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【レポート】都市と地域をつなぐ「逆参勤交代」 各地域の実践から見えた新しい関係人口のかたち

【丸の内プラチナ大学】逆参勤交代コース DAY5 2026年3月5日(木)開催

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2026年3月5日、東京・大手町の3×3Lab Futureにて、丸の内プラチナ大学の逆参勤交代コースDAY5となる今年度の総括講座が開催されました。講座では、今年度に実施された各地でのフィールドワークを振り返りながら、受講生による提案発表やディスカッション、講師のトークセッションなどが行われました。講座の最後には、訪問した地域の食材を活かした料理やお酒が振る舞われ、参加者たちは一年間の学びと交流を振り返りながら、充実した時間を過ごしました。

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「縁・運・恩」で広がる逆参勤交代 5つの地域フィールドワークの成果と可能性

「縁・運・恩」で広がる逆参勤交代 5つの地域フィールドワークの成果と可能性

最初に講師の松田智生氏が、逆参勤交代の理念について説明しました。松田氏は「逆参勤交代のキーワードは縁と運と恩。地域との良い縁が生まれれば良い運が広がり、その運に対してお互いに恩返しをしていく」と語ります。人口減少と高齢化が進む時代において、都市と地方が人材を奪い合うのではなく、逆参勤交代を通じて人材を共有することが重要だと指摘し、都市人材が地域と関わる仕組みとして、逆参勤交代の意義を説明しました。

event_plutinum_gyakusankin_.002.jpeg フィールドワークの効果や課題について語る講師の松田氏


松田氏によれば、都市圏で働く企業人材の1割が1か月間逆参勤交代を行えば、約2,000億円の経済効果が生まれる可能性があるといいます。このような構想のもと2017年に始まった逆参勤交代は、現在では全国23の自治体へと広がりました。今年度は北海道上士幌町、美唄市、石川県七尾市、長崎県壱岐市、高知県須崎市の5つの地域でフィールドワークが実施されています。

続いて松田氏は、今年度の参加者アンケートをもとにフィールドワークの効果を紹介しました。今年度の参加者は42人で、20~30代、40〜50代の社会人を中心として、また大学生の参加も増えて多世代となったことと、さらにアメリカ、ドイツ、香港、韓国など外国人の参加者も増え、多国籍のグローバル逆参勤交代になったといいます。満足度は非常に高く、98%が「満足」または「大変満足」と回答。特に地域のキーパーソンとの交流や、取り組み現場への訪問が高く評価されました。また、参加後に約8割がウェルビーイングの向上を実感したと回答し、全員が訪問地域への関心が高まったと答えています。実際に、ふるさと納税や兼業・副業、ボランティアなどを通じて地域への関わりを始めた参加者も生まれているそうです。

一方で課題として、交通費などの費用負担や、副業への関心があっても所属企業の制度上認められないといった点が挙げられました。自由回答では「逆参勤交代を財務価値ではなく非財務価値として捉えるべき」「逆参勤交代者の認定制度や優遇制度があってもよいのではないか」といった意見も寄せられています。

なお来年度は、岐阜県飛騨市で「食」をテーマにした逆参勤交代や、初めて県庁主導の逆参勤交代が佐賀県で検討されているとのことです。最後に松田氏は「現在は都市から地方、地方から都市への人の流動性が停滞している。人が動けば日本は変わる。都市のマスボリュームをいかに動かし、地方と人材を共有していくかが重要だ」と述べ、話を締めくくりました。

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「お手伝い」「避難場所」「企業研修」 多様な提案が生まれたフィールドワーク

その後、今年度のフィールドワークに参加した受講生による実例発表が行われ、それぞれの地域で得た気づきや提案が紹介されました。

最初に発表したのは2025年6月に美唄市のフィールドワークに参加した石橋輝昭氏です。石橋氏は市長へのプレゼンテーションで、美唄市内の施設やイベントのお手伝いを通じてアクティブシニアの居場所をつくる「おてつ旅プロジェクト」を立案しました。「単純な旅だと一度きりの訪問で終わってしまうが、除雪や草取りなど地元の役に立つお手伝いの使命を持って訪問することで、地元の人たちとコミュニケーションが生まれ、再訪するきっかけになる」とそのコンセプトを説明しました。石橋氏は提案のあと実際に知人らとおてつ旅として雪下ろしやイベント設営を実施、現在も美唄市と関係性を保っているそうです。

event_plutinum_gyakusankin_.004.jpeg 美唄市で提案した「おてつ旅プロジェクト」を発表する石橋氏


次は壱岐市のフィールドワークで首都圏などでの大規模災害時の避難場所「壱岐シェルター」を提案した津崎貴彦氏です。神戸に転勤したときに阪神大震災も経験したという津崎氏は「南海トラフ地震や富士山の噴火など、首都圏は自然災害に弱い。都市人口は年間一定の額を支払い、壱岐にシェルターを確保できるというのが私の提案。有事には壱岐で落ち着くまで自給自足したいというニーズはあるはず」と発案のきっかけを語ります。

event_plutinum_gyakusankin_.005.jpeg event_plutinum_gyakusankin_.006.jpeg 左:都市圏の避難先として壱岐にシェルター敷設を提案する津崎氏
右:観光客と須崎市民がつながる観光アプリを考案した川上氏


3番目に登壇したのは大学生で高知県須崎市のフィールドワークに参加した川上小葵氏です。地方創生に興味があったという川上氏。自分ができることを見つけたいとフィールドワークに参加したそうです。川上氏が提案した観光アプリ「須崎で『また待っちょるき』」は、須崎に来た観光客が撮った写真に市民がコメントすることで、両者がつながる場を生み出すことを目的としたアプリです。「このアプリで長期的な関係人口の創出につながり、市も観光客の声をダイレクトに受けることができる」とアプリのメリットを語っていました。

