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【レポート】未来の丸の内を作り上げる3日間(前編:大学生・大学院生編①)

丸の内サマーキャンプ2019 大学生・大学院生の部 2019年8月14日(水)~16日(木)開催

4,8,12

8月の「夏休み」期間中に、大学生向け(8月14~16日)、高校生向け(同21~23日)として開催された「丸の内サマーキャンプ2019」は、「自信を持って生きる若者を増やしたい。正解にリーチするのではなく、作り上げる人になってほしい」という願いから、2018年始まったプログラム。第2回目となった今年は、昨年よりもさらにブラッシュアップされ、学生たちにとっても強い印象の残る経験となったようでした。

どんな内容で、どんなインパクトを与えるものだったのか。そして、3×3Lab Future、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアにとって、どんな意味のあるものだったのでしょうか。大学生・大学院生向け、高校生向けの各2回に分けてレポートします。

前編:大学生・大学院生向け②
後編:高校生向け①
後編:高校生向け②

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大学生・大学院生の部アウトライン

大学生・大学院生の部アウトライン

大学生・大学院生の部は、次のようなプログラムで実施されました。

<1日目>
▼オリエンテーション
▼講演&クロストーク「人を幸せにするための仕事とは」
中島康滋氏(イノベーションファクトリー株式会社)/新井和宏氏(株式会社eumo)
▼フィールドワーク:大丸有街歩きツアー

<2日目>
▼講演「グローバルビジネスを知ろう」
桝本博之氏(B-Bridge International, Inc.)/小豆澤祐氏(元Alchemist Accelerator Chief Acceleration Officer)
▼アクティビティ:座禅体験 土居征夫氏(一般社団法人世界のための日本のこころセンター代表理事/師家)
▼ワークショップ:テーマ検討

<3日目>
▼講演「自然に生き抜くビジネスパーソン」
小崎亜衣子氏(株式会社Waris)
▼ワークショップ:発表準備
▼発表
▼交流会

1日目、マグネットテーブルでチームビルディングをしている様子

このプログラムについて、企画したエコッツェリア協会プロデューサーの田口氏は次のように説明しています。

「初日の講演はソーシャルにポイントを置いて、働くとはどういうことか、仕事とは何かを社会性の観点から考えてもらうためのインプット。2日目は、シリコンバレーや国際的なビジネスの事例から、グローバル経済や、サーキュラーエコノミーについて考えてもらいます。そうやって思考を拡大して悩んだところに、3日目の講演では『自分のままでいい、自然でいい』というインプットをする。そのような大きな流れを作ったのが、今年のサマーキャンプの特徴です」

プログラム全体としては、インプット(講演や見学など)とアウトプット(グループワーク・個別ワーク)がセットになっています。これにより、インプットで受け取ったものをしっかりと消化し、自らのものにしていくようにしました。

初日のオリエンテーションの最後には、自己紹介からマグネットテーブルでチームビルディングを行いました。3日間、このチームで取り組み、最終日には「サーキュラーエコノミーを考えよう」という課題に関するプレゼンテーション、発表まで行います。

ファシリテーターには、2日目の講師である桝本氏のB-Bridgeから、槙島貴昭氏・桝本才志郎氏の2人が参画。大学生に世代の近いファシリテーターがフォローすることで、参加者も打ち解けた雰囲気で臨むことができたようでした。

<1日目>人を幸せにするための仕事とは――中島康滋氏、新井和宏氏/フィールドワーク・大丸有街歩きツアー

初日午後の講演は、「人を幸せにするための仕事とは」をテーマに、「ソーシャル」な仕事についての講義です。冒頭、田口氏はインプットの意義を次のように述べています。
「皆さんも近い将来社会に出て仕事をするようになると思います。本来仕事というのは、社会に価値を提供するためのもののはずですが、なぜか、経済的価値を追求することに流れてしまう。それは社会全体がそのように流れてしまっているからなのですが、そこを変えていこうと活動している方々もいます。今回のお二人はまさにそのトップランナー。仕事をすることの意味を、ぜひ考えてみてください」

