でつながる・ネイチャープログラム大丸有シゼンノコパン 秋
  4. 4【丸の内de地方創生】岡山県津山市と、次の仕事をつくる。ー「地域産業 × 首都圏企業」の共創可能性を考えるー
  5. 5【レポート】豊かな自然と素敵な「人」に魅せられて
  6. 6【ランチタイム】丸の内の「小さな生きものたち」一斉調査!! 花の受粉を助けるまちの虫さがし ~秋編~
  7. 7【丸の内プラチナ大学】逆参勤交代コース 岐阜県飛騨市フィールドワーク
  8. 8【大丸有シゼンノコパン】この庭に暮らすものを「見る」 ― 観察からつくる、想像上の生物記 ―【緑地を探ろう!】
  9. 9CSV経営サロン2026 第2回 海の課題を価値に変える ~海洋プラスチック問題とアップサイクルビジネスの可能性~
  10. 103×3Lab Future個人会員~2026年度(新規・継続会員)募集のお知らせ~