トピックス大丸有

【レポート】都市と地域の共創が拓く持続可能な社会 地方創生の実践とマーケット視点

第10回サステナブル・ブランド国際会議2026東京・丸の内 2026年2月19日(木)開催

8,9,11

国内外の企業や自治体、NPO、研究者らが集い、持続可能なブランド価値のあり方を議論するサステナブル・ブランド国際会議2026は、2月19日、東京・丸の内の東京国際フォーラムで開催されました。企業のサステナビリティ戦略に加え、地方創生や都市と地域との共創、カーボンニュートラルの実装事例などが共有され、次世代へ続く社会の姿を描く場となりました。サステナブル・ブランド国際会議カタリストとしてエコッツェリア協会の田口は「新たなステージに向かう地方創生」と「マーケティング視点で考える地域活性」の2つのセッションに参加し、地方創生に取り組む自治体や関係者とともにパネルディスカッションを行いました。本稿ではそれぞれのセッションについてレポートします。

続きを読む
地域を変えるのは人の接続 都市の知と地域の実践をつなぐ

地域を変えるのは人の接続 都市の知と地域の実践をつなぐ

まず「新たなステージに向かう地方創生」と題したセッションでは、西伊豆町役場産業振興課から松浦城太郎氏、株式会社未来舎の高内章氏、一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンの長谷川琢也氏が登壇し、ファシリテーターはエコッツェリア協会の田口真司が務めました。

image_event_20260219_001.jpeg2つのセッションでファシリテーターを務めた田口

田口は「地方創生では人口減少や高齢化などの課題が語られるが、本日は地域の魅力や現在進行形の取り組みに光を当てたい」と始めました。まず高内氏から2035年の都市と地方の関係を再設計する試みが紹介されました。人口拡大期の都市は、地方から人材・エネルギー・食料を引き寄せながら成長してきました。

しかし高内氏は「人口減少期となる今後10年、都市への集中だけで日本は立ち行くのか」と問いかけます。その解として示されたのが、地方で分散型電源の構築や農業の6次産業化、ソーラーシェアリングなど、地域に根差したビジネスを育てる必要性です。そのためには都市で培われたビジネスナレッジを地方へ還元するポンプ役が不可欠だと強調します。「都市の知を地方に活かしたいと考える人は増えている。そうした人材をつなぎ、次の時代の基盤を築いていきたい」と語りました。

image_event_20260219_002.jpeg今後は都市の一極集中では立ち行かなくなると語った高内氏

続いて松浦氏から、漁港に地域外の人を呼び込む「海業」が紹介されました。西伊豆町の漁港は、高齢化や低利用の打開策として海業に取り組んでいます。具体例として挙げられたのが「ツッテ西伊豆」と「海釣りGO!!」です。前者は釣り船で釣った魚を地域通貨に交換し(※)、観光消費へとつなげる仕組み。後者は漁港内の岸壁や防波堤を予約制・有料で釣り場として開放するサービスで、トラブル防止と収益化を両立させています。直近では釣り客を移住者へ、そして漁協組合員へと導く「西伊豆&Angler」にも挑戦しているそうです。「漁協は担い手不足、しかし釣り人の中には海と共に生きたい人がいる。組合員になれば、趣味だった釣りを収入源や経費として位置づけることもでき、漁協と釣り人の双方にメリットがある」と松浦氏は語ります。こうした取り組みを通じ、これまで西伊豆へ14人の移住、うち3人の組合員資格取得を実現しました。「このような解決策は地元だけでは難しい。地域外の力を借りながら、今後も課題を一つずつ解決していきたい」と話を終えました。
※ツッテ西伊豆で地域通貨と交換する魚は、はんばた市場という産地直売所と連携する釣船で釣った魚を、船長のレクチャーどおり〆て保冷したものを、船長が発行する証明書と一緒にはんばた市場に持ち込む必要があります。