▼中島氏の講演

中島氏は、現在は愛知県名古屋市に拠点をおいて社会起業家の支援、教育・人材育成事業などに取り組んでいます。20代で起業した音楽配信ビジネスをはじめとして、一貫して社会的な活動を展開している氏がキーワードにしているのは「感性」です。 「人がどういうところに反応するのか、どうしてやる気やモチベーションを感じるのか。そういうことはすべて、感性に左右されています。だから、人を幸せにする仕事、社会的な仕事、社会に変革を起こそうという取り組みには、実は感性がすごく重要だということが分かってきました」

感性とは、「はっきりと決められない、分からないものを、自分なりにどこに落とし込むかを決めるもの。正解や不正解がはっきりしていない、どうとでも取れる境界線上のものを、自分で決めるもの」であるとしています。この心の動きがなければ、人は納得して動くことはありません。

「感性や感情は、行動と密接に結びついています。今では、幸せの研究やリーダーシップ論などでは感性を重視するようになっていることでも分かるように、人の行動の源泉には感性がある。社会的な事業を始めるには、まず心の動きに注目することが大切です」

例えば、中島氏が最初に起業したのは、ミュージシャンが自由に音楽を作り、配信・販売することができる音楽サイトのビジネス。当時は、CMや企業タイアップがつかなければビジネス的に音楽を作ることが難しい時代でした。「音楽を制限するということは、人の自由を奪うこと。『音楽を解放したい』と思ったのが、ビジネスを始めるきっかけでした」と中島氏。状況の「観察」から、「感性」、心の動きにしたがって、ビジネスを起こした。これが事業成功の鍵だったと振り返ります。

その後、中島氏は、社会を変えるための事業、ソーシャルベンチャーの支援などに取り組むようになりました。社会を変えたいという思いを持つ人たちが、自ら役者になってミュージカルを上演する「NPO法人コモンビート」、森林と人材育成・教育を扱う「一般社団法人 森と未来」、エシカルなものづくり企業「株式会社HASUNA」など、感性を重視したビジネスや事業支援などを手掛け続けています。

他にも、自らの体験、経験を踏まえて「思い」を大事にした活動のポイントや成功の秘訣なども紹介し、最後に次のように締めくくりました。

「感性が社会を豊かにする。だから、社会感度の高い人を増やして、無関心な人を減らしていきたいと思っています。そのためには、まず考えるよりも感じること。みなさんも、ぜひ自分の感性を信じて周囲を見渡すところから始めましょう」

▼新井氏の講演

新井氏は、人々がファンとなって応援したくなるような「いい会社」に投資することで社会を変えるという理念を持つ、独立系の投資信託会社「鎌倉投信」の創業メンバーとして知られており、近年は「共感資本主義社会」の実現のための会社「eumo(ユーモ)」を起業するなど新たな取り組みにも挑戦されています。この日は、社会的な活動するうえでの心構え、指針などを語りました。

まず冒頭で、社会的な取り組みをするうえでの、基本的な心構えをいくつか紹介しました。
「人が変えられるものはほとんどありません。よく、あいつを変えたのは俺だ、という人がいますが、それは思い違いのことが多いはずです。では、人は何を変えられるかといったら『自分』しかありません。自分を変えるところからスタートすれば、すべてを変えていくことができるはずです」

もうひとつの心構えが「問いを立てる力を持つ」「考え続ける力を持つ」ということ。それを新井氏は「哲学」とも表現しています。
「例えば、多様性と個性は表裏一体のものですが、それは考え続けなければ見つけることはできません。今の社会では、哲学は面倒なこととして捉えられてしまうこともありますが、当たり前のことを当たり前と受け取らずに、問いを立てて、疑って、考えることをしなければ、イノベーションを起こすこともできないのです」