続いては北海道上士幌町へのフィールドワークに参加した早川千織氏。旅行会社に勤める早川氏は企業研修企画「人が来るほど彩るまち」を提案します。自治体営業など企業の研修場所として上士幌町を活用。研修生は上士幌のまちづくりが学べ、町にモノやコトの提案も行えます。単なる研修場所ではなく、当事者として町に提案する機会を与えることで共創人口に変えていけるといいます。「研修に来た人が、上士幌の魅力を他に伝えていく仕組みになれば」と語っていました。

event_plutinum_gyakusankin_.007.jpeg event_plutinum_gyakusankin_.008.jpeg 左:旅行会社ならではの発想で上士幌を企業研修の場にしたいと語った早川氏
右:七尾市と国・地方をつなぐ結び目になりたいと語る古市氏


最後に登場したのは古市佐絵子氏。能登半島地震で被災した七尾市へのフィールドワークでは「『大切なもの』を未来につなぐプロジェクト」を提案しています。「七尾市の皆さんが地域を未来につないでいこうとする姿が印象的だった。被災から立ち上がろうとする七尾の胆力や哲学、歴史の重みを個人や仕事のネットワークを通じて伝え、実現まで関わり続けたい。七尾市の人たちと国・地方の結び目になっていければ」と語ってくれました。

「もっと良くなる逆参勤交代」へ都市と地域をつなぐ新しい仕組みとは

各発表の後、会場の参加者はチームに分かれ、「もっと良くなる逆参勤交代」をテーマに議論を行いました。参加者からは「費用負担という課題への解決策として、現地で仕事を手伝うことで費用を賄えるような仕組みがあってもよいのでは」といった意見などが聞かれました。

event_plutinum_gyakusankin_.009.jpeg event_plutinum_gyakusankin_.010.jpeg 左:もっと良くなる逆参勤交代の改善案を話す参加者
右「情熱が人の心を動かす。その熱意こそ大事」との感想も聞かれました


約30分のディスカッションの後、松田氏と丸の内プラチナ大学副学長の田口による、全体総括のトークセッションが行われました。その一部を抜粋して紹介します(以下、敬称略)。

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松田:今年度を振り返って、良かったと感じるところは。

田口:さまざまな年代やバックグラウンドの参加者が発表することで、現地の人にも得るものがあったと思う。3日間のフィールドワークで感じたことを提案として発信するのは簡単ではないが、発信すれば必ずレスポンスがあり、それが次の行動につながる。そうした挑戦自体が逆参勤交代の価値だと感じている。

松田:大丸有の企業人を動かすためのハードルは何か。

田口:社会全体として「それはいくら儲かるのか」という視点が先に来てしまう傾向がある。本来は価値を生み出すから感謝され、その結果としてお金がついてくるものだと思う。地域課題に向き合う取り組みも同様であり、価値の順番を見直していく必要がある。

松田:首都圏には一定の価値観や秩序、目標が通奏低音としてある。そこに良い揺らぎをもたらすのは人材の多様性だと思う。

田口:その通りだと思う。逆参勤交代コースに限らず丸の内プラチナ大学は、小さなチャレンジができる場。人生を賭けた起業ではなく、まず3日間のプログラムで提案してみるというミニチャレンジの場であることを打ち出していきたい。

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このトークセッションを受けて、松田氏は最終総括として次のように語りました。「逆参勤交代が、最終的には首相の施政方針演説に出てくるまで続けていきたい。地方創生という言葉が薄れつつある中で、都市と地域をつなぐ新しい仕組みになると思っている。そのためにも地域の活性化政策、企業の人材育成、そして個人の新たな生き方の3つが合わされば逆参勤交代の未来も開けていくのではないかと思っている。今年度の講座はこれで終了としたい。皆さん本当にありがとうございました」

講座終了後には交流会が開かれ、今年度フィールドワークで訪問した地域の食材を活かした料理や飲み物が提供されました。フードでは、須崎市の文旦を使ったサラダ、壱岐市の野菜を使った卵炒め、七尾市の牡蠣を使ったフライ、さらに、美唄市の名物「角屋のやきそば」など各地の魅力を味覚から感じられる料理がそろいました。ドリンクも壱岐市の麦焼酎や日本酒、上士幌町のエールビールなどが提供され、参加者たちはグラスを片手に料理を楽しみながら、フィールドワークでの出来事や地域での体験談について語り合いました。会場のあちこちで笑顔の輪が広がり、講座を通じて生まれたつながりをさらに深める時間となりました。

event_plutinum_gyakusankin_.012.jpeg event_plutinum_gyakusankin_.013.jpeg 左:各地の食材を使った料理を説明する鬼丸美穂氏
右:手前に文旦サラダ、カキフライ、奥には角屋の焼きそばも


今回の総括講座では、逆参勤交代が単なる地域訪問ではなく、人と地域の新しい関係を生み出す仕組みとして機能していることが改めて示されました。受講生の提案やディスカッションからは、フィールドワークをきっかけに地域との関係を継続しようとする姿勢や、新たな取り組みを生み出そうとする意欲が数多く見られました。

セカンドキャリアを迎えたある参加者は、逆参勤交代について「今まで体験していないことを知ることができた。地域に行けば必ず得るものがある。非常に面白かった」と語ります。また学生の参加者からも「学校では同年代と関わることが多いが、地域に行くことで多様な年代の人と関わることができ、社会を先に体験できる機会になる」という声も聞かれました。いずれにも共通するのは逆参勤交代コースを通じて新たな経験や価値に触れたということです。社会人のみならず、幅広い年代に新風を吹き込んでくれる逆参勤交代が今後どのように広がっていくのか、引き続き注目されます。

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