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【レポート】大丸有から、世界へ!学生たちが未来と繋がる夏 Day2

「丸の内サマーカレッジ2023」2023年8月9日(水)〜11日(金)開催

4,8,11

丸の内サマーカレッジ2日目。3×3Lab Futureの開場とともに、学生たちが集まりはじめました。初日のプログラムを通してすっかり打ち解けた様子が見られます。スタートを前にスタッフも自身のキャリアを伝えました。登壇する講師だけではなく、サマーカレッジのスタッフもさまざまなバックグラウンドがあります。「働くこと、社会と自分達のつながりについて考える機会なので、ぜひ大人達とも話をしてみましょう」という司会の田口からのメッセージに、学生たちが頷く姿も見られました。2日目はどんな新しい価値観と出会うのでしょうか。

<2日目のプログラム>
講演3「グローバルな視点を体感しよう」
・・・桝本博之氏(B-Bridge International, Inc. / President&CEO)
講演4「都市と地域、大企業とスタートアップ」
・・・鎌北雛乃氏(コミュニティデザイナー)
・・・向井裕人氏(MYSH合同会社 代表社員)
ワークショップ1:テーマ検討

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講演3「グローバルな視点を体感しよう」-桝本博之氏

講演3「グローバルな視点を体感しよう」-桝本博之氏

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シリコンバレーと日本をオンラインで繋ぐ、桝本氏の講演が始まりました。桝本氏は日本の大手企業からキャリアをスタート。ヘッドハンティングを受けてシリコンバレーで転職し、グローバル販売の統括を務めた後にB-Bridgeを起業しました。バイオテック関連の事業を行いながら、日本企業のアメリカ進出支援やアントレプレナーシップ教育に携わっています。今回は「シリコンバレーでの働き方を若者に伝えたい。リモートを含めて、日本でも活用できる方法を提言していきたい」との想いから、キャリアの築き方・自分で考える力について学生たちに伝えます。

「シリコンバレーという言葉を聞いたことがある人はいますか」という問いかけに手が挙がりました。今回の講演はインタラクティブな参加スタイル。グループワークを取り入れ、双方向でのコミュニケーションを行います。

「この講義のなかでもっとも大切にしたいことが2点あります。まずは『proactive(プロアクティブ)』。自ら能動的に、前のめりに働きかけて欲しいです。また、『マインドセット』として自分自身の考えを持つこと。これらはぜひ持ち帰って欲しいです」(桝本氏)

桝本氏が暮らすアメリカ合衆国の西海岸・カリフォルニア州に位置するシリコンバレーでは、日々イノベーションが起こっています。かつて馬車で生活していた人々が車を使うようになったこと、レコードがCDやMDに変化したこと、タクシーの仕組みが配車アプリUberに変わったこと。短期間にあらゆる仕組みができ、置き換わる流れがイノベーションです。

「イノベーションが起きる場所には特徴があります。まず、国籍の異なる人が世界中から大勢集まる場所であること。シリコンバレーに住む人のうち4割近くは外国籍です。Zoom創業者のエリック・ヤン、Yahoo!共同創業者のジェリー・ヤン、そして、イーロン・マスク。みなシリコンバレーから成功しています。これには、1850年前後にカリフォルニアで起きたゴールド・ラッシュ、金を求めてきたフロンティアスピリットも影響しています」(桝本氏)

かつてカリフォルニア州に移住した日本人、1800年代末から20世紀初頭にかけてワイナリーを経営した長澤鼎と、飛行機を用いた稲作で名を残した「ライス王」の国府田敬三郎の事例を挙げ、学生たちにシリコンバレーは決して自身と縁遠い場所ではないと伝えます。

また、イノベーションが起きる場所の特徴は「技術が生まれる場所」。100件の特許登録があればその内15件はシリコンバレーの企業だと言われています。他にも「資金が集まる場所であること」。ベンチャーキャピタルが投資を行い、アメリカの投資金額総額の3割がシリコンバレーに集まっています。シリコンバレーにはイノベーションを産むエコシステムも存在します。アドバイスを行うメンター、ビジネス経験の少ない人に育成支援を行うインキュベーター、さらにビジネス拡大の支援を行うアクセラレーター、投資家であるインベスターと、それぞれの役割を持った人達がゼロから事業を起こすアントレプレナーに対して支援する仕組みができているのです。

