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【レポート】アートを切り口に食と農をデザイン、新たなアイデアのインスピレーション

【丸の内プラチナ大学】アグリ・フードビジネスコースDAY3(アートフルライフコースとの連携プログラム)2023年10月23日(月)開催

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アグリ・フードビジネスコースは、食や農に関心がある人、あるいはアグリ・フードビジネスに関わる方々を対象に、日本の食と農の現状、課題やイノベーション、地域活性などについて実践的に学べるコースです。講師は関東学園大学教授の中村正明氏。中村氏は大学で教鞭をとる傍ら、産官学民の連携や協働をコーディネートし、6次産業化や農商工連携による商品開発やソーシャルビジネスのプロデュースを手掛けており、幅広い知識と経験を有しています。

本コースでは循環型農業を実践する農家、6次産業化を行う事業者、地域の伝統を活かしたまちづくりなど、様々なアングルから食と農に迫ります。今回は、アートフルライフコースから講師の臼井清氏をお招きしたコラボレーション企画「食と農の未来をアートという切り口でデザインしてみる」という試みを紹介します。アグリ・フードとアートの二つのコースが融合することで、どのような化学変化が起こるのでしょうか。

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食と農、アートの融合を理解するキーワード

食と農、アートの融合を理解するキーワード

image_event_231023.002.jpegアグリ・フードビジネスコース講師の中村正明氏

初めに二人の講師から農業とアートの類似性が語られました。

「私は全国の農家さんと繋がりながら、地域の食をテーマにしたまちづくりのお手伝いをするなかで、農家さんはアーティストだなと思うシーンがたくさんあります。野菜もアート作品のように育てられていて、形、味などが作る場所によって異なっている。一つひとつその場その場で向き合っている生産者は、とてもアーティスティックだなと感動します」(中村氏)

「農業は自然相手。思い通りになるところと、ならないところがあるのでしょう。アートも同じようなところがあります。自分でこう作品を創ろうと思っていても、ある素材を使うと思い通りにならない、あるいは自分が想像していたものと違うものができる。それがまた面白く、創作意欲につながっていく。その点は非常に農業と似ているなと思います」(臼井氏)

image_event_231023.003.jpegアートフルライフコース講師の臼井清氏

それから、本講義の大枠や理解を促進するために、いくつかのキーワードが紹介されました。

「ビジネスでロジックを使ってソリューションを考えるとお金になる。その一方で、『センス』や『アート』はお金にならないと思っている人が多いですね。しかしこの両方のキーワードを掛け算すると、とても良いビジネスになると思います。『センス』と『アート』という要素を使って、食と農のビジネスを考えてみる機会になってほしいです」(臼井氏)

「農家は昔『百姓』と呼ばれていましたが、それは『百商』ともいえるような様々なビジネスを展開し、周りには様々なビジネスチャンスがあったためです」(中村氏)

そしてこの「百商」の延長線上にあるのが6次産業化です。6次産業化とは、農業などの1次産業、製造業の2次産業、流通販売の3次産業の3つを一体的に掛け合わせて、より付加価値の高いビジネスモデルにしていくこと。それによって地域経済の活性化や地産地消が促進され、地域課題解決につながっていくのです。

「"agriculture"はアグリ(農)×カルチャー(文化)だという話はよく聞きますが、いろいろ調べてみると、このカルチャーは『人の心を耕す』というような語源を持っています。生産者として魅力的である以上に、消費者の心を耕してくれるような活動を行っているのが本来の"agriculture"だと思います」(中村氏)

新たな「食と農の未来」を創る

そして、今回のアグリ・フードデザインとアートフルライフコースのコラボレーションにおいて、受講生が具体的に掛け合わせを考えるうえでのヒントになるべく、東京で農業を営む2人のゲストが紹介されました。

一人目は東京都国立市で西野農園を経営する農家の西野耕太氏。西野農園は13代も続く歴史ある農園で、30から40種類の江戸東京野菜や西洋野菜を作るほか、東京では珍しい米作りに力をいれています。米作りには水が欠かせませんが、国立市は湧き水が出る恵まれた環境で、西野農園でも田んぼに張る水の8割ほどは湧き水を使っています。西野農園のこだわりは土作り。除草剤の回数を減らし、減農薬栽培に取り組むだけでなく、有機肥料を使うことによって、土を豊かにしてくれる微生物が増えるような工夫もしています。西野氏は市内の小学生に向けて稲刈り体験や食育授業の開催と生産以外の分野でも精力的に活動し、また東京お米サロンという地域住民との交流の場を設け、農業体験イベントやしめ縄づくりのワークショップといった季節行事も開催しています。

