過去のアーカイブ過去のニュース

【環境コミュニケーションの現場】 公園で、里山で「みどりづくり」に汗をかく ― トーマツグループが進める植栽ボランティアに溢れる笑顔

kcom_tomatsu_01.jpg

企業による環境やCSRに関する広報・普及の現場を取材する【環境コミュニケーションの現場】。第25回はトーマツグループの、泥にまみれ、汗を流す、まさに実感的なボランティア活動をご紹介します。身近な公園の四季の植栽、手付かずの荒れた里山の間伐整備等、背広をTシャツに着替えた取組みは、もう6年以上も続けられています。監査法人、デスクワークとはおよそ対極にあるイメージの「土いじり」に向かう参加者の反応は?その成果と課題、今後の展望とあわせてCSR推進室長の吉田修己さんに伺いました。
トーマツグループ

目に見える活動から取り組むことで参加者を増やしていく

― 花壇の植栽というと、日頃の業務とは真逆の活動に思われますが、どんな経緯で始まったのでしょうか

吉田: 弊社のCSR活動には「地域や社会のため」「環境に配慮した業務活動の推進」「人材の育成、職場での取り組み」「クライアントへの専門サービスの提供」という4つの柱があります。その中の、地域社会の環境において貢献できる活動は何かということを社内で検討をしていたときに、当時のCEOが目に見えるわかりやすい取り組みがいいと発案したのです。

日比谷公園での活動なら、オフィスからも近く、多くの人が憩う場所なのでと、決定しました。もともと社内には何か社会の役に立ちたいという者が多かったように思います。もちろん強制ではなく、参加する者はみな有志です。家族を連れて来る職員もいて、和気あいあいの雰囲気で一緒に汗をかき、楽しんでいるようです。2006年から年に3回、3月、7月、10月の土曜日に開催され、多いときでは30名以上集まります。当初は社内の認知度が低く、参加者はあまり多くなかったのですが、社内PRに工夫を凝らした結果、2012年秋の第20回は34名と盛況でした。
* 都市の緑の活用に関連する記事はこちら
愛でるから使うへ、動き出した大丸有の都市緑化の行方

― 現在まで、6年間継続しているわけですが、何か変化は見られますか

吉田: 個人としては、まず花壇や植栽への興味が出てきたことでしょうか。他の花壇を見ると、整備の良し悪しや、社名のプレートが掲示されている場合は、どの会社が整備しているのかも気になります。日比谷公園の私たちのスペースは1区画2.5坪程度が2区画です。毎回、造園アドバイザーから指導していただいているので、造園に詳しくなってきました。益虫と害虫によって虫取りの方法が異なることや、土を毎回入れ替えるなど、なかなか奥の深い世界だと思います。

自分たちで花壇のデザインを考えるようになったことで、さらに見る目が広がりました。CSR担当となり活動に参加するまでは園芸の知識はまるでなく、きれいに花開けば喝采を挙げていました。最近では、より美しい、ほかにはないデザインの植栽を求めるようになってきました。

普段の業務とはまるで異なる世界ですが、逆にそれが大きな気分転換となって、仕事のモチベーションにも繋がるように思います。この体験をより多くの職員にしてもらいたいと、社内の広報活動に力を入れています。参加者を募集するときに、社内イントラネットへ掲載したり、一斉メールで告知をしたり。手製のポスターを貼りだすこともします。活動の合間の期間にも、花壇で摘んだ花を飾ったり、ドライフラワーをつくって配るなどしています。

森林保全でつながる地域貢献

― もう一つの活動として、群馬県で実施している「トーマツの森」についてお聞かせください

吉田: こちらは3年前からスタートした、里山を整備する森林保全ボランティアです。トーマツ創立40周年を記念して、何か社会貢献事業に取り組みたいと思案していたときに、里山や荒れた山林の整備をサポートしてほしいという募集が多いことを知りました。数多くの募集リストを検討していたところ、その中に創業者の一人である故・等松農夫蔵の実家の名前を発見したのです。偶然とはいえ、これは縁に違いないと話をもっていったところ、山主である等松さんも大変喜ばれ、決定しました。

kcom_tomatsu_02.jpg
斜面での作業はハードワークだ

里山の場所は群馬県高崎市吉井町にあり、群馬県、等松家と「企業の森」活動としての取り決めを行い、2009年4月から正式に活動を開始しました。現在まで毎年4月と11月の年2回、2013年春で第9回目になる活動となっています。毎回土曜の朝8時にチャーターバスで池袋を出発し、約2時間の行程で現地に向かいます。作業を終わらせて現地を発つのは16時で東京着は18時過ぎになりますから、まるまる1日仕事です。とは言え、作業はハードですから、実際の作業時間は正味2時間ほどでしょうか。作業内容は大きく分けると伐採と下草刈りですが、大変なのは竹の伐採で、急斜面に生えているので危険がともないます。その上、竹は成長が早いので年2回ではとても間に合いません。里山といっても登れば息があがるぐらいの高さのある丘陵ですから、参加する人数をもっと増やしていかなくてはと感じています。