「アントレプレナーに必要なのは『ネットワーク』。スティーブ・ジョブズのメンターであるビル・キャンベルに会ったときに言われたことです。人と出会って繋がることが大事。人はそれぞれ強みも弱みも持っています。互いに補うことで一人ではできないことも達成できます。そのためには人やものに対して好奇心を持つこと大事です。好奇心を持つことで目に見えるものも増えてきます。人と出会い、自分の考えを話すことでチャンスが訪れます」(桝本氏)

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また、桝本氏はシリコンバレーのイノベーションとは常識を打ち破ることだと補足します。世界各国から文化が異なる人達が集まり過ごしているため、常識の定義は様々です。人の気持ちを意識したコミュニケーションをしつつも、常識にとらわれることなく自分の意見を伝えやすい風土があります。そのような環境で暮らす桝本氏だからこそ、学生たちには積極的に物事に取り組み、早い段階で沢山失敗して欲しいと伝えます。「人によって考え方や見え方や認識は違う。何が正しいということなんて決まっていないので、若いうち、価値観が固まる前にチャレンジしてみましょう」とお話いただきました。

自分と他人は異なるため、自分の考えをちゃんと伝える必要がある。そのためには、コミュニケーションやプレゼンテーションが重要です。早速2人1組での実践の場が設けられました。自分の得意なこと、苦手なことを伝えるワークでは、その理由を付け加えて印象に残るようにします。何気ない会話から、相手の面白さやすごさを知り、さらに興味をもつことがコミュニケーション。初対面であっても興味を持って話しかけていくことが大切だと参加者も身をもって学んだようでした。

「シリコンバレーは地名ではあるけれど、マインドセットでもあると思っています。ここで活躍する人達の考え方を身につけていきましょう。いろいろな人と会って、喋って、話を聞く。これまでの知り合いと会うと過去の話をしてしまうので、新しい人と会って未来の話をすることがおすすめです。そのためには、自分のいる場所や人を変えて話す。相手のことを考えるとより良いですね」(桝本氏)

現在はシリコンバレーで暮らす桝本氏ですが、日本がもっと成長して世界からも面白いと思ってもらえるようになったら嬉しいと話します。

「日本にあるような安定という考え方もとても大事。ただ、若い皆さんは毎年着実に成長していけるので、挑戦して失敗して、ネットワークを作りながら動いていくときっと面白いです。シリコンバレーに来ることはできなくても、オンラインのミートアップに参加することでも良いと思います。ぜひ挑戦してみてください」(桝本氏)

最後の講師への質問も盛り上がります。
「一度会った人とその後の関係性を作るにはどうしたらいいか」という質問には、「興味がある人には連絡をしてもう1度会う機会をつくるのがおすすめ」と実践しやすいポイントを伝えました。興味の広げ方をどうしたら良いかと悩む学生には、「同じ事を繰り返し続けると好きかどうかが分かってくる。たとえば、5日連続で同じコーヒーショップに行って飽きると、そこには興味がないと分かります。一方で、繰り返し続けることで見えてくる面白さもある。面白いと思ったことを深掘りしていくこともおすすめです」と自身の経験も交えながら寄り添いました。質問はやまず、個別相談にも長蛇の列ができました。

講演4-1「都市と地域、大企業とスタートアップ」-鎌北雛乃氏

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鎌北氏は大手総合商社の会員制オープン・イノベーション・ラボ「MIRAI LAB PALETTE」のコミュニティマネージャーとして人と人を繋いでいます。会員からの紹介された人だけが登録できる仕組みで、2019年4月の立ち上げから会員登録者は6,000人以上にのぼります。学生時代からのキャリアをグラフ化しながら、コミュニティマネージャーになるまでのストーリーを語っていただきました。

「18歳のとき、仮面浪人をするつもりで専門学校に入学しました。夏休みに何かチャレンジをしたいと思って両親に相談したところ、地域活動を紹介されボランティアを始めました。紫陽花の剪定ボランティアから始まり、東日本大震災で避難を余儀なくされている福島の子どもを関東に招くキャンプ運営にも関わらせていただきました」(鎌北氏)