そして、大きなテーマとしては「手段と目的」について。現代社会では、手段と目的を取り違えているために、不幸なことになってしまっていると解説します。

例えば、私たちが生きている「目的」は幸せになるためであり、お金を稼ぐことはその「手段」であったはず。しかしいつしかお金を稼ぐ行為が目的化し、お金の多寡で一喜一憂するようになっています。これは企業も同様で、企業活動を通して社会に貢献することが目的であったのに、利益を出すことが目的となってしまっている。社会全体がそのような逆転に陥っていると新井氏は指摘します。
「お金は、幸せと違って量として他者と比べることができるから、誰にとっても分かりやすい。分かりやすいということは説得力があるということ。人は分かりやすいものに流れる生き物なので、どうしてもお金の優先順位が高くなってしまいます。しかし、幸せとはなにか、どう生きることが幸せに結びつくのかをちゃんと考える必要があると思います」

この安易な分かりやすさに陥る構造は、社会における「対処」と「イノベーション」の関係でも起きているものだそうです。例えば、現在の日本では社会保障費の増大が深刻な問題になっています。生産年齢人口=社会保障費の担い手の減少、生活習慣病の増加、医療費の増加。これに対して、今政府が行っているのが「生活の質(QOL)の向上」「健康寿命の延伸」という対策です。
「しかし、これらの対策は本当に問題の解決につながるのでしょうか。これはあくまでも『対処』に過ぎず、本質的な解決ではない。怪我で出ている血を止めているだけで、怪我の治療はしていないわけです。では、この問題の本質はなにか。それは『自分の命を大切に思える社会を作ること』。もっと端的にいえば『生きがい』のある社会にすること。これが本当に必要なイノベーションなのですが、頭のイイ人ほど、即座に結果が出て、結果が見えやすい『対処』の方に流れてしまう。それが今の日本で起きていることです」

新井氏が今eumoでやろうとしているのは、その「やりがい」を実現するプラットフォームの構築です。eumoでは、生きがいを、人間が持つ4つの要素「Body」「Mind」「Soul」「Spirit」から分析し、それぞれの要素で意思を実践することで生きがいを達成できるとしています。

「eumoが実現しようとしているのは『共感資本主義』の社会です。それは『共感』がお金になる社会。共感という、見ることもできず、貨幣価値にも換算できないものを価値化して大切に育み、それを基礎(資本)として活動していくことのできる社会です。マイクロソフトのCEOのサティア・ナデラも、AIが社会に普及するからこそ、人間が持つ『共感』という能力が重要になると指摘しています。AIが人間の仕事を奪うなんていう人もいますが、逆にAIのおかげで人にしかできないことが何かはっきり分かるようになるでしょう。それこそが共感であり、感性がますます重要になってくるはずです」

お二人の講演のあとは、田口氏のモデレーションでパネルディスカッションを行いました。その中で、社会的な活動に取り組むうえで「感性」や「共感」が必要だというメッセージは、多くの学生にとって、「異物」であったろうと田口氏は話します。実際「就職や将来のことを考えるために参加した」というある学生が、「(働くことを考えるうえでは)今までに考えたこともなかった」と新鮮な驚きを隠しません。しかし、「それでいい」と田口氏。
「感動した!という人もいるだろうし、よく分からん!という人もいるでしょう。ムカついた!という人もいるかもしれません。でもそれでいいんです。人は異なったものに対して、直感的に反応します。その直感を大切に、今すぐ答えを出すのではなく、しっかりと向き合って咀嚼してください」

パネルディスカッションの後は、個人ワークで感想を整理し、各テーブルで感想や意見の交換を行い、理解を深めました。

▼テーマ決定とフィールドワーク

中島氏・新井氏の講演終了後、チームごとにワークショップで取り組む課題「サーキュラーエコノミー」の検討テーマを決定。このテーマをベースに、最終日の発表に向けて思考を広げていきます。

<チーム1>自然
<チーム2>人とテクノロジーの共存から生まれる好奇心
<チーム3>ポジティブなつながり
<チーム4>オリンピック
<チーム5>食が交流の場/出会いの場/新しい場
<チーム6>趣味の丸の内
<チーム7>健康と趣味