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二人目は東京都立川市で小山農園を経営する農家の小山三佐男氏。キャベツが一個8円でしか売れないことにショックを受け、ヨーロッパ野菜専門の農家になる道を歩み始めました。小山農園はカラフル野菜に力を入れ、立川市内に6か所、計3,000坪の広大な農場を保有し、スーパーで見かけないような野菜160種類を栽培しています。希少な野菜ばかりですが早々に売り切れてしまうそうで、別名フルーツトウモロコシとも言われるぐらい糖度が高い白トウモロコシは、わずか2週間で2,000本が完売してしまったとのこと。主に関東エリアのホテルやレストランを取引先としてビジネスを展開しています。

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ゲスト紹介の後、アートフルライフコース講師の臼井氏が農業とアート、そしてビジネスシーンにおけるアート要素の重要性を解説していきます。
アートと農業が出会ったのは「落穂拾い」や「種まく人」で知られる19世紀のフランス画家、ジャン・フランソワ・ミレーが最初と言われています。「19世紀後半までは、農業はアート作品の対象にはあまりならなかった」(臼井氏)そうです。しかし遡ること2万年前、ラスコー洞窟の絵画には馬や牛が描かれており、25万年前から人類の祖先はオーカーと呼ばれる鉱物を顔料の材料として使うなど、人類が自然物をアートに利用してきたという根源的なつながりに「農業とアートは何万年も前からつながっている」(臼井氏)ようです。

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農業とアートの共通点の次は、ビジネスシーンでのアートの重要性に移りました。一般的にビジネスを重視するということは売り上げ、利益、効率などのロジックの話になってきます。一方で、私たちの日常生活はロジックよりも感覚やフィーリングが重視されており、ロジックだけで考えられた商品はあまり売れなくなってきました。臼井氏は自動車広告を例にしながら、現在の潮流を語りました。

「昔の自動車広告はエンジンパワーや乗り心地などの機能的価値に関するメッセージが多いですが、最近の広告は、車自体があまり出てこず、家族でキャンプに行くなどの意味的価値を重視するようになってきました。モノ消費からコト消費へ。そして、音楽フェスのように、その場に行かないと体験できないような一期一会的な体験、あるいはビーチクリーンのような社会貢献にお金を出して体験するという、トキ消費やイミ消費なども出現してきました。アートをビジネスに取り入れている企業はまだまだ少なく、今日は皆さんに感性や創造性を存分に生かしてビジネスを考えていただきたいです」(臼井氏)

講師やゲストの話をふまえ、受講生たちは「食と農の未来」のメインビジュアルとリードコピーを考えるワークショップに取り組みました。使われるのはアートカードと呼ばれる数十種類のアート作品がプリントされているカード。そのカードの中からメインビジュアルを決め、リードコピーを創作します。食べ物としての農、自然の一部としての農、あるいは農業の楽しさや根源的な意義を見出すなど、各チームで活発な議論が行われました。

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「大地と人と動物との共存した未来のテーマパーク」

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「召し上がれ、いただきますの輪」

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「なにこれ?未来につながる」

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「旬を食べる」

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「作って食べて、力強く美しく、理想の自分をつくろう 」

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「農家(アーティスト)がつくる 食べられる作品」

各チームからの発表に、ゲストの農家の2人は次のように話しました。

「かなり深いキーワードが多かったですね。私はオープンな農園をめざしていて、テーマパークというイメージに近いかなと、今の方針と合って響きました」(西野氏) 「僕が気になったのは『何これ」です。僕の野菜をみてお客様に『ナニコレ』『どんな野菜』と言われるのが最高の誉め言葉なんです。これからもそういう評価を重ねて満足していただけるようにしたいですね」(小山氏)

受講生たちからは、今回のアートコースとのコラボレーションによって、アグリフードへの理解を深める機会になったとの声が聞こえてきました。

「お店に行くとただの大根だとしか思わなくても、友人が『これ私が作ったの』と大根をわたされるとそれは作品だと感じたことを思い出しました」
「この講義を受けるまでアートと農業がどのように結びつくのかわからないまま参加しました。しかし農作物は創作物であり、アートという観点から農業を考えるともっともっと可能性が広がるのだという気づきを得られました」

最後にアグリコース講師の中村氏は、アーティスティックな感覚と行動力をもつ今回登壇頂いたお2人の東京の生産者の取り組みの先に、食と農の未来があるのではないかと期待を寄せました。

「東京の農業は、土地が狭い、住宅が近い、農薬問題など近隣住民への丁寧な気配りは不可欠です。西野さんも小山さんも、現状の様々な課題を抱える中で、様々なアイデアを出し、6次産業化の視点による商品化や、体験・交流型プログラムにも取り組むなど、自身の農業のかたちを見い出されています。
そんなお二人の取り組みにはアート感覚があり、食と農の未来があるように思います。」(中村氏)

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