そこから瞬く間に人のネットワークが広がります。キャンプ運営に関わっていた方から「成人年齢の引き下げについてのヒアリングに参加してみませんか」と声をかけてもらい、若者代表として参加。一緒にヒアリングを受けた学生達の政治について考え社会的に活動を行う意識の高さに刺激を受け、夏休みの間はボランティア活動に没頭しました。毎週末のゴミ拾い、熊本震災の復興支援などを行う傍ら、仲間と農業を始めようという話がでてきました。

「千葉県の御宿町に畑を借りることになりました。畑作業が楽しくて、いつの間にか大学編入の目標もなくなっていました。勉強はほどほどに、ボランティアと畑作業の毎日。ただ、この時点でも将来何をしたいという考えはありませんでした」(鎌北氏)

専門学校卒業にあたり、ベンチャー企業への就職活動も行いましたが、即戦力を求める企業とはご縁が繋がらなかったようです。「思い立ったら行動、やりたい仕事をしたい」という気持ちで、畑作業をしていた千葉県御宿町での起業を決めました。畑仕事を通して地元の方とネットワークができていたので、移住を喜ぶ人も多かったそうです。

「営利事業・非営利事業に分けて事業展開していました。営利事業では、コンサルティング、観光事業、情報発信事業を。非営利事業では、畑に自然と人が集まる文化がとても良いなと思って、『人が集まる』コミュニティースペースの運営を、とにかくいろいろな事業を行っていました。コミュニティースペースの運営も、見よう見まねでDIYを進め、町の人や観光に来た人からも手伝ってもらえるようになりました」(鎌北氏)

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順調に見える一方で、鎌北氏はスキルや経験不足を実感し、活動に限界を感じるようにもなっていました。人とコミュニケーションをとりたいけれども時間が取れないもどかしさに、悲観的になってしまうときもありました。状況を変えるべく横浜のNPOでインターン活動を始め、シェアオフィスでの働き方に感銘を受けていたとき「MIRAI LAB PALETTE」に出会いました。

「これまでやってきたこと、これからやりたいことがマッチするかもしれない。ダメ元で応募をしたら、採用していただけました。施設運営・受付・備品管理やイベント企画などを総合的に担当し、コミュニケーションをとるのが好きだと実感しました」(鎌北氏)

「自分が人とコミュニケーションをとっていると事業を回せない」というジレンマが、「コミュニケーションが仕事になる」という気づきに変わった経験でした。人と人が協業できる場をつくりたいと考えて仕事に打ち込み、数千人規模のコミュニティをとりまとめるまでになりました。かつて所属していたコミュニティと現職での繋がりで新しい事業が動き出したのがとても嬉しいと語る鎌北氏。今は修行の身だと考え、今いるところでできることをひとつひとつ進めいつか地域に貢献したいと語りました。

「チャレンジ精神を大切にするといいかなと思います。少しでも興味がある、できそうなことをとにかく試してみてほしい。失敗しても大丈夫です。勇気を振り絞って踏み出した一歩が、もしかしたら思いがけない先のことにつながるかもしれません」(鎌北氏)

講演4-2「都市と地域、大企業とスタートアップ」-向井裕人氏

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向井氏はITコンサルタントや自動車メーカーなど大企業での勤務を経て起業し、現在は東京・奈良・福島の3拠点生活をしています。経営コンサルティングを中心に企業の課題解決を行うGlide Path株式会社と、地方創生やまちづくり、働き方改革に取り組むMYSH合同会社の2社を経営しています。

「東京では大手企業のコンサルティング、奈良県では実家を事務所にして過疎化への取り組みを県庁と一緒に進めています。地域のプレイヤーの連携強化や、育成などを行っていて新聞などにも取り上げていただきました」(向井氏)

なかでも一番大きな取り組みは、福島県南相馬市での地方創生まちづくり・移住に関する事業です。東日本大震災での被災地でもあるこのエリアは、震災前には7万人いた人口が5万人にまで減ってしまいました。復興とチャレンジを行うべく、向井氏率いる現地メンバー8名が移住相談の窓口となり、南相馬の町を知り体験できるイベントなどを開催しています。2022年には、MYSHの関係者だけで南相馬に約200人が訪れました。