フィールドワークの途中、丸ビルで撮影

その後は、フィールドワーク「大丸有街歩きツアー」を行いました。案内するのは、エコッツェリア協会理事の村上氏。長年設計に携わった後にまちづくりを担当するようになったため、大丸有エリアの歴史に造詣が深くていらっしゃり、まちや建築物の概要からちょっとした豆知識まで、たっぷりとした内容となりました。

【順路】大手門タワー・JXビル地下ゴミ処理場→大手町パークビル→平将門の首塚→大手町フィナンシャルシティ グランキューブ→サンケイビル→大手町ビル→大手町タワー→丸の内オアゾ→新丸の内ビルディング→行幸地下ギャラリー→丸の内ビルディング(5F)→KITTE丸の内→国際ビル→帝国劇場→東京国際フォーラム→丸の内MY PLAZA→丸の内ブリックスクエア→丸の内仲通り

<2日目>グローバルビジネスを知ろう――桝本博之氏、小豆澤祐氏/アクティビティ・座禅体験

2日目のインプットは世界を股にかけて活躍するお二人から、グローバル経済や、国際的に活躍することのポイントなどをお話しいただきました。国際化は、これから社会に出る若者にとっては興味深い話題でしょうし、必須の内容とも言えるかもしれません。

▼桝本氏の講演

桝本氏の講演はシリコンバレーと中継で行われた。

枡本氏は、シリコンバレーに拠点を置くB-Bridge International Inc.のPresident/CEO。もともとはバイオ領域で日本と海外をつなぐベンチャー企業でしたが、現在では日本の学生・若者を対象にしたシリコンバレーツアーなどを企画する教育事業も手掛けています。

「以前はバイオ領域でブリッジ役を努めていましたが、今は、学生のために日本とシリコンバレーをつなぐブリッジ役。アメリカで活動していますが日本が大好きで、将来日本を背負って立つ若者たちが、シリコンバレーを利用して、世界に立ち向かえるようになってほしい。それで日本はええところやで、と言ってくれれば、日本が世界に広まっていくんじゃないかと思っています」

この日は本拠地・シリコンバレーからの中継でお話しいただきました。なぜシリコンバレーが、今世界でもっともビジネスが加速する地域になっているのか、そしてそこで必要なエッセンスは何か。気になるポイントを分かりやすく解説してくれました。

シリコンバレーはハイテクのイメージがあるものの、高いビルはほとんどなく、気候も穏やかで自然を身近に感じられる環境になっています。
「人口は300万人いますが、東京と神奈川を合わせたくらいの面積なので、人口密度はすごく低い。1年のうち300日は晴れていて、夏でも夜になると気温が15、6度に下がってクーラーがいらない。大地が近くに感じられて、自然が豊かな地域です」

世界中から技術者が集まり、人口300万人のうちアメリカ人は4割程度。世界の特許の1/5がシリコンバレーに集中するという開発力。人と技術、情報が強烈に集まってくるのがシリコンバレーの特徴です。そして、シリコンバレーには投資家もまた世界中から集まり、スタートアップへの投資を盛んに行います。その額、月2200億円。これは日本の年間投資額に相当します。

「日本の1年分をたった1カ月で投資する。どう処理していると思いますか? とにかくすごいスピード感なんです。スタートアップ側は、自分たちの事業を2、3分で伝える。説明する技術とパッションを持っているということです。みなさんは2、3分で伝える練習をしたことはありますか? 2分で伝えて、投資家が5分で決める。ここで求められるのは、偏差値的な頭の良さではなく、自分のやりたいことをプレゼンする能力なんです」

シリコンバレーでスタートアップを立ち上げる人は「儲けること」を目的にしていません。「自分のやりたいこと」を実現したい、その情熱にあふれています。

「シリコンバレーのいいところは失敗に寛容なところ。日本は失敗にフィーチャーしがちですが、シリコンバレーでは失敗は当たり前と考える。リスクばかりを考えることは、デッドボールを恐れてバッターボックスの隅に立つようなもので、それではヒットを打てません。まずは3割打てればよしとしてあれば、何でもやったほうがいいという考え方です」