― 花壇と違い、成果は十年、百年単位でしょうが、どのような充実感を得られていますか
kcom_tomatsu_03.jpg
成果が目に見えると達成感がある、と話すCSR推進室長の吉田修己さん

吉田: たしかに大変ですが少しずつきれいになってきた里山を見ると達成感があります。森を救うというのは山や川を救い、海を救って、ひいては自然そのものを救うことになります。それだけに継続することが重要です。そこで、参加者により楽しんでもらうために、季節にあわせて、芋掘りやしいたけのコマうち、タケノコ狩りなどのイベントも併せて企画しています。また、伐採した竹を、現地で協力してくださるNPOの方が竹コップや花入れにして、お土産に持たせてくれることもあります。参加者にはとても好評なお土産です。このほか、等松さんに近所の農家の方にお声がけいただいて農産物即売会なども実施しています。

群馬県の「トーマツの森」は所有者が会社と縁のある方でしたので、森の中に休憩用のベンチを置くなど、自由に使っていいとのお許しをいただいています。将来的には職員が気軽に温泉の帰りに立ち寄れるような場所にして、もっと縁を深めて、持続的な活動にしていきたいと考えています。
* 都市と地方の連携に関連する記事はこちら

環境に、社会にどう貢献していくのか

― 花壇の植栽、里山の整備の今後の課題はなんでしょうか

吉田: まずはこの活動を継続、拡大していくことです。日比谷公園の花壇の方は2006年から開始し、毎回半数程度はリピーターですが、これまでに延べ人数では約700人が参加しました。取り組みの初期段階の参加者数としてはまずまずと思っています。引き続き社内での広報活動を活発にして、参加者を増やしていくことで、都市部のCSR活動を充実させていきたいですね。

kcom_tomatsu_04.jpg
お揃いのTシャツを着ての植栽作業

企業ロゴの入ったお揃いのTシャツを着て作業し、トーマツグループとしての一体感を醸成することで、全社ぐるみの社会貢献という意識を少しでも感じてもらうようにもしています。家族ぐるみの参加者も多く、子どもたちに、花や木に親しみ、自然との距離を縮めてもらうという教育的な要素もあります。また私自身も、作業を通して得られる美しい風景や新鮮な感動は、日常業務だけでは得がたいものと感じています。

トーマツグループには国内各地に事務所があり、それぞれの事務所独自の社会貢献や環境保全の取り組みも行っています。里山整備「トーマツの森」も、現在は群馬県吉井町のほか、和歌山県龍神村と愛知県瀬戸市の3ヵ所で実施しています。社名の入った森があるということは、職員の環境に対する意識を向上させるきっかけにもなると思っていますので、今後は少しずつ拡大していきたいと思っています。

― 「日比谷公園の植栽」「トーマツの森」以外のCSR活動は、どのように展開されているのかお聞かせください
kcom_tomatsu_05.jpg
競技場がランナーで溢れる「FITチャリティ・ラン」

吉田: 社会貢献活動の一環として、経済的な支援を行っています。「FITチャリティ・ラン」という金融関係企業によるイベントでは、参加費から運営費を差し引いた金額が全額寄付されます。2012年11月開催時はイベント全体で7,000人超の参加があり、トーマツグループからも約500人が参加しました。寄付金は総額約6,125万円にもなり寄付先のNPO等を通じて地域社会活動の支援に使われています。

震災後は震災で親を亡くした遺児たちへ、毎月の給料から天引きで集めたお金を、教育育英基金として岩手県・宮城県・福島県の各県の被災遺児育英基金に届けています。2012年1月から開始しましたが、9月までで約835万円が集まり、会社からの募金と合わせて約1,845万円を送金しました。この活動は向こう5年間継続する予定です。

このようにCSR活動を積極的に進めることで、トーマツグループとしての信用度をさらに高め、社名の認知度を広める一方、職員にも社会貢献への自負や達成感が生まれ、対外的に収益を上げるだけの企業ではなく、それを還元する社会の公器としての誇りが根付くのではと考えています。
トーマツグループのCSR

関連記事

【環境コミュニケーションの現場】