「町に面白い人が集まるから面白くなる。SNSでの告知や、2泊3日の体験プログラムを定期的に実施、大学生インターンなどさまざまな取り組みをしています。最近では、地域の高校生と大学生の交流促進もしています。高校生のうちから地域でのつながりを持って、10年後にはここで働きたいと思ってくれたら嬉しいですね。すぐに結果が出なくても、長期的にやるべきことをやっていきたいです」(向井氏)

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意識しているのは、旗を振る人が楽しむこと。3拠点生活のため、滞在する時間は限られていますが、現地のスタッフとイベントを企画し、チーム一丸となって全力で楽しみながら運営を続けています。

都市と地方で複数の仕事を両立する向井氏。現在休みはなくとも、とても充実した生活だと語りますが、キャリアのスタートとなる大学生のときに留年し挫折を経験したと話します。しかしそこで将来どうしていくかを真剣に考え、「40歳で経営者になる」と決めて就職活動をスタート、挫折をチャンスへ転換しました。会社経営のメカニズムを知りたいと思い、会社全体の状況を把握できる経理職からキャリアをスタート。品質と生産性の向上を意識して定時退社を心がけました。退社後の時間を使って、図書館から借りた本を1日2時間読むという生活を続けました。

仕事を早く終わらせ、周りから暇そうに見えたおかげで、若手のうちからグローバルでの収益管理システム構築などの大きなプロジェクトを任されました。着実に実力を付けて、複数社での転職経験を重ねてきたことが自身の強みになっています。

「やりたいことがなければできることを高めましょう。一日では身につかない積み重ねを続けることで、周りから真似されない個性(強み)を創ることができます。一生懸命目の前のことに取り組み、少し気になる、やりたいと思ったことに対して一歩踏み出すことが大事です」(向井氏)

最後に「目の前のことに愚直に取り組もう」と向井氏。挫折をバネに思考を変えてキャリアを築いてきた講師の言葉や、複数の拠点を持ち様々な事業に取り組むスタイルは学生の心に残ったようでした。

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・ワークショップ1:テーマ検討

ここまで、さまざまな分野でチャレンジを続けてきたゲストの講演を聞いてきた学生たち。いよいよ最終日のプレゼンテーションに向けてグループワークに取り組みます。昨年の参加者から発表の様子がシェアされた後に、司会の田口が発表に向けての心構えを伝えます。

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「チームになった人同士で、自分たちも楽しくて社会にとっても良いこと、これからやっていきたいことを考えて発表してもらいます。お話いただいた講師の方々も体験して、実践することで学び続けてきました。ぜひ自分の考えを持って、講演で得た知識も踏まえてアウトプットしてみましょう」(田口)

まずは自分が何をしたいかをフレームワークでまとめます。その後、将来何をしたいのか、なぜそれをしたいのか、それは誰のためなのか、どうやって成し遂げるのかをグループメンバーで話し合いながらまとめていきます。「Who」誰が、「What」何を、「Why」なぜ、「How」どうやって、「Where」どこで、「When」いつ、「Whom」誰に、「How much」いくらで、という「6W2H」を記入するシートが配布され、対話を重ねていきます。

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自分が将来どうありたいか、という意見から、グループで対話を行うことで意見を深掘りし、新しい考えに気づく。会場の3×3Lab Futureでは、グループごとに真剣な対話が続きました。明日の発表に向けて、気合いも十分です。

学生たちからは、
「桝本さんの講演が刺激的でした。シリコンバレーにも行ってみたいです」
「鎌北さんの目の前にいる人のために何ができるかという考えが素敵だと思いました」
「向井さんが3拠点生活を、休みなしで続けるということに驚きました。それだけ事業に想いがあり、楽しめているということ。どうしたら両立できるのか訊いてみたいです」
また、翌日のプレゼンテーションに向けて何ができるのかを前向きに整理したいとの声も上がりました。
前日に続き講師の話やグループでの対話など刺激の多い一日だったという感想が聞こえてきました。

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