それゆえ投資家は「ギャンブラー」でもあるそうです。ただし、「賭けるだけじゃない」。
「ただ赤か黒かに賭けるのではなくて、自らスタートアップ企業と一緒になって学び、知識と勇気を持って赤を黒にしようとする人でもある。それがさらに次の活動につながる。シリコンバレーにはそういう人が多いのです」

そして最後に、学生たちにシリコンバレーに来い!という熱いメッセージ。

「一度はシリコンバレーで勝負してみてほしい。グローバルとイノベーションは世界のビジネスのテーマです。メイドインJAPANはもう追いつかれていて、継承していくだけではなく、何かを変えていかなきゃいけない時代です。イノベーションは常識を覆すこと。日本では非常識なことも、シリコンバレーなら世界の常識として褒められるかもしれない。シリコンバレーでやったほうが面白いし、勝負する土壌がある。ぜひシリコンバレーで挑戦してください。失敗したときに、よくやった!と言ってくれる人がこれからのパートナーです」

▼小豆澤氏の講演

小豆澤氏は、アメリカにある世界的なアクセラレーター/インキュベーターのアルケミストのオフィサーを務めた後、帰国。現在は日本のベンチャーコンサルに勤務する傍ら、自らもベンチャーやスタートアップを支援する会社を起業・経営するほか、NPO理事や大学講師、投資家など、さまざまな顔を持って活動しています。そのキャリアのきっかけとなったのは学生時代の経験です。この日は「大学生だった自分へ」と題して語りました。

前半は大学も含めどのようなキャリアを積んできたのかの解説です。

小豆澤氏は学部生のときにアントレプレナーに興味を持ち、イギリスへ留学。オックスフォード大学でアントレプレナー関連の授業を見学して、この領域へ進むことを決意します。その後、日本で英語を学び、ボストンに本拠を置く国際的なビジネススクール大学院に入学。在学中はボストンでの就活で30戦全敗の記録を打ち立てたものの、サンフランシスコのキャンパスにいる間にアラブ首長国連邦・ドバイ政府のオファーを受けて現地でアクセラレーターとして働くという経験も。

大学院卒業後は、採用試験に合格したGoogleを「何かやりたいことと違う」と辞退して、全米屈指のアクセラレーター、アルケミストに就職。日本法人立ち上げに参画した後に退職し、現職のコンサルに参画して現在に至ります。

波乱万丈、紆余曲折の多いキャリアアップに見えますが、こうして転々としてきたことにも意味があると小豆澤氏は言います。
「実は学部生のころは公認会計士になりたくて勉強していたし、その後は先輩の商社マンに憧れて流通政策や貿易を学んだりしていました。アントレプレナーに憧れたのはその後。でも、こうやって、あるゴールに向かって一直線じゃなく、いろんなところに寄り道していくことも面白いんじゃないかと思います。世界が変わるたびに視野も広がるし、自分が動けるフィールドも広くなっていく。それに伴って、なりたい自分、やりたいことも変わっていくんです」

これはスティーブ・ジョブズが言う「Connecting the dots」という考え方に通じるものだといいます。ジョブズは「人生においてある地点から過去を振り返ると、すべての点がつながっているのが分かる。だから今やっていることが将来つながることを信じければならない」と話しています。そのように、すべてがつながり現在に至るという考え方。

いきあたりばったりのようにも見えますが、だからこそ、プランやブランディングが大事だともしています。プランについては、氏は10年周期で区切る考え方や、学校の学年や卒業年次、就職といった区切りはライフステージに合っていないと感じているそうです。

「おすすめなのは12年周期。12歳から23歳、24歳から35歳というような周期で考えると、社会的な動きにうまくマッチさせることができると思います。そして、もうひとつ大事なのがブランディング。何が得意で、何をやりたいのか。自分の方向性を意識してきちんと示すこと。これがしっかりできるようになると、就活の勝率もだんだん上がっていきます」

