ワーキンググループ環境経営サロン・インタビュー

「環境経営サロン 2013年度を振り返って」道場主・小林光氏

慶應義塾大学大学院教授/元環境省環境事務次官

「環境経営サロン」は3年目を迎えた。今年度(2013年6月~2014年3月)は計6回のサロンが開催され、登場したプレゼンテーターは金融業、飲料メーカー、販促プロモーション、娯楽産業、家具メーカー等と多岐にわたった。
「環境経営サロン」で道場主を務めた小林光氏(慶應義塾大学大学院教授/元環境省環境事務次官)と、師範役を務めた竹ケ原啓介氏(株式会社日本政策投資銀行 環境・CSR部長)に、この1年を振り返っていただいた。

− 「環境経営サロン」の活動も2011年のスタートから3年が経過しましたが、振り返ってみて、どのような進展があったでしょうか。また、サロンの議論から見えてきた収穫や発見、課題等についてお話いただければと思います。

小林光氏小林 1年目はまさしく手探り状態でしたね。そもそも環境経営とは何なのか。このサロンで議論すべきテーマはどこにあるのか、模索した年でした。考えてみると、環境経営に関する講演会やセミナーはあるけれど、「環境経営サロン」のように継続的に一つの場を設定し、それぞれの企業が具体的な経験、生データ、現場の試行錯誤といった事例を持ち寄り、それをみんなで学べる場というのは、日本中を捜しても他になかなか無いのではないでしょうか。このサロンのプレゼンはまさに今、格闘しているビジネスの話。だから、文献で調べても出てこない、現在進行形の情報ですしその分、緊張感、臨場感に満ちている。しかも、日本を代表するような名だたる企業が次々に登壇してくる。そんなサロンの場は実に貴重で価値があるのではないか。1年目でそう確信しましたね。

− 1年取り組んで、次第にサロンのフレームがはっきり見えてきて、議論の質も変化していきました。

小林 そうですね。2年目には「環境で儲けてもいいんだ」「公益性と事業性は両立するのだ」ということが、参加者の共有意識となったと思います。そして今年3年目は、その土台の上でさまざまな企業の取り組みをCSVというフレームワークの下に整理し、「環境経営」をさらに深く掘り下げていきました。参加者の議論の質も、単なる成功話を聞く、というスタンスではなく、テーマをめぐって活発にやりとりする雰囲気が生まれ、議論が高度化してきた。悩んでいる人に対して、私の立場ならこうする、といったアドバイスを提供したり、互いの知恵を組み合わせて新事業を生むにはどうすればいいかと、フランクに話ができるようになった。そんな雰囲気は、まさしく継続性が生み出したものでしょう。また、ブレゼンを担当する企業がいきなり登壇するのではなくて、何回か議論に参加した上で、今度は講演する立場になる、というサロン独自の運営スタイルも、議論を深めていくには有効だったと思います。

− 今年度のプレゼンテーターも、多彩な顔ぶれがそろいました。

小林 エンターテインメントあり、販促プロモーションあり、ビッグデータあり。どんな業種のどんな仕事の中にも、環境経営の課題が見いだせる、ということがひしひしと伝わってきました。それぞれの企業がそれぞれの形で環境経営に携わっていると聞けば、いったいどこに接点があるのか、どんな仕掛けなのかと思う。好奇心いっぱいでプレゼンに聞き入りました。

− 来年度にむけて、こんなことにトライしたい、こんな取り組みができたら、といった期待についてお聞かせください。

小林 CSVとは、すでにやっている仕事の中に価値を見いだすという意義もあるけれど、本来は「クリエイティング・バリュー」です。新しい価値を創っていくことに大きな意味がある。例えばドコモ・ヘルスケア竹林氏のプレゼンで、これからビッグデータを使ってこんなビジネスをやりたいとか、コラボレーションする相手よ来たれ、といった呼びかけがありましたね。自社の強みを異ジャンルと掛け合わせていくことで面白いものが出てくる、という発想です。来年度はそのような、将来へ向かっていく議論もやりたいですね。あるいは、ハーマンミラー松崎氏のプレゼンでは米国家具メーカーのCSVについて学びましたが、国が違えばやり方も違うはず。たとえば、エコ意識が高い日本の家具メーカーと、ハーマンミラーがCSV をめぐって議論をしたら何が見えてくるのか。同業他社が集まって環境経営についてやりとりしたら、新たなビジネスのアイディアが出てくるかもしれない。そんなチャレンジも面白いかもしれません。
また、今年度は、「製品・サービスのCSV」、「バリューチェーンのCSV」、「クラスター/競争基盤のCSV」という3つの軸を立てて議論を展開しました。たとえば来年度は、その軸を5つ、あるいは7つに増やしていくこともできるかもしれません。財務指標やサービス、商品は見えるのでわかりやすいですが、それを満たしている、その裏側にある価値とは何か。隠れた価値、数値に表現できない価値、非財務的な価値といったものを、サロンを通して「見える化」していきたい。環境の取り組みを価値とお金に換えるルートを、どんどん発見し増やしていきたいですね。

− 世界的に見て、環境経営をめぐる状況に変化はありますか。

小林 昨年2013年9月に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次レポートが出て、予想以上に地球温暖化が進んでいることが明白になりました。私が環境省で携わったCOP3・京都議定書採択(1997年)の頃は、「100年間で50%削減すれば大丈夫」と認識していたのですが、実はその倍のスピードで削らねばならないがことがはっきりしてきたのです。一方で、アメリカのオバマ政権は2014年度の予算教書でCO2削減に大胆に資金を入れ、本腰で都市改造に取り組む姿勢も見せています。つまり地球全体でより一層、より真剣に、環境技術が求められる時代です。まさしく、「環境で儲ける時代」の中にいる、ということ。世界には各地の都市を含めて、環境技術の大きな市場が待っている。ぜひ、日本の企業が大きくビジネスを羽ばたかせて、同時にその力によって社会課題を解決していってほしいと思います。この環境経営サロンが流れを後押しする力強い一助になればいいですね。

羽根木テラスビオ小林氏がプロデュースした世田谷区羽根木のエコ賃貸「羽根木テラスビオ」。太陽光や高断熱、井戸水活用、HEMS設置などエコハウス仕様だけでなく防災や快適性にも力を入れた。

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環境経営の本質を企業経営者が学びあう

エコッツェリアに集う企業の経営者層が集い、環境まちづくりを支える「環境経営」について、工夫や苦労を本音で語り合い、環境・CSRを経営戦略に組み込むヒントを共有する研究会です。議論後のワイガヤも大事にしています。

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