image_event_20260219_003.jpeg海業の取り組みを紹介する松浦氏

3番目の登壇者となった長谷川氏は、LINEヤフー株式会社の会社員である一方、漁師団体フィッシャーマン・ジャパンを立ち上げた実践者でもあります。東日本大震災を機に、「都市と地方」「ネットとリアル」の間に立つ存在になろうと決意し、宮城県石巻市に拠点を設置。「人を育てながら産業と地域をつくること」をテーマに日本の漁業を次世代につなぐための活動を本格化させました。地元住民に加え、海や釣りが好きな人、学生、海外旅行客までをも巻き込み、体験型プログラムや企業連携プロジェクトを展開。漁業を閉じた産業から開かれた産業へと再編集してきました。先ほど松浦氏から語られた西伊豆&Anglerも、こうした発想から生まれた取り組みの一つです。長谷川氏は「どれだけ機械やAIが進化しても、人が変わらなければ本質的な変革は起きない。私たち自身が変わり、進化し続けることが地域の未来につながる」と語り、人材育成を軸にした持続可能な地域づくりへの想いを語りました。

image_event_20260219_004.jpeg人が変わることが地域の未来につながると述べた長谷川氏

各登壇者の発表後、田口がファシリテーターとなりディスカッションが行われました。焦点の一つは「外部人材を地域に受け入れるハードル」です。田口の問いかけに対し、松浦氏は「漁港は本来閉鎖的な空間であり、そこをどう乗り越えるかに尽きる」と率直に語りました。一方、長谷川氏は「そもそも地域が本当に困っているのか、外部を必要としているのか見極めることが重要」と指摘します。高内氏も「困りごとを具体的に発信できる町ほど、外部人材とうまくかみ合う」と述べ、課題の言語化が接続の起点になると強調しました。

image_event_20260219_014.jpeg

また、都市と地域の関係性について長谷川氏は「よそ者だけで試行錯誤するのではなく、地域の中核的な人物とチームを組み、人を育てながら進めることが大切」と語りました。これに対し高内氏は「そこに技術やアイデアを持つ人材が加わることで、解決策が具体化される」と補足し、都市人材が参加できる可能性を指摘しました。会場から学生の地域との関わり方について質問を起点に次世代へ伝えたいことなど活発な議論が交わされる中、セッションは終了しました。

image_event_20260219_006.jpegセッション終了後の記念撮影

消費から循環へ マーケットインで再定義する地域の価値

続くセッションは「マーケティング視点で考える地域活性」。行きたくなる地域、関わりたくなる地域をいかに生み出すかをテーマに議論が展開されました。登壇者は土庄町商工観光課の蓮池幹生氏、株式会社マルキュウ/株式会社マルヒの折茂彰弘氏、三菱地所株式会社の広瀬拓哉氏。ファシリテーターは前セッションに続き田口が務めました。

image_event_20260219_007.jpeg

まず登壇した蓮池氏は、小豆島の概要とこれまでの取り組みを紹介。島では人口減少が進み、「島の持続可能性が問われている」と危機感を示します。毎年人口の約40倍にあたる観光客が訪れ、瀬戸内国際芸術祭開催時にはさらに観光客が増加するため、オーバーツーリズムの課題も顕在化しています。こうした状況を踏まえ、小豆島が掲げたのが「観光により消費される島ではなく、観光によって持続する島」への転換です。その実現に向け国際認証を取得し、信頼性と認知度を高めることで民間企業の参画を促進。さらに、オリーブの搾りかすを牛の飼料として活用する循環型農業の実践など、地域資源を活かした取り組みを推進しています。観光を起点に、教育や福祉、雇用へと波及させる横串の発想も特徴的です。数々の事例を紹介した蓮池氏は最後に「サステナブルな小豆島へぜひお越しください」と力強く呼びかけました。

image_event_20260219_008.jpeg.JPG観光により消費される島ではなく、持続する島を目指すと語る蓮池氏

折茂氏は、広告会社でのキャリアを経て、ローカルの持続可能性に強い危機感を抱き、企画・クリエイティブ会社マルキュウを立ち上げました。都市に集中する資本や人材の流れに対し、「ローカルにはまだ可能性がある」と感じたことが転機だったといいます。その取り組みは、佐賀県庁の採用サイト刷新に始まり、人気ゲームとのコラボレーション「ロマンシング佐賀」、食材ロスを活用した地域商品開発など多岐にわたります。地域資源にアイデアを掛け算することで、新たな文脈と市場を生み出してきました。折茂氏は、「佐賀県民は『佐賀には何もない』と言うが、東京にない面白いものこそ佐賀にある」と指摘します。その土地に当たり前に存在している資源を掘り起こし、外側の視点を重ね合わせることで、新しい挑戦が生まれる。「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせにすぎない。誰もが知っているものをどう組み替えるかで、これまでにない価値は生み出せる」と語りました。

image_event_20260219_009.jpeg既存要素を組み合わせで価値を生み出せると話す折茂氏

続いて三菱地所の広瀬氏が、食を起点に社会を豊かにする「めぐるめくプロジェクト」を紹介しました。その活動を通じて広瀬氏は「サーキュラーコモンズ」という考え方を提唱し「食の価値をただ消費するのではなく、循環させながら、次の価値へとつなげていくことが大切だ」と語ります。めぐるめくプロジェクトでは、全国各地を巡るツアーや地域間交流会をこれまでに26地域で開催してきたほか、共創を生み出す対話の場「ハタウチカイ」、社会に良い変化を起こそうとする仲間が集う「Good Company Table」などを展開。地域と都市、企業と生産者、異なるプレーヤー同士が交わることで、新たなプロジェクトが生まれ続ける循環構造を育んでいます。さらに2026年には、東京・大手町に活動拠点が誕生する予定で「垣根を越えたプレーヤーが集うコミュニティ、対話から共創を生むプログラム、そして産業をつなぐ新たな拠点を通じて、食の力で日本の各地域や社会全体を豊かにしていきたい」と締めくくりました。

image_event_20260219_0010.jpegサーキュラーコモンズの重要性について説明する広瀬氏

その後の討議では、田口がマーケットイン視点の重要性を問いかけました。蓮池氏は、「小豆島の強みはオリーブや醤油など『本物』があること。例えば醤油の伝統製法である木桶の9割は小豆島にある。その本物に外の視点をうまく取り入れたことが、今の流れにつながっている」と語ります。折茂氏もこれに同調し、「佐賀を内側から見るだけでなく、いまの社会的文脈に置いたときにどんな価値を持つのかを定義できれば、地域はより魅力的に見せられる」と指摘しました。広瀬氏もまた、「他地域を訪れることで、自分の地域の差別化ポイントを外からの視点で見直すことができる」と述べ、プロダクトアウトにとどまらない外部視点の重要性を強調しました。

image_event_20260219_0011.jpeg登壇者が互いの取り組みに対して質問する場面も

さらに議論は都市と地域の関係性へと広がります。折茂氏は「外からだけではなく、地域に入っていくコミットメントが必要」と語れば、広瀬氏も「都市人材がやりたいことと、地域が望むことが重なる部分で、双方が全力を尽くすことが大切」と続けました。その後、会場との質疑応答では、予算や人事など実務上の壁をどう乗り越えるかという現実的なテーマにも議論が及びました。理念だけでなく実装まで踏み込んだやり取りを経て、セッションは幕を閉じました。

image_event_20260219_0012.jpeg会場からも質問が寄せられました

今回、都市と地域が対等につながり、人と知恵と価値を巡らせながら共創を重ねていくことが、持続可能な社会の実装に向けた確かな道筋であることが示されました。紹介された実践が各地へと広がり、新たなモデルが全国で生まれていくことを期待したいと思います。

image_event_20260219_0013.jpeg

おすすめ情報

トピックス

注目のワード

人気記事MORE

  1. 1【大丸有シゼンノコパン】ミツバチが見ている丸の内を「視(み)る」 〜朝のまちを、ハチ目線で〜【まちの生きもの】
  2. 2さんさんネットワーキング~2026春~
  3. 3大丸有でつながる・ネイチャープログラム大丸有シゼンノコパン 春
  4. 4【丸の内プラチナ大学】2025年度開講のご案内~第10期生募集中!~
  5. 53×3Lab Future個人会員~2026年度(新規・継続会員)募集のお知らせ~
  6. 6【レポート】さがデザインとさが創生が生み出す画期的プロジェクト 〜自発の地域づくりから生まれる自信と誇り~
  7. 7【レポート】言葉の力が人生を切り開く 心とアートをテーマに「美しく生きる」を問い直す
  8. 8【レポート】地域実装の最前線 脱炭素・デジタル・アートが交差する上士幌の現在地
  9. 9【大丸有シゼンノコパン】虫や鳥がつなぐ植物の生き方を「深(み)る」 〜樹木医とめぐる、初夏の大丸有さんぽ〜【まちの四季】
  10. 10【レポート】大丸有に集い、語り、未来への一歩を踏み出そう Day 1