ブランディングを重ねるうちに、ボストンでは30戦全敗だった就活も、大学院卒業時には6勝3敗、日本に帰る際には、11勝2敗。「通算では負け越しですが、勝てる武器になりつつある」と小豆澤氏。

そして、就活についての実戦的なアドバイスへと移ります。アメリカだけでなく、国際的に働こうとした場合の就活はどうすればいいのか、自分の経験からのアドバイスだけに説得力がありました。

1つめはLinkedIn。「これはアメリカでは必需品」と小豆澤氏。「自分がやったことをたくさん書く綴る」のがポイントで、同時にLinkedInに書きたいことを学ぶ、ビジネスで実践するという視点も大事だと指摘。

2つめがレジュメ。何をやってきたのか、やっているのかのアウトラインを、自分のバックグラウンドをまとめて書くもので、履歴書とは若干異なります。

3つめが、それをさらに詳しく書く「CV(Curriculum Vitae)」。日本の職歴書に一番近いもので、レジュメのアウトラインで示した内容を詳しく書きます。アピールポイントがあればさらに詳しく書くのも良いでしょう。

そして、日本とは大きく異なるのが、「徹底的な業界・企業の調査と分析」です。 「採用する側としては、最低限の知識は持っていてほしいだろうし、業界がどんな方向に進もうとしていると考えているか、そしてその中で、自分がどういう仕事をしたいのかというビジョンを持った人と仕事をしたいと思うもの。それを、きちんとストーリーにまとめ、短時間で伝えられるようにすることも大事です」

アルケミストの就職の際には、面接をしてもらえなかったために役員の立ち寄り先を調べ、カフェで捕まえてショートピッチをしたという。「いつ出会っても良いように常備しておくことも大事」と小豆澤氏。

また、最後にはメンターの重要性についても触れています。小豆澤氏も主だったものだけで5、6人のメンターがいて、困ったときにはアドバイスを求めるのだとか。もちろん頼るだけでなく、メンターにメリットを還元することも忘れてはいけません。
「例えば、コンサルをやっているメンターには、アドバイスの成果をすぐフィードバックしています。すると彼にとっても情報の蓄積が増えることになりますよね。そういう付き合い方が重要です。メンターはできるだけ早くから増やしておくと、その分早く一歩を踏みだすことにも役立ちます」

非常に実践的で具体的な内容でもあったため、講演のあとの質疑応答もとても盛り上がったものになりました。

▼座禅体験――師家・土居征夫氏

午後はインプットから一転、「座禅体験」を行い、日本文化に触れるとともに、これからの社会、ビジネスに必要な要素を座禅から学びます。指導は「師家(しけ。禅宗で指導する力を備えた人を指す)」の土居氏が務めました。土居氏は禅の現代性を次のように説明しています。

「禅とは情報を遮断し、頭を回転させることを止めるもの。心を出す。意識を止める。畳のうえで死にきれと言われます。これは新しい価値を生み出そうとするときに必要なもので、スティーブ・ジョブズも実践しており、世界中から注目されています。マインドフルネスも禅を参考にしたもの。これからのビジネスは、座学で学ぶだけでは、先がないのかもしれません」

本来の座禅は数時間という長い時間組むものですが、この日は10分、15分の短い体験となります。結跏趺坐(けっかふざ)、呼吸、「二念を継がない」といった禅の要諦――調身・調息・調心の指導を受けた後、実際に座ります。

「みなさんが生きる未来は、論理だけでは滅びるのではないか、感性が大事なのではないかと思います。論理の世界を抜け出して、五感を起こし、無意識の世界を体験してください。もちろん、今日やったからといって、何かが変わるものではありません。しかし、体験することで何かが残るはず。その残るものを大切にしてください」

畳を敷き、照明も落としたいつもとは違うしんと静まり返った3×3Lab Futureのサロンスペースで、静かに座る学生たちの姿が印象的でした。

前編:大学生・大学院生